俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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今回人によっては胸くそ展開なのでお気を付け下さい!!

昨日投稿したばかりなのに凄いたくさん感想頂けて嬉しさの極み……!
1日5回しかgood押せなくてつらい……
頂いた感想読んでニヤニヤするのが日課になりつつあります……本当にありがてぇ…!!

感想で知性の塊みたいなオーラ発してる方が沢山いるので私は震えております……やべぇ…やべぇよ……スゲェ人達が感想欄にいるって……

後書きで来てた質問に答えてますので是非に……


処刑とその後

 

 

 

 

── "おでん一行の処刑は釜茹での刑で執り行われる"

 

 

 

それを聞いて私は都の死刑場へ急いだ。

 

おでん様を……助けたい!

 

 

 

みんなが倒れ、捕まった時

おでん様は薄れ行く意識の中で嘘をついてまで私を逃がしてくれた

 

本当はおでん様と共に死にたかった…

 

だけど、今わかった…!!

 

私が今捕まらずにいる意味……

それはおでん様を救出するためなんだ!

 

 

 

 

 

「おい、急げ!バカ殿の処刑始まっちまうだろ!?」

 

「ははは!釜茹でだってよ!

滅多にねぇ処刑法だろ?楽しみだなぁ!」

 

「釜茹でにする前におれに斬らせて欲しいぜ…

レオヴァ様に傷をつけた裏切り者をよォ……!」

 

「っとに、今さら刀を握ったかと思えば……

あのバカ殿…斬る相手間違えてんだよ

よりによってレオヴァ様にッ…! 斬るべきはオロチだろ!?」

 

 

 

 

 

あぁ…!イヤだ!!

どいつもコイツもおでん様を悪く言う!!

 

違う!

おでん様は今までみんなを守ってきたんだ!

 

オロチに騙されて……

 

 

私は頬を涙が伝うのを止められなかった。

悔しいっ…!!

 

確かにレオヴァとかいう子どもと手を組めば上手く行ってたかもしれない……だけど組まなかった。

 

何か理由があったに決まってる!!

 

 

…きっとオロチだ……オロチがまた汚い手を使って(おとしい)れたに違いない!

 

 

 

都の中を歯を食い縛りながら走る。

 

 

助けるんだ、おでん様を!

 

だけど、どうやって?

 

私一人で見張りを倒してみんなを救えるの…?

 

 

……無理…きっとすぐに捕まっちゃう

どうすれば……どうすればいいの?

 

イヤだよ…おでん様……

 

 

視界がボヤけ、嗚咽が抑えられない。

 

 

 

「おい、お前」

 

 

突然かけられた声に後ろへ飛び退いた

 

完全に油断した…!

さっきまでこの路地に人の気配なんてなかったハズなのにっ…

 

 

私はクナイを構え、声の主を見た。

 

 

「え、……こ、こども?」

 

 

そこには身体は大きいが、確かに幼さの残る子どもがいた。

 

ムスッとした、ふてぶてしい佇まいだけど悪意は感じられない

 

 

「……おまえ、ニンジャだろ」

 

 

「へ? な、なんでそう思うの!?」

 

 

突然現れた金髪の子どもに忍者だと言い当てられ私は動揺した

 

 

「…かわった服だ……それに手にへんな武器もってる」

 

 

……どうやら私の服とクナイを見てそう思ったみたいね

 

確かに布を羽織っただけだから動くと中が見えちゃうし……もっと変装できそうな服を手に入れ……

 

 

おい、 ムシするな…!

 

 

私の思考を邪魔するように子どもが叫んだ。

 

 

 

「…忍者じゃないわよ」

 

「………そうか…じゃあ何してるんだ?」

 

「あなたこそ、子どもがこんな所で何してるの」

 

「泣きながらぶつぶつ言ってたへんなヤツには、はなさない」

 

「そう……ならいい、私急いでるから…」

 

 

 

そうだ、こんな所で子どもの心配をしてる場合じゃないんだ!

早く、おでん様の下へ行って……

いや……その前に何か解決作を考えなきゃ…

 

 

 

子どもに背を向け歩き出そうとしたけど私は立ち止まってしまった

 

 

だって…何も浮かばないんだ……!

 

味方なんてこの国には居ない…みんなおでん様を反逆者だと悪く言う…

 

誰も…………私の話を聞いて協力しようなんて人は……

 

 

 

「レオヴァさんは "びょうどう" だぞ」

 

 

子どもの口から発せられた名前に驚き、私は振り向いた。

 

 

「……あなた……何者?

なぜ、私にそんな事言うの……?」

 

 

「レオヴァさんは最後まで おでんを

そんちょう しようとしてた

だけど、それをムシしたのは おでんだ

……バカ殿とよばれても、しょうがないヤツだな」

 

「っ……違う!!

おでん様はバカ殿なんかじゃないっ……!」

 

 

気づいたら私は激情のまま子どもを押し倒して叫んでた

 

押し倒された子どもは呻き声1つ上げず、私をじっと見つめる。

 

 

 

「レオヴァさんは、"びょうどう" だ」

 

 

 

レオヴァ……あの真っ直ぐな目の子ども…

おでん様を倒した相手…

 

だけど、最初はおでん様と対話を望んでたって……

……本当はおでん様を処刑するなんて望んでないのかもしれない

 

だって……だって殺したいなら、あの時に気を失ったおでん様を部下に命令して殺させれば良かったんだ

…なのに殺さなかった。

 

 

───彼は……"平等"…なの?

 

 

 

「あなた、彼が……何処にいるのか分かるの?」

 

「……会うのか?」

 

「会う……会って、頼みたいの……」

 

 

「そうか、レオヴァさんが喜ぶ」

 

「……え?」

 

 

 

そこで私の意識は途切れた。

 

 

 

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目を覚ますと私は知らない天井に見下ろされていた

 

意識がまだハッキリしない……なんで、私は…?

 

 

 

「おはよう……しのぶ…だったか?」

 

 

優しい、落ち着く声だった。

 

私は痛む頭を押さえながら起き上がる。

 

 

「……あなたは……レオ、ヴァ…?

なんで……ここに」

 

 

「話がしたかったんだろう?

……ジャックが手荒な真似をしてすまなかった

痛むなら氷を持って来ようか?」

 

 

綺麗な顔をした少年は申し訳なさそうに眉を下げている

 

 

「ジャック……?」

 

「あなたと話してた子の名前だ

……おれの弟のような子なんだが、少しやり方が荒くてな…」

 

 

少年の隣で無愛想に佇む、あの大きな子どもに私は連れて来られたみたいだ。

 

この少年は柔らかい雰囲気だ……けど本当に信用できる…?

いや、迷ってる暇はない……言うなら今しかない!

 

なにより私は殺されずに生きてる……!

きっとこの少年なら話を聞いてくれるはず!

 

 

私は心配そうにこちらを覗き込む少年に息をするのも忘れて話した。

 

 

「聞いて……!

おでん様はオロチにハメられてたの!

オロチは人質をとって……それでっ……おでん様はみんなを守るために裸踊りをしてっ…!

バカ殿に見えるように振る舞って……誰にもそれを言わずに!

ずっと…ずっっと一人で抱えて戦ってたんだ……!

それなのに…っ…!オロチは約束を、無かったことにッ……

だからぁ……う"ぅ"……おでん様の処刑をっ…取り止めて!

きっと………いや絶対に!おでん様がいれば、オロチなんてすぐに倒せるんだ!!

あなたもオロチを倒したいって……民を思う気持ちはッ…おでん様と同じ…だから……!…ふっうぅ……ぅ"う"」

 

 

もっと言いたいことはあるのに

私は嗚咽で言葉が紡げなくなっていく。

 

駄目だ、ちゃんと言わなきゃ……!

おでん様の処刑は間違ってるって……!!

 

 

だけど思いと裏腹に涙は止まってくれない。

 

嗚咽で震える私に彼はそっと毛布をかけて優しく背中をさすってくれる。

 

 

 

「……そうか……おでん殿は…脅されていたのか」

 

 

「そ"う"なの"……!!」

 

「それは…皆知ってるのか?」

 

「っ……う"うん……知"らな"い"っ…!

おでん様は一人でっ……ずっと"…かかえ"て"……」

 

「じゃあ、しのぶとおでん…

2人だけしかこの事実を知らないんだな(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)…?」

 

「う"ん"っ……だって…おでん様が……黙ってた"ことを"…私が周りに言う"なんて"っ……できなくて……!」

 

「そう、か……辛いのに良く耐えたな…

……誰にも言わずに……本当に…」

 

 

 

ずっと、ずっと欲しかった言葉だった。

誰にも言わず、光月家を裏切った忍者軍たちに追われながらも耐えてきた。

やっと支えられると思ったおでん様は捕まり……一緒に逝くことすらも許されず。

 

 

 

だから彼の態度に心から私は安堵した。

 

だって彼は私の話を聞いてくれた!

おでん様の本当を知ってもらった!

 

 

──この少年なら、おでん様を助けてくれる…!!

 

 

 

 

 

涙で薄れる視界で必死にレオヴァを見ると

──── 彼の微笑みは消えていた。

 

 

 

「……侍や忍者ってのは本当に忠義に厚くて助かる。

ずいぶんと手間が省けそうだ」

 

 

「……えっ…」

 

 

 

 

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ジャックは久々のレオヴァからの仕事に喜びが抑えられずにいた。

 

最近は兄御たちの遠征に付き添うばかりで、レオヴァとの時間は以前の半分以下だ。

 

決して兄御たちとの遠征が嫌なワケではない

なによりジャックは真面目な性格だ

戦闘経験を積むことに余念はない。

……ただ、少しレオヴァの役に直接立ちたいという欲があるだけなのだ。

 

 

そして、昨日のおでん討伐にも呼ばれず気落ちしていた時だった。

 

突然戦闘から戻って来たレオヴァがジャックに仕事を任せたのだ。

 

 

 

『ジャック、この女を探してくれ

おそらく都の処刑場から500メートル以内に潜伏している

……無理やりじゃなく、おれに会いたいと言わせるんだ』

 

『わかったレオヴァさん…!!

……でも、どうやって会わせたいって…』

 

『そうだな……まず、おでんを悪く言って怒らせろ

そうしたら女はヒステリックになるだろう。それが本人確認にもなる。

……で最後におれは平等だとでも言えば誘導できる可能性が上がる筈だ』

 

『おでん悪くいう…レオヴァさんはびょうどう……?』

 

『そうだ。あまり難しく考えなくて良い

なにもしなくとも、どうせ心身共に限界だろうからな』

 

『うん、わかった

任せてくれ、レオヴァさん!』

 

『あぁ、頼むぞジャック』

 

 

 

レオヴァからの久々の任務にジャックは張り切った

直ぐに城を飛び出し捜索を始めた。

 

 

そして、開始から2時間かけボロボロの女を発見。

 

その後一時間ほど観察し、ほぼ確信へ変わった。

 

 

「……レオヴァさんの言ってたヤツだ…まちがいねぇ……」

 

 

女が路地裏に入ったタイミングを見計らい声をかけた。

しかし、上手くいかず女は立ち去ろうとしてしまう。

 

 

そこで焦ったジャックは思わず言われていた言葉を口走ってしまった。

 

 

『レオヴァさんは "びょうどう" だぞ』

 

 

しまった!順番を間違えた……!

と焦るジャックだったが、女は立ち止まり此方を見た。

 

今しかないと、ジャックは畳み掛けるように おでんを悪く言った

 

 

そして、あれよあれよと言う間に

気づけば女はレオヴァに会いたいと言ったのだ。

 

 

(やっぱりレオヴァさんはすごい……!

なんでかわからねぇが、言った通りになった!)

 

と喜んだジャックは目にも留まらぬ早さで頭部を殴り気絶させ

ぐったりした女を担いでレオヴァの下へ向かった。

 

 

 

 

 

そしてレオヴァからの指示で、無様に泣き崩れながら毛布にくるまり

此方に気付きもしない警戒心のない……女の首を落とした。

 

 

 

 

「……よし、ジャック 完璧だ。

これであとは九里へ向かいキングに合流すればいい」

 

 

ジャックの頭を撫でながら満足げに笑うレオヴァ。

 

褒められジャックも満更でもないようだが、1つ疑問があった。

 

 

「…レオヴァさん、なんでこの女だけ別でつかまえたんだ?

まとめて処刑すれば楽だ…です!」

 

「ん…? ジャックもこの女の話を聞いてただろ?

外に洩らされちゃ困る話(・・・・・・・・・・・)を知ってたんだ、無闇に口が利ける状態で大衆の面前にはだせねぇ…

それに他の人間に話してる可能性もあった

確かめる為には個別で話す必要があったんだ…わかるだろ?」

 

「たしかに…作戦がダメになるのは良くない

…そうか、それでレオヴァさんは…」

 

 

納得いったという様に頷くジャックを見て、理解力の高い弟分の姿に嬉しげに微笑みながら、またレオヴァは少し下にある頭を撫でた。

 

 

「万が一ってこともある、念には念をだ。

なにより侍にこの仕事は頼めない…ジャックだから頼んだんだ」

 

「おれだから…?」

 

「あぁ、身内の前でなら取り繕う必要もないだろ?

皆の前でだったら、この女を殺すのにも理由をつけないと…だからな」

 

「…? 殺したいなら殺せばいい

それでレオヴァさんに文句いうヤツがいるなら、おれが…!」

 

「ふふ……ジャックありがとう。

おまえは本当に優秀だな、おれも鼻が高い。

けど、そうもいかねぇ…まぁコレも父さんの役に立つ為なんだ、多少の面倒は請け負わないとな」

 

「そう…なのか

レオヴァさんはムズかしいこと考える…」

 

「ジャックももう少し大きくなれば解る

……と、そろそろ行くか

後片付け任せるぞ、ジャック」

 

「あぁ、キレイにする!

いってらっしゃい、レオヴァさん」

 

「行ってくるよ、ジャック」

 

 

レオヴァは張り切るジャックに微笑みながら声をかけると九里へと向かって飛び立って行った。

 

 

 

 

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光月おでん

その男の最期は見るに堪えないものだった。

 

 

釜茹での刑を言い渡され、処刑台に上がれば民衆からの大バッシング。

 

 

最期の頼み

 

『チャンスが欲しい…!

十人全員で釜に入る

もし決めた時間耐えきった者がいたら

 …解放してくれ!!』

 

 

その言葉を聞いた周りの民衆は石を彼に投げつけた。

 

 

『往生際の悪い…!!』

 

『最期までみっともねェぞ!』

 

『早く罪を償え…!』

 

『レオヴァ様への謝罪もねぇのかッ!』

 

 

口々に民衆は彼を罵倒する。

 

オロチは笑い、カイドウは不快さを露にした。

 

 

『ムハッハッハ~!馬鹿か!一瞬で死ぬ処刑だぞ!?』

 

『……おれの息子を斬りつけておいて…ふてぶてしい野郎だぜェ…』

 

 

 

だが、おでんは折れない。

 

『おれは生きねばならない』

 

 

『…………フン…おい、時計をもってこい!

 …1時間だ、耐えて見せろ…!!』

 

 

その言葉を合図に光月おでんの1時間に及ぶ公開処刑が始まった。

 

 

 

そして、1時間後

民衆の怒り、憎しみを一身に受け

皆に死を望まれながら息を引き取ったのだ。

 

 

 

主君の死と引き換えに赤鞘たちは処刑を免れ民衆を掻き分け走り出す。

 

だが、民衆はそれを良しとしなかった。

 

 

(みずか)らの主君を足蹴にする武士の恥じめ……!』

 

『カイドウさまっ…!どうか赤鞘に天誅(てんちゅう)を!!』

 

『おれが斬り伏せてやるっ!』

 

『ワノ国始まって以来の最低の犯罪者どもだ!』

 

 

民衆の意思はひとつ。

反逆者を裁き、平和な国を……!

 

 

カイドウは猛々しく笑う。

 

『ウォロロロロ~!さすがレオヴァ…愛されてやがる

…国中が望むなら……罰を与えるべきだよなァ…!!』

 

 

龍となり飛び立つカイドウを民衆の歓声が送り出す。

 

 

『カイドウさま~!!』

 

『我らが明王…!

どうか悪人どもの首を!!』

 

『おお~!さすが明王さまじゃ!

ワシらの声にお応えくださるとは…!』

 

 

 

遠くなる龍をオロチは唖然と眺めていた。

 

 

 

 

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釜茹で地獄から生還した彼らは死に物狂いで走った。

 

速く、速くトキ様たちの下へ…!

 

 

だが追ってくるカイドウとその部下たち相手に数名が離脱。

 

なんとか森の中を必死に走り抜けた赤鞘たちが九里へ行きつくも、目に入ったのは燃え盛るおでん城であった。

 

 

 

『と、トキ様ぁ~!』

 

『モモの助さまっ…!』

 

『ひより様ァ!!』

 

『なぜっ!どうなって…!?

康イエ殿たちが此処を守ってくださっていた筈ではないのか!?』

 

『狼狽えるよりも探すのが先だろう!?』

 

『やめぬか!言い合っている時間が惜しい!』

 

 

 

 

城の瓦礫をかき分け進んだ赤鞘が目にしたのは

無惨に殺された霜月康イエの遺体を(なお)も斬りつける町人たちであった。

 

 

『っ…!?

な、なにをしている!』

 

『康イエ殿から離れぬかァ…!』

 

 

町人たちを体当たりで突き飛ばす。

 

康イエの遺体は僅かに纏う服でのみ本人だと確認できる酷い有り様だ、顔は原型を留めず…さらには五体不満足の状態である。

 

 

 

『な、なんと惨いことを……』

 

『康イエ殿っ……!』

 

『お前たち!

なにをしたのか解っているのか!?』

 

 

 

赤鞘たちの叫びに

町人たちの顔が怒りに満ちる。

 

 

『なにをしたのか……だと?

それはお前らだろう!?』

 

『そうだ…!!

レオヴァ様への反逆などと……恩知らずめ!』

 

『恩を仇で返した貴様らと違い我らは恩に報いるべく戦っているんだ!』

 

『貴様らのせいで……おれたちはァ…!!

レオヴァ様にっ…見放されるんだ……死んで償えよォ!?』

 

 

焦点の合わない町人たちが農具を手に襲いかかる。

 

 

『っ……く!』

 

『…こうなれば……致し方あるまい!』

 

赤鞘の一人が床に刺さっている刀を抜き構えた。

 

 

『おい!?斬るつもりか!?』

 

『…どうしようも…ないだろう!?』

 

 

赤鞘の男は町人たちを次々と切り捨てる。

 

 

『グゥ……痛ェ……!』

 

『ちくしょう……ちくしょ…すま、ねぇ…レオヴァ様ァ……』

 

『お前らなんぞ…にっ……』

 

『呪ってやる……ぜったいに…ィ!!』

 

 

斬られた町人たちは口々に呪詛を吐く。

 

 

赤鞘たちは拳を握りしめながらも奥へと進む。

 

 

喉が焼けるような煙を吸いながらも歩み続けると

怒鳴り声と泣き叫ぶ声が聞こえてくる。

 

 

赤鞘たちは走り出し声の下へと急いだ。

 

 

 

『『モモの助さまっ…!!』』

 

 

そう叫びながら部屋へ飛び()ると

そこでは必死にモモの助とひよりを庇うトキの姿があった。

 

町人たちは囲む様に立っており責めるようにトキを怒鳴りつけている。

 

 

『反逆者の残党め…!』

 

『楽に殺すな!

しっかり苦しませてからだ!

これは“罰”なんだ!』

 

『レオヴァ様への懺悔がまだだ!』

 

『トキ様はバカ殿とは違うと思ってたのにっ…!

あんたも裏切り者だ!あんたらが居なきゃ私たちはレオヴァ様に守って頂けてたんだぁ!!』

 

『貴様らの首を持っておれたちはレオヴァ様へ恩を返す…!』

 

 

ジリジリとにじりよる町人たちを赤鞘は後ろから斬りつける。

 

 

『貴様らァー!!

トキ様たちから離れろ…!!』

 

『トキ様っ……遅くなり申し訳ございませぬ!!』

 

『な、なんとお痛わしいッ…!

貴様ら、よくもっ!』

 

 

部屋にいた町人たちを全て斬り倒し、赤鞘はトキたちの下へと走り寄る。

 

そして、赤鞘の一人が腕を失い立つのがやっとだったトキを抱き抱える。

 

『みんな……ごめんなさい…ぅ……』

 

『母上ぇ~~!!』

 

『うえ~~んヤダよ、母上しなないで~!!』

 

『『『トキ様っ…』』』

 

 

『き、聞いて……まだ、逃げる場所はある、の…

……みら、い……あなたたちを…未来へとばすわ

…わたしの、最期の……力で』

 

『それは…!?』

 

『未来!?トキ様、一体なにを!』

 

『さ、最期……そんな…母上!』

 

『うう……やだ、やだよ……母上ぇ……』

 

 

トキは優しく子どもたちを抱き締めると

最期の力を振り絞り、希望を未来へと託した。

 

 

 

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「………赤鞘の死体がない…か」

 

 

九里へ到着したレオヴァは頭を抱えた。

 

報告によるとキング達が攻め入る前に、(すで)に町人達による討ち入りがなされていたと言う。

 

 

これは想定外の事態であった。

 

本来であればレオヴァは此処で赤鞘を全員殺し、少しでも不安要素を消すつもりでいたのだ。

 

 

不安要素は少しでも減らしたい。

だからこそレオヴァはわざわざ出向き女忍者を処分したのだ。

 

だが、それが裏目にでた。

 

 

キングならば問題ないだろうという油断もあったのかもしれない。

 

 

キングも町人(もろ)とも殺す事も考えたが、レオヴァが積み上げた信頼を自分が崩して良いのだろうか?計画を狂わせることになるのではないか?

という考えが先行し、結果後手に回ってしまったのだ。

 

 

 

最初の一言以降真顔で黙り込んだレオヴァにキングは瞳を揺らした。

 

 

「……すまねぇ…レオヴァ坊っちゃん」

 

 

キングの謝罪に今度はレオヴァが瞳を揺らす。

 

 

「いや、キングが謝ることじゃねぇ…!

ここまで考えが至らなかったおれの落ち度だ

民衆の暴走も予め視野に入れられた筈だ…

…にも関わらず、そのパターンの指示を伝えられなかった…

キングが動けなかったのはおれの作戦を案じてなのは理解してる

おでん、トキ、康イエの死体はあるんだどうにでも出来る(・・・・・・・・)

……それにこの暴走を上手く使えば今後に役立つ可能性すらある…

…そうだ、問題ない……プラスに変えればいい…それだけの事だ」

 

 

「……レオヴァ坊っちゃん。

フッ…敵わないな…」

 

「ありがとう、キング

では、挽回させてもらうとしよう…と、その前に隠蔽工作だな」

 

「隠蔽工作…?」

 

「あぁ、赤鞘の死体が出なくても不思議じゃない状態にする」

 

「なるほど、現場を作り替えて都合の良いように事実を魅せるわけか」

 

「そうだ

キングは話が早くて助かるな」

 

「なら、カイドウさんに頼むのが一番…か」

 

「そうだな、父さんに頼もう。

……なにより明王の(おこな)いならば民衆も喜ぶだろう」

 

「一瞬でその考えが出来るのはレオヴァ坊っちゃんくらいだろうな」

 

「そんなに褒めないでくれ、照れるだろう…」

 

 

流石だとマスクの下で笑みを浮かべたキングに、レオヴァも小さく笑みを返す。

そして、次の行動が決まったレオヴァはカイドウの下へ行き、隠蔽工作について話しをした。

 

 

「そうか…!

なら、おれに任せてレオヴァは次の策に行け!

……キング、お前はおれと来い!」

 

「あぁ、カイドウさん…!」

 

 

「父さん、キングあとは任せる」

 

 

二人の背を見送ると、レオヴァは城から運ばれた瀕死の町人らが集まる場所へ向かった。

 

 

 

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下町の広場は屍のような人間で溢れかえっていた。

 

怪我で呻く者、この後の絶望へ身を震わせる者

……皆さまざまだ。

 

もちろん俺もその一人だ。

 

 

討ち入りに参加したが結局、赤鞘に討たれ…

討ち取れた残党は康イエだけだった

 

斬られて内臓が見えかかった脇腹を押さえ、耐える。

 

 

何故怪我人含め町人全員が広間に集まっているのか

その理由はただ一つ。

 

─── レオヴァ様が此処にいらっしゃるからだ。

 

 

城で倒れてた俺たちはキング様の連れている部下の人たちに避難させてもらった。

 

なんでもカイドウ様が直々に罪人を罰しにくるらしい。

……そう、罪人を罰する。

 

 

俺たちはきっとこの後訪れるレオヴァ様から罰を言い渡されるんだ…

 

みんなレオヴァ様を心から敬愛している

だからこそ屍の様になるのだ……

 

 

だけど、俺はレオヴァ様に裁かれるなら本望だった。

 

……赤鞘の攻撃で死ぬなんて御免だ…!

せめて、レオヴァ様の手で…なんて思う俺は強欲なんだろうな…

 

 

 

燃え盛る九里城の鳥居の上に黄金に輝く美しい巨鳥が現れる。

 

キラキラと美しいその生き物は鳥居の前へ降り立ち、いっそう輝いたかと思うと人の姿へと変わった。

 

 

ああ……レオヴァ様だ!!

 

 

俺もみんなも涙を流しながらレオヴァ様をただ見つめていた。

…俺たちに相応しい処分を下していただける瞬間を待つように。

 

 

 

 

だがしかし、罰を下される瞬間はついに訪れなかった。

 

レオヴァ様は俺たち怪我人を見るや否や血相を変えて手当てしてくださったのだ。

 

数十人もの怪我を必死に手当てし、優しいお言葉をかけてくださる…

 

みんな、これは夢なのではないかと思った。

 

実際、自分の顔を殴り現実か確かめている者もいた。

レオヴァ様は、そんな自分の顔を殴りつけた者の側へ行き、優しく語りかけ、あのいつもの痛みを和らげる力を使ってくださってすらいた。

 

『自分を傷つける真似は止してくれ…大丈夫、大丈夫だ。

皆の不安に気付けなかったおれを許して欲しい……すまなかった…

もう、なにも恐れなくて良いんだ

これからは、おれが皆を守る……おれと共に来てくれるか?』

 

 

そう言うと微笑み、安堵から泣き崩れた町人の背を優しくさすっていた。

 

 

俺は目がおかしくなるほど泣いた。

いや、周りに泣いてないヤツなどいなかった

大人も子どもも脇目もふらず泣いた。

 

レオヴァ様は俺たちを本当に、本当に大切に思ってくださっていたんだ…!

 

バカを止めることもできない、討ち入りすら成功させられない…どうしようもない俺たちをレオヴァ様はっ…!!

 

 

止めることの出来ない涙が枯れるまでレオヴァ様は俺たちに寄り添い、怪我人の体を労りながら側にいてくださった。

 

 

そして、俺たち九里で生きるすべての者はレオヴァ様の民となった。

 

そう、これ以上ない幸福だ。

 

 

レオヴァ様が九里を治めてからは、昔が嘘のように食べ物とみんなの笑顔に溢れる町になった。

 

 

近くには武器工場ができ、町の男たちはこぞって参加した。

工場にはあの有名な編笠村の職人が多数きて素晴らしい技術を教えてくれる。

 

 

まぁ、俺も例に洩れずに給金もよく、みんなから一目おかれる職人という仕事に憧れている。

 

最近なかなか筋がいいと編笠村の職人さんに言ってもらったんだ!

 

 

しかも様子を見にいらっしゃっていたレオヴァ様にお褒めのお言葉を頂けたこともあった…!!

 

 

『真面目な良い職人になりそうだと聞いたんだが

……言葉通りみたいだ、この刀…始めて1ヶ月半とは思えない出来だな』

 

『そ、そんな!

おれなんて!まだまだヒヨっこで……けどレオヴァ様に報えるように、もっと良い刀作れるよう頑張ります!』

 

『…ふふ、謙虚だな

 お前の自信作を見れる日が今から待ち遠しい…楽しみにしているぞ?』

 

 

あぁ……間違いなく俺の人生において最高の瞬間だった。

 

 

とにかく地獄は去ったのだ…

いや!去ったと言うのは正しくないな……

正確にはレオヴァ様が地獄から引き上げて下さった。

 

そう、レオヴァ様が俺たちを救い上げ守ってくださるからこその平和なんだ…!!

 

 

なにも恐れることはない。

だってレオヴァ様が俺たちを守ると約束してくださったんだから。

 

 

 

…いつかレオヴァ様がこの国の上に立ってくれりゃ……

 

 

 

 

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── 処刑執行後、数日のワノ国にて。

 

 

やはりどこもかしこも話題は同じである。

 

 

 

 

「おいおい聞いたか!

カイドウ様の一撃で赤鞘たちは木っ端微塵だとよ!」

 

「へっへっへ 聞いたぜ!

流石は明王様だよなァ…!城も跡形もねぇんだと!」

 

「そりゃ良い!あんな城が残ってちゃ腹が立ってしょうがねぇよ」

 

「ハッハッハッ…!そりゃ違いねぇ!」

 

 

 

 

「カイドウ様は怒りで加減を忘れちまったとか……」

 

「そりゃそうじゃ!レオヴァ様に刃を向けたんだ

ワシだって怒りで可笑しくなりそうだと言うのに……

カイドウ様からすれば自分の息子じゃろ?

そんなの計り知れないほどの怒りにきまっとる!」

 

「本当にレオヴァ様もカイドウ様もお互いを大切にしてる良い親子だよなぁ!」

 

「そうそう!

レオヴァ様はカイドウ様の話をなさる時ほんとうに嬉しそうな顔するんじゃ!

いやぁ、普段との差が……つい可愛く見えてしまうのぅ」

 

「お前も歳だなぁ!

まぁ、そりゃお前から見りゃレオヴァ様は孫くらいの年齢だしなぁ!はっはっは」

 

 

 

 

「九里の奴ら無罪だとよ!」

 

「えぇ!?いいのかよ……

あいつらバカ殿の謀反知ってたんじゃないのか…?」

 

「知らなかったらしいぞ…

それにあのバカ殿の城に討ち入りまでしたとか」

 

「討ち入りぃ!?

…なら知らないってのも本当かもな……」

 

「けど討ち入りは失敗して男どもは、みんな死にかけだったそうだ……」

 

「え、じゃあ九里の人間は殆ど死んじまったのか?」

 

「いや、レオヴァ様は怪我の手当てして全員の話聞いて回ったんだってよ!

もう大丈夫だって優しく声までかけて下さったと九里のおっさんが言ってたの聞いたんだよ!」

 

「おお……流石はレオヴァ様だ……なんてお優しい!」

 

「しかも、これから九里を治めるのはレオヴァ様になるって話だ!」

 

「えぇ!? くそぉ!羨ましいなぁ!」

 

「だよな!?

あ~…おれ九里に住もうかな……」

 

「編笠村がいっぱいで駄目だったからって次は九里かよ!」

 

「なんだよ、お前も九里行きたいだろ?」

 

「………そりゃ…九里行きてぇよ…」

 

 

 

 

 

この話は人伝(ひとづて)に次々と広まって行き、ワノ国に知らぬ者は居なくなっていた。

 

 

光月は過去の卑しい反逆者の名となり

 

カイドウ、レオヴァの名は希望として広がっていった。

 

 

 




質問お返しコーナー

Q.レオヴァのおでん様への評価はどんな感じなんでしょうか?

A.考えの足りない甘い人物、しかし強者。
レオヴァ的には絶対的にカイドウと関わらせたくない人物でしたが
死んでしまったのでレオヴァの記憶からは“ほぼ”消えました。
レオヴァは生きていて、価値のある人物以外には基本無関心なので


Q.現時点でのレオヴァ様の強さってどれくらいですか?

A.おでん処刑時点で16歳なのですが、実力はヒョウ五郎の7割ほどです!
悪魔の実のタフさと狡猾さ、得意の見聞色でじわじわ攻めておでんを落とした感じでございます!

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