俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

35 / 116
絡繰魂仕掛けの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究室兼、絡繰魂製作部屋(からくりせいさくへや)から出たクイーンの足取りは軽かった。

 

 

 

「ヤベェ~! マジでおれって天才すぎじゃねェ…?

ムハハハ~!  レオヴァの驚く顔が目に浮かぶぜぇ~!!」

 

 

 

鼻歌交じりにドスン、ドスンっと大きな音をたてながらスキップをするクイーンの手には棒のようなモノが握られている。

 

 

上機嫌に横を凄いスピードで過ぎ去っていく丸い残像に多くの部下たちが腰を抜かした。

 

 

 

 

「うお!?

え……今のクイーン様…だよな…?」

 

「な、なんかご機嫌だったな……」

 

「今日のライブでやる新しい振り付けでも思い付いたんじゃねぇかぁ?」

 

 

 

いつもの数倍はテンションの高いクイーンに一度は皆が首を傾げたが、彼のテンションの起伏はいつもの事だと言いすぐに気にするのを止めたのだった。

 

 

上機嫌なクイーンは踊るように鬼ヶ島から出ていくと鳳皇城へと急いだ。

 

 

「パーティータイムの前に……最高のブツを届けるぜェ~~!!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

フカボシとジンベエと共に下町にて土産を選び終わったレオヴァは、自室で大臣達から送られてきた書類を一枚ずつ確認する作業をしていた。

 

 

次々と書類に目を通し、解決案や労りの言葉を返信用の紙へと書いていくレオヴァを感心するようにヒョウ五郎が見守っている。

 

 

しかし、一時も休むことなく仕事を続けるレオヴァを見かねたヒョウ五郎が急須(きゅうす)を片手に声をかけた。

 

 

 

 

「レオ坊、そろそろ茶でも飲んで一休みしたらどうだ?」

 

 

「そうだな…そこの山が終わったら一休みしよう。」

 

 

「……一刻前もそう言ってなかったか?

このままじゃズルズルと一日経っちまうぜレオ坊

おれも茶が飲みてぇし、休憩だ!」

 

 

「なら、ヒョウ爺は先に…」

 

 

「おいおい…他の奴らには休む様に決まりを作ったってのに

まさか……一番上の立場のレオ坊が決まりを破るなんて真似しねぇだろ?」

 

 

「…………おれは皆の倍働く義務があるから良いんだ。」

 

 

「いや、おれァ…そんな義務しらねぇな。

ほら、茶持ってきたんだ。飲め飲め…!!」

 

 

無理やり目の前の書類を退かして茶を置くヒョウ五郎にレオヴァは困った顔をするが、そんなことは関係ないとばかりに茶菓子まで置き始めた。

 

 

「このレオ坊発案の羊羮は格別だなぁ…!!

ほれ、早く食わんと温くなっちまうぜレオ坊?」

 

 

「…少しばかり強引すぎやしないか、ヒョウ爺…?」

 

 

すっと目を細めたレオヴァの圧にも屈せず、ヒョウ五郎は自分の前にある羊羮を美味しそうに食べながら言う。

 

 

「はっはっは!

レオ坊はこうでもしねぇとテコでも休まねぇからな!」

 

 

 

大口を開けて笑うヒョウ五郎を見て諦めたようにレオヴァは茶を啜ると、眉を下げつつも笑顔で礼を述べた。

 

 

「………茶と菓子を用意してくれてありがとう

ヒョウ爺の淹れてくれた茶、美味かった。」

 

 

「ははは!レオ坊にそう言って貰えると嬉しいなァ…!」

 

 

 

そのあとも茶を片手に和やかに会話していた二人の下へ大きな音が聞こえ始める。

 

 

 

「……レオ坊、なんだか…どすん、どすんと外が騒がしくねぇか?」

 

 

「……あー…クイーンだな。

…今日は随分と機嫌が良いらしい。

鼻歌を歌いながらスキップしてるぞ……」

 

 

「レオ坊の見聞色は外がわかるから便利だなァ!」

 

 

 

流石はレオ坊だ!と嬉しげに茶を飲むヒョウ五郎の目の前の襖が勢い良く開く。

 

 

 

「よォ~~ レオヴァ~!!

待・た・せ・た…なァ……!!!

クイーン様の登場だぜぇ~~~~!!!」

 

 

 

勢い良くポーズをキメたクイーンをヒョウ五郎は呆れ顔で眺めているが、レオヴァは楽しそうに笑っている。

 

 

 

「ふははは…! なんだ、クイーン?

今日はいつもの数倍ご機嫌じゃねぇか……!

…ところで、そのポーズは新作か?」

 

 

「そうそう……!このポーズは最新作だぜ!

なんてったって今来る途中にビビッと来たポーズだからなァ…!

レオヴァ良くわかってんじゃねぇ~かよ~!!

最っ高に~!エキサ~イトゥッ……!!!」

 

 

 

ニヤリと笑いながらポーズを見せつけるように決め続けるクイーンをレオヴァは当然のように褒める。

 

 

 

「そうだったか、良く決まってるぞクイーン!

流石だ、舞台の上で即興で場を盛り上げられる才能は伊達じゃないな。」

 

 

「ムハハハハハハ~~!!

もちろんよ! ほんっとに、レオヴァは分かる男だぜ~~!!

 

……って、危ねぇ…!!

おれが凄いっつー分かりきった話をしに来たんじゃねぇんだった!

出来たんだよ……! 例のアレが…!!」

 

 

「例の……?

あぁ…! クイーンに頼んでたヤツか!

もう完成したのか?」

 

 

「そうそう! おれに掛かればちょちょいのちょい…!

100…いや!200%の出来栄えだぜェ…!!!

 

いや~!レオヴァの発想は本当面白ェよなぁ~

…けど…まぁ、それも~?

この天才クイーン様がいるからこそ実現しちまってるワケだけどぉ?

ムハハハハハハハ~~!!!」

 

 

「ふふふ……昔もクイーンに頼んだからなァ…

さっそく、試してみたいんだが……大丈夫だろうか?」

 

 

「おうよ!

そう言うと思って試験場は準備万端…!!

 

レオヴァの発想と要望を基に、このおれ様の天才的なアイディアも詰めに詰め込んだんだ

もう、最高にシビレル出来だぜ?レオヴァ~~!!

よし、早く試験場でぶっ放すぜ……!」

 

 

 

現れたときと同じく嵐の様に去っていったクイーンの後に続くようにレオヴァも立ち上がった。

 

 

 

「この休憩の時間で少しクイーンと出てくる。

ヒョウ爺も引き続きゆっくり休憩を取っていてくれ。」

 

 

「そりゃわかったが……

…レオ坊、一体……何を頼んだんだ?」

 

 

「おれの護身用の武器を頼んだんだ

……詳細は後で話すとしよう、ヒョウ爺。

では…クイーンは待たせると拗ねるから、おれはもう行くとする。」

 

 

「おう、気をつけてなレオ坊!」

 

 

 

手を軽く上げて見送るヒョウ五郎に笑いかけると、そのままレオヴァは試験場へと向かって行った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

試験場に並べられていた機械たちは見るも無残な姿の鉄クズへと変わり果てていた。

 

しかし、その鉄クズの全ての切断面は真っ直ぐキレイに斬られており、大きさもまるで測ったかのように均一である。

 

 

その異様な鉄クズに囲まれたレオヴァを見てクイーンは笑い、部下たちは感嘆の声を上げる。

 

 

「すげぇ……レオヴァ様、機械みてぇに一瞬で……」

 

「機械を豆腐切るみてぇにパッパと…!流石だぜ!」

 

「クイーン様の新作の実験って聞いてたが、まさかレオヴァ様を見られるとはなぁ!」

 

 

 

 

はしゃぐ部下たちの声を尻目に、鉄クズの中心で刃の部分が電気の様に変わった戦斧を持つレオヴァが満足げにクイーンを見遣る。

 

 

「クイーン……おれの注文以上の出来だ…!

だが、まさか本当におれの体内の電気を利用出来る戦斧を作るとは……」

 

 

嬉しさと感心の入り交じった表情をしているレオヴァの方へと、ドヤ顔を隠しもしないクイーンがドスドスと寄って行く。

 

 

「そうだろそうだろォ~!?

レオヴァの新しく分かった武器を作れる能力と元からあった電気を使える能力を最大限生かせるこの仕様……

あ~~!マジでおれ天才過ぎィ?

 

カッコ良くて強くて…頭もキレちまう……完璧すぎて悪ィな…」

 

 

 

そうオーバーリアクションを混ぜながらナルシズムに浸っているクイーンを見て部下の数人が苦笑いするが、突っ込める者など存在しなかった。

……いや、一人レオヴァだけが突っ込める立場なのだが、彼はクイーンを肯定することはあっても否定はしないのだ。

 

 

 

「天は二物を与えず…とは言うがクイーンにおいてはその限りではないな。

ちょうど父さんから貰ったコートで隠れる大きさなのも良い…!」

 

 

突っ込むどころか更に褒めそやすレオヴァにクイーンの口角は上がったまま下がらない。

 

 

 

「ムハハハハハハ!!

そりゃサイズもしっかり調整したからなァ…!

レオヴァは背も伸びてガタイも良くなって前のじゃ

もう戦斧っつーか斧って感じだったしよォ…

 

けど、自由に武器作り出せんだよな?

周りに見えないように武器持ちてぇなら、その場で作りゃ良くね?」

 

 

 

クイーンの意見は尤もであった。

元々、レオヴァは戦闘以外では目立たずに仕舞える武器が欲しいとクイーンに相談していたのだ。

 

前に使っていた戦斧は腰に下げられるほど小さくなってしまっており、レオヴァはそれをトマホークと同じ要領で使っていたが、どうしても戦闘スタイルに違いが生じてしまう。

 

かと言って、自分の身長に近い大きさの戦斧を常日頃(つねひごろ)背負っているのは、レオヴァの思い描く未来に不利に働く可能性があった。

 

 

結果的に、レオヴァの新しい武器を作る能力での武器の瞬間補正と電気を利用した切れ味を生かせる絡繰魂作りになった訳だ。

 

 

 

だが、最近のレオヴァの戦闘スタイルは雷を軸にした中距離戦だ。

近距離戦においてもカイドウに鍛えられた肉弾戦と作り出す武器で十分過ぎる以上の腕である。

 

正直、最初にレオヴァから武器を頼まれた時

クイーンは

『え、レオヴァ別に今のままで十分じゃね?』

と首をかしげたが、レオヴァの頼みであると言うことや

レオヴァからの

『武器は絶対に信頼のおけるモノを使いたいんだ。

今までもクイーンの作った武器を使ってきた……お前以上におれの信頼に足る武器を作れるヤツがいるか?』

と言う言葉を聞いた次の瞬間には二つ返事で引き受け、サムズアップまでして見せる気の変わり様であった。

 

 

が完成させてみて、当初の希望を通すならやっぱり作る必要あったのか?

とクイーンは疑問に思ったのだった。

 

そのクイーンの疑問にレオヴァは首を振る。

 

 

 

「いや、確かにおれは武器を作れるがアレは槍やトマホークの様な形状のモノしか作れないんだ。

なによりクイーンの作るものと、おれの能力で作る武器では性能が格段に違うだろう?

使い捨て用に作るのと、今後ずっと使っていく武器は別だ。

前も言ったが、信頼出来る武器が欲しかったんだ。

 

……この出来栄え…本当に頼んで良かった。

忙しい中、完成させてくれてありがとうクイーン。」

 

 

 

嬉しそうに新しい武器を握るレオヴァを見てクイーンも満足そうに笑う。

 

 

「ま! レオヴァが気に入ったならミッションコンプリートって感じだなァ……!!!

ってなワケで…レオヴァ、遊郭行こうぜェ…!!!

やっぱ一仕事終えたあとは休まねぇとなぁ~~!」

 

 

 

小躍りしそうな勢いでレオヴァに詰めよったクイーンにレオヴァは笑いを溢しながらも答えた。

 

 

 

「あぁ、そうだな。息抜きは大切だ。

……おれはこの後も仕事があるから一緒には行けないが

小紫に久々に顔を出すようにとだけ言っておこう。

では、クイーン……楽しんで来てくれ。

 

そうだ、皆の分の酒代もおれが持とう。

クイーンと一緒に好きなだけ飲んでくると良い。」

 

 

「えぇ~!?! ちょ、ま…!?

おれレオヴァと行きてぇっつってんのに仕事優先すんのかよォ!?」

 

 

「「「うおぉ~!レオヴァ様!ゴチになりやすぜ!!」」」

 

 

 

良い笑顔でクイーンの肩を軽く叩くとレオヴァは

クイーンの部下たちの歓声を背にスタスタと書類仕事をするべく戻っていってしまった。

 

 

瞬時に仕事モードに切り替わったレオヴァに置いてかれたクイーンは大袈裟に落ち込む素振りを見せたが、部下たちのクイーンコールによって気を持ち直すと、上機嫌に遊郭へと向かって行くのであった。

 

 

 

「ムハハハハハハハ~~!!

小紫たん!待っててくれよォ~!!

 

てめぇら、全速前進だァ……!!」

 

 

「「「「Yeah!クイーン様ァ……!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前回も感想ありがとうございます!

そして無くならぬ誤字脱字……いつも報告下さる方に感謝ですm(__)m

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。