俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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色んな感想ありがとうございます!

考察してくれてる方の感想読んで
「おぉ…!伝わってる!!」と嬉しくなり小躍りしました…!

本当語彙力高い感想に舌を巻くのみ……

シンプルに面白いとも言って頂けたりして、凄い嬉しいです!


そして安定の誤字……申し訳ない…
何回か見直してから上げていると言うのに……誤字にステルス機能でもついてるのか?
わざわざ誤字報告してくれる優しい方々に感謝です!


過去の幕切り

侍たちは息巻いていた。

 

今から起こる戦闘はレオヴァ様に対する完全なる裏切りであると。

 

 

崩れかけるワノ国を立て直そうと奔走(ほんそう)する

かの御仁(ごじん)の優しさを踏みにじる行為だと。

 

 

 

 

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息巻く俺たちの下へレオヴァ様が現れる。

 

レオヴァ様のいつもの微笑みはなりを潜め、ただ悲しそうな顔をしていた。

 

 

……あぁ、何故こんなにもお優しいレオヴァ様が辛い思いをなさらなければ ならないのか…!!

 

 

俺も皆も、一様に同じ思いであった。

 

 

 

「……皆…まずは、この戦いに来てくれたことを感謝する…ありがとう。

そして、これから討たなければならない者に思い入れがある者もいるだろう……おれが至らなかったばかりに……すまない……」

 

 

レオヴァ様は目を伏せ、悲痛な声で謝罪なされた…

 

 

「レオ坊…!

シャキッとしやがれ!おめぇが謝る必要なんざねぇんだ!

此処にいる全員……いや、ここに居ない奴らもレオ坊に最期まで付いていく心づもりだ!」

 

 

ヒョウ五郎親分のその言葉に俺も周りの者たちも強く頷きレオヴァ様を見つめる。

 

 

「そうだ…!もう、おれたちゃレオヴァ様に付いてくと決めてんでさァ……!」

 

「レオヴァ様が謝る必要なんてありゃせん!!」

 

「……お優しいレオヴァ様に代わっておれたちが…!」

 

 

皆、口々に思いを吐き出していく。

 

そう、此処にいる者は皆同志……!!

全員がレオヴァ様に救われ、導いて頂いたのだ!

 

 

 

同志たちの声にレオヴァ様の微笑みがやっと戻る。

 

「……ありがとう。

そうだな…ヒョウ爺の言う通りだ。

集まってくれた皆の覚悟、良くわかった……!

共にこの戦いに挑んでくれ…!」

 

 

 

「レオ坊…もちろんだ……!!」

 

「うおぉ~!レオヴァ様!

おれが敵の首を持って参ります……!」

 

「レオヴァ様から受けたご恩……ここで返してみせまする!」

 

「この身に代えてもお守りいたします…!」

 

「おでんなど一捻りにしてみせましょうぞ!!」

 

 

 

レオヴァ様の言葉で皆の闘志が上がっていく。

 

この戦いにて御仁と共に歩めること、これ以上の誉れがあるだろうか……?

いや、ないだろう!!

 

 

今…この戦いで戦果を上げ、裏切り者共の首をレオヴァ様に捧げることで俺は忠義を証明してみせる…!

 

 

数百の侍達の心は一つだ。

 

"レオヴァ様に勝利の栄光を"

 

 

 

 

 

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少し離れた場所から侍たちのやり取りを見ている男が二人。

 

 

「ムハハハ~!ほんっとにレオヴァのあの能力はスゲェわ

少しの間にあれだけ信者を作れんだからなァ」

 

 

愉快そうに笑うクイーンの声を不快だと言う様に目を細めるキング。

 

 

「……レオヴァ坊っちゃんの掌握(しょうあく)の巧さは折り紙つきだろ…

カイドウさんの息子なんだ。人の上に立つ素質があるのは当たり前だろうが」

 

 

「まぁ、カイドウさんの場合は力業(ちからわざ)だけどなァ……」

 

 

 

 

会話する二人の下に侍たちとの会話を終えたレオヴァがやってきた。

 

 

「二人とも、せっかくの宴なのに悪いな…」

 

申し訳なさそうな顔をするレオヴァにクイーンはご機嫌に返す。

 

 

「おいおい気にすんなよ…!

こんなんさっさと終わらせて帰りゃ良いだけだしなァ~!」

 

「問題ねぇさレオヴァ坊っちゃん

……ちょうど、宴より蹂躙(じゅうりん)の気分だった」

 

 

凶悪な雰囲気を醸し出しながら嗤うキングにレオヴァも微笑み返す。

 

 

「二人がそう言ってくれて助かる」

 

 

 

「で、おでんはレオヴァと都の裏の元締めが殺るんだよな?

他の奴らをおれが殺っときゃイイのか?」

 

 

「あぁ、相手の大将はおれとヒョウ爺でなんとかする

他の者の首をクイーンとキングに任せたい。

……おれの連れてきた侍たちでは恐らく体力を削るので手一杯だと思うから、なるべく死なないようにしてやってほしい」

 

 

「ん~~……面倒みるのダリィなァ…

まぁ、一応は頭のすみには置いとくぜ!」

 

「わかった、レオヴァ坊っちゃんの作戦に狂いが出ないよう努めよう

……クイーンのバカは使えそうにねぇからな」

 

 

「……おうレオヴァ、見とけよ!

全部おれが片してやる……キングのマヌケがヘマするかもしれねぇからなァ……!」

 

 

「テメェのようなヘマはしねぇよ……!」

 

「…おれが何時ヘマしたってんだァ……?」

 

 

「……二人とも此処で暴れるな…」

 

 

またか、と溜め息をつくレオヴァの下に1人の侍が駆け寄ってくる。

 

 

(あるじ)、侍たちの準備は滞りなく。

そろそろ出発致しますか?」

 

 

「そうか、準備ご苦労だった」

 

 

「ア? お前が侍の代表になるヤツか?」

 

 

「…お初にお目にかかります、カヅチと申します

レオヴァ様より此度の戦いにて侍の指揮を仰せつかりもうした」

 

 

カヅチと名乗る侍は深々とキングとクイーンに礼をとる。

 

 

「……あ~、お前がねェ……そこそこって感じか?

まぁ、レオヴァの人選だし…戦いで測るわ」

 

「………」

 

クイーンとキングからの不躾な目線に動じることなく、カヅチは強く返事を返す。

 

 

「はい、(あるじ)の期待に応えるべく此度の戦いにて戦果を上げてみせまする

キング様とクイーン様にも敗けるつもりはございませぬ故…」

 

 

「……口だけにならねぇ様にするんだな」

 

 

「勿論にございます」

 

 

 

緊張感走る三人の間にレオヴァの号令が届き、それぞれ持ち場へと戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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山を駆け抜ける一行(いっこう)の前に1つの雷が舞い落ちる。

 

 

突然の事に驚きを隠せない一行であったが、空から舞い降りて来た巨鳥を見て全てを察した。

 

 

 

「……なぜ、わかった。

あの無人島で酔って寝ているカイドウの首を取りに行く所だった……兵力戦を想定してねぇ」

 

 

「反逆者に教える義理はないだろう。

そして、上に立つ者ならあらゆる可能性(・・・・・・・)を想定しておくべきだったな…。

……悪いが父さんの首はこの世の誰にも獲らせはしない」

 

 

 

おでん一行を囲む様に侍達が構える。

 

 

「ッ! な、なぜ侍たちが!」

 

「落ち着け、雷ぞう……!

気を散らせばそこまでだ!」

 

「ゴロニャーゴ……!!

どんな相手でも倒さないかんぜよ!!」

 

 

 

花の都侠客の部下500人、編笠村及び鈴後の侍300人。

総勢800人の忠義の臣の闘志に気圧されるおでんの侍たち。

 

 

「お前たち……!

怯むな、押し進むぞ…!!」

 

 

しかし、赤鞘たちはおでんの掛け声にて気を持ち直し瞳に強い意志が宿る。

 

 

おでんの未来をかけた戦い。

そして、レオヴァの未来をかけた戦いでもある。

 

 

両者一歩も退かぬ戦いになると思われた。

 

 

 

 

 

 

が、現状は違った。

 

 

おでんはヒョウ五郎とレオヴァの相手をしているにも関わらず、未だなんとか二人を抑えている。

 

 

しかし、おでんの侍たちは圧されていた。

 

何故か800人の侍たちは想像以上に力を発揮していた。

それに加え、キングとクイーンの猛攻を凌ぐのは至難の技だった。

 

 

 

レオヴァの侍たちが手強かったのには訳がある。

 

5~6人が1人の相手に斬り込み、10人ほどの後衛が弓や飛礫で意識を反らす。

 

この方法をレオヴァの侍達は洗練された動きでこなすのだ。

 

 

いくら実力が離れていようともバラされ、この方法を取られ続ければ赤鞘の侍たちの体力も薄れていく。

 

そして、800人でローテーションを組まれれば体力や集中力の消費から隙が出来てしまう。

 

 

その結果、致命傷に至る傷はないが

細かな傷が血液も体力も奪っていく。

 

じわじわと実力差を埋められていくのだ。

 

 

満身創痍が近づく赤鞘の侍たちを更に絶望させるのは

後方からたまに手を出してくるキング、クイーン、カヅチである。

  

 

赤鞘たちは皆、この侍たちを倒した(のち)に彼ら三人を相手にすることは出来ないのでは、と感じ始めていた。

 

だが、赤鞘たちは忠義の下に諦めず刀を振るっているのだ。

 

 

我らがおでん様がレオヴァとヒョウ五郎の首を獲ってくると信じて……

 

 

 

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おでんの攻撃を避けながら俺は見聞色の覇気を使って今の状況を把握し、おおかた満足していた。

 

 

予め鍛えておいた侍たちの布陣(ふじん)首尾(しゅび)よく運んでいる事や、ヒョウ五郎の想像以上の強さに笑みが溢れそうなほど順調だ。

 

 

正直、今回の戦い……俺はおでんに敗ける算段であった。

 

 

だが、敗ける事にも意味はある。

 

ヒョウ五郎と共に、おでんを満身創痍にまで追い込めれば、後は父さんがその首を討つ。

 

結果、父さんはまた反逆者を倒した守護者として"明王"の名声も高まり、父さんのおでんへの思い入れ(・・・・・・・・・)なんて言うムカッ腹の立つモノのフラグもへし折れる。

……と言う計画だったが、これは予定変更で良さそうだ。

 

 

このまま此処でおでんを討てば、父さんの記憶にも残らないだろう。

 

何より、俺が敗けるのも計算に入っている事は誰にも話してはいない。

ここはヒョウ五郎の士気を上げ、支援に回ろう。

 

数時間もかければおでんの集中の糸を切るのも容易くなるはずだ。

 

 

俺は見聞色を緩めることなく、戦場の把握とヒョウ五郎の"維持"に努めた。

 

 

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俺は(かつ)て信じていた者と刃を交えていた。

 

 

俺の信じたおでんはもう居ない。

 

俺がこれからを懸けていくべきはレオ坊ただ一人…!

 

 

あの幼さで未来を見据え、多くの者を導くべく努力を欠かさぬレオ坊こそが

この国の上に立つべきだ!!

 

 

鳴り止まぬ刀同士がぶつかり合う音を聞きながら俺は強く思う。

 

 

 

「……ッ…ヒョウさん、なんだってオロチに付く!」

 

 

「っ…馬鹿言うんじゃねぇよ…!!

おれはレオ坊についたんだ!

腐ったってオロチの野郎には(くだ)らねぇ!」

 

 

「じゃあ…ッ! 退いてくれ!!」

 

 

「アホ言うなァ!!

お前は此処で、おれが斬る!」

 

 

「……グッ……ヒョウさんッ…!

ならおれはアンタを斬るしかねぇ……!!」

 

 

おでんの攻撃が激しさを増す。

 

だが、レオ坊の技のおかげで何とか体力を保ててる。

……勝てるかもしれん いや、勝つ…!!

 

気合いを入れた一撃をおでんに見舞った。

 

 

「ぐお……!! く…ッ……」

 

 

膝をついたおでんに俺は勝ちを確信した。

 

こいつの…おでんの外で培った実力は本物だった…

少しでも、少しでもコイツにレオ坊と対話するっつう考えがあったなら……どれだけ早くこの国を取り戻せる…?

 

 

切り捨てた筈の考えがおでんの強さに触れ、俺の頭の中に浮かんだ。

 

 

なんておれァ馬鹿なんだ。

この一瞬の油断のせいで……レオ坊は…

 

 

 

 

 

あの時、急に俺は突き飛ばされた。

 

そして横に飛ばされながら見たのは、生涯ついていくと誓ったレオ坊が斬られる瞬間だった。

 

 

「ぐぉっ……レ、レオ坊ォ!?

 

 

おでんの最期の一太刀が届く前にレオ坊は俺を庇い

その攻撃を身に受けながらも体勢を立て直せるよう、おでんを吹き飛ばしたのだ。

 

俺は血を流すレオ坊の言葉に唇を噛み締めた。

 

 

「ゥ……ヒョウ爺ッ……致命傷は、ないな…良かっ…た!

 …ハァ……あとは、頼…めるか?」

 

 

完全に俺の油断が招いた失態だった。

それにも関わらずレオ坊は俺を責めない。

 

それどころか取り返しのつかないヘマを仕出かした俺を信じてトドメを預けてくれる。

 

この瞬間から俺は完全にこの身全てから"おでん"を捨てた。

 

 

 

俺は走り出し握り締めた刀を振り上げ、吹き飛ばされ体勢が崩れたおでんに渾身の一太刀を浴びせた。

 

 

そして、俺たちはこの戦に勝ったのだ。

 

 

 

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決戦が終わり、罪人たちを捕らえ(みやこ)へ向かう一同(いちどう)は皆がレオヴァ様のことで頭が埋め尽くされていた。

 

 

何故ならこの戦にてレオヴァ様が大きな傷を負ったからだ。

 

しかも、理由はヒョウ五郎親分の過失らしい。

 

最初はヒョウ五郎親分を責めるような言動をする者も多かったが

 

 

『皆、この傷は俺の油断でもあった…

だから責めるような真似は()してくれ

それに、なによりも皆と勝ち取った勝利を噛み締めたいんだ。

……共に戦ってくれてありがとう。この勝利は皆のおかげだ!』

 

 

『レ、レオ坊! おれァ…!!』

 

『うおおぉ~~!!レオヴァ様~!』

 

『レオヴァ様にこの忠誠を…!』

 

『『レオヴァ様万歳!!!』』

 

 

 

このレオヴァ様のお言葉を賜って以降、責める者も居なくなった。

 

 

それに考えてみれば目の前でレオヴァ様が、憎き罪人に斬られたヒョウ五郎親分の悔しさは筆舌に尽くしがたいだろう。

 

そう考えていたら、罪人を入れた(かご)を運ぶ俺たちの代表であるカヅチさんが本当に嬉しそうに声を発した。

 

 

 

「喜べお前たち!

レオヴァ様のお怪我は別段の問題はないそうだ…!

 

その報告を聞いて俺も周りの者達の表情も明るくなる。

 

 

「良かった…!レオヴァ様!」

 

「そうだ、レオヴァ様があれしきで倒れるはずがない!」

 

「ははは!おでんの攻撃なんぞレオヴァ様には効かんと言うわけじゃ!」

 

「そうか、そうか……!

レオ坊…大事なくて本当に良かった!」

 

「親分、涙拭いてくだせぇ!」

 

「ヒョウ五郎親分気持ちはわかるが、笑わねぇとなァ!

せっかくの勝利だ!レオヴァ様も仰ってただろ?」

 

「っ…おうよ!

よし、てめぇら!早く都へ戻ってレオ坊の顔見ようじゃねぇか…!!」

 

「「「「お~!!」」」」

 

 

 

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派手に包帯を巻き、キングと処刑の段取りを相談していたレオヴァの下にクイーンがドスドスと歩いてくる。

 

 

「よォ~、レオヴァ~!

……って随分ぐるぐるに包帯巻いてんなァ?」

 

 

「ん? あぁ、一応斬られた(・・・・・・)ワケだからな

……戦った感が出るだろう?」

 

 

「戦った感ってお前……まぁ急に傷無くなってたら侍共が驚くか」

 

 

「表面だけ広く斬らせて重傷に見せる意図がわからねぇ…

そもそもレオヴァ坊っちゃんに傷を残すってのが頂けねぇだろ」

 

 

「アレだろ?

お前の為に斬られてやったんだぜェ?っつーアピールだろ?

下っ端の為に体張る頭っての好きそうだもんなァ、アイツら」

 

 

「レオヴァ坊っちゃんが態々(わざわざ)体張んなくても信者どもは問題なく動きそうだがな…」

 

 

「まったく……二人とも人聞きが悪いぞ

おれのこの傷はおでんを倒す為に必要だったから受けただけだ

…まぁ使える要素だから皆からの信頼を得る為にも使いはしたが」

 

 

「倒すのに必要な傷…?」

 

 

「あぁ、おでんは甘い。

おれを斬った時も一瞬隙ができた、敵であっても子どもを斬るのを躊躇(ためら)ったんだろう。

その結果おれの攻撃を受けて体勢を崩した」

 

 

「体勢を崩す為だけならレオヴァ坊っちゃんが攻撃を受ける必要はないだろ。

ヒョウ五郎とか言う老いぼれにでもやらせりゃ良い」

 

 

「斬られたおれを見てヒョウ爺におでんへの未練を吹っ切ってもらう必要があったんだ。

……なんだかんだ想い出は引きずるモノみたいでな」

 

 

「成る程…あの老いぼれには、それだけの価値がある訳か。」

 

 

「ホント…使えるモンなんでも使うよなレオヴァはよォ

あー…けどよ、その傷残ったらカイドウさん怒るんじゃねぇの…?

おれブチ切れたカイドウさんにぶん殴られんの嫌なんだが……」

 

「クイーンのバカの言う通り…確かに責任を問われる可能性はあるか……」

 

 

「……そうだな、父さんには おれから説明しておく

それにおれの能力なら傷痕はいつでも消せるんだ、問題ない……筈だ」

 

 

「ちょ…!スゲェ歯切れ悪ぃな!?

マジで頼むぜレオヴァ~~!!

 

 

 

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今日(こんにち)、ワノ国中はある話題で持ちきりであった。

 

── それは光月おでんとその侍たちの処刑…!

 

 

今朝号外にて知らされたその事実に国民たちはざわついた。

 

 

 

「なぁなぁ!聞いたかよ、処刑の話!」

 

「あぁ、なんでもレオヴァ様を襲撃したとか……」

 

「許せねぇよなぁ!

オロチには屈しておいてッ!

民を助けて下さるレオヴァ様を襲うなんてよ…」

 

「金欲しさに襲ったって話だぜ!?」

 

「いやいや、権力が欲しくなったっておれぁ聞いたぜ?」

 

「レオヴァ様とヒョウ五郎親分のおかげでちゃんと捕まったらしい」

 

「けど、レオヴァ様は怪我をなさったとか……」

 

「それも部下を庇って斬られたらしいぞ!」

 

「おぉ、やはりレオヴァ様はお優しい御方じゃ…」

 

「いや~!それにしてもレオヴァ様と共に戦えた侍たちが羨ましいぜ!」

 

「拙者もレオヴァ様に(つか)えてみたいものよ……」

 

 

おでんの悪行に腹を立てる者

レオヴァの無事に心から安堵する者

戦った侍たちを賛美し、羨む者

 

町のいたるところから、この話が聞こえてくる。

 

そして一様(いちよう)に皆、おでんの処刑を今か今かと待ち構えていた。

 

 

 

 

だが、一方でおでんの処刑を聞き怯える者たちも居た。

 

 

「ど、どうする!?

バカ殿がレオヴァ様を襲って捕まったって…!」

 

「あああ……大恩あるレオヴァ様に報いるどころか……おれらの土地の大名が…反逆者なんて……レオヴァ様に合わせる顔がねぇよぉ!!」

 

「合わせる顔どころか、おれらも反逆者として捕まっちまうんじゃ!?」

 

「そ、そんな!?

おれらは何も知らなかったのに!」

 

「そんな言葉だれが信じるんじゃ……大名の反逆

……その土地の民であるワシらも当然同罪じゃよ…」

 

「冗談じゃねぇ!!

大名っつったって名ばかりだったじゃねぇか!

結局よぉ!飢餓に苦しむおれらを助けてくれたのはレオヴァ様だろ!?

レオヴァ様の為に死ぬならいい!

だけどバカ殿の為に死ぬなんざ御免だ…!!」

 

「お止しなよ!

もう、きっとレオヴァ様にとって私らも裏切り者さ…止められなかったんだ…それも罪さね……」

 

「ちくしょお……おれぁ、惨めに生きてきたけど……

それでも…レオヴァ様はおれみたいなヤツにも優しく接してくれたんだ……なのにっ!

ぅ、うぅ…あの方に裏切り者だと思われるのだけは…嫌だ!!」

 

「レオヴァさまは、ぼくたちのこと……嫌いになっちゃうの…?」

 

「せめて、なにか恩返しを……したかったねぇ…」

 

 

 

九里の村の人々は死刑宣告をされた囚人の様な顔で集まり、話し込んでいた。

 

 

反逆者として殺されるかもしれない恐怖

大恩あるレオヴァに報えなかった後悔

 

泣き崩れる者や、おでんへの怒りで拳を握り締める者

絶望し人形のようになっている者

 

どうしたら良いのか、どうなってしまうのか。

 

そんな不安で埋め尽くされた町に一人の男の声が響く。

 

 

「…九里城に攻め入ろう……!!」

 

 

「な、なにを……?」

 

「あそこには反逆者の残党がいるんだ!

せめて、せめて最期にお役に立ちたい!!

おれは反逆者の残党をレオヴァ様に捧げて死ぬ!

裏切り者としてレオヴァ様に裁かれるのは嫌なんだ…!」

 

「確かに…そうだ!

元を言えば奴らがレオヴァ様のお優しさに唾を吐いたのが悪いのだ!

拙者も助太刀いたす……!」

 

「だが……レオヴァ様がそれを望むのか…?」

 

「あのお優しいレオヴァ様が一家惨殺を望むとは思えんが……」

 

「…じゃあ聞くが

もしこの事件……レオヴァ様が殺されていたらどうする?」

 

「な!? え、縁起でもないことを言うな!!」

 

「レオヴァ様は怪我をなさったそうだ……あり得ない話じゃない…

レオヴァ様を殺そうとした奴らにかける慈悲など無用だ…!

 

「……うむ…そう…か、奴らレオヴァ様を手にかけようとしたんじゃ

許されることではないのぅ……」

 

みんなはどうする!?

このままレオヴァ様へ恩を返さず処刑を待つつもりか!?

 

「……おれは……」

 

「私……病気で倒れていたのをレオヴァ様の薬で助けられた…

だから、討ち入りに参加する…!

最期に少しでもレオヴァ様に報いたい!!」

 

「ワシもどうせ老い先短い人生……最期の命はレオヴァ様の為に使いたい」

 

「おれも…!」

 

 

どんどん賛成の声は広がっていき

九里の民たちは農具や数少ない武器を手に討ち入りの相談を開始した。

 

 

 

─── 光月が過去になるまでの時間はそう遠くはない

 

 




今回出た侍はオリキャラです、ビィクター博士的な感じになります。

詳細
黒炭 カヅチ (男)
元々、平民としての身分すらなかったならず者。
レオヴァに拾われた事に恩義を感じており、生涯を忠義に捧げると誓った。

今後、国開発に少し関わるだけのキャラです…

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