伝説になったツインターボの『オールカマー』の裏側で動いていた人達 若しくは チームカノープスの活動日記   作:雅媛

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2 ナイスネイチャの見たオールカマー

「トレーナー、私からもお願い」

ナイスネイチャは気づいていた。本当はそれは言ってはいけないことだと。

 

 

 

ナイスネイチャは挫折した。

トレセン学園にいたのはキラキラしたウマ娘ばかりだった。

地元で一番早い、程度ではとてもでないけど太刀打ちができるレベルではなかった。

特に同期のトウカイテイオーは圧倒的だった。

無敗の三冠馬。

他の者が言えば荒唐無稽なその夢も、彼女が言うと現実味を帯びて聞こえるぐらい圧倒的であった。

 

キラキラしたウマ娘たちの中、自分が輝ける未来がどうしても見えなかった。

そんなストレスで体調を崩し、荒れていた時期もあった。

そんな中、腐りそうになっていた自分を拾ってくれたのが南坂トレーナーであった。

 

「チームカノープスに入りませんか?」

 

チームの加入試験に落ち、ベンチでボーっとしていたネイチャをのぞき込み、そう誘ったトレーナーの笑顔をネイチャは忘れられない。

 

南坂トレーナーは頼りなさそうな優男であり、ネイチャがわがままを言えばすべて聞いてくれた。

決して無理強いをすることはない彼は、しかしトレーナーとして一流であったと思う。

 

トウカイテイオーを見て、ネイチャが菊花賞に参加したいといったとき、トレーナーは困ったように笑っていた。

トレーナーは菊花賞までに完璧に仕上がるレーススケジュールとトレーニングを組んでくれた。

それは、限界ギリギリまで鍛えながら、レースに出走し続けるそれは地獄のような厳しさであった。

しかし弱音は吐かなかった。これをこなしてどうにかトウカイテイオーの足下に指先がとどくかどうか、というレベルなのはわかっていた。

これ以上でもこれ以下でも足りない、限界ギリギリ鍛錬とレースの日々を考え、支えてくれたのはトレーナーであった。

きっとこの経験がなければ、自分は腐り落ちていただろう。そんな未来が容易に想像できた。

ネイチャはトレーナーに感謝していた。

 

 

 

 

「トレーナー、私からもお願い」

だからこそ、これは言ってはいけないことだった。

頼りない見た目に反して、トレーナーは優秀な人間だ。それは自分が一番よくわかっている。

そして、人のいい彼はチームメンバーの心からの願いは絶対に断らない。

レース当日、レースの時間にライブを行うトウカイテイオーに、ターボの参加するオールカマーのレースを見せるなんて、横紙を何回破ればいいかわからない。

そんなことすら、彼は実行できてしまう能力があるのは予想出来ていた。

これを言ってしまえば、トレーナーは無理をするだろう。

無理をすればトレーナーは様々なものを失いかねない。

トレーナー資格はく奪だってあり得るだろう。

 

ここで自分がやるべきことは、ターボを諫めることである。

「ターボ、無理だよ」

いつものように呆れてそういえば終わる。

ターボだってちょっと頭が悪いだけでバカではない。むしろ本質が良く見える、聡い良い子だ。だからこそテイオーに対して憤っているのだ。

今は熱くなりすぎているが、ネイチャがそういえば、ターボは察するだろう。

わかっていた、それはわかっていた。

だけど、それでも、ターボの走りをテイオーに見てほしかった。

あの菊花賞の前に、テイオーに教えてもらった『諦めない』ことの尊さを、もう一度彼女に思い出してほしかった。

 

案の定、トレーナーが提案した方法はとんでもなかった。

ライブのジャック。ばれればトレーナーのクビが飛ぶのが目に見えていた。

ネイチャは覚悟を決めた。自分が泥をかぶろうと。

罰といってもせいぜい退学だ。地元に帰れば生活はどうとでもなる。母のバーでも継げばいいだろう。

ひとまず自分が主犯だと主張できるように、トレーナーが提案した目出し帽はネイチャが準備をすることにしたのだった。

 

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