俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

10 / 116
蝸牛と失敗作

 

 

 

 

 

───── 俺は15歳になった。

 

 

14歳の内に必ず成すべき事リストの“古代文字の習得“も計画通り実現し、今のところは順調だ。

 

 

 

そして、今現在は何をしているかと言うと

 

カタツムリの飼育をしている。

 

 

 

 

 

 

 

……正しくは電伝虫だが。

 

 

 

 

 

 

この世界のカタツムリは本当に便利な能力を持つものばかりだった。

 

その為、今後のことも考え飼育及び繁殖の実験を行っている。

 

 

ワノ国産の親分タニシとスマートタニシの飼育場と、一般的な電伝虫の飼育場をそれぞれ作って生態なども観察しているのだが

 

タニシ達も電伝虫も飼育しやすく、尚且つ扱いやすかった。

 

ほぼ全ての個体が人間から逃げるどころか自ら捕まりにくるし、機械の取り付けにも協力的だ。

 

 

おかげで飼育はとても順調に進んでいる。

 

 

 

何より稀少とされる“白電伝虫“の飼育、繁殖に成功出来たのは大きい。

 

なぜなら白電伝虫は盗聴妨害の念波を飛ばせるのだ。

 

 

 

政府やら裏の住人達からの盗聴を防げるとなれば

俺の今考えている事も少しは楽に進められそうだ。

 

 

それに販売すればそれなりの金になる。

 

 

……まぁ、出回らせすぎると価値が下がる為 量はコントロールするのが大前提だが。

 

 

 

 

 

 

兎に角、俺はワノ国で親分タニシとスマートタニシを流通させようと思っている。

 

 

なぜ、タニシとスマシなのか

 

その理由は念波が“弱い“ことにある。

 

スマシからの情報は一度親分タニシを経由して他のタニシに送られる

電伝虫とは違い大元である親分タニシが駄目になるとスマシが一斉に使えなくなる訳だ。

 

つまり、連絡手段のコントロールがしやすく、何かあれば親分タニシの異常と片付けることができる

なによりワノ国の外との連絡が取れないことが魅力的だ。

 

 

 

外との連絡を断ちたいのなら、そもそも連絡手段を持たせなければ良いと言う者達もいたが

 

連絡手段が無いのは不便かつトラブルを生む可能がある。

 

 

スマシがあれば、わざわざ出向くほどの内容でもない事でも手軽に報告出来るし緊急性のある連絡も移動の時間が短縮できる為、迅速に報告可能だ

 

大きな組織ほど“報告・連絡・相談“が大切…とは前世での教訓でもある。

 

 

 

他にも連絡手段がないとその事に不満を覚えたり、自分達で連絡手段を作り始める可能性が出来てしまう

独自の連絡手段や電伝虫を持たれると大変面倒だ

その手段を取り除くのもコントロールするのも時間と手間がかかる。

 

ならば、先にスマシを流通させ便利な連絡手段と思わせた方が何倍も楽だ。

 

 

 

父さんもこの案を気に入り承諾してくれている。

 

 

もう少しスマシの数が安定したら編笠村にて試験的に運用し広めて行こうと思う。

 

 

 

 

今後の方針を考えながらも生態を紙にまとめていると部下が部屋に入って来た。

 

 

 

 

 

「レオヴァ様、失礼しやす!

例の件の準備が終わりやしたのでその報告に。」

 

 

 

「そうか、ご苦労

では向かうとしよう。」

 

 

 

部下からの報告を受け少し前から計画していた戦力強化に向けて俺は気合いを入れ直した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

今日はレオヴァ様がある取引をなさる日だ。

 

 

なんでも政府関係者との取引らしく俺含めまわりの奴らはピリピリしている。

 

部屋に響くのも時計の針の音とレオヴァ様の紅茶を飲む時に鳴るカップの音だけだ。

 

 

 

 

 

この静けさを破るように扉が開いた。

 

取り巻きを十数人つれた男二人は挨拶もなく座るとさっさと取引の話をし始める。

 

レオヴァ様も特に気にした様子もねぇので俺は無礼を働くクソ野郎どもを怒鳴り付けるのを堪えた。

 

 

その後もトントン拍子に話は進んで行き、こちらの金を確認した男たちは下卑た笑いを浮かべると

取引の品を見せるからと停泊している島の奥へと俺たちを案内した。

 

 

 

 

 

 

 

案内された場所には信じられねぇほど巨大な人間達が拘束されていた。

 

いや…アレは…人間じゃねぇかもしれねぇ…

 

 

意味をなさない音を口から発する巨人の様な化け物どもに俺たちは度肝を抜かれている。

 

足がすくむ俺たちとは違いレオヴァ様は野郎達と

また少し話をしていた。

 

 

しかし、何を思ったのか1人の男が巨人の拘束を解き此方へけしかけて来た。

 

 

 

 

 

「うおぉ!?!」

 

 

「な、なんだぁ!?」

 

 

 

「ヒヒヒヒ!!おら、失敗作共!

こいつらを殺っちまうんだよぉ!!」

 

 

「くそぉ!てめぇ……!」

 

 

 

 

立ち上がった巨人の様な化け物は数十mはある大きさだ……!

 

なんとしてもレオヴァ様をお守りしなきゃならねぇ!

 

そう思い俺は化け物の振り下ろす拳に向かって行こうとした時だった。

 

 

 

 

「………ほう。 ガタイに見合うだけの力はあるようだ。」

 

 

 

 

俺にぶち当たるハズだった化け物の拳をレオヴァ様はなんともないと言う様に軽い蹴りで防いで下さった。

 

 

 

 

「ジュキッ…!?」

 

 

 

「なにっ…!

失敗作とは言え巨人とほぼ同等のパワーだぞ!?」

 

 

 

「お前はおれの部下に手を出したんだ。

…覚悟はできてるんだろうな? 」

 

 

 

「ちょ、調子にのるな!たかだか一匹相手取れたところで…

おれには まだ9匹残ってる……!!

てめぇらボサッとしてねぇで他の失敗作共の拘束を解けぇ!」

 

 

「え、いや……そりゃワシらも危ねぇんじゃ……」

 

 

「うるせえ!!!早くしろ!」

 

 

「へ、へいっ!」

 

 

 

「…はぁ………皆、下がってろ。」

 

 

「「「 はい レオヴァ様ッ! 」」」

 

 

 

 

俺たちはレオヴァ様に言われた通り浜辺まで下がった。

 

 

クソ野郎どもは合計10匹の化け物を解放し

 

 

 

 

……そしてクソ野郎どもの取り巻きは

 ぐちゃり と潰れた。

 

 

 

 

 

「ひっ……!」

 

 

「ば、バケモンじゃねぇか…」

 

 

「おい、やっぱりレオヴァ様に加勢しに……」

 

 

「バカ野郎! 俺たちじゃあ どう考えても足手まといだろう!?」

 

 

「む…無理だ……」

 

 

 

 

人の原型を留めていない取り巻き達の死体を見て狼狽える奴らをおいて、加勢しに行こうとする俺を数人の仲間たちが止めてくる。

 

 

無理やりにでもレオヴァ様の下へ行こうとした時だ…

 

急にレオヴァ様の周りの空気が変わり、ビリビリと刺々しい圧を放ち始めた。

 

 

 

 

「…少し躾けてから連れて帰るとしよう。

 ……“爆雷砲“ 」

 

 

 

レオヴァ様がそう呟くと目の前が一瞬真っ白になった……かと思ったら、化け物共がそろってその場に倒れている。

 

 

 

 

 

「…これだけ大きいなら堪えられると思ったんだがな

 ……少し加減を間違えたか…?」

 

 

 

 

困った様な表情をしながら腕を組むレオヴァ様は先ほどの圧が嘘のように消え去っている…

俺も仲間達も開いた口が塞がらずにいるとレオヴァ様は倒れている化け物共に歩み寄って行く。

 

 

 

 

「お前たち、おれには勝てないとわかったか?」

 

 

「ジュキ…キ……!」

 

「は…ハチャ~……」

 

「なぎ、ギッ!」

 

 

「うむ、なら良い。

他の者は気絶してしまっている様だが……まぁ力の差は理解しただろう。」

 

 

 

立ち上がれないのか化け物共は必死に頷いている。

 

 

 

 

「よし!では皆、帰りの準備をしてくれ。

彼らが動ける様になったらワノ国へ戻るぞ。」

 

 

「承知しやした…!

…あの、ところでレオヴァ様……お聞きしてぇことが…」

 

 

「ん? どうしたんだ?」

 

 

「その……ソイツらなんなんですかい?」

 

 

「あぁ、彼らはある施設で研究されていた“古代巨人族“の復活……の失敗作らしいぞ」

 

 

「は、はぁ……古代巨人族ですか…」

 

 

「まぁ、あまり難しく考えることはない。

…そうだな……これから仲間になる新人とでも思ってくれ」

 

 

「えぇ…! 仲間ぁ!?」

 

「レオヴァ様……そいつら おれ等のこと食っちまうんじゃ…」

 

 

「…………そこら辺もしっかり おれが教育するつもりだから問題はないだろう

       …………………………たぶんな……」

 

 

 

「「「 すげぇ不安なんですが…!!? 」」」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

港にてカイドウ、クイーン、キングは巨大な化け物の様な生き物を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

「おいおいおい……クソでけぇじゃねぇかよ…」

 

 

 

「……知性はあるのか?」

 

 

 

「戦力を増やす取り引きだと聞いちゃいたが…

こりゃ予想外なモンを持って帰って来やがったなァ!」

 

 

 

「“古代巨人族“ 復活の研究途中で出来たのが彼らだと言っていた

……研究は失敗で終わったようだが。」

 

 

 

「えぇ……古代巨人族の復活とか……アホかよ…

てか、レオヴァの珍しいモン好きもここまで来るとちょっと引くぜ……」

 

 

「…おい、クイーン 別に趣味の為に取引してきたワケじゃねぇぞ……」

 

 

「ほ~? じゃあ微塵も

珍しいから知らない種族の研究結果だから、

  とか“私的“な理由はねぇ~わけだ?」

 

 

「…………ない……」

 

 

「ほんの少しも考えてねぇと?」

 

 

「……ぐぅ…そりゃ少しは考えはしたが……!

基本的には戦力強化のためだ!」

 

 

「ムハハハ~!!ほらやっぱ趣味じゃねぇか!

ほんと“イイ趣味“してるぜェ~…!」

 

 

 

「…完全に趣味ってワケじゃねぇよ……!」

 

 

 

「……で、レオヴァ坊っちゃん

確かにそこらの雑魚よりは使えるだろうが…命令は聞くのか?」

 

 

「あぁ、来る前に軽く躾けてあるから簡単な命令なら何も問題ない。

 ……お前たち、“あいさつ“!」

 

 

 

レオヴァが“挨拶“と化け物達に声を出すと

化け物達は動きはバラバラではあったが膝を突き頭を下げた。

 

 

 

「……ほう?」

 

 

「いや、躾ってペットかよ!?」

 

 

「なかなか面白ェじゃねぇか…!」

 

 

 

「まぁ、こんな感じで簡単な命令ならしっかり聞く」

 

 

 

 

 

物珍しいモノを見物してるかのように巨人達を見るカイドウ達とレオヴァだったが

 

ふと疑問に思ったのかカイドウが口を開く。

 

 

 

 

 

「 何処までが簡単な命令に入るんだ?」

 

 

「そうだな……壊す、運ぶ、待て、進め…とか

1つの内容で完結できる命令ならおおよそ実行できる……とは思うが…」

 

 

 

「……要するにコイツらを使うならある程度条件が揃わねぇと駄目なワケか」

 

 

 

「キングの言う通りだ。

だから敵を残滅する仕事や港で荷物を運ぶ仕事を中心にやらせようと思ってる。

そうすれば今、荷積みと荷卸しをやってる人員を欲しがってるクイーンにまわせるだろ?」

 

 

 

「人手が欲しかったんだよ!

さすがレオヴァ そりゃナイスな考えだぜ~!」

 

 

「相変わらずイイ案だレオヴァ

それなら、手の空いた奴らはクイーンに任せる…!」

 

 

「ムハハハ~! やれる事が増えるぜェ~ 」

 

 

 

「まぁ、その案には賛成だが……コイツらはレオヴァ坊っちゃん以外の命令は聞くのか?」

 

 

「それも実験済みだ。

一度顔を覚えさせればおれ以外の命令もちゃんと聞く」

 

 

「そうか、愚問だったか」

 

 

「いや、キングの疑問も尤もだ

相違がない様に確認するのは大切だからな。」

 

 

 

「ウォロロロロロ~…!

なら さっそく今日からコイツらを使ってみるか!

 レオヴァ、この港の指揮は任せるぞ。」

 

 

「あぁ、父さん任せてくれ。

 お前ら、しっかり働くんだぞ?」

 

 

「ジュキキキ~!」

 

「ハチャッ ハチャ…!」

 

「ゴキキキィ…!!」

 

「ジャキーーッ……!」

 

 

 

 

「……オゥ…やっぱコイツらキモいぜェ……」

 

 

 

それぞれ気合いの雄叫びを上げる化け物達を

引いた顔で見上げるクイーンと、黙ったまま腕を組むキング

 

そして、ただ愉快そうに笑うカイドウを背に

レオヴァは化け物達と部下達に指示を出すのだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

~ジャックside~

 

 

 

 

おれは3日前の海戦で怪我をした。

 

 

失血死直前だったそうだが、珍しく海戦に参加していたレオヴァさんに運ばれ何とか一命を取り留めたらしい。

 

今までに見たことがないほど怒ったレオヴァさんから1時間近く説教されたが、傷は癒え もう動き回れる程度には回復した。

 

これは完治したと言っても良いだろう。

 

 

 

…………まぁ…この後の兄御たちからの“指導“で、また動けなくなる可能性はあるが……

 

 

 

 

レオヴァさんに手間をかけさせるなと鬼の形相で見舞い(?)に来た兄御たちを思い出す…

 

 

────────────────────

 

 

『よぉ…ズッコケジャック 死にかけたらしいなァ~?

 

…………おれが鍛えてやってんのに足引っ張ってんじゃねぇぞ……挙げ句レオヴァに手間までかけさせやがって…!

完治するまでは指導は無しってレオヴァが言うから

まぁ、今は休んどけ……完治したらもうヘマしねぇ様に叩き直してやるぜェ……!!』

 

 

『…ぅ……返す言葉もねぇ…クイーンの兄御…』 

 

 

────────────────────

 

 

 

『ズッコケジャック…! テメェ負けたらしいなァ!

しかもレオヴァ坊っちゃんに尻拭いまでさせやがってェ……

…………これからは生ぬりぃ殺り方はしねぇ…傷が癒えたら躾しなおしてやる……わかったな…!!』

 

 

『…す、すまねぇ……キングの兄御…………』

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

…………駄目だ……どう考えても完治と同時に殺られる未来しか浮かばねぇ…!

 

 

 

ベッドの上で頭を抱えながら冷汗を流していると声がかけられた。

 

 

 

「ジャック…?

どうした、何処か痛むのか?」

 

 

「れ、レオヴァさん…………いや、なんでもねぇです…」

 

 

「何でもないってお前……顔真っ青だぞ…」

 

 

「……身体はもう問題ねぇんで」

 

 

「…まぁなら良いんだが……」

 

 

「それよりも おれに何かご用で?」

 

 

 

「ん?用って程でもない。

ただジャックの怪我の様子を見にきたんだ

ちゃんと治ってるみてぇで安心した。」

 

 

「レオヴァさん……ありがとうごぜぇます!」

 

 

 

 

礼を言うとレオヴァさんは軽く笑みを返し、ワゴンをおれの方へと持って来た。

 

ワゴンの上のドームカバーを開けるとゾウ肉の料理が並んでいる。

 

 

 

「やっぱりスタミナつけないとな

…肉料理が良いと思って作ってもらったのを持って来たんだが……食べられるか?」

 

 

「食えます…!!」

 

 

「ん、じゃあ一緒に食べるか。」

 

 

 

久々のゾウ肉におれは上機嫌でかぶりついた。

 

 

ガツガツ食べるおれを咎めるでもなくレオヴァさんはゆったりと食べ進めている。

 

 

 

 

 

全て平らげ満足したおれは傷も治ったし仕事をさせて欲しいとレオヴァさんに頼んだ。

 

 

 

「……もう少し休んでても大丈夫だぞ?」

 

 

「十分休ませてもらったんで、問題ねぇです。

それよりもいっぱい戦闘にでて早く弱ェ自分をどうにかしてぇんだ…!

……駄目か…? レオヴァさん……」

 

 

「………わかった

ちょうど残滅任務を父さんから任されてるからジャックも付いて来い。」

 

 

「レオヴァさん…!

おれ今度は絶対に足手まといにはならねぇ!

 役に立ってみせるから見ててくれ……!!」

 

 

 

「ジャックの歳でそれだけやれれば十分なんだが……

…まぁ向上心は大切だからな。

 期待してるぞジャック! 」

 

 

 

レオヴァさんはおれの頼みを快諾してくれた。

 

全然功績を残せてねぇおれに期待までしてくれてる!

 

次こそは絶対にレオヴァさんやカイドウさんの役に立ち、キングの兄御やクイーンの兄御にも迷惑かけねぇ漢になるべく おれは気合いを入れ直しレオヴァさんと共に部屋からでた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ちなみにジャックはだいたい7歳です
……7歳とは? と混乱する今日この頃。


前回も誤字報告ありがとうございます!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。