転生したら赤ん坊
俺はマフィアの幹部としてファミリー、そしてボスである父親の為に今日もいつも通り任務をこなしていた。
愛用している戦斧を片手に抗争を終わらせた俺のもとに父親から連絡が入った。
「…はい、俺です。
この時間に電話とは……何か問題でも?」
「いやぁ、急で悪いな 息子よ!
すぐに○○○○まで来てくれ!大事な用があるんだ」
「わかりました。
直ぐに参ります」
電話を切ると早足で指示のあった場所へと向かった。
この時まで俺は父親のことを少しは愛していた。
金に執着し、母親に愛想をつかれ息子を道具の様に扱う最低な男ではあったが、俺はたった一人の家族に必要とされたかったし、なんだかんだ父も自分を息子として愛してくれていると思っていた。
──── その父親に頭を撃ち抜かれるまでは……
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俺は少しの騒がしさと眩しさを感じながら眠さを押し殺し ゆっくりと…目を開けた
───── そこは海の上だった。
俺はどうやらサークルベッド……と言うには少し荒い作りの木枠の毛布の中にいた。
なぜ、俺は此処にいるのか。
なぜ、生きているのか。
全くもって理解が追い付かない状況である。
焦り散らす俺の心とは裏腹に
空は澄み渡り、日の光は暖かに降り注ぎ、耳をかすめる海の音も言い様にないほど美しく まるでファンタジーの様に素晴らしい世界だ
……ただ一点、騒がしい野郎どもの声を除けば。
やっとのことで船の上にいることは理解できたが何故、自分が赤ん坊になっているのか
そして この船が“なんの船“なのかも解らずにいた。
このままでは埒が明かないと思った俺は起き上がろうと思ったのだが、どんなに力を込めてもジタバタと足が動くだけに終わった。
次は喋れるか試してみたのだが、言葉にならない声がでるだけである。
「ぁう あ~……(何もできねぇ…)」
「お、なんだ。 起きてるじゃねぇか!」
「ぁう!?(なんだ!?)」
何も出来ずに落ち込んでいると、急にまん丸でゴーグル?の様なモノを着けた男が俺を見下ろし大声を出した。
「おい。大声だしてんじゃねぇよ
泣き出したらどうするつもりだ。」
「ったく、口うるせぇなぁ キング!
カイドウさんの子なんだろ?
そんな簡単に泣かねぇだろ。」
「クイーン…お前はバカか?
赤ん坊なんてちょっとした事で泣き出すもんだろ」
「あ"ぁ"!? 誰がバカだと!
よし、ぶっ殺す。」
「やんのかァ…? 相手してやる。」
「オイ! てめぇら、おれは ここで暴れるなと言わなかったか!!」
「!?」
「「か、カイドウさん…!
すみません…」」
さっきまで恐ろしいほどの殺気を放っていた大男二人だったが、今部屋に入ってきた更に大きな男の一声でその殺気は一瞬にして散っていった。
カイドウ…さん?……かいどう…クイーン……キング…?
───百獣のカイドウ!!?
そのカイドウと呼ばれた大男は俺が生きていた世界で有名な少年漫画 “ONE PIECE“ に出てくる“百獣のカイドウ“にそっくりであった。
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あれから1週間経ってわかった事を俺は頭の中でまとめている。
まず、ここはONE PIECEの世界であるらしいと言うこと
此処は海賊船であるということ
カイドウやキング、クイーンを冷静になって良く見たら俺の知っている姿よりも大分若いということ
たぶん、カイドウは27~30歳くらいではないだろうか?
なので俺は原作開始よりもだいぶ前の世界ではないかと予測している。
そして、これが一番驚いた。
いや、未だに信じられないのだが……
──俺は百獣のカイドウの息子だった。
最初は
『息子!? 俺はヤマトになったのか!!?』などと頭の中が大混乱状態であったがヤマトにしては生まれるのが早い気がするし、何より性別が男であった為
俺=ヤマト説はなくなった。
ずっと息子だと言う事実を信じられずにいたのだが
あのクイーンやキングが世話を頼まれているのをみるに、本当に俺はカイドウの息子なのか…と自覚せざるを得なかった。
海賊か……
しかも、カイドウの息子…なんかちょっとした事で殺されるんじゃ……と自分の運命を呪っていたのだが、この1週間で少し前向きな気持ちになりつつあった。
その理由はカイドウ……父さんにある。
父さんは1日に数回、俺の様子を見に来る。
それだけでも衝撃的だった……てっきり放置されるか殺されるとばかり思っていた俺にとって様子を見に来る、しかも1日に何回もというだけでイメージは変わった。
ただ、それだけではなかった。
父さんは俺が起きていると声をかけてきたり
ゆっくりと、本当にゆっくりと指を俺の方に近付けてくるのだ。
最初こそ なんだ!? とパニックになりかけた俺だったが軽くそっと俺の手に触れるとすぐに離れて行ったため危害を加えようとしたのではなく、触ってみた…いや、“つっついてみた“ だけのようだった。
何日もそれを繰り返し、ふれあい?を続けていたのだが
この前たまたま掴めそうな位置に父さんの指が来た。
ほんの出来心でその指を握ってみたのだが……
なんと…あのカイドウが目を見開いたあと微笑んだのだ…!
──まぁ、微笑んだと言うには あまりに凶悪さの滲み出る笑いだったが……あの見た目なのだからそれは致し方無いだろう。
だが、俺にとってはずっとあった心の隙間が埋まった様な瞬間だった。
前の世界で必要とされたかった、愛されたかった俺にとってカイドウ……父さんの笑顔は望むモノだったのだ。
不器用な父さんとのやりとりは俺に十分に家族愛を教えてくれた。
結果、俺はカイドウのことを父さんと呼ぶに至った。
………まだ喋れないから心の中での話だが。
パタパタと足を動かしながらそんな事を考えているとバタンッと大きな音が聞こえた。
ん~……この足音は父さんだな?
思った通りサークルベッドの様な場所で毛布にくるまれている俺を覗き込んで来たのは特徴的な髭のある勇ましい顔だった。
「レオヴァ、昼飯は食ったのか?」
「ぅあ~ まっ!(食べたよ父さん!)」
「ウォロロロロ! 減ってはなさそうだなァ!」
そう言いながら俺の寝ている場所の隣に腰掛けた父さんの方を向こうと頑張ってみるが、やはり上手く体を動かせなかった。
もだもだしてる俺をみて父さんが変わった笑い声をあげるのを聞いて また、俺は暖かい気持ちになった。
父さんとのやり取りを通じて俺、
── レオヴァはこの世界で今度こそ後悔のないように生きると誓ったのである。
補足知識欄
読んでも読まなくても良い転生前のプロフィール
38歳のマフィア幹部
ファミリーの為に率先して戦斧を使い全線にでる為、その世界ではそこそこ名のある男であった。
【前世】
中位に属するマフィアのボスの一人息子で、幹部としてファミリーに貢献していた。
父親はボスであり、たった一人の家族だったが、金使いが荒く組織の利益よりも自分の欲望を優先するタイプだった為、男主が組織の資金調達や部下の不満解消など世話しなく駆けずり回る日々であった。
身を粉にして家族、組織の為に戦い、時には金策を練り実行し働き詰めていたのだが
次期ボスの座を狙っていた別の幹部の思惑により今までの貢献は仇で返される事となる。
父親は欲に目が眩んでいるため幹部の
"男主が消えれば更に組織を拡大化できる"と言う言葉を鵜呑みにし、実の息子である男主をほぼファミリー総出で殺害した。