俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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王国からの脱出

 

ササキとクザン、キッドとシキ。

4人の大規模な衝突の場に突然男が降って来た。

凄い音と共に地面と激しくぶつかり合った男はふらつきながらも立ち上がる。

 

 

「キラー!?」

 

その姿を見て反射的に声を上げたのはキッドだった。

 

相棒がかなり体力を削られている姿に、誰がやったのだと怒りを露に飛び出すが静止の声が響く。

 

 

「止せ、キッド!!

目的の物は手に入れた(・・・・・・・・・・)、もうこの場所に留まる理由はない。

すぐにでも次の目的地へ急ぐぞ!!」

 

キッドを引き留めたキラーがシキへ目線を移す。

 

するとシキもその意見に賛同したのか文句を口にすることなく踵を返した。

だが、逃げの姿勢に変わった相手をただ見送るなどササキとクザンがする筈もない。

 

 

「逃がすと思ってんのかァ!?特にキッドとキラー!!

テメェらはレオヴァさんに土下座しに帰るんだよ!!!」

 

「逃げられちゃおれも立場ねェからな~…」

 

攻める姿勢を緩めるどころか勢いが増す2人を後目にキッド達は船へ急ぐ。

 

 

「おい、船は問題ねェんだろうなァ!?」

 

「当たり前だ。

しっかりおれの能力で浮かして隠してあるからなァ、異常があればすぐに分かる。」

 

「急ぐそ、キッド!

トラファルガーも来ている……更なる増援の可能性は高い!!」

 

「…トラファルガーだと?」

 

ピクリ…と眉間に血管を浮き上がらせたキッドが走る足を緩める。

不味い!とキラーが急かす言葉を発するよりも先に、今出会いたくない男の声が背後から聞こえてしまった。

 

 

「……お前はいつも逃げてばかりだな、ユースタス屋」

 

「…ンだとォ?トラファルガー!!」

 

振り向くと同時に腕の周りを固めていた鉄クズの塊を勢いのままに弾き出す。

しかし、それはあっさりと一刀両断され、ローに当たる事なく地面の上を音を立てながら転がって行った。

 

 

「啖呵切った割に…弱くなったんじゃねェか?

未だに屑鉄飛ばすしか脳がねェなんて……期待はずれだ、ユースタス屋。」

 

「野郎ォ…!!」

 

「キッド!待て、もう時間はないんだぞ!!」

 

「先に行ってろ!!

おれはこのスカシ野郎をぶっ潰してから行く!」

 

「相変わらず扱いやすくて何よりだ」

 

嘲るような顔で笑うローにキッドは更に青筋を浮かべるが、その後ろでキラーは止められないことを悟った。

 

昔から頑固なキッドの良い所でもあり悪い所でもあるその“(さが)”を前に、キラーが考えを巡らせていると追い付いて来たササキの斬撃が襲い来る。

 

 

「っ……もう追い付かれたか!」

 

「当たり前だろ!!

鈍ってるテメェらと違って、こちとらカイドウさんとレオヴァさんとの地獄(組手)を定期的にやってんだぞ!?」

 

キラーは重い一撃を何とか受け止め、距離を取り考える。

どうすれば素早くかつ、確実にこの場を脱出できるのか…と。

 

少し離れた場所では麦わらも交戦しており、その一味も国の何処かにバラけている状態である。

別行動での利点を優先した結果、そのマイナス面にキラーは悩まされていた。

 

だが、ゆっくり思考を巡らせている暇はない。

ササキはこちらに余裕など与えるつもりはないと、螺旋刀を力強く使いこなし迫って来ている。

 

 

キッドは動かず、撤収するには同盟メンバーが散り散りになりすぎているこの状況。

即時撤退は不可能かとキラーが唇を噛んだ瞬間だった。

何かに引っ張られるように宙へ体が浮かぶ。

 

 

「うお!?ンだこれ!?」

 

相棒の驚いたような声に隣を見ると自分と同じように凄い勢いで宙を後ろ向きで進んでいた。

 

一体これは!?と混乱を隠せないキラーの頭上から声が降ってくる。

 

 

「ジハハハハハ!!

目的を果たしたならこんな荒れ地に用はねェ!

置き土産だ、しっかり味わえよォ!?」

 

シキの勝ち誇ったような声と共にドレスローザの地面が激しく揺れる。

 

 

「獅子威し“地巻き”!!!」

 

地面が山のように大きな獅子の形に変化しながら目下にいるササキ達や離れた場所で戦闘を繰り広げていたドフラミンゴ達へと襲いかかった。

 

鼓膜が破れるような轟音とまるで砂嵐のような土煙が辺りを包む。

 

キッドは上空まで舞い上がって来ていた土煙でむせており、キラーはシキの大技に僅かに目を見開いたまま更に上空へと引き上げられていく。

そして、大きな島船まで辿り着くと同時に引っ張られていた感覚が途切れ、甲板へと落とされた。

 

 

「うぉ…!?」

 

「あら……戻って来れたみたい」

 

「うぐぐ……き、傷に響く…」

 

「ヨホホホホ~!

良かった!皆さん無事だったんですね!!」

 

キラーとキッドの側に落とされた麦わらの一味は各々の無事を確認して胸を撫で下ろしていた。

 

 

「いつまで呑気に喋ってやがる!!

さっさと此処から離れるぞ」

 

「ま、待ってくれよ!サニー号は…」

 

ウソップが声を上げるとシキはクイッと顎で共に浮いているサニー号を指した。

 

大切な仲間と船の存在を確認すると、良かったとウソップは力なくその場へ倒れ込む。

そんな会話の中でもシキは能力をフル活用して、島船をドレスローザから遠ざけて行った。

 

 

「それにしても急に地面が浮いてビックリしましたよ!

危うく錦えもんさんを置き去りにしてしまう所でした」

 

「うむ、あの時咄嗟にブルック殿の足に掴まれたのは幸運でござった!」

 

「誰だ?このおっさん?」

 

見覚えのない錦えもんという男にルフィは首を傾げていたが、キラーがハッとしたようにシキの方へ顔を向けた。

 

 

「麦わら達は地面ごと浮いていたが……何故、おれ達は浮いたんだ?

聞いていた話では“生物”は浮かせられないと…」

 

嘘を吐いていたのか、と少し不満が混じった声色にシキは笑う。

 

 

「おいおい…まさか手の内全部喋れってのか?

そっちだって全部おれに話したワケじゃねェだろう?」

 

「………それはそうだな」

 

諦めたように顔を背けたキラーとシキの間に暫しの沈黙が流れる。

 

気まずいような少し重い沈黙に麦わらの一味がソワソワした目線を送るとシキが溜め息を吐いた。

 

 

「はぁ……テメェらに渡してた道具だよ!!」

 

「…道具?

この腰につけるポーチやショルダーバッグの事か?

これは相手への通信妨害ともしもの時の合流用の道具が入っているだけだったが……」

 

「それを渡してたのはおれだぞ。

……ってことはだ!

最初におれが触れてる事になるだろうがよ」

 

此処まで言えば分かるだろうとそっぽを向いて黙ったシキの背中をキラーは数秒見て、納得したと声を漏らした。

 

 

「……なるほど

それで全員に支給すると言って自ら配っていたのか」

 

何が何だか分からないと首を傾げているルフィとは別にロビンやブルックはそういう仕組みだったのかと感心したように頷いていた。

 

 

こうしてシキやキッドにキラー、麦わらの一味を乗せた島船はドレスローザから姿を消したのであった。

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

「っちくしょう!!逃げられちまった!!!」

 

「いや~~まさかあんな大技使えるくらい余裕あるとか思わないでしょ。」

 

「……最悪だ。」

 

「すまねェ、あの出会い頭でおれがキラーを捕まえておけば!!」

 

砂まみれになりながらササキ、クザン、ロー、ハイルディンは各々の思いを口にした。

 

参ったな~と頭をかくクザンの横ではササキとハイルディンが二人揃って項垂れている。

 

 

「…あー……まぁ、今から追いかけても無理っぽいし

おれはドレスローザの人が無事か確認行ってくるわ」

 

踵を返したクザンの声に反応するようにササキが立ち上がる。

 

 

「…落ち込んでてもこの失態はなくならねェしな!

よし、おれも手伝うぜクザン。瓦礫処理とかあるだろ?」

 

「お、それは助かるわ。」

 

気持ちを切り替えたササキはクザンの隣に並ぶと国民が避難していた筈の場所へ向かおうと一歩踏み出した……が、ローが声をかける。

 

 

「おい、待て。

………この情けねェ結果をレオヴァさんに報告するのが先だろ。」

 

ローの言葉にササキ、クザン、ハイルディンの肩がビクッと揺れる。

 

 

「……ま、おれは新顔だし報告は古参に任せるわ」

 

「クザン、お前その逃げは狡いだろ!?」

 

「2年目の癖に新人気取りか?」

 

躱そうとするクザンにササキとローが非難の声を上げると、項垂れていたハイルディンが勢いよく顔を上げた。

 

 

「ならば、おれが鳳凰レオヴァへ報告を!!」

 

「いや、お前は今回の作戦の概要しらないだろ…」

 

ローの突っ込みにそうだったと頭を抱えるハイルディンだが、彼は元々今回の作戦には選ばれていなかった。

にも関わらず、あの反旗を翻したキッドとキラーがいると聞き休日を返上して駆け付けたのである。

 

そんなハイルディンが連絡をしては何故いるのか?と混乱させるだけだとローは電伝虫を取り出す。

ここで、やいのやいのと騒いでいて連絡が遅れてはそれこそ問題だと判断したのだろう。

 

しかし、ローが受話器を取る直前にプルルルルルと音が響く。

 

その音の先を辿るようにローとササキ、ハイルディンはクザンを見た。

 

 

「あ~~…これ、おれの電伝虫?」

 

「確実にそうだろ!?早く出ろよ!」

 

ササキが急かすとクザンは苦い顔をしつつ、受話器を取った。

 

 

「……おれだ、今話せそうか?」

 

受話器から聞こえる聞き慣れてしまった穏やかな声にクザンはやっぱりレオヴァかと頭を抱えたくなる気持ちを押さえて言葉を返す。

 

 

「話せるが……その前に報告しなきゃならない事が…」

 

「悪い報告か?」

 

「……まぁ、そうだな。」

 

言いづらそうなクザンの声を聞いても電伝虫は表情を変えない。

 

クザンはどんな罰が下されるのかと内心で僅かに焦りながらも、包み隠さず報告するのだった。

 

 

 

あれから10分程かけて報告を終えたクザンにレオヴァは電伝虫越しに新しい命を下していた。

 

 

「聞いた感じではドレスローザはほぼ全壊か…

逃げられたものは仕方がない、クザンは気持ちを切り替えて百獣国際連盟の顔として民衆の保護に全力を注いでくれ。

ササキとローは空船で即刻、予定の場所へ向かうように。

……休みであるにも関わらず任務に飛び入り参加したハイルディンだが…」

 

「すまない!!鳳凰レオヴァ!!

勝手な真似をした挙げ句……結果も残せず…!」

 

クザンの手元に向かって頭を下げるハイルディンの音圧に周りの皆が耳を痛めている中、レオヴァの言葉が続く。

 

 

「休日にしっかり休まず任務に就いたことは褒められる行いではない。」

 

厳格なレオヴァの声にハイルディンの背がピシッと伸びる。

その後ろでは、それはレオヴァさんもでは?と内心突っ込んでいるローとササキがいたが声に出すような真似はしない。

 

 

「だが、百獣やおれの為を思って駆け付けてくれたというのは分かっている。

……ありがとう、そのハイルディンの優しさや義理固い所をおれは心から信頼しているんだ。」

 

「っ…鳳凰レオヴァ!」

 

「よって、今回はそのままクザンと共にドレスローザの復興の手伝いを頼みたい。

勿論、休みはまた新たに取って貰うが…」

 

優しい声色に戻ったレオヴァの言葉にハイルディンは強く頷き返す。

 

こうして新たな指示を出し終えるとレオヴァは一度通信を終えた。

 

ササキとローは指示通り空船で移動を始め、クザンは今度こそ民衆の下へとハイルディンと共に歩みを進めるのだった。

 

 

 

 

その後、クザンとハイルディンが民衆の無事を確認し瓦礫の撤去や家を失くした人々が寝泊まり出来るテントの設置を進めている中 、ドフラミンゴは打ち倒された幹部を百獣国際連盟の救護班達に任せ、クザンの電伝虫でレオヴァと会話をしていた。

 

 

「……なるほど、シュガーまでやられたのか。」

 

「あぁ、せっかく集めた奴隷も瓦礫の下敷きになって死んだか逃げ出したかで半分以上がパァだ。」

 

心底忌々しいというような声を出すドフラミンゴにレオヴァは冷静に返す。

 

 

「だが、不幸中の幸い……海賊や罪人だけ(・・)をオモチャにしていたおかげで国民からの非難は出ていないだろう?

建て直しにおれも協力すれば国としては早めに復帰出来る筈だ。」

 

レオヴァの言葉に頷きながらドフラミンゴは過去の提案を思い出していた。

 

それはレオヴァにシュガーの能力の事が露見した時の事だ。

正直、切り札と言ってもいい程に重要な彼女の能力が腹の中が読めないレオヴァにバレたのは痛手であった。

 

けれど、そのおかげでレオヴァから

『何かあった時の事を考えて国民を使うのは止めた方が良いんじゃないか?

万が一にでもシュガーが気絶すれば築き上げて来た信頼が消える事になる。

それならば犯罪者を使えば不利益にはならないし、ドフラミンゴの七武海という立場を使えば海賊はいくらでも手に入る。

もし、消したい国民がいるのなら後から発覚する恐れがある方法ではなく…“事故”に遭ってもらえば良いだろう?』

という提案を受けられたのだ。

 

この言葉を聞いた時は万が一などあり得ないとドフラミンゴは思っていたが、普段あまりこちらのやり方に口を出さないレオヴァにしては珍しく押して来たのだ。

数日考えた結果、一理あるとしてこの方針を採用したのである。

 

同時に、あの一部では聖人だと有名なレオヴァが人道に反するような事を否定して来なかったのは意外だと感じていた。

だが、今の約10年ほど関係を続けて来たドフラミンゴなら、レオヴァらしい提案だと笑うだろう。

 

 

結果、現在シュガーが倒れたドレスローザ王国に国民からの非難はほぼ出ていない。

寧ろファミリー共々身を挺するだけでなく、百獣国際連盟の助けを呼んでまで国を守ってくれた王として以前より支持が上がっていた。

 

ドフラミンゴは土壇場で効力を発揮したレオヴァ考案の方針に口には出さないが感心していたのだ。

だからこそ、またレオヴァに連絡を取っていた。

 

 

「…今回、百獣国際連盟を呼んだ事はすぐに海軍共にバレるだろう。

おれは何を言われようが揉み消すつもりだが、もし奴らが納得しなかった場合は………お前の提案に乗るつもりだ。」

 

「そうか。

おれとしては是非ドフラミンゴに協力して欲しいが……政府の馬鹿共を無事黙らせられる事を祈ってるよ。」

 

「フフフフフフ…!

あぁ、おれも別に出来ないとは思ってねェからな。

もしもの話さ…」

 

ドフラミンゴはレオヴァと話した事で怒りに染まっていた頭がクリアになったことに笑いながら、どう動くべきかの指標を固めたのだった。

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

混乱に乗じてドレスローザを離脱したルフィ達は消耗したシキや自分の仲間達の為、一時休憩出来る場所へと向かっていた。

 

その場所は磁場がない為にログポースでは辿り着くことが出来ないという、身を潜めるにはピッタリの場所らしいのだ。

 

その場所の名は“ゾウ”。

提案者である錦えもんとカン十郎によると彼らの持っているビブルカードがあれば行く事が可能だと言う。

 

と、なれば。逆に考えればビブルカードがない限り辿り着く事はほぼ不可能。

追手から一時的に身を隠すにはうってつけと言うわけである。

 

そんなゾウへ向かうルフィ達だったが、彼らの表情は暗い。

 

それは船で待機していたナミの腕が悲惨な状況になっている事が理由であった。

石になっていた筈の腕の表面がまるで濡れた粘土のようにドロッとしており、医者ですらない彼らには手の打ちようがなかった。

 

何とか薬の入っている箱を持ち帰りはしたが、数が多すぎる為どれがどの薬なのか見当もつかない。

 

チョッパーが目覚めてくれれば…そう唇を噛む事しか出来ない彼らの背に声がかかる。

 

 

「薬は手に入れたのか?」

 

声に反応して振り返ったウソップの目には水がたまっており今にも泣きそうな顔だった為、キラーはマスクの下の目をかすかに見開いた。

 

 

「……手に入れられなかったのか…」

 

残念だな…と暗い声を出すキラーにウソップの隣にいたブルックが首をふった。

 

 

「いえ…薬は持ち帰れたんです!

……ただ…」

 

骨の顔に哀愁を漂わせる彼の隣に膝を下ろすとキラーはどうしたのか?と言葉の先を促した。

 

 

「……数が多すぎるんです…

チョッパーさんがいない今、私達にはどれが正しいのか…」

 

仲間を治せない事に悔しさを滲ませるブルックの気持ちが分かってしまうのか、キラーは少し沈黙した後。

薬を見せてくれと、声をかけた。

 

 

「か、構いませんが……」

 

意外なキラーの対応に僅に驚きつつも、ブルックは薬が沢山入っている2つの箱を渡した。

 

暫くその箱の中にある小瓶を手にとっては眺め戻しては次の小瓶を、とやっていたキラーが錠剤が入った瓶を手に持って口を開いた。

 

 

「…この薬を飲ませればお前達の船医は起きる筈だ。」

 

「「え!?」」

 

「すげェな、分かるのか!?」

 

「あなた、船医だったの…?」

 

麦わらの一味から一身に注目を浴びながら、キラーは仮面の中で少し視線を泳がせた後、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「……この薬品はおそらく百獣製だ」

 

「百獣の薬…?」

 

かすかに不安そうな顔になったウソップを視界にいれながらもキラーは続ける。

 

 

「そうだ。

と言っても、これは協力関係にある相手にもしもの事があった時に使うように配られている物だから危険性はない。

本来なら取り扱い説明書や薬品一覧の紙が入っている筈なんだが…幾つかない薬もあるから、おそらくドンキホーテファミリーが別の場所へ移したんだろう。」

 

すらすらと説明をするキラーに感心したように声をあげるウソップ達とは別にゾロやロビン、ブルックは物言いたげな顔になる。

 

 

「とても詳しい説明だったけれど……何故、そんなに詳しいの?」

 

「えぇ、それにその薬品一覧の紙もないのにどうやってそれがチョッパーさんに効く薬だと判断されたのかも気になります。」

 

「お前ら、前から思ってたが随分と百獣に詳しすぎやしねェか?」

 

ロビン、ブルック、ゾロが続けて言葉を発すると確かにそうだとウソップがキラーを見る。

 

何故だと訴える目線にキラーは小さく溜め息を吐くと口を開いた。

 

 

「……おれはレオヴァを…百獣を知っている。

説明書がなくとも、この瓶に貼ってあるラベルの文字を見ればある程度は判別出来るんだ。」

 

「ラベル……確かに何か書いてあるな。」

 

「待って、百獣を知っているとはどういう意味(・・・・・・)かしら?」

 

瓶を手に取ってまじまじと見つけるゾロの側にいたロビンはキラーへ質問を続ける。

 

その質問に答えるべきか…と悩んでいると背後から肩を掴まれた。

 

驚いて上を見上げるとしゃがんでいたキラーをいつの間にかやって来ていたキッドが見下ろしていた。

 

 

「何やってンだよ、キラー。

作戦会議だから来いって言った癖に待たせてんじゃねェよ。

お前が遅刻するなんてあり得ねェってヒートとワイヤーが騒いじまってゆっくり飯も食えねェ。」

 

不機嫌そうに口をへの字にしているキッドにそうだったと、キラーは申し訳なさそうな声で謝った。

 

するとそれ以上文句を言うことなく、キッドはキラーの肩から手を離す。

 

 

「行くぞ、キラー。

馴れ合ってもしょうがねェだろ。」 

 

背を向けたキッドを追うように立とうとしたキラーにゾロが待ったをかける。

 

 

「おい、まだロビンの問い掛けに答えてねェだろ。」

 

ゾロの強めの呼び掛けにキッドが不快そうな顔で振り返る。

 

 

「あ"ぁ"?ロロノア、てめぇキラーになんのつもりだァ?」

 

ギロリと睨んでくるキッドに一切怯む素振りもなく、ゾロが立ち上がろうとした時、ロビンがまた口を開いた。

 

 

「呼び止めてしまってごめんない。

ただ、キラーが百雷のレオヴァと、百獣を知っていると言ったからどういう意味なのか聞きたかっただけなの。」

 

“レオヴァ”という名前にピクリと反応すると、キッドはキラーへ目を向けた。

 

 

「……どこまで話した?」

 

「いや、まだ何も…」

 

意味ありげな二人の会話にブルックが目を細める。

中途半端に答えを言わない二人に焦れたゾロがついに立ち上がった時だった。

 

めんどくさそうにぐしゃぐしゃっと頭をかいたキッドは吐き捨てるように言葉を吐き出す。

 

 

「……おれとキラーは少しの間レオヴァの野郎と居た、それだけだ。」

 

「えぇ!?じゃあ、お前ら百獣海賊団なのか!?」

 

驚きで思わず声を漏らしたウソップをキッドは睨み付ける。

 

 

「っざけんな!!!もう違ェ!!

アイツは結局おれとキラーを…!」

 

「キッド!!!」

 

怒りのままに叫ぼうとしていたキッドをキラーが名前を呼んで止める。

 

その相棒の声にハッとしたように言葉を止めるとキッドはぐっと眉間に皺を寄せた。

 

 

「……おれもキラーも今は百獣じゃねェ。

レオヴァはおれが討つ(・・・・・・・・・・)、疑うなら好きにしろ。」

 

普段よりも静かにそう吐き捨てるとキッドは今度こそ自分たちの部屋へと歩き去ってしまった。

 

そんな背中を見つめるキラーの顔は伺い知れないが、雰囲気は明るいものではない。

 

気まずい空気が流れる中、キラーも麦わらの一味に背を向ける。 

 

 

「……キッドの言うように俺達はもう…百獣海賊団じゃない。

その薬について言った事も事実だ。

それを飲ませてお前達の船医が起きて、それでもまだ薬が分からなければ助言はする……必要があれば声をかけろ。」

 

それだけ言うと歩き出してしまったキラーにおい!とゾロ達が声をかけるが、彼が足を止めることはない。

 

一味は渡された小瓶と未だに寝ているチョッパーを交互に見やるのだった。

 

 

 

 




ー補足ー

ササキ:任務を失敗したと落ち込んでいたが切り替えた。クザンともそこそこ仲が良い。

ロー:半分任務は成功しているが、完璧に終えられず申し訳なさを感じている。キラーとの会話は空船に帰還後レオヴァには報告済み。

クザン:任務を失敗したので罰を受けることになると身構えていたが、労られて次の指示が出て終わったので嫌みのひとつも言わないのか、レオヴァは…と驚いた。

ハイルディン:キッドとキラーと面識がある。
レオヴァが落ち込んでいたので2人を連れ戻したかった。義理堅い男なので二人が許せない反面、仲間として見ていただけに悲しさもある。


・キラーの言っていた増援について
レオヴァは今回は増援としてササキとローしか送っていない。
なので、まだ増援がくる!というのはキラーの早とちりだったが、そのおかげで上手く逃げられているので結果オーライ。
基本的に戦略としては戦力を一気に送って叩くのが有効打であり普通だが、百獣は幹部1人(+部下)で軍隊を押さえられる強さがあった為、トドメとしてレオヴァは2人目(+部下)を送るという戦力を使う場合があるだけ(キラーはこの記憶を思い出していた)
今回は大規模な戦闘や相手の実力を考慮して送れる人員を一気に送った為、二陣はない。

・バルトロメオ達
ウソップ達と行動してたことにより地面ごと浮いた為、一緒に脱出に成功。
各々の部下達も記憶が戻り共に行動していたので共に脱出。
サイのジッジであるチンジャオもオモチャにされていたが救出された。
その際にウソップには恩が出来た為ガープの孫にはまだ手を出していないが、危うい所。今は必死に孫達が止めている。

【百獣打倒同盟の戦利品】
・地図(?)←キラーが入手
・色んな薬が入った箱①←錦えもんの案内でブルックが入手
・色んな薬が入った箱②←コアラと共にロビンが入手
・謎の書類←ロビンが入手

・オモチャ
罪人や海賊だけをオモチャにしていたので解放されても国民からの非難はない
国民をオモチャの奴隷に出来なかった分、他国の犯罪者や海賊をオモチャにした(七武海の仕事で賊は集めやすい為)

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