俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

100 / 116
暴走、バジリスク

 

 

素体飼育場の牢屋で出会ったカン十郎という男に導かれるまま、ナミ達が走り続けていた。

 

すると、急ぐ一行の焦りを加速させるように、何かが崩れる音と生き物の雄叫びが通路にまで響いてくる。

 

 

「何の音…!?」

 

走りながら困惑の声を出したナミは通路の奥を不安げな瞳で見据えた。

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

───ルフィとキッド達がパンクハザードに着く少し前。

 

 

桃の実や花が描かれた着物に身を包み、まだ青みの残る月代に黒髪の髷を結っている少年がいた。

 

ガタガタと震える少年の名はモモの助。

彼はカン十郎という男と共に、この最悪の場所へと連れてこられた被害者である。

 

この研究施設では満足に食事も口に出来ず、牢屋では外から聞こえる悲鳴や呻き声に怯える日々。

 

ただでさえ沈んでいた気持ちに、更なる影が落ちていた。

 

そして、連れてこられて数日経った頃。

モモの助だけ牢屋から連れ出されたのだ。

 

 

『うわあっ~~!

い、嫌でござる!!カ、カン十郎っ!助けてぇ!!』

 

『モモの助!!?

()めんか、無礼者どもめ!!!』

 

必死にモモの助を守ろうと足掻いたカン十郎も睡眠ガスで気を失ってしまい。

ついに、彼を守ってくれる大人はいなくなってしまったのだ。

 

そして、防護服に身を包んだ職員に連れられモモの助は謎の部屋へと運ばれた。

 

 

『こ、ここはなんでござるか…?

ううぅ……怖いよ…カン十郎ぉ~!錦えもん~~!!』

 

必死に叫ぶも、返ってくる声はない。

そこにはただ広く、冷たい鉄の壁が広がっていた。

 

あるのは禍々しい見た目をした“実”と水。

 

ただでさえ空腹が続いていたモモの助に、今の現状は耐え難いものであった。

 

腹は死ぬほど空いている。

けれどあるのは毒がありそうな目の前の果実だけ。

 

モモの助は薄暗い鉄壁(てつかべ)の部屋で迷い続けた。

 

 

しかし、やはり空腹には耐えられなかったのだ。

覚悟を決め、その果実にかぶり付く。

 

 

『っ~~!う、まずい!!』

 

想像を絶する不味さだったが、限界を迎えていたモモの助は残さず果実を食らいつくした。

 

……こうして、モモの助の悪夢が始まる。

 

 

その果実を食べた直後、扉が開くと謎の生き物が部屋に入って来たのだ。

 

そして、そのカラフルな生き物はモモの助を襲った。

 

痛い、苦しい、辛い、怖い。

 

『誰かっ……誰か助けてくれぇ!!』

 

そう叫んでも助けなど来ない。

 

ここで死ぬのか。

そうモモの助が絶望した時、急に視界が高くなったのだ。

 

混乱したモモの助だが、体の痛みが消えていたことに安堵したのも束の間。

 

腕がなくなっていた。

いや、それだけではない。足も消えている。

 

必死に首を動かすと周りには恐ろしい蛇の様な顔がある。

 

 

『うわあああああ~~!!!

嫌じゃ!!怖い!!なんっ……なんで拙者…ぅう……』

 

訳が解らず暴れ、そのまま泣き崩れると。

気付けばカラフルな生き物は潰れて動けなくなっていた。

 

そのまま混乱した状態で嗚咽を溢していると、電伝虫から声が流れてくる。

 

 

『素晴らシい力ですネ!流石は“悪魔の実”!!』

 

モモの助が驚いたように顔を上げると、電伝虫から小さな笑い声が漏れる。

 

 

『大丈夫ですヨ、そんな不安そウな顔をシなくテも。

アナタ、力を手に入れたんデス。とても強い力!

あの黒色からワタシを守れル可能性の塊!!あぁ、なんテ素晴らしイ!!!』

 

『な……なにを言っているのか拙者には…』

 

震える声を返すモモの助に、聞き取りにくい声が返ってくる。

 

 

『なルほど、アナタは自分の状態解ってナいんデすね!

ならスクリーンで見せテあげますヨ。』

 

ガチャンと言う機械音と共に天井から別の電伝虫が現れる。

そして、鉄の壁に何かを映し出し始めた。

 

 

『……え、これは……どう、なってるで…ござる?』

 

モモの助の頭が、それを理解する事を拒む。

 

目の前の映像に映っているのは自分ではない。

そう思いたいのに、スクリーンには同じように狼狽えるモノノ怪がいる。

 

 

動物(ゾオン)系の悪魔の実デスよ!

これは変身できル貴重な悪魔の実ナんですケド。

手に入れルの本当に苦労しマしタよ!!』

 

電伝虫から流れる声は殆どがモモの助の耳には入らない。

ただ、目の前の人間ではない姿の自分に動揺し、受け入れられずにいた。

 

 

『じゃあ、始めマすネ。

アナタはワタシのガーディアンになルんです。

盾は多けレば多いほドに良いですかラ!!』

 

その声と共に現れた機械が、獣化しているモモの助に何かを打ち込んだ。

 

 

『ヒィッ……な、なに…』

 

『なにっテ、ワタシの“祝福”をあげタんですヨ?

と言ってもコレは特別製(・・・)。喜んデ下さい。

上手くいけバ、アナタは死ななクなりマすかラ!!

一生ワタシを守る盾にナれる。嬉しいデショ?』

 

電伝虫から溢れる不協和音のような笑い声はモモの助の希望を少しずつ削り取って行った。

 

 

 

 

────そして、現在。

 

 

モモの助はちゃんと人の形に戻っていた。

あの“モノノ怪”の姿の面影は微塵もない。

 

……だが、それが災いした。

 

目の前で人間を石に変えながら、部屋を破壊するべく暴れる巨大な怪物に太刀打ち出来ずにいたのだ。

 

怪物は壁を石に変えて砕くと、中にいた手が羽の女へ煙を吐いた。

 

 

「(あ、あの奇妙な羽の人も石になってるでござるっ!?

…拙者ももう……助からないっ…)」

 

ガタガタと震えていると、怪物が(きびす)を返してこちらに迫ってくる。

きっと、先ほど壊した扉から脱走しようとしているのだろう。

 

しかし、その直線上にモモの助はいた。

 

ギロリ。

怪物とモモの助の目線がぶつかった。

 

 

「グルルルアァ~…」

 

ドスンと、10m近い巨体が小さなモモの助に迫ってくる。

 

そして、怪物が大きく口を開けて煙を吐き出した瞬間だった。

 

 

「危ない…!!」

 

突然、女の人の声と共にモモの助の体が突き飛ばされる。

 

何が起きたのか分からず、モモの助が尻もちをついたまま振り返ると。

そこには長いオレンジの髪を持つ猫目の美人な女性が煙に包まれかけていた。

 

 

「きゃあ!?なにっ……これ!?」

 

猫目の女性の叫びと共に、後方から斬撃が飛んでくる。

 

 

三百六十煩悩鳳(さんびゃくろくじゅっポンドほう)…!!」

 

その斬撃の風圧で煙は猫目の女の周りから消し去られ、怪物も後方へと吹っ飛ばされて行った。

 

 

「おい!?ナミ大丈夫かよ~!?

急に走り出していくなんて……っ!?」

 

「ナミさん無事か!?……そ、その腕っ…!?」

 

ナミと呼ばれた猫目の女性に駆け寄ってきた長い鼻の男ウソップと、金髪と眉毛が特徴的な男サンジは、二人揃って驚きに目を見開いた。

 

固まってしまっている二人に追い付いた三本の刀を腰に下げている男、ゾロも息を飲んだ。

 

子どもを庇って煙を浴びてしまったナミの首筋から肩。

そして、右手の先まで石のようになってしまっていたのだ。

 

それを見たゾロの隣にいた奇っ怪な見た目の男、カン十郎が声を上げる。

 

 

「そ、それは!?

もしや先ほどの巨大な(にわとり)の煙に触れたのか!?」

 

「…カ、カン十郎!!」

 

思わずといったように前へ出たカン十郎へ向かって

助けられた子ども、モモの助が飛び付く。

 

 

「モモの助…!!無事であったか!!!

どれだけ心配したか……貴殿らには感謝してもしきれん…特に、そこのおなごよ!

この恩は…」

 

頭を下げるカン十郎の言葉をサンジが遮る。

 

 

「礼はいい!!

それよりもお前、このナミさんの腕を治す方法知らないのか!?」

 

「そ、そうだ!

さっき巨大な鶏がどうとかって!

何か知ってるなら教えてくれよ!!」

 

必死な形相の二人に、慌ててカン十郎が口を開く。

 

 

「す、すまぬ!

実はそれがし、あの巨大な鶏のモノノ怪を見たことがあるのだ。

その時、人が石にされて……砕かれていた…」

 

「っ……やっぱり、石になっちまってるのか…

ナミさん、痛みはないか!?」

 

「えぇ、痛くは……ないんだけど…」

 

座り込んでいるナミを労るように隣にしゃがんだサンジの後ろでウソップは唇を噛む。

 

 

「まだ話には続きが…!

それがしがその光景に会いまみえた時、白衣の不気味な男は“治療薬”があると言っていた!!」

 

「「本当か!?」」

 

がばりと顔を上げたサンジとウソップにカン十郎が大きく頷くと、ゾロが大きな声を上げた。

 

 

「おい、お前ら!!ナミを連れて下がれ!!!」

 

叫ぶと同時に前方に飛び出したゾロを見て、サンジがナミを抱き抱えて後方に飛び退き、カン十郎とウソップもモモの助を庇いながら後に続いた。

 

 

「グルルルァァアアア!!!」

 

先ほど斬り飛ばした筈の巨大な怪物が雄叫びを上げながら突進してくるのを、ゾロは刀で横に受け流す。

 

 

「なんだ、コイツ…

さっきおれが斬った傷が消えてるじゃねェか!」

 

ゾロが眉をしかめると、後ろからカン十郎が声を上げる。

 

 

「そのモノノ怪は羽を斬られても再生しておったぞ!!

それとあの煙に触れては石にされてしまう!」

 

「再生だァ…?不思議生物かよ!!」

 

驚きながらも、ゾロはまた突進してくるモノノ怪を斬り飛ばしてみせる。

 

 

「おい、クソコック!

このニワトリはおれに任せて、ナミを連れて行け!

治療薬があるなら治せるだろ。」

 

「っ……わかった!!石にされるんじゃねェぞ、クソマリモ!」

 

「ハッ、鶏肉にして持っていってやるから待ってろ。」

 

不敵に笑うと、ゾロは巨大な怪物へ対峙する。

その怪物の首に下げられたカッパーの首飾りには“β版バジリスク”の文字があった。

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

一方その頃。

ルフィとキッド達は突然倒れたチョッパーを抱いて移動していた。

 

 

「グッ……なんで息が苦しいんだ。」

 

「チョッパーさんも倒れちゃいましたし…毒ですかね!?」

 

「可能性はある。

俺たちが来た方の通路も、進もうとしていた方の通路も閉じられてる……密閉されたってことだ。」

 

「みっぺい…?」

 

チョッパーを抱き抱えながら首をかしげるルフィを無視して、キラーはブルックに声をかける。

 

 

「さっきからおれ達全員、息がしづらくなってる。

……さっき持っていたカードキーがこの扉に使えないか試してくれ。」

 

「アッ!忘れてました!

そう言えば私カードキー持ってるんでした。」

 

ブルックは懐にしまっていたカードキーを出すと、以前のように機械の上にかざした。

 

 

『現在その認証は行えません。

管理室から認証を遮断されている為、連絡を取り対応して下さい。』

 

「…駄目みたいですね。」

 

機械音声が流れ、ブルックは小さく肩を落とす。

すると、後ろにいたルフィとキッドが一歩前へ出た。

 

 

「ブルック、チョッパー頼む。」

 

「え…はい!お任せを!」

 

突然チョッパーを渡されて少し驚きながらも、ブルックはしっかりと抱き止めた。

 

 

「しゃらくせぇ!!

もう、侵入はバレてんだ。コソコソしてやる必要ねェだろ!?

キラー、そこ退いてろ!!」

 

苛立ったように前へ出てきたキッドの後方へキラーが下がると同時に、二人は動いた。

 

 

磁気弦(パンクギブソン)!!

ゴムゴムの火拳銃(レッドホーク)!!

 

倒れている敵の武器がキッドに集まり巨大な腕を構築している横で、ルフィも腕を後ろに伸ばす。

 

そして、同時に技は放たれた。

巨大な金属の寄せ集めの腕と、炎を纏った拳の一撃はいとも簡単に通路を塞いでいた扉を破壊する。

 

 

「おい、バカザル真似すんじゃねェ!!」

 

「なんだよギザ男!!真似したのはそっちだろ!」

 

壊れた扉の前で二人がくだらない言い合いをしていると、ドスドスと何か大きなものが動いている振動が伝わってきた。

 

一瞬で何かを感じ取ったルフィとキッドが開けた通路の奥を見ると、デカイ鶏のような変な生き物が暴れている。

 

 

グルルルァァア!!ルルルル…!

 

大きな叫び声を上げるデカイ鶏のような生き物の足下には見慣れた男、ゾロもいる。

ルフィは思わず名を呼んだ。

 

 

ゾロ~~!!

なんだその不思議トリ!!?

 

ルフィ!?

 

ゾロがこちらに気付き驚いた顔をしていると、デカイ鶏のような生き物が方向転換をして此方へ向かってくる。

 

 

「ちょ、ちょっとルフィさん!?

なんかこっちに来ちゃってますけどぉ!?」

 

「ンだよ!?あの生き物!」

 

「あの人が好きそうだな…」

 

「おぉ!?でっけぇー!!」

 

4人がそれぞれの反応を返していると、ゾロが叫ぶ。

 

 

「おい、ルフィ!!

そいつの吐く煙には触るな、石にされるぞ!!」

 

「そうなのか!?わかった!!」

 

ルフィが元気良く返事を返すと同時に、デカイ鶏のような生き物が口を大きくあけて煙を吐き出した。

 

4人は危なげなくそれを避ける。

そして、ルフィは隙だらけのデカイ鶏のような生き物を蹴り飛ばした。

 

すると、キラーが驚いたような声を上げる。

 

 

「キッド…!見ろ、床にいた防護服の奴らを!」

 

「な!?

トンでも生物じゃねェか……アイツ(・・・)絡みじゃねェだろうなァ!?」

 

石になっている敵を目の当たりにして、キッドとキラーの警戒心が高まっていると。

その後ろでブルックも声を上げた。

 

 

「まさか噂や言い伝えで良く聞く、あのバジリスクじゃないですか!?

私、長く生きてますけど初めて見ましたよ!?

……って、私死んでたんでした。」

 

いつものように軽口を叩くブルックにルフィが笑っていると、キラーが唸る。

 

 

「なるほど、バジリスクか…

聞いたことがあるが、確か睨んだ相手を石化するんじゃなかったか?」

 

「ア"ァ"?石化させンのは“コカトリス”だってアイツが言ってただろ!」

 

「いや、バジリスクとコカトリスは雌雄関係にあるという伝承があるとあの人は言ってたぞ?」

 

「……そうだったかァ?」

 

「まぁ、あの人の語りは長いから仕方ねェさキッド。」

 

「って…アイツの事なんざ、どうでも良いんだよキラー!!」

 

ハッとしたような顔で会話を終わらせたキッドの方へ、いつの間にかゾロが近付いていた。

 

 

「コカトだかバジルだかしらねェが。

アイツの首に下げてるプレートには“β版バジリスク”って書いてあったぞ。」

 

「「“β版”だと…?」」

 

キッドとキラーがあからさまに嫌そうな声を上げていると、ゾロの体を見たブルックが慌てたような声を出した。

 

 

「ちょっとゾロさん!!

のんきに話してるけど、脇腹どうしたんです!?」

 

「あぁ、煙がかすっちまった。」

 

「あぁ……じゃないですよ!!?

これ、え…どうすれば……チョッパーさん!起きて!!」

 

慌てるブルックと少し離れたところでβ版バジリスクの相手をしていたルフィがゾロへ言葉を投げる。

 

 

「大丈夫なのか、ゾロ!」

 

「おう!問題ねェ!!

それに薬があるって話だ。

今、ウソップ達が探しに行ってる!」

 

「そっか。なら問題ねェな!!」

 

にししと笑うと、β版バジリスクを鉄の壁の穴の奥へ吹き飛ばしてルフィはゾロ達の所へ来る。

すると、キラーが口を開いた。

 

 

「あの生き物にこれ以上時間は割けない。

ロロノアが手負いである以上、人手がいる。

だから、おれは残って奴を対処するからキッドはイネットを捕まえてきてくれ。」

 

「別におれ一人で構わねェよ。」

 

不満げな声を出すゾロにキラーが振り返る。

 

 

「見た感じ、あの生き物に大きな傷はないが?

その上一部とはいえ、腹を石化されてるじゃねェか。」

 

「っ……おれは何度も斬ってる!

ただ、あのニワトリ野郎傷が治るんだよ。」

 

「傷が治る…?再生能力か……

なら、なおさら二人で対処するべきだ。

お前達の仲間が石化されるのを防ぐ為にも、ターゲットであるイネットが石化されるのを防ぐ為にも。

おれとお前で奴を引き留めるべきだ。

最悪、石にされた時に運べる奴はいた方がいい。」

 

「……邪魔だけはするなよ仮面。」

 

渋々承諾したゾロをルフィが笑顔で見ていると、ブルックが声をかける。

 

 

「あの~、ルフィさん。

薬があると言うなら、私ウソップさん達に合流しても良いですか?

もし、薬本体がなかった場合。作り方だけでも知れればチョッパーさんなら作れるかもしれません。

それに先ほどキラーさんが尋問していた時この施設には“ウイルス”もあると言ってましたし、チョッパーさんにはその関係の情報を見てもらった方がいいかなー…なんて私思ったんですけど!」

 

「わかった!

まだチョッパー気絶したまんまだし、ブルックに任せる!」

 

「ヨホホホ~!ありがとうございます、ルフィさん!

では、早速……」

 

離脱しようとしたブルックを、キッドが止める。

 

 

「おい待て!!

行くのは構わねェが、そいつらが何処にいるのか見当ついてンのかよ。

此処はそこそこデカイ施設だぞ。

闇雲に走り回ってなんの成果も出せねェってんじゃ、意味ねェだろ!」

 

「キッドさんの言う通りです…!

うっかりしてました!」

 

はわわと頭を抱えたブルックに、キッドが小さな通信機を投げ渡す。

 

慌てて通信機を受けとると、ブルックは首を傾げる。

 

 

「これは…?」

 

「てめぇらの所の長っぱなに渡した通信機の予備の子機だ。

……それがあれば連絡取り合ってなんとかなんだろ。」

 

「ありがとうございます、キッドさん!!」

 

「うるせぇ、さっさと行け骨!!

終わったら絶対返せよ!?新しくは作れねェ(・・・・・・・・)ンだからな!!」

 

「はい、必ず!!」

 

今度こそ、キッド達から離れたブルックは通信機でウソップ達に連絡を飛ばしながら走って行く。

 

キッドの行動にキラーが小さく笑っていると、かなり遠くへ吹き飛ばされていた筈のβ版バジリスクが床大きく揺らしながら此方へ戻って来ていた。

 

 

「……随分と元気そうだな、バジリスクは。」

 

「斬っても蹴りとばしてもケロッとしてんだよ、このニワトリ野郎は…!」

 

ゾロは地面を蹴りβ版バジリスクに向けて飛び上がり、キラーはパニッシャーを構えて後方に回り込む。

 

 

「進め、キッド!!」

 

「行け、ルフィ!!」

 

二人の声にキッドとルフィは頷くと、通路の奥へ走り出した。

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

ナミを連れて薬を探していたウソップ達の通信機が小さな音を鳴らす。

すると、音のなる機械を一瞬カン十郎が凝視したが、本当に一瞬だけであった。

 

サンジはそれに気付かずウソップに出るように促す。

 

 

「ウソップ、鳴ってるぞ。

ルフィじゃねェか?」

 

ウソップは頷くと、教えられていた通りに通信機を操作した。

 

 

『あ、もしも~し!ブルックです、聞こえてますか?』

 

「ブルック!こちらウソップ。

そっちは大丈夫か!? 

今、おれ達は怖ェニワトリに襲われてナミの腕が石になっちまうし、大変で…」

 

『えぇ!?ナミさんの腕が!?

ゾロさんから聞いてないんですけど!?』

 

ゾロの名前にウソップが驚いた声を出す。

 

 

「え、ブルック。ゾロに会ったのか!?」

 

『はい、先ほど。

ウソップさんの言う怖いニワトリというのにも会いましたよ。

β版バジリスクとかなんとか…』

 

「そうだったのか…」

 

『もう本当にびっくりしましたよ!

…あ、それでですね!

その石化を治す薬があると聞いたんですけど…』

 

「そうなんだ、今おれ達もそれを探して…

なんかそれっぽい事が書いてある紙はあるんだけど、薬が見当たらねェんだ!」

 

焦りの見えるウソップの声に通信機で話すブルックの後方でチョッパーが反応している声が入る。

 

 

『え、チョッパーさんなんですか?

……あ、なるほど!分かりました。

ウソップさん、少しチョッパーさんに代わりますね!』

 

「わかった!」

 

少しガサガサという雑音の後に聞きなれた可愛らしくも、こういう時一番便りになる仲間の声が通信機から流れてくる。

 

 

『ウソップ!おれだ!ナミの容態は!?』

 

「チョッパー!良かった…!

ナミは痛みとかはないみたいなんだけどよ、もう腕が本当に石みたいになっちまってて…」

 

『石みたいに……その腕の血流とかどうなってるかによっては急がねぇと!

あと、さっき何か書いてある紙があったって!』

 

チョッパーの声に思い出したように、ウソップはサンジから紙を受けとる。

 

 

「えぇ~…と。

なんかハーブとかキンの針?とか……おれにはわからねェんだ!」

 

『ハーブに金の針……どうやって使うんだろ…

ウソップ、おれ今ブルックとみんなを探してるんだけど。

どこら辺にいるか分かるか?』

 

「場所…え~と……」

 

辺りをキョロキョロと見渡すウソップの横からサンジが通信機に向かって声を発する。

 

 

「第一研究所の資料室って部屋だ。

何でか知らねェが扉もぶっ壊れて目立ってるから、廊下から見てもすぐに分かる。」

 

『わかった!ありがとう、サンジ!

すぐに向かうよ!』

 

「あぁ、急いでくれチョッパー!!」

 

ナミを抱き抱えたままのサンジの声にチョッパーが返事をすると、通信が切れる。

 

 

「にしても、薬本体がねェんじゃ…」

 

困ったような声を出すウソップに、散らばっている資料を漁っていたカン十郎が提案があると立ち上がった。

 

 

「長鼻の、この図面を。」

 

「誰が長鼻だ!ウソップだって言ってるだろ……って、んん?

この研究所の図面がどうしたんだ?」

 

「おぉ、それはすまぬ。ウソップ殿。

……で、この図面を見るに。

ここに物質管理室があり、この奥の所に…」

 

カン十郎が指差した場所を見て、ウソップが目を見開く。

 

 

「“薬品保管所”!?

これだ!!薬もここにあるに違いねぇ!」

 

「でかした!!

そこに行けばナミさんを治せる薬が…」

 

目に希望が宿ったウソップとサンジはまた通信機を取り出し、再びブルックとチョッパーに連絡を取るのだった。

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

場所は変わり、Aフロアの第一研究室にて。

 

あまりの研究施設内の騒がしさに違和感を感じたヴェルゴは捕えたロシナンテを檻に投げ入れ、イネットの下へ来ていた。

 

 

「イネット博士、これはどういう状態だ…?」

 

監視用の映像電伝虫を眺めているイネットにかけた声は辛うじて平静を保っているが、ヴェルゴの眉間には青筋が浮かんでいる。

 

 

「どうモこうも、見テの通りですヨ。

モネが実験場の管理室デ室内の設定を弄っタからワタシのバジリスクが暴走しちゃって大変デす。」

 

やれやれと肩を上げて溜め息を吐くイネットをサングラス越しにヴェルゴは睨み付ける。

 

 

「暴走だと…?

なら、お前は管理出ないような化け物を作ったのか!?

だからあれほどドフィから言われた研究以外はするなと忠告してきたんだ!!

……待て、モネはどうした?実験場は破壊されたんだろう!?」

 

詰め寄ってくるヴェルゴをチラッと横目で見ると、イネットはモニターを指さした。

 

 

「このモニターに映っテますヨ。

どうやラ石になっタみたいだケど、まだ割れテはナいネ。」

 

何の感情もなく石になっているモネを映しているモニターを見るイネットにヴェルゴは掴みかかる。

 

 

「モネはドフィの選んだファミリーだぞ…!!

どう責任を取るつもりだ!?」

 

殺気立つヴェルゴにイネットは異様なほど淡々と返す。

 

 

「ドフラミンゴは感情論じゃ動かナいヨ。

助手のモネよりも、大金を生む兵器を作り出セるワタシが優先されルのはキミも分かっテるんじゃナいのかネ?」

 

ヴェルゴがイネットの白衣の襟を掴む力がだんだんと強くなっていく。

 

 

「それに弄るなと言ってあっタ設定を勝手に弄ってワタシのバジリスクを停止させよウとしたモネの行為は裏切りだヨ。ワタシに対する裏切り。

彼女はワタシの助手としてドフラミンゴから渡サれたモノなのにネ。悲シい話だヨ。

そう、そうだヨ…ワタシを裏切らなケれば石にナらなかっタと言うのに……これハ自業自得じゃないのかネ!?

 

急に言葉尻をあらげるとギョロりと目が変化したイネットを、ヴェルゴは床へ投げ捨てる。

 

投げ出されたイネットはすっと立ち上がると、数秒前の激昂が嘘のように平坦な声を出した。

 

 

「けど、慈悲は必要ダからネ。

許しテ上げるノも大切ですヨ。

だかラ、助けタいなら勝手にしテ……ハイ、これ。」 

 

「…なんだ、これは。」

 

投げ渡された謎の器具を見て、ヴェルゴは眉をひそめる。

 

 

解石化薬(かいせきかやく)だヨ。

その注射器は特殊な針だかラ、石みたイに固くなっテる体にも使えル優れもの。ただ腕に当テてボタンを押せばイいだケ。

2本とも上げルかラ、好きに使いなヨ。

……ワタシは赤い馬鹿を捕まえに行くカラ。」

 

そう言って白衣を羽織り直したイネットをヴェルゴが止める。

 

 

 

「勝手な単独行動は止せ…!

敵の狙いはお前の身柄の可能性もあるんだぞ!!」

 

「なら、ワタシについテ来て護衛でもなンでもすれば良いヨ。

その間にモネが割れテも責任は取れなイけどネ。」

 

護衛対象とモネの救助で揺れるヴェルゴが一瞬言葉を飲み込むと、イネットが気味の悪い笑みを浮かべる。

 

 

「まぁ護衛なんテいラないヨ。

ワタシはキミ達より強いんダからネ。」

 

ぐちゃりと体を変形させ、人の形から外れたイネットをぎょっとしたような顔でヴェルゴは見た。

 

 

「急ギナヨ。

侵入者ハ10人、脱走者ガ2人……ワタシの研究施設始マッて以来ノ大失態ダからネ。」

 

言いたいことだけを一方的に告げると、イネットはヴェルゴの横を通りすぎてぬるりと部屋から音もなく出ていく。

そのあまりに人からかけはなれた姿に強い嫌悪感が襲う。

 

 

「……化け物め…」

 

額に汗を一筋流しながら、ヴェルゴは忌々しげに呟いた。

 

 

 

 






ー後書き&補足ー

・石化しているメンバー
ゾロ→脇腹のみ
ナミ→首から肩、手の先まで
モネ→おそらく全身


暫く、本編の更新は2週間に一回になるかもしれないです!
番外編も更新増やしたいので、書き終わり次第交互に更新できたらなと思っております!(少なくとも本編は2週間に一回は更新します)

いつも読んでくださりありがとうございます!
感想やここ好き一覧に、ご質問箱やTwitterなど励みになっております!!

本編の視点の進め方についてのアンケート、よろしければポチっとお願い致します!

  • 百獣視点多め!麦わらの話は簡易説明で!
  • 麦わら視点もある程度欲しい。麦3:百獣7
  • ガッツリ麦わら視点後に百獣視点で良いよ
  • もちお、貴様に任せる!!
  • お、アンケートボタンだけ押したろ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。