お人好しの不幸な子供育成日誌   作:ジシェ

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もうそろ育の昔話入るな~


帰らず

「奴隷…?」

 

この日本において、そんな突拍子もないことを言われるなど想像していなかった。

だが、他者の所有物として暮らしてきたということなら、瞳ちゃんと茜ちゃんも同じだろう。

現に二人共、思い出しで吐きそうにしている。

 

「……育。」

「うん。悪いんだけど…僕だけに話してくれないかな?さっきも言った通り、三人も録な生活してなかったんだよ。特に瞳ちゃんと茜ちゃんは…君と似てる。」

「…そう。確かに子供に聞かせることでもないわね。」

 

そうして僕と少女はリビングを出た。

 

―――――

 

「よし…とりあえず聞かせてくれるかな?」

「…私が奴隷という話し以外、特に説明することはないわ。詳細は…話すつもりにはならないわ。」

「……せめて何であんな雨の中歩いていたかを―」

「…私の唯一の…友達が、身代わりに逃がしてくれた…それ以上…話したく…ありません…」

「…無理に聞くつもりはないよ。光希君も、最初は何も話してくれなかったしね。話す決心が付いたら、いつでも話してね。」

「…私はここをすぐに去ります。」

「…帰るのは…まずいんでしょ?また…奴隷にされる…」

「けれど貴方達に迷惑はかからない。私をここで見逃すことが、貴方達の最もいい選択。」

「…君をここに置くことで、僕らがどんな迷惑を被るのかはしらない。けど…見捨てることで後悔するのが分かっているのに、最悪な場所に君を戻すことを良しとする程、悪い性格してないよ。」

「自分達が死ぬことになっても…たった一人見知らぬ子供のために、身を犠牲にしてもいいの?」

「…それでも、君を助けることに後悔はしない。」

「…人のためにそう言える人は…多くないでしょうね…」

 

少女は助けを求めていた。

僕は助けることを望んだ。

少女は迷惑をかけまいと自分を犠牲にしている。

それでも尚、僕は彼女を助けようとしている。

お互いに考えているのは、自分でさえ犠牲にしても、目の前の人を助けること。

僕とこの子は、根が似ている。

 

「気持ちは嬉しい…けど、やはり関わるべきではないわ。」

「……そうか…」

「…私は…『唐荷島』家の奴隷ですもの…」

「!?」

 

(唐荷島!?まさか…そんな…)

「?どうかしたかしら?」

「…ぁ…君の…名前は…?いや…父親の…名前は…?」

「…?唐荷島胡桃(くるみ)よ。父親は…唐荷島(こがね)よ。」

「……はは…本当に…クズだ…ああ…本当に…許せない…!」

「…?貴方は唐荷島の関係者か何かなのですか?」

「…そうだね。僕も…唐荷島だから…」

「!?」

 

少女はすぐに逃げだそうと立ち上がる。

強引に、僕はその手を掴む。

 

「あの男は…まだそんなことを続けていたんだろう…?なら、君を帰すわけにはいかない…!」

「…貴方も唐荷島なのでしょう!?よくも一人だけまともを装うなんて…」

「君を同じ目に…僕以上に酷い目に合わせてたまるか!」

 

この子だけは絶対に守る。

たとえただの親戚でも、彼女だけは…

そして、あの男だけは…

 

《許さない》

 

 




胡桃ちゃんは従姪…つまりいとこの子供です。ここでの釛は、育のいとこに当たります。
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