俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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前回もご感想ありがとうございます……!
有難いコメントをたくさん頂け本当に嬉しいです!
頂いたもので何個か書きたい話も出てきたのでドンドン進めて参ります…!


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白熊の出逢い

 

 

 

 [小さなベポの大冒険]

 

 

~ロー治療後のとある1日~

 

 

 

 

 

 

もふもふとした真っ白な毛におおわれた熊

──彼の名はベポ。

 

 

 

彼の真っ白なはずの毛がすっかり汚れてしまっている状態が今の彼の苦労を表しているだろう。

 

 

ベポは兄弟……兄を探すために祖国を離れ広い世界へと飛び出した…

…のだが。

 

間違えて北の海(ノースブルー)に向かう船に乗ってしまい、スワロー島へと流れ着いた。

 

 

初めての知らない土地に目を輝かせていたが、

すぐにベポを世知辛い現実が襲った。

 

 

スワロー島に住む悪ガキに虐められたのだ。

 

必死に耐え、隙をみて逃げ出し

海岸に見えた船になんとか潜り込むことに成功した。

 

 

……が、その船の停泊中に船員に見つかり鍋にして食べられそうになったのだ。

 

 

またベポは必死に逃げ回った……そして船から飛び降り

頑張って近くの岸まで泳ぐと、フラフラになりながら島の森へと隠れ入ることに成功する。

 

 

2日も森に隠れ住んでいた彼だったが

ついに我慢が出来ないほど腹がへってしまった。

 

魚も動物もボロボロの彼が捕まえるのは至難の技である。

 

なんとか小さな木の実を食べて生き長らえてるベポだが

その日は変なキノコを食べてしまう。

 

 

突然の腹痛にベポは死を悟る。

 

 

「うぅ……おれ、死ぬのかな…

……い、イヤだ~! うぅぅ…兄ちゃん~…」

 

 

溢れる涙を拭う気力もないベポの意識が薄れ始めた時だった。

 

 

 

「……なんだ…これ…………クマか?」

 

 

白に斑模様(まだらもよう)の目付きの悪い少年がひょっこりと岩影から現れた。

 

 

人間…また虐められるかも……と怯えるベポだが、立ち上がれない…

どうしようもない彼は震える声で少年にお願いする。

 

 

「お、おれ……わるいクマじゃない、よ……

おなか…痛いんだ、いじめ……ないでっ……」

 

 

そう言って力尽きた白クマを少年はじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ベポが目を覚ますと痛かったお腹が嘘のように治っていた

腕や足にあった怪我も痛くない。

 

ベポは嬉しさに声を上げた。

 

 

「やった~! 痛いの治った……!

お腹痛かったけど、死ななかった!」

 

 

「はぁ…腹が痛かったのは食中毒のせいだ。

……そもそも腹痛いだけで死ぬわけねぇだろ」

 

 

喜びに拳を突き上げるベポの耳に呆れたような声が聞こえた。

 

 

「え、わぁ!?

あれ、キミ……さっきの帽子の

しょくちゅうどく……治してくれたの…?」

 

「…別に……お前で能力の練習しただけだ」

 

「す、スゴイ……!

小さいのにお医者さんなんだね!」

 

「小さいは余計だ……!!」

 

 

 

少年と小さな白クマが戯れる姿はまるで絵本のようだ。

 

 

 

 

昼時をすぎ、少年は持たされていた弁当に手をつけ始めた。

 

焼き魚に玉子焼き、ポテトサラダに沢山のおにぎり

久しく見ていなかった美味しそうな食べ物たちに

ベポの口からは大量のヨダレが溢れだしている。

 

 

「はわわ~~……おいしそ~…」

 

 

 

目をキラキラさせて見つめてくる白クマに少年は乱暴に数個のおにぎりを渡した。

 

 

「え、えぇ……! いいの!?」

 

「レオヴァさんはいつも無駄に沢山弁当を持たせてくるんだ

……どうせ食べきれないからやるよ」

 

「あ、ありがとう……!!」

 

 

 

お礼を言うとすぐにパクりとかぶり付き、ベポは感動した。

 

香る海苔…噛めば噛むほど旨味のあるお米、直火で焼かれた甘めの鮭……

 

あまりの美味しさにベポは言葉も忘れておにぎりを堪能した。

 

貰ったおにぎりを全てキレイに平らげるとベポはやっと言葉を発する。

 

 

「んん~っ……!美味しい~!!」

 

 

 

少年は少し自慢げに笑った。

 

 

「これはレオヴァさんの手作りなんだ

旨いに決まってんだろ」

 

「レオヴァさんか~……こんなに美味しいおにぎり作れるなんて

スゴくスゴい人なんだね!」

 

「まぁな…!

……もう少しだけだったら分けてやっても良いぞ」

 

「ほんとう!?

えっと……じゃあ、おにぎりと~…玉子焼き!

それから、そのサラダも食べてみたいな!」

 

「遠慮なしかよ……!!

おれは少しと言ったよな!?」

 

 

 

1人と1匹はわいわいやいやいと騒ぎながら時間を共にした。

 

 

 

 

 

 

 

色んな話をした2人は。

……いや、正しくはベポが一方的に話していただけだが

 

お互いを知り2人はローのレオヴァからの仕事を終わらせるべく町へ降りた。

 

 

 

 

 

しかし、そこで問題が起きた。

 

町人たちは喋るベポを見ると気味悪がり追い払おうとしてきたのだ。

 

最初は三人ほどしか居なかった町人が次々にあつまり

ベポを迫害した。

 

 

 

「お、おい……獣だ!銃をもってこい!」

 

「喋るなんて…化け物だ!!」

 

「急げ…!早く人を集めろ!」

 

「化け物め!ワシらの町から出ていけ……!」

 

 

 

 

ベポは瞳を潤ませながら襲おうとしてくる町人たちから逃げようとしていると、ローは町人の1人を吹っ飛ばし、帽子を深く被る。

 

 

 

「……こういう奴らは……大嫌いだ…」

 

 

 

そう呟くとローは悪魔の実の力を使い町人たちを怖がらせ、逃げ出させることに成功した。

 

 

ベポはそれを見て呆気にとられていたが

気を取りなおすと笑顔でお礼を言った。

 

 

 

「ありがとう!強いんだね……!

キャプテンって呼んでもいい!?」

 

「別にお前の為じゃない…

って、はぁ? キャプテンってなんだよ……

変な呼び方するな!」

 

 

 

そう言ってどんどん先に行ってしまう少年の後を追いかけた。

 

 

少年は一通り仕事を終わらせると日が沈み始めた空を見て、急いで帰路についた。

 

 

 

 

 

 

「……いや、待てよ!

なんでお前付いてくるんだ…」

 

「だ、だっておれ帰り方もわからないし……一人だと寂しいし…」

 

「……おれは海賊だって言ったよな?

一緒に来ても良いことねぇから、あっち行けよ」

 

「や、やだよ!

……キャプテン以外の人ってみんな怖いし…

おれ……おれ、もう怖いのやなんだ…」

 

 

「…………海賊は大変なんだぞ」

 

「キャプテンがいるなら、おれがんばるよ……!」

 

「………すげぇ性格悪い丸いデカイのと黒いデカイ奴もいるぞ」

 

「な、仲良くできるようにする…!」

 

「……戦いにだっていっぱい出るんだぞ」

 

「強くなるよ!

…ほんとは怖いけど……キャプテンと一緒なら…!」

 

「…はぁ……もう勝手にしろ……

けど、決めるのはレオヴァさんだからな」

 

「きゃ、キャプテン……!ありがとう!

 感謝のガルチュ~…!」

 

「え? …おわ!?」

 

 

 

急な突進に押し倒されたローは怒ったが、怒られながらも嬉しさが滲み出る顔を隠しもしないベポに諦めたように立ち上がると船へと帰るために歩きだした。

 

 

 

 

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森を抜け海岸に出ると、そこは戦闘の真っ最中であった。

海賊と海軍の激突をみて、おろおろするベポに溜め息をつくローは

空を舞う黄金の鳥を視界におさめて、この戦いが直ぐに終わるだろうと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

「きゃ、キャプテン……あの、なんかその、一瞬で海軍?がこっぱみじんだよ…?

さっきまで、激戦だったのに……」

 

「部下がやられるのをレオヴァさんが黙って見てるわけないからな

…レオヴァさんが参加すりゃ海軍なんて一発だ」

 

「えぇ……魔王さまってお料理するって言うから

…コックさんだと思ってたのに…」

 

「……お前絶ッ対にレオヴァさんの前でソレ言うなよ!!」

 

 

 

怖い人なの?とビクビクするベポを無視してローはボロボロになった軍艦の上に立つレオヴァの下へ向かった。

 

ベポも渋々付いていき、息を吞んだ。

 

 

 

真っ黒な髪から生える白い角と、ベポの見たことのない凄い衣装に身を包み威風堂々と佇む青年は

良く通る力強い声で周りの大人たちに指示を出している。

 

 

ローに引っ張られながらその青年の前まで連れていかれた

心ここに有らずなベポが、ぼけーっと突っ立っていると

大きな青年はローを見て微笑む。

 

 

 

「おかえり、ロー。

どうだ、目当てのものは手に入ったか?」

 

「問題なく手に入った。

……あと見たことない食べ物あったから買っといたけど」

 

「そうか、ご苦労だったな

…で、どんな食べ物なんだ?

やはりこの地域独自の植物か?それとも生息している生き物を使った肉系の料理か?

……いや、少し寒い地域だからな……変わった香辛料の可能性も…」

 

「……レオヴァさん、後で食べよう

今は積み荷の指示だしだろ?」

 

「……それもそうだ。

ふふ…ローはジャックと同じで優秀だなァ……

ところで、おれが前に渡した縫いぐるみに瓜二つな二足歩行のクマはどこで拾ったんだ?」

 

「…拾ってねぇ……付いてきたんだ

なんか、ウチに入りてぇって言うからレオヴァさんに会わせる為に連れてきたんだけど」

 

 

 

そう言ってローは固まったまま動かないベポを小突いた。

 

 

 

「おい、ベポ!レオヴァさんに失礼な態度とるなよ」

 

「あいてっ……ごめんよ~ キャプテン……」

 

「……キャプテン?

ふふ……そうか、白くまはローの部下なのか」

 

「ち、違っ…!

こいつが勝手に変な呼び方するだけで……!」

 

「良いじゃないか、別に構わないぞ

ジャックやドリィも専属の部下を持ってるんだ

その白くま……ベポ、だったか?

ローの専属の部下ってことにするか?」

 

「いや、別におれ部下とか……」

 

 

 

ローの専属の部下と言う言葉にベポはつぶらな瞳をキラキラと輝かせる。

 

専属ってことはずっと一緒だよね…!

そんな単純な考えの下、ベポはこの機を逃すまいと声を出す。

 

 

「キャプテン、キャプテン……!

おれいっぱい頑張るよ!

えっと、……あ!おれ結構力持ちだし……あと!」

 

 

 

ベポの必死のプレゼンをレオヴァは微笑みながら見ていたが

一向に首を縦に振らないローにベポの瞳に雫が溜まる

みかねたレオヴァは助け船を出してやることにした。

 

 

 

「ロー…こんなにお前を好いてくれてるんだ

一度部下にしてみるのも良いじゃないか?」

 

「………わかった、レオヴァさんが言うなら」

 

「や、やったぁ~!

キャプテンに魔王さまありがとう~~!!ガルチュ~!」

 

「あ、おい!ベポ……!」

 

 

ベポはローを巻き込むとそのままレオヴァに突撃していく。

 

レオヴァは軽く2人を受け止めるとくすくすと笑いながらローに話しかけた。

 

「…ふふふ……なんだ、ロー

まだおれを魔王呼びしてるのか?」

 

「ち、違う! たまたま昔の話をしてただけで!

ベポも もうその呼び方やめろよ!

この人はレオヴァさんだって教えたよな!?」

 

「アイアイ!キャプテン~!

レオヴァさま!感謝のガルチュー!」

 

 

 

珍獣の物凄いはしゃぎように困惑する周りの部下たちに

子どもと珍獣を抱えたレオヴァが指示を出す。

 

 

 

この日から白クマ……ベポは一人じゃなくなった。

 

 

 

その後ローからある程度、海賊団のルールを聞き

さらにレオヴァから航海術を教わり

 

ベポは百獣海賊団の一員となったのだ。

 

 

 




今回から我らが百獣海賊団にカイドウパパに続くマスコットキャラクターが加わりました。

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