東雲さんを連れて帰る帰路、頭の中は赤ん坊のことで一杯だった。
東雲さんは見てみたいと言ったが、やはり日を改めるべきではなかったか。
それに面識があるのは瞳ちゃんぐらい。
突然連れて行っては驚くのではないか。
(一応連絡しよ…)
先に電話一本でも入れておこうと思い、僕は携帯を取り出した。
三度程のコールの後、出たのは予想外にも胡桃ちゃんだった。
『……』
「………あの…」
『…ごめんなさい。』
「え?」
『私は…ただ名字が同じというだけで…一方的に嫌って…』
「や…別にいいよ。当然の反応だと思うし…」
『面と向かって話すのは…怖いんです…それでも…育さんが…お兄さんが私のために色々やったのも…全部知ってて…』
「うん。」
『それでも…本当は…こんな態度取りたくなくて…』
「…無理しなくていいんだよ。怖い物は怖い。そう区切るのが一番。怖くて怖くて…それでも話してくれた。それが僕は嬉しいんだから。」
『……あの…面と向かって話すのは…まだ少し…怖い…ので…時々、こうして、電話で話してもらえませんか?』
「…勿論!まあ…出来れば顔を見て話しが出来たらいいからね。徐々に慣れてくれたら、それも嬉しいかな。」
それから少し話し込む僕らを、東雲さんは放っておいてくれた。
電話を終えた直後に平謝りしたのは言うまでもない。
―――――
「ただいまー」
「お、お邪魔します。」
家に入った東雲さんは、何故か凄く緊張していた。
…考えると東雲さんを家に連れて来たのは初めてだった。
好きな相手の家に来るとこういう反応になるのが自然か。
家にいるのは親じゃなくて子供だけど。
「…あれ?」
普段なら誰かが出迎えに来るのだが…
「…もしかしたら赤ん坊に夢中で気付いてないのかな?静かに行こうか。」
「はい……」
過呼吸になりそうな息遣いをしながら、東雲さんはついてくる。
そーっとリビングを見てみると、そこには癒しの空間が。
赤ん坊を中心に、抱えた胡桃ちゃん、ソファーに光希君、瞳ちゃんが寝ており…
「(止めどないシャッター音)」
「…何してるの?」
「ひゃあ!?」
「あ…」
「ん…」
写真を撮る茜ちゃんに声をかけると、突然の声に驚いて声を上げてしまった。
その声に反応したのは瞳ちゃんだけだったが、起きることはなかった。
三人で安堵の息を吐いた。
(お、おかえりなさい…)
(何してるの?)
(それより…その人誰?もしかして…彼女さん?)
「ひゃ、ひゃの!初めま…!」
(もう少し静かにー!)
(は!ご、ごめんなさい…初めまして。東雲杏佳です!)
(会社の同僚だよ。度々協力してもらってるの。子供のことだと僕より詳しいからね…)
(が、頑張ります…)
三人で自己紹介を軽くして、これまでのことをかいつまんで東雲さんに説明した。
17時に更新して間違えたって一回消したごめんなさい。
追記:風邪で三日程寝込んだ分曜日感覚狂って忘れてました。一応書き終わったんですが間に合わなかったので来週予約投稿します。