僕には友達はいない。
家族も、親戚もいない。
お金も、服も、家でさえ。
僕には何もない。
だから誰も見向きもしない。
ただ子供が遊んでいるようにしか見えない。
羨ましい。
眼前に見える何もかもが、ただ…
「羨ましい…」
そう思うのは、今日で最後なのかな…
蹲る僕に、少女を連れた優しげな男性が話しかけた。
「こんなところでどうしたの?」
―――――
「あの滑り台とか、横の柱登ったりしたなぁ~…あ、危険だからしないでね!」
「怖いから出来ないです…」
「それならいいけど…」
瞳ちゃんは大人しい子だ。
わんぱくな子供のように恐怖を知らないわけじゃない。
しかし臆病な方ではある。
滑り台の上まで登るのに少し怖がっている。
高い所は苦手かな。
僕も一緒に滑る。
すると年相応に笑ってくれる。
近くには形式の違う滑り台が他にもある。
少し小さいくらいなため、怖くはないようだ。
この公園はかなり広く、噴水も多い。
時間になると、全てから水が吹き出る。
丁度その時間になり、噴水を見に行った。
次に奥にある広間に行った。
そこにはまた違う遊具がある。
そこでも同じくらいの子供が何人も遊んでおり、人の数も多い。
そこで遊んでいた女の子達の一人がこちらを見て、瞳ちゃんに声をかけた。
「……見てるだけじゃなくて、一緒に遊ぼ!」
「え…えっと…」
瞳ちゃんは自分のことか分からず、自分に指を指している。
それを女の子は頭を縦に振る。
少し戸惑った顔でこちらを見る瞳ちゃんに、僕は笑いかける。
同じくらいの年の子と遊ぶことも、大事なことだろう。
瞳ちゃんはその子の元にかけていく。
僕はそれを少し離れたところから見るのだった。
―――――(端から見たらロリコンの図)
「楽しかった?」
「はい!でも…やっぱりお兄さんと過ごす時間が、一番安心します…」
「はは…そう思ってくれると嬉しいな…」
時刻は夕方。
子供達も皆帰り、僕達も帰ることにした。
そうして帰る途中、一人の子供を見つけた。
とても暗い雰囲気で蹲っており、服もぼろぼろ、髪にもゴミだらけ、どこからどう見てもホームレスだ。
高学年、もしくは中学生程の少年が、ぼろぼろの容姿で蹲っていた。
「……」
「お兄さん?」
「…ああ、いや…あの子…」
「?……!?」
瞳ちゃんも驚いていた。
子供ながらに、大人びた瞳ちゃんには分かるのだろう。
ホームレスという存在が。
それを見た僕も瞳ちゃんも、放っておくなど出来はしない。
僕も瞳ちゃんも、同じになったかもしれないのだから。
だから僕は、僕らは声をかけた。
笑顔で優しく、問うように。
「こんなところでどうしたの?」
―――――
「……あの、」
「どうしたの?」
「いや、おかしいでしょ?俺ホームレスだよ?ストリートチルドレンだよ?なんで…」
僕達は家の風呂に浸かっていた。
何故と聞くのは当然だろう。
普通は近づかないだろう。
路上で暮らす子供を連れて、家に向かう。
そんなことは普通はない。
利用しようと考えるか、見てられなくなったか、もしくは…
「…あんた…馬鹿だろ?」
「ひ、酷いね…なんでそう思ったの?」
「…路上暮らしの役立たずのガキ連れてきて、するのはまず風呂に入れる…なんでだよ!」
「いや…ぼろぼろで嫌だったでしょ?」
「だけど…はぁ…いいや。それで?何すりゃいいの?」
「?何が?」
「は?」
彼が聞いているのはつまり、連れて来た理由は何か。
しかし育は、全く理解していない。
純粋に、育は善人なのだ。
だからこそ、出る言葉は決まる。
「何も?」
「え…?」
「君が不憫に見えたからじゃ…駄目かな?」
「……っんでだよ…!」
「え?」
「なんで連れて来た!あんたはなんなんだ!路上で蹲るガキ連れて風呂入れて、特に何も求めてない?不憫に思った!?ふざけんな!あんたに何が分かる!?不憫なんざ思うか!所詮あんたも同じだろ!?無視して…汚い物見る目で見て…助けるとか言ってサンドバッグにした奴もいた…!お前も同じだろ!?この偽善者が!」
「…………」
「……助けた代わりに盗みでもしてくりゃいいのか?それとも体目当てか?さっきのガキのお守りなら楽だな…」
「……辛かったね。」
「……は?」
「怒らせるのも嫌だけど、少し聞いてくれるかい?」
「……何を…まあいいや。話せよ。」
「ありがとう。…僕はね、自分が善人とか悪人とか、そんなこと考えたこともない。偽善者とか、そういう物差しで考えたこもないんだ。個人個人で違う。善とか悪とか、枠を作る意味なんてないよ。両方あってこそ人間なんだから…」
「…今関係ねえだろ。それがなんだって言うんだよ。」
「…君を助けることが偽善なら、僕は別に構わない。助けられるなら、偽善者という謗りを受けてでも、僕は自分を貫くよ。その考えが邪道であるなら、僕は悪であろう。」
「…なんだよ…貫いた結果が、助けた相手に罵られるってのに…何で平気なんだよ…」
「『助けたい』。ただそれだけだよ。」
「んだよ…罵るこっちが惨めじゃねぇか…」
彼は浴室を出る。
その直前に、小さく囁いた。
「……助けたんなら、面倒見てくれんだよな?」
「……ふふっ…当然だよ。」
「…言質は取ったぞ。」
その日、家族が一人増えた。
―――――
「あの、」
「…んだよ。」
「お兄さんは…優しいですよ。」
「…これから見極めてやるさ。」
「………」
彼はお兄さんの用意した服をちゃんと着て、ソファに転がる。
私も…お兄さんに会わなければ…
少女は年不相応に、物憂げな様子を醸し出していた。
―――――
五日目
瞳ちゃんを連れて公園へ出掛けた。
とても楽しそうにしていたので、行ってよかった。
しかし帰りにぼろぼろの子供を見かけ、放っておけず連れて帰った。
その後は罵られたが、僕も一歩間違えば……
昼食も夕食も、三人で食べた。
名前は教えてくれたが、今までのことはまだ話してはくれないようだ。
想像はつくが、話したくないなら聞かないでおこう。
これからの生活で、心を開いてくれれば嬉しい。
瞳ちゃんとも、本当の兄妹のようにしてくれれば…
いつか…
名前は次回!
追記:仕事は午前で切り上げてたことにして下さい。前々話での話忘れてた…そのために時間も合わせたのでお許しを…!