俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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テストと海軍の爺さん

 

 

 

 

俺は気合い満タンなジャックを連れて、最近ウチのシマを荒らした海賊がいる場所へと向かっている。

 

 

 

ジャックには俺がこの任務を受けたと伝えているが

実は今回の任務はジャックに対するテストの様なモノだ。

 

 

 

俺が発案し、そして父さんから許可を得た今回の任務。

ぜひジャックには成功して貰いたいと思っている

弟の様に目をかけていると言うのも有るが、純粋にジャックの生命力は素晴らしい。

 

 

推定7歳で他の船員たちを上回るパワーとタフさは今後きっと父さんの役に立つはずだ。

 

 

 

 

 

そんなわけでジャックの実力を買っている俺は悪魔の実を食べさせようと考え

あの手この手を使いゾウゾウの実 モデル“マンモス“を手に入れた。

 

 

一応、自分で手に入れたとは言っても父さんに許可を得てからジャックに……

 

と、思い父さんに悪魔の実の話をした。

 

 

 

 

──────────────

 

 

動物(ゾオン)系 の古代種か……!

 で、誰に食わせてぇって?』

 

 

『ジャックに食わせようと思ってるんだ。』

 

 

『……ジャックか。

 まぁ、確かにレオヴァが気に掛けてるだけあって見所はあるがなァ………まだガキだぞ?』

 

 

『……父さんの言いたいことは だいたい解るが

 子どもだからこそ長い時間を使って能力を扱えるよう指導できるし

なによりジャックのウチの海賊団に対しての忠誠心は目を見張るものがある。

将来的にみたらこれ以上ない人材だとおれは思うんだが…』

 

 

 

『確かにアイツは仕事も真面目にやってる

……まぁ…キングとクイーンに面倒みさせても生きてるってだけで他の奴らよりも優秀ではあるからなァ』

 

 

 

『あぁ、本当に…真面目で素直な子なんだ

 おれは将来 ジャックは父さんのお眼鏡に叶う漢になると考えてる。

 だから…………駄目だろうか?』

 

 

 

『レオヴァが言うんだ間違いねぇだろう!

それに その悪魔の実は自分で手に入れたモンなんだ好きに使えば良い…!』

 

 

『父さん ありがとう…!!

わかった。 この実は好きに使わせてもらう!』

 

 

 

『ウォロロロロロ…!

 お前はおれの息子なんだ 好きにやれ!!』

 

 

 

─────────────

 

 

 

器の大きい父さんは好きにして良いと言ってくれた。

 

 

だから俺は早速ジャックに悪魔の実を食べさせることにしたワケだが

なにもせずに悪魔の実を渡しては周りの奴らが五月蝿いだろう。

 

ならば手柄を立てさせれば良い。

ついでに実力がどれ程付いてきたかも確かめるいい機会だと考えて今回のテストを行うに至ったのだ。

 

 

 

 

隣で張り切っているジャックを見て和みながらも俺は残滅任務の間どうやって暇を潰すか考えていた。

 

 

 

 

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── ジャックのテストの結果は合格だ。

 

 

 

俺が思っていたよりも素早く残滅を済ませ、他の部下たちと物品を船に積み込む手際は子どもとは思えぬほど良かった。

 

 

さすがはジャックだ…!

と緩む口元を抑えられずにいると、仕事を終えたのか俺の方へと走って来る。

 

 

 

「レオヴァさん、 終わったぞ!…です。」

 

 

「あぁ、お疲れ様

 今回の任務はとくに動きが良かったな。」

 

 

「…!  ありがとうございます!」

 

 

「それで任務の褒美として渡したい物があるんだが…」

 

 

「褒美…? おれはカイドウさんとレオヴァさんの役に立ちてぇだけだから……あんまモノとかはいらねぇ、です!」

 

 

「そう言うとは思ってたが……

今回の褒美は強くなる為に使える物だぞ?」

 

 

「強くなるのに使えるモノ…?」

 

 

「まぁ、見てから決めりゃいい」

 

 

 

 

褒美を貰うことを渋るジャックの前に俺は悪魔の実を差し出す。

 

それを見るとジャックは目を見開き驚きを露にした。

 

 

 

 

「!?  悪魔の実……!」

 

 

動物(ゾオン)系の悪魔の実だ。

単身で敵陣に突っ込んで行くジャックにぴったりな能力だと思うぞ?」

 

 

「……本当におれが食っていいのか…?

悪魔の実は貴重だってクイーンの兄御が…」

 

 

「構わない。

それにこの悪魔の実はおれが手に入れた物だから好きにして良いと言われてる

……おれはジャックに食べて欲しかったんだがなァ…」

 

 

「レオヴァさんが…! な、なら おれが食いてぇ!」

 

 

「ふふ……よし、なら早速食べるか

どうする? フルーツナイフで切るか?」

 

 

「いや、かぶりつくんで大丈夫だ、です!」

 

 

 

 

悪魔の実を渡すと勢いよくかぶりついたジャックだったが、一気に顔が険しくなる。

 

 

 

 

「…ゥ"……不味ぃ…!!」

 

 

「ふはははは! 凄い顔だぞジャック…!」

 

 

「聞いてたがこんなに不味いとは思わなかった…です……」

 

 

「ふふふ……いや、すまない。笑いすぎたな…ふふ…」

 

 

「…レオヴァさん……」

 

 

 

複雑な表情のジャックを見てまた笑いが込み上がってくるのを感じながらも平静を保とうとする俺を周りの部下たちが物珍しそうに見てくる。

 

 

……つい大声で笑ってしまった…部下たちが近くにいるのを失念していたな………まぁ悪い印象にはならないだろうから良しとしよう!

 

 

気持ちを切り替え能力者になったジャックに声をかける

 

 

 

「ふぅ……で、どうだ?

能力者になったワケだが……一回試してみるか?」

 

 

「ああ…! 試してみたい!」

 

 

「なら、おれが相手しよう。

 あっち側に行くか。」

 

 

「はい…!」

 

 

 

 

 

その後ジャックの能力の確認の為に船から離れ

軽く試合形式で手合わせをしたが、やはりパワーとタフさが段違いに上がっていた。

 

 

 

一段落つき、船へ戻ろうとジャックに声をかけると困った様な顔……いや、マンモスだから表情は解りにくいが…おそらく困った顔をしたジャックに俺が首をかしげていると

 

ボソリとジャックが呟いた

 

 

 

 

「……戻り方がわからねぇ……」

 

 

「!? ふっ…ふはははははは…!!」

 

 

 

その、身に覚えがありすぎる呟きに我慢できず

また俺は大声で笑った。

 

 

 

 

 

 

 

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──なんてジャックの呟きに笑っていられた時が懐かしい

 

 

 

あれから2日たった今、俺はある島にて常識はずれな爺さんに絡まれていた。

 

 

 

「ぶわっはっはっは!!

なかなかやるのぅ小僧!海軍に入れ!」

 

 

「……断る…!」

 

 

「なら捕まえんといかん…のぅ!!!」

 

 

 

 

殴りかかってきた爺さんを素早く避け距離を取る。

 

そして爺さんが殴った地面が割れた。

…………いや、本当にデタラメなパワーだ…

 

 

なぜ、俺が変わった爺さん……

…もとい“英雄ガープ“に絡まれているのか

 

 

簡単なことだ。

 

 

俺とジャックがワノ国へ帰る途中に寄った島に運悪くも海軍が停泊しており、それを撃退したところ応援に来たのがガープだった。

 

 

本当にツいていない……

 

 

最初は子どもだからと油断していたので逃げられそうだったのだが、部下たちが俺を様付けで呼んだせいで疑いの目で見られ

挙げ句にアホな下っ端が口を滑らせたおかげで百獣のカイドウの“息子“だとバレた訳だ。

 

 

 

……あの下っ端……どんな罰にするか…

 

 

 

 

「戦闘中に考え事するヤツがおるかァー!!!」

 

 

「くっ……馬鹿力ジジィが……!」

 

 

「ジジィじゃと!? ぬおぉ~!

 “ガープさん“と呼ばんかあーー!!」

 

 

 

 

その後も爺さんは瓦礫の山を積み上げていった。

 

……正直、おれたち海賊よりも町に被害出してないか…?

 

なんてことを思いながらもどうやって逃げるか思案していると爺さんの動きが止まった。

 

 

 

「あ! そういえばワシ、センゴクに呼ばれとった…!」

 

 

しまった!という様な顔をした爺さんだったが、すぐに気を取り直したのか

 

 

「まぁ、忘れとったもんはしゃーないじゃろ。

……よし、ワシ本部に帰るから小僧も来い!」

 

とバカな事を言い始める。

 

 

「…は? いや、意味がわからないだろう……

 そもそも行く気もないしな。」

 

 

「ワガママ言うな!!

 まったく…なら、少し窮屈かもしれんが檻の中に入ってもらうしかないのぅ!」

 

 

じりじりと近寄ってくる爺さんに苛立ちを感じながらも雷を数発見舞う。

 

 

雷を避ける為に後ろに跳んだ爺さんに海兵が近寄る。

 

「が、ガープさん! 

センゴクさんからの電伝虫(でんでんむし)が!!」

 

 

海兵の言葉を聞いた瞬間苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

 

「えぇ~~。それワシが出なきゃダメ?」

 

 

「当たり前です!!」

 

 

「……出たくないのう…」

 

 

「駄々こねてる場合じゃないですから!」

 

 

 

爺さんの気が完全に海兵に向いていると思った俺は素早く獣化(じゅうか)しワノ国へ向けて飛び立った。

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

「わっはっはっは! 能力者だとは思ってたが動物(ゾオン)系だったか!」

 

 

飛び立って行く大きな鳥を見て

海兵は驚き、爺さんは豪快に笑っていた。

 

 

 

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~船の上にて~

 

 

 

 

ジャックは海楼石(かいろうせき)で縛られ、酷く項垂(うなだ)れている。

 

だが、それは拘束されているからではない。

 

 

敬愛している人が独りでデタラメな強さの海兵に挑んでいったから項垂れているのだ。

 

 

 

「……おれは…また、役に立てなかったッ……!!」

 

 

拘束された状態で壁に思いっきり頭を打ち付ける。

 

 

あの時、俺も共に闘うとジャックは言った。

 

だが、敬愛するレオヴァはまだ俺たちじゃ勝てないと言い

共に闘うことを許しはしなかった。

 

 

ジャックだって馬鹿ではない。

敵わないことくらい気付いていた。

ただ、全てを与えてくれた人の盾になりたかった。

 

……役に立ちたかったのだ。

 

 

全て、すべて自分が弱いせいだ。

レオヴァが簡単に殺られるとは思っていない。

 

だが、あの海兵に勝てるとも思えなかった。

 

 

ジャックはただただ己の弱さが憎い。

 

もう二度とレオヴァには会えないのだろうか……

そう考える自分がイヤだった。

 

しかし、その不安も仕方がないことだった。

レオヴァが皆を逃がす為に独りで海兵に挑んでから2日も経っている。

 

 

ジャックだけではなく、船に乗る誰もが通夜(つや)の様な顔をしている。

 

 

 

 

この船はまるで幽霊船の様だった。

 

 

 

 

彼が帰って来るまでは。

 

 

 

 

 

 

誰かが叫んだ。

 

「あ……あぁ! おい!!

 レオヴァ様だ……!!」

 

その声に船員たちは一斉に空を見上げる。

 

 

そこには光輝く黄金の鳥が太陽に負けない眩しさを放ちながら飛んでいた。

 

 

船内から物凄い音と共に海楼石に縛られたままのジャックが船尾へと飛び出る。

 

 

 

「レオヴァさん…!」

 

 

 

 

船の上で人の形に戻ったレオヴァが降ってくる。

 

 

 

「あぁ、ジャック。

俺が留守の間、航海は首尾よく行ってたか?」

 

 

レオヴァの服は所々、破れ汚れていたが

大きな怪我はないようだった。

 

その事にジャックと船員たちは安堵した。

 

 

 

「……航海は問題なかったです。」

 

 

「そうか…皆、ご苦労だったな。

ワノ国まで もう少しだ。頑張ってくれ。」

 

 

「あぁ…!」

 

「「「はいッ!」」」

 

 

柔らかい表情で船員たちに声をかけ、レオヴァは船内の部屋へと向かっていった。

 

 

 

幽霊船の様だった時とは違い、今は皆 活気に溢れている。

きっと、想定よりも早くワノ国に着くだろうと誰もが思った。

 

 

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