『ピピピピッピピピピッ…』
「んん…」
いつも通り五時に鳴る目覚ましを止め、布団を這い出る。
そこでふと気付く。
自分が寝てるのは親の部屋だった。
何故だろうと考えつつ横をふと見ると、瞳ちゃんが小さな寝息を立てて眠っていた。
それから少しずつ意識がはっきりしてきた僕は、昨日のことを思い出し、すぐに朝食の準備に入った。
「あ…冷蔵庫なんもないや…」
机を見ると、食パンとジャム、バターやピーナッツバター、チョコクリームと、幸いパン関連は揃っていた。
「パンしかないな…」
呟き冷蔵庫を開くと、卵が二つだけあった。
目玉焼きも追加することが決まった。
―――――
「……そろそろ起こすか…でもなぁ…うーん…」
朝食を作って机に並べたのが十分前。
悩み始めて五分。
悩みの理由は瞳ちゃんを起こすかどうか。
何故悩むか、それは時間だ。
小学生に五時半起きは早いのではないだろうか。
寝たのが遅かったのに、早く起こすのは可哀想ではないか。
実際睡眠時間は七時間程。
子供なら、しかも休みならもっと眠っていたいのではないか。
その自問自答を、更に五分続けるのだった。
―――――
僕は問うのを止め、起こすことに決めた。
瞳ちゃんのため仕事も今日は休みにしてもらった。
うちがホワイトでよかったと心の底から思った時だった。
まあそれは関係なく、いい加減起こさなければトーストが冷めてしまう。
まあ既に半分は冷めているが、子供は熱いのは苦手だし丁度いいくらいだろう。
六時に近い時間だし、この時間なら起きる子も普通にいる。
可哀想だが起こすとしよう。
「…ん?」
「……お、おはよう…ございます…」
どうやら自分で起きたようだ。
考えるとこの子の親が、惰眠を貪ることを許すわけがなかった。
普段から早起きなのだろう。
そして悩んでいる姿を目撃されてしまったらしい。
「…お、おはよう…」
何となく恥ずかしい姿を見られた気分だ。
とりあえず朝食が完全に冷めないうちにと、席に座ってもらい、対面の席に僕も座る。
「…えっと…食べていいよ?」
「は、はい!」
何故かパンに手を付けようとしない彼女に、食べるよう促す。
食事が珍しいことだったのだろうが、出来れば聞く前にもう食べてほしい。
「い、頂きます…」
「沢山食べてね。欲しかったら牛乳もあるよ。いる?」
「…はい!」
年不相応に綺麗に食べる。
昨日のように泣きながら食べるということもなく、普通に食事が出来ている分、少しは改善されたのかもしれない。
(朝食を食べたら今日何するか…いやしたいかを聞かなきゃな…)
自分から言い出すことはないだろう。
彼女は頭も仕草も年不相応だ。
七歳の子供が我が儘を言わないなどあるか。
七歳の子供が人の顔色を伺って自分の行動を制限するか。
まずは彼女に、これが当たり前なのだという常識を教えよう。
やりたいことは言う。
食事は好きに食べていい。
嫌なことは言っていい。
こうゆうことは、子供にとっては当たり前のことなのだから。
―――――
「ごちそうさま。」
「ごちそうさまでした…」
ただのパンなのに凄い美味しそうに食べてくれた。
満足したようで何より。
しかしこれからが本番だ。
「瞳ちゃん。今日何かしたいこととかある?」
「え…え、えっと…?」
しまった混乱させてしまった。
まさか聞いても何故と考えるのが先とは思わなかった。
「あー…んー…どこか遊び行きたいとか…そんな感じのさ…」
「……私…」
「ああいや無理にそうしなくても…まだ部屋から出たくないとかでも全然…」
「違うんです。したいことってゆうのが…分からないんです。」
「あ…」
彼女は行動を縛られて生きてきた。
他の子供と同じことなどすることもなかった。
だから、あの環境から逃れただけでもはや満足なのだろう。
そして引き取った僕への負い目。
我が儘を言ってはいけないという遠慮。
それらが再び、彼女のことを縛っている。
「…瞳ちゃん。」
「はい…?」
「遠慮とかさ…その…もし僕に何か負い目を感じてたりするなら、そんな必要ないんだよ?」
「!」
「僕は君の親になったんだから、もっと我が儘言って、自分勝手に過ごしていいんだよ。」
それからは僕の昔語り。
子供の時は門限を夕方程で決まっていたのに、友達を巻き込んで平気で破った。
買ってほしいものを見つけるたびにねだっていた。
その度に親を見ると、二人はいつも笑顔だった。
「親はね。子供が我が儘を言う理由を知ってるんだよ。」
「?」
子供が我が儘を言うのは、親に構ってほしいからだと誰かに聞いたことがある。
そして聞いてもらえると、凄く嬉しそうにするのだ。
嬉しそうな顔を見て、親もまた、幸せな気分になる。
「僕は親として、君の幸せを見ていたいんだよ。」
「幸せ…?」
「そう。
「幸せ……私…私も…幸せに…なっていいんですか…?」
「勿論!それが僕にとっての生き甲斐になるんだよ。違うな…これが僕の我が儘かな?」
彼女が楽しく過ごすこと、幸せを感じる明るい生活、それを創るのは僕であり、望むこと。
これを彼女に望むなら、それが僕の我が儘だろう。
「……」
「それで…何かしたいこと…あるかな?」
「…また…昨日みたいにゲームがしたいです。」
「あれ?もっとこう…公園とかで遊ぶとか…ほら!ゲームならゲームセンターとか…」
「いいんです…私は…」
『お兄さんと、もっと触れ合っていたいです。』
その言葉を飲み込み、彼女は彼に寄り添う。
彼の膝に乗りゲームを始めた彼女の顔は、とても幸せそうだった。
―――――
二日目
もっと我が儘を言ってほしいと結構直球に言ってみた。
その甲斐あって、瞳ちゃんを膝に乗せてゲームをした。
痩せてて軽いから、少しも重みを感じないのは少し心配だ。
しかし彼女は、初めて自分から何かを言い出すことを知ってくれた。
これから更に改善されることを願いたい。
結局一日のほとんどをゲームに費やしてしまったし、完全なインドアになるのも、まして長時間ゲームをやり続けるのも、健康的によろしくない。
外で出来ることを習慣付けた方がいいかもしれない。
明日も我が儘を言ってくれることを願う。
育(主人公)の仕事はホワイト企業のサラリーマンです。特徴のある仕事とか自分まだ学生なんで分からないですごめんなさい。プロフィールは後書きとかでその内書きます。育から一人ずつですね。詳細考える時間が欲しいです。お待ち下さい。