俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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前回も誤字報告にコメントや感想ありがとうございました!!




はぐれ鬼

レオヴァ様がワノ国の頂点に立ってから様々な変化があった。

 

 

まず、将軍と言う地位の名前はなくなり“鳳皇(ほうおう)”という称号へと変わった。

 

この鳳皇とは天の王を意味する。

 

これの発案者であるヒョウ五郎親分はこう語った。

 

 

『将軍って言葉はレオ坊には相応しくねぇ…

天より舞い降りた、仏よりも慈悲深ェおれたちの王なんだ!

 そうだな……鳳皇ってのはどうだ!?』

 

 

この話を聞いた民衆は口々に賛同した。

将軍という名は破棄され、ワノ国の王は鳳皇と呼ばれることとなった。

 

 

 

そして、次は法令の全面改変である。

 

過去のものは、将軍や華族など一部の者だけを優遇する制度や、生まれた家の仕事しか出来ないと縛る内容だったり、下人という人と認められぬ身分や重い上納金などと悲惨なものばかりだったが

 

レオヴァ様の新しき法令は皆を驚かせるほど素晴らしいものばかりだった。

 

 

まず、驚いたのはこの一文だ。

 

『国民とは国の宝である。

他に迷惑をかけぬ限りは自身の幸福を追及する権利があり、それを奪われることはない。』

 

 

レオヴァ様は身分関係なく民衆を宝だと仰るのだ。

これには誰もが感動に震えた……!

 

やはりレオヴァ様だけが我らの王なのだ。

 

 

 

他にもある!

援助制度というレオヴァ様の慈悲深い法令だ。

年寄りや怪我で働けない者を助け、子どもを育てやすい環境まで出来た。

出生届けを出せば1年間子どもの為に使っていい資金まで下さるというんだ。

 

レオヴァ様の案には素晴らしい点しかなかった。

 

 

それに法令を決める時も、全ての内容を公開し

民衆の賛否を聞いてからお決めになられた。

 

…本当に懐が深く、聡明なお方なのだ。

 

 

 

医療、食事、仕事、治安、土地……何から何まで安心できる今に不満を持っている奴などいないだろう。

 

 

 

それに娯楽も増えた。

 

温泉宿は昔からあるが、(みやこ)にしかなかった。

それに金額が高く頻繁に行けるわけじゃない。

 

多くの民衆が基本的には家で濡れタオルで体を清めるか、本当にたまに水を沸かして樽に入れて浸かるくらいだ。

 

 

だが、最近レオヴァ様がお作りになった“銭湯”ってのは温泉宿より安くて色んな町にある通いやすい最高の娯楽だ。

 

泊まることは出来ないが、仕事終わりに行く銭湯は格別だ

サウナやマッサージ機がオレの一押しだな。

それに風呂上がりの牛乳ほど美味く感じるものもない!

 

 

 

あとは“大技館(たいぎかん)”も面白い。

決められた日に、剣術・体術・総合の3種目の大会がある。 

 

審査さえ合格できれば男も女も子どもでも参加できる

しかも、ここで力を認められると守護隊や近衛、百獣海賊団に入れるかもしれない一世一代のチャンスが手に入るのだ。

 

ちなみに、大会での怪我の治療費は全てレオヴァ様が負担してくださっている。

 

ワノ国の猛者はこの大会に向け、日々励む者たちばかりだ。

 

 

他にも良くなった点は上げればキリがない!

 

 

 

それに今後は町や村への手早い移動手段の作成も進めているって話だ。

 

レオヴァ様は誰であろうと実力を認めれば雇ってくれると聞く

オレもいつか…どんな形でも良いからお仕えしたいものだ……

 

 

 

 

サウナで熱くなった体を水風呂で冷やしながらレオヴァ様に想いを馳せた。

 

 

 

 

 

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山奥で暮らす男は目的がなくなり、迷走していた。

 

主も仲間も失いたった独り、山で野宿し生き延びる生活。

 

 

生きる意味であった仇討ちも、もう出来ない。

 

 

食料を盗みに村へ下りた時に村人たちの話で討つべきオロチの死を知ったのだ。

 

アシュラ童子はオロチの死に喜びの涙を流したが、同時に進むべき道も失った。

 

 

 

生きる屍の様なアシュラ童子の近くで二人の足音と話し声が聞こえた。

 

 

 

「ロー殿、報告で妖怪が出ると言われてたのはこの辺だ。

恐らくは山賊か……外海からの侵入者かと」

 

「わかってる。

さっさと終わらせてレオヴァさんに引き渡すぞ」

 

 

 

おそらく自分の事を話しているであろう二人組から離れようと歩きだした時、腑抜けてしまっていたアシュラ童子は枝を踏み大きな音を出してしまった。

 

 

 

「…そこか……ROOM(ルーム)、“シャンブルズ”」

 

 

 

「な!? 一体……!?」

 

「うおぉ!?」

 

 

 

ローが小石とアシュラ童子の位置を一瞬で入れ替える。

 

突然、目の前に巨漢が現れたことに狂死郎は驚き

突然、目の前の景色が変わったことにアシュラ童子は驚く。

 

そして、狂死郎は巨漢の姿を見て更に驚いた。

 

 

 

「なっ…! あ…アシュラなのか……!?!

お前……やはり生きていたか!」

 

 

驚きと嬉しさの混じった表情で狂死郎が声を上げた。

 

しかし、アシュラ童子は訝しむように狂死郎を睨む。

 

 

 

「一体なぜ……おいどんの名前を…!」

 

「おれだ……今は狂死郎と名乗っているが…傳ジローだ!」

 

「で、傳ジロー…!?

おまえ、その顔……いや……本物なら、おいどんの好物わかるよな?」

 

「きんちゃくもち…だろう!

…よく、熱くて食えんと怒るネコを笑ったものだ」

 

「っ……ほ、本当に傳ジローなのか……!」

 

「あぁ! アシュラ……よく生きていてくれた!!」

 

 

 

再会の喜びに肩を抱き合う二人にローが声をかける。

 

 

 

「おい……その名は外で呼ぶなと言われてるだろ。

見聞色とROOMの併用で周りに人が居ないのは判ってるが、万が一がある。

……レオヴァさんに迷惑かけるつもりか?」

 

 

「それは…すまない。ついアシュラに会え、気が緩んだ様だ

……以後気を付ける。」

 

「れ、レオヴァ殿っていや……あのレオヴァ殿なのか?

傳ジロー……なぜお前が…」

 

「アシュラ……討ち入りのことは知らないのか……?」

 

「う、討ち入り?

おいどんはオロチが死んだとしか……」

 

「なら、一から話そう。

…あとおれのことは狂死郎と呼んでくれ」

 

 

 

その場で話し込み始めた二人にローは溜め息を吐きながらも静かに待っていた。

 

 

狂死郎が全て話し終わった頃にはアシュラ童子の顔は涙でぐちゃぐちゃになった。

 

 

 

「ひ、日和さまっ……良かった…!

おいどんは…なにも、なにも出来んかった……!!

ロー…殿! ありがとう、ありがとう!!

日和様を……どう礼をして良いのかわからん程の恩だど!!」

 

 

「別に、レオヴァさんに言われたから治しただけだ。

礼ならレオヴァさんにすればいい。」

 

 

「……兎に角、一度レオヴァ殿の下へ行こうぞ!」

 

「レオヴァ殿か……おいどん一度も会ったこたねぇど…

いや、だけども…腹は決めた……!

あの時…討とうとしたんは事実だど。どんな罰も受ける……」

 

「大丈夫だアシュラ……!

レオヴァ殿ならば解ってくれる。」

 

 

オロチのおでんへの密約、あの時のレオヴァが対立した理由、そしてオロチの首を獲るまでの経緯など……

全てを聞きアシュラ童子の瞳には今朝までの虚ろさは無く、昔の強い瞳へと戻りつつあった。

 

 

3人は、えびす町で待つレオヴァの下へと向かった。

 

 

 

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活気と笑顔溢れる えびす町の下町を抜け、狂死郎がレオヴァから授かった屋敷へと三人は足を踏み入れた。

 

 

「……よし、アシュラ

もう笠をとっても問題ないだろう」

 

「まったく……おれが笠を持って来なかったら

ソイツどうやって連れてくるつもりだったんだ」

 

「悪い…ロー殿……」

 

 

呆れたように言うとさっさと歩いて行ってしまうローを見て、肩を落とすアシュラの背を軽くたたき、狂死郎が慰める。

 

 

「そう落ち込むなアシュラ…!

ロー殿は少し口はキツいが優しい方だ。

事実、さっきもアシュラが民衆に見つかれば危ないと

一番に気付き笠を買いに走ってくれたではないか!」

 

 

アシュラ童子はそうだな、と頷くと

先へ行ったローを狂死郎と共に追った。

 

 

 

 

 

 

最上階の奥の部屋の襖を開け、そこに広がる光景にアシュラ童子は衝撃を受けた。

 

 

 

 

「レオヴァ様もドレーク様も酷いです!」

 

 

そう言って頬を愛らしく膨らませる日和を見て二人の男と一匹は笑う。

 

 

 

「真剣勝負と言ったのは貴女だ。

おれは女、子ども相手でも手は抜かん。」

 

「いや、確かに大人げなかったか。

……だが日和殿が本気でと言っただろう?

ふふ…ドレークは少しばかり容赦が無さすぎるとは思うがな」

 

「レオヴァ様もドレークさんもスゴいや!

読んだ瞬間には取ってるんだもん!」

 

「むぅ~! もう一回やりましょう!

次こそ、一枚は取ってみせます……!」

 

 

三人と一匹はカルタを並べながら

わいわいと楽しそうにはしゃいでいる。

 

 

暖かい光景にアシュラ童子の目に涙が伝う。

 

カルタを並べていた日和はふと振り返り、アシュラ童子を目にすると驚くと同時に走りだし抱きつく。

 

 

「アシュラっ……!!

良かった!生きていてくれたのね……!」

 

「ひよ、日和さま!

お元気そうで!おいどんは……」

 

 

 

喜び合う二人を見て狂死郎の目にもうっすらと涙が光る。

 

再会を喜び今までの事を話し終わった二人はレオヴァへ向き直る。

 

 

 

「……おでん殿の侍……アシュラ童子か。」

 

 

「…いかにも。

おいどんは、あの時確かにアンタの敵だった。

腹は決まってる……罰は受けるつもりだ。

もう、これ以上おでん様に顔合わせできねェ生き方はやめる」

 

「アシュラ…貴方…! レオヴァ様、どうか!」

 

「おれからも頼みたい!レオヴァ殿……!」

 

 

頭を下げる三人にレオヴァは待ったをかける。

 

 

「皆、落ち着け

もとより罰など考えていない。

なにより…あの戦い、おれは譲れないものがあった…

だが、それはお前たちも同じだったはずだ。

終わった戦いを蒸し返し、泥を被せるつもりはない。

 

…アシュラ童子におれと戦う意志がないのならば

おれが彼に危害を加える道理もない。」

 

 

レオヴァの言葉に三人は顔を上げる。

 

 

 

「……おいどんは…アンタたちを討とうとしたんだど…?」

 

 

「……おれも父の為にお前たちを討ったんだ。

お互いに覚悟の上での戦いだった……それを持ち出すつもりはない。

……なにより、おでん殿のあの覚悟を(けな)したくはない」

 

 

「…っ…!」

 

 

止まった筈の涙が溢れる。

両脇にいる日和と狂死郎が優しく背をなでた。

 

 

 

「狂死郎たちと共に此処に住むのもいい。

外海へ出たいのならば支援は惜しまない。

他に何かあるなら、出来る限りを尽くそう。

………それがおれに出来る、おでんへの敬意の示し方だ

お前たち赤鞘の侍は尊敬すべき男達だとおれは思っている。」

 

 

 

この言葉をきっかけにアシュラ童子の口からは次々と想いが溢れた。

 

レオヴァは全てを包み込むようにアシュラ童子の話を優しく受け止め、お互いの想いを語り合った。

 

 

 

「そうか……お前の気持ちはわかった。

ならば、名を変える必要があるな…

……何か思い付くものはあるか?」

 

「いや……おいどんは…そう言うのは得意じゃないんだ

……レオヴァ殿…アンタから貰いてぇど!」

 

「……おれで良いのか?」

 

「あぁ!

おでん様と“同じ”意志を持ってオロチを討ったアンタなら…!」

 

「わかった。

……そうだな…酒呑童子(しゅてんどうじ)はどうだ?」

 

「酒呑童子……気に入ったど!

レオヴァ殿、これから世話になる……!」

 

「あぁ……よろしく頼むぞ、酒呑童子」

 

 

深々と頭を下げた酒呑童子にレオヴァは微笑みかけた。

 

 

 

 

 

 

──── これで三人目。

 

 

 

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元将軍城……改め鳳皇城へ戻った三人はレオヴァの淹れた紅茶を飲んでいた。

 

 

「ロー、この紅茶…ベポも飲めると思うか?」

 

「ミルクを入れれば飲めると思う……あと砂糖だな。」

 

「そうか!

なら戻ってきたらミルクティーにして出してあげるとしよう。

ドレークはどうだ? ストレートだから甘さは問題ないと思うが…」

 

「美味しく頂いてるよ、レオヴァさん」

 

「なら良かった。

そうだ、ドフラミンゴがオマケだと言って渡してきたクッキーも出しておこう。

きっとベポが喜ぶ。」

 

 

そう言って立ち上がったレオヴァにローが声をかける。

 

 

「レオヴァさん……今回の妖怪退治……初めからわかってたのか?」

 

「なんでそう思うんだ?」

 

「普段なら、おれとドレークで行かせるだろ」

 

「ドレークには娘の相手をしてもらいたかったんだ。

……一人だと少しばかり大変でな」

 

「…狂死郎を連れて行けば良いと言い出したのはレオヴァさんだった。

……おれも、そろそろ解るようになってきたんだレオヴァさん。」

 

 

そう言ってニヤリと笑うローにレオヴァも微笑む。

 

 

 

「そうか、ローも気付けていたんだな」

 

「“も”…?

他にも気付いてた奴が…………ドレークか」

 

「当たり前だ。

レオヴァさんは明らかに何か狙ってたからな。」

 

 

「まぁ、だが一つ誤解がある様だから言っておくが

アシュラ童子が来ると初めから分かっていた訳じゃない」

 

「……?

アシュラ童子が来たときレオヴァさん驚いた顔を“作ってた”じゃねぇか」

 

「あぁ……おれもそれで分かっていたからの反応だとばかり…」

 

「妖怪の正体は赤鞘の誰かだろう、程度の読みだった。

分からないからこそ、ドレークとローを念のために連れてきたんだ。

……来たのが話のわかる相手で本当に助かったな。」

 

 

いつもと違う笑い方のレオヴァに……

ドレークはそれでこそレオヴァさんだと微笑み、

ローは今日何度目かわからぬ溜め息を吐いた。

 

 

 

 

「ほらみろ……やっぱり魔王だ」

 

 

 

 

 

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部屋へ戻ってきたベポは沢山のクッキーに目を輝かせる。

 

 

「レオヴァ様~!食べていい?食べていい~?」

 

「あぁ、好きなだけ食べていいぞ」

 

「やった~!!

あ、キャプテンにも少しあげるね!」

 

「少しかよ!?

いや、まぁ別にいらねぇけど……」

 

 

ウキウキでクッキーを頬張るベポにドレークが問う。

 

 

「……レオヴァさんに頼みごとがあったんじゃないのか?」

 

「うむぐ! ンモグ…ンム……そうだった!」

 

 

思い出した!という様に声を上げたベポはキラキラした瞳でレオヴァを見つめる。

 

 

「おれ……1回ゾウに帰りたいんだ!」

 

「……は?」

 

「…ア"?」

 

「…ん?」

 

 

 

 

この一言でレオヴァの次の遠征先が決まった。

 

 

 

 

 

 




ちょっとした捕捉

・アシュラ童子(以後、酒呑童子)
えびす町に住む日和の護衛として留まることになった。
おでんを尊重する発言が多い、かつ日和を守ったレオヴァへの好感は上がった。
ローへの感謝の想いも強い。


・ロー
原作よりも性格は歪んでいる。
レオヴァの引き入れ劇場を見ても「巧いな」くらいにしか感じない。
(自分はレオヴァから本当の信頼を得て入る自信がある)
最近はドレークの愚痴をたまに聞いてあげている。


・ドレーク
レオヴァからの任務なので日和との友人関係を頑張っている
正直少し文通が面倒に感じているが、真面目なのでこまめに返す。
クイーンからの当たりがキツくなって来たので早く日和担当から降りたい。
(クイーンに担当を譲りたいが、レオヴァから頼まれた仕事なので手離せずにいる)


・ベポ
圧倒的癒し枠
レオヴァの怖い部分には全く気付かないほど可愛がられている。
最近仲間だからと誰かれ構わずガルチューをしてはいけないと学んだ。
(ローと話していたジャックに挨拶代わりのガルチューをしようとしたら殴られ壁を突き抜けた)
レオヴァに休みを取らせたい時に突撃させる要員としてキングに目を付けられたりしている。


・元将軍城(現在は鳳皇城)
討ち入りでの戦いで荒れたこともあり、建て直された。
昔よりも丈夫な作りになり、色々な仕掛けが追加された。
(屋敷図は全てレオヴァにより処分された)
鳳皇としての仕事中のみレオヴァが滞在→寝泊まりは鬼ヶ島へ帰ってしている


ー追伸ー
呼び名ヤバイのでは!?というコメントございましたので変更いたしました!
へへ……カッコいいの思いついちまったぜ…(中二病)

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