俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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岩山の月見酒

 

 

 

ある島で勃発した海賊同士の抗争は百獣海賊団が劣勢に陥っていた。

 

確かに今戦っている百獣海賊団に幹部クラスの船員はいなかったが、決して他の船員が弱い訳ではない。

 

 

肩まである黄緑色の髪に大きな牙が特徴的な敵船の船長が桁違いに強すぎるだけなのだ。

 

 

 

『船長ッ!

このまま、百獣を落として名を上げやしょう!』

 

『黄金の船ですぜ!

きっと中も財宝だらけですよ、船長。

楽しみっすね~!!』

 

 

『おう!

テメェら気を抜くんじゃねぇぞ!!』

 

 

『『『船長~!やっちまおうぜぇ!!』』』

 

 

 

あの百獣を圧倒していると言う事実が敵海賊団の士気をどんどんと上げていく。

 

 

百獣海賊団の船員達は敵の船長には勝てぬと悟っていたが、引くと言う選択肢など微塵も浮かびはしない。

 

何故ならば、今守っている船は我らがレオヴァ様直々に頼まれているのだから。

 

 

 

『たとえ死んでもこの船には手を出させねぇ!!

戻ってきて船が荒らされてるなんて事がありゃレオヴァ様にも姉貴にも合わせる顔がねぇ。

必ず死守するぞ…!!』

 

 

『『『うおおおぉ~!!』』』

 

 

雄叫びを上げながらぶつかり合う二つの海賊団は一晩中戦い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵船の船長……ササキは困惑していた。

 

もう、とっくに限界を迎えているはずの百獣の部下達が一向に諦めず戦い続けている事に。

 

 

何度かササキは彼らへ投降するように呼び掛けたりもしたのだが、答えは拒絶である。

 

彼らは“レオヴァ様”と言う名を祈るように発しながら、文字通り肉壁(にくかべ)となって船を守り続けていた。

 

 

 

最終的に日が昇るまで戦い続けた百獣の部下達の中で自力で立てている者は、ササキの目の前の少年一人だ。

 

 

ボロボロになりながらもササキを睨み付け、船を守るように仁王立ちする少年にササキは声をかける。

 

 

 

『もう終いだ。

投降すんなら見逃してやる、テメェを殺っても名は上がらねぇからな。

……そこを退け。』

 

 

わざわざボロボロの少年に止めを刺すこともないと、少しの優しさと戦いの疲れからくる面倒だという気持ちから放った言葉に、少年は食いかかる様に返す。

 

 

『ナメんじゃねぇ……!

おれはレオヴァ様から ここを任されてる…死んでもテメェらに船は触らせねぇぞォ……』

 

 

血反吐を吐きながら睨み付けてくる少年の言葉にササキはまたも眉を寄せる。

 

 

『チッ……また “レオヴァさま” かよ。

なんなんだソイツは、教祖か何かかよ。

百獣の息子だってだけで億がついた七光りだろ?』

 

 

なん度目か解らぬほど百獣の部下から発せられる男の名に嫌気が差した様にササキは吐き捨てた。

 

だが、その言葉を聞いた瞬間に

立つのがやっとだった筈の少年が猛スピードでササキに飛び掛かってくる。

 

 

 

『何も知らねぇテメェがレオヴァさまを侮辱すンじゃねぇ!!!』

 

 

死にかけているのが嘘のような、凄まじい打撃の連打に一瞬ササキは驚きに反応が遅れる。

 

しかし、幾度も死線をくぐり抜け新世界へ足を踏み入れた実力は伊達ではなかった。

 

守りを全て捨てササキを殺ることのみに特化した攻撃を仕掛けてくる少年を軽く()なし、斬り飛ばす。

 

 

 

『うぐぅ……くそォ"…!!』

 

 

真正面から一太刀を食らった少年は呻き声を上げながら膝をついた。

 

 

『あんだけの傷を負っても引き下がらねぇ、その忠義は認めてやる。

……さっきの発言も撤回だ、おれは知らねぇからなァ…その“レオヴァさま”とやらを。』

 

 

ササキの発言に少年は驚いた様に目を丸くする。

 

 

『……少しは話の分かるオッサンだな』

 

 

『おい、ガキ……誰がオッサンだァ…!?

おれァまだ二十代だぞ!!』

 

 

怒りの形相で振り下ろされたサーベルを間一髪で少年は躱す。

 

 

少年がササキを引き付けた事もあり、他の部下達もよろよろと立ち上がっていく。

 

 

『……!?

まだ殺るってのか、まるでゾンビ兵だな…』

 

 

 

忌々しそうに吐き捨てたササキの言葉を合図に海賊達のぶつかり合いが再び勃発した。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その戦いは長くは続かなかった。

百獣の部下達はやはり限界だったのか、次々と倒れていってしまう。

 

 

だがこの戦況は良くない、と早めにケリを付けるべくササキは“奥の手”を使おうと部下を下がらせる。

 

 

部下達は不満そうな顔をしたが、他でもない船長命令の為、渋々引き下がるしかない。

 

何故、こんなにも善戦しているというのにササキが焦っているのか部下達には皆目見当もつかなかった。

 

 

 

 

しかし、焦るのも無理もない状況だ。

 

こんなにもササキ達が押し続けているのにも関わらず“落とせていない”。

 

その事実こそがササキを焦らせる。

 

 

最初こそ、人数は百獣側が倍以上いると言う不利な状況ではあったが、今はその有利性は完全に逆転している。

 

 

だというのに、今立ち上がって戦い続けている百獣の部下たちは

一人倒れると別の一人が立ち上がり、そしてまた他の者が立ち上がり……と本当にゾンビの如く食らい付いてくる。

 

 

それに押しているとは言ってもササキの部下達も体力の限界が近付きつつあるのだ。

 

ここまで様々な戦闘を経験してきたササキだからこそ、すぐに終わらせなければならないと勘が告げた。

 

 

少しの慢心から戦況が一転してしまう可能性を潰すべく、力を込めたササキを見て百獣の部下達は驚きに目を見開いた。

 

 

 

『…の、能力者なのか!?』

 

『しかも…動物系(ゾオンけい)…こ…古代種……れ、レオヴァさまっ…』

 

 

狼狽える百獣の部下達に少年が叫ぶ。

 

 

 

『落ち着け!

倒す事より守る事に集中すりゃ良いんだ。

……カイドウ様と比べりゃあんなの亀みてぇなもんだろ!!』

 

 

誰よりも前線に立ち続ける少年の背中に、皆が鼓舞されたように気を持ち直した。

 

 

『そうだ、カイドウ様と比べりゃ大したことねぇ!』

 

『必ずレオヴァ様がお戻りになられる……それまで耐えればいい話だ。』

 

『ばか野郎!!

カイドウ様と比べるなんておこがましいだろ?!』

 

『ははは、そりゃ…違いねぇ……!』

 

 

 

生意気にも、口々に啖呵を切る百獣の部下達へ恐竜の姿へ変わったササキが迫っていく。

 

次々と薙ぎ倒される満身創痍の部下達。

 

 

 

 

 

ついに、ササキは船の前へとたどり着いた。

 

そして、その船に触れようとした時だった。

 

 

 

誰かがササキのズボンの裾を掴んだ。

 

 

 

『船に"は"……ぜってぇ…触"ら、せね"ぇ…

レオヴァさ、ま"… の指示"…まも、る"ッ……』

 

 

はっと振り返るとそこには地面を這いながらもササキを止めようと手を伸ばした少年がいた。

 

 

 

『殺すには惜しいガキだが……

これだけ忠誠心が高ぇんだ、ウチには来ねぇか…』

 

 

残念そうな顔をしたササキがサーベルを少年の上で振りかぶった時だった。

 

 

異常な気配を感じ、本能的に大きく飛び退く。

そして弾かれるように空を睨み付けた。

 

 

突如現れた青年は、砂浜に倒れる少年をかかえ上げると船の手前に置かれている物資箱の上へと優しく寝かせ、声をかけた。

 

 

 

『ページワン、皆……良くここまで耐えてくれた。

もう大丈夫だ、あとは おれに任せて少し休め。』

 

 

その声を聞くとページワンは安心したように体の力を抜いた。

 

 

『レ"オヴァさ"ま"……お"れ…ふね 守っ、た"』

 

 

掠れる声で呟かれた言葉にレオヴァは優しく微笑みかける。

 

 

『あぁ、ページワン……良くやった。』

 

 

 

優しく頭を撫でながら与えられた一言に嬉しそうな目をするとページワンはゆっくりと瞼を閉じた。

 

 

 

突然現れた青年の顔を見てササキの部下達が騒ぎだす。

 

 

『お、おい!

あれカイドウの息子じゃねぇのか!?』

 

『間違いねぇ、手配書の顔と同じだぜ!』

 

『マジかよ……ど、どうする?』

 

『おいおい、アイツは1億5000万ベリーで船長よりも金額は下だ!

ビビることねぇよ!』

 

『船長~!やっちまってくださいよ!!』

 

『へへ…また船長の名があがるぜ!』

 

 

 

ガヤガヤと騒ぐ部下達はササキの勝ちを確信している。

なんてったって我らが船長はレオヴァよりも一億以上も賞金が上なのだ。

 

カイドウの息子と言うだけで懸賞金をかけられた男と数々の死線を生き抜いてきた船長とでは格が違う。

 

何より目の前の あの男からはちっとも威圧感を感じない。

本当に怖がる要素が何もないのだ。

 

そう、船長が負ける要素など微塵も存在しないと信じて疑わない。

 

 

 

 

 

しかし、ササキは流れる脂汗を止めることが出来ずにいた。

 

目の前に突如現れたレオヴァから何も感じられない。

 

強さも威圧感も怒りも殺気も何も感じないのだ。

 

端から見れば今のレオヴァは弱い一般市民にも思えるだろう。

 

 

だが、ササキは理解してしまっていた。

……自分とレオヴァの実力差が大きく開いていることに。

 

感じないのはレオヴァが それだけ気配のコントロールが上手く、ササキの見聞色の覇気が及ばぬ域に達しているからなのだ、と。

 

 

レオヴァが一歩を踏み出した。

 

 

 

そして、次の瞬間にはササキとその部下達は吹き飛ばされている。

 

 

 

訳が解らず動揺する部下たちを他所に、ササキは驚愕で目を見開きながらもレオヴァだけを見続けていた。

 

 

あの一瞬でレオヴァと言う男は敵を一斉に弾き飛ばすだけでなく、自分の部下たちを物資箱の方へと移動させていたのだ。

 

 

まるで時が飛んだかの様な現象に狼狽え始めたササキの部下達が騒ぎだした声を聞き、レオヴァは目を細めた。

 

 

『まったく……耳障りだ。』

 

 

そう呟かれた声がササキの耳に届くのと同時に全身が貫かれたのかと錯覚する程の覇気が襲う。

 

 

 

『ぐぅ"…!?』

 

バタバタと倒れていく部下達の中で何とかササキは耐え抜いた。

 

 

荒くなった息を整えながらも警戒するため、レオヴァに目を向け……固まった。

 

 

一人耐えたササキを見据えるレオヴァの口元は良いモノを見つけたとでも言う様に“三日月”を描いている。

 

思わず凝視してしまったササキにレオヴァは歩み寄る。

 

 

 

『あれで気を失わない奴は珍しい。

ドリィでも万全じゃなけりゃ気を失うんだがなァ……』

 

 

独り言かも解らぬ呟きを溢しながら近付いてくるレオヴァにササキは先制するべく構えた。

 

獣化して構えるササキを視界に入れても尚、レオヴァの雰囲気は先程の覇気が嘘の様に穏やかなままだ。

 

 

 

『おれの可愛い部下達が受けた分の痛みはしっかりお前にも受けてもらうとしよう。

簡単には死なねぇだろう?…動物系(ゾオンけい)はタフだからなァ…』

 

 

 

 

目にも留まらぬ速さで先制を仕掛けたササキが地獄を見るのはすぐのことだった。

 

 

 

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レオヴァとの戦いで一方的な展開を迎え、無念にも敗北したササキは兎丼の採掘場で働かされていた。

 

 

あの戦闘後、部下には手を出さない事を条件に大人しく捕虜となったササキは、ワノ国でどんな仕打ちをされようとも耐え抜いてみせると意気込んでいたが、あまりにも予想外すぎる毎日に呆気にとられている。

 

 

 

 

まず、ワノ国に着くまでに全身に負っていた怪我をレオヴァ自らに手当てされたのだ。

 

ササキの部下達も手当てを受けたようでピンピンしている。

 

海楼石(かいろうせき)で拘束されながらも、

ササキは『意味がわからねぇ…』と仏頂面を隠しもせず不躾な視線をレオヴァに送った。

 

 

ササキと目が合ったレオヴァはまるで心が読めるかのように答える。

 

 

 

『お前との約束だろう?

ササキが大人しく捕虜となっている間は部下には手出ししねぇと』

 

 

なんでもない事の様に言ってのけるレオヴァに更にササキは困惑する。

 

 

 

『……そりゃ、そう口約束(くちやくそく)はしたがよ…

手当てまですンのは意味がわからねぇ。』

 

 

ササキの困惑はもっともである。

 

海賊同士の約束など、本来ならばササキを海楼石で縛り上げた時点で破られてもおかしくはないのだ。

 

むしろ何故殺されずに捕虜にされているのかも理解出来ない。

 

悶々とするササキ相手に何でもない事のようにレオヴァは言う。

 

 

 

『ササキの部下を手当てしたのも約束を守る為だ。

あのまま放置すれば重症化し、最悪死んでしまうだろう?

……またササキに暴れられては困るからな。』

 

 

ニッコリと笑いながら言い放つレオヴァにササキは苦々しく呟いた。

 

 

 

『……嫌みかよ。』

 

渋い顔をしたササキと、相も変わらず笑顔を向けているレオヴァ、と言うチグハグな現状を遠目に眺めるササキの部下達も困惑していた。

 

 

 

 

 

そして、いよいよワノ国に到着し、ササキとその部下達の緊張も高まっていた。

 

何をさせられるのか。

どんな非道な目に遭わされるのか。

生きていけるのか。

 

 

最悪な想像がどんどん膨らんでいく部下達の気配を感じながらもササキはレオヴァの言葉を待った。

 

 

じっとりと嫌な汗を滲ませるササキ達にレオヴァが告げた内容はこうだった。

 

 

 

『お前達には採掘場で働いてもらう。

ササキには賃金は無しだ、捕虜だからな。

だが、他の部下達にはササキが大人しく捕虜になっている間は賃金を支払い、雇うという形を取る。

 

………まぁ、仕事内容については兎丼(うどん)にて説明をしよう。

実際に見た方が早いだろうしな。』

 

 

 

この時点で既に予想と あまりにもかけ離れた内容にササキ達は付いていけて居なかった。

 

 

賃金が支払われる……?

雇うという形……?

 

 

 

正直なササキ達の感想は

『コイツ、なに言ってんだ?』である。

 

問答無用で奴隷のような扱いをされるのだろうと想像していた彼らには、レオヴァの言ってる意味が理解出来ないのも無理はない。

 

 

いや、だが採掘場とは とても治安が悪く薄汚いところで、賃金も名ばかりのものだろうと言う考えにササキ達はすぐさま至った。

 

 

見たことのない乗り物で空を移動させられた彼らがたどり着いた兎丼(うどん)の採掘場は想像の倍は大きかった。

 

大きな門をくぐり、中へ通される。

 

そして説明を受けながら実際に採掘されたものを運ぶ仕事が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

あれから二ヶ月半が経った現在。

 

ササキはすっかり順応してしまっている自分と部下達に苦笑いせずにはいられなかった。

 

 

 

この採掘場は朝から夕方までの7時間作業が行われている。

 

侍や元海賊たちが主にこの場所で汗水流しながら働いているのだが、あまりにも皆の仲が良く、風通しの良い場所であった。

 

 

もし合わない相手がいればブロックの変更……即ち現場を変えてもらえる制度もあり、他にも一時間の昼休憩には食堂が開放されるのは勿論のこと、定期的にある水分休憩、更には宿舎まで完備されているのだ。

 

 

ササキも部下達も宿舎で寝泊まりしているのだが、その宿舎がまるで旅館を思わせる作りなのである。

 

仕事から帰ってくれば、晩御飯は用意されており部屋も綺麗になっている。

大浴場は勿論、岩山を利用した高台に露天風呂や宴会場まである始末だ。

 

 

部下達もササキも

『……おれたち旅行にでも来てんのか?』と首をかしげたくなるのも致し方ないだろう。

 

 

そんな日々ですっかり部下達は今の仕事を気に入ってしまっている。

 

 

そして実のところササキはレオヴァと仲良くなってしまっていたのだ。

 

 

 

きっかけは些細なことだった。

 

部下達やレオヴァとの約束の事もあり真面目に働いていたササキの下へ、様子を見に現れたレオヴァに酒が欲しいと愚痴ったのが発端だ。

 

 

その夜、山のように積まれたアスパラをかじりながら自室のバルコニーで月を眺めていたササキの前に突如、黄金の鳥が現れたのだ。

 

思わずアスパラを気管に詰まらせ咳き込むササキを心配するようにバルコニーへ踏み込んできた鳥は人の姿となって背を叩き、アスパラを出すのを手伝った。

 

 

 

何しに来たんだと(いぶか)しむササキに美味い酒があるんだと笑顔で酌を押し付けてくるレオヴァの話術に、あれよあれよと話は進み、二人は月を肴に晩酌する流れとなったのだ。

 

 

次の日が休みだと言うことや、久々の酒に気分があがっていた事もあり、ほどよく酔ったササキはレオヴァと夜が明けるまで飲み明かした。

 

 

その結果、すっかりササキはレオヴァに絆されていたのだった。

 

 

 

 

 

そして明日が休日である今日も、ササキは自身の好物であるアスパラとレオヴァの好物である魚介類を用意し、バルコニーで月を見上げながら到着をゆったりと待っていた。

 

 

上機嫌にアスパラを口に放り込んでいると空が光りだす。

 

レオヴァの到着にササキは慌ててアスパラを飲み込み、大きな口をいっぱいに開き笑顔を見せる。

 

 

「おぉ~!レオヴァさん、待ってたぜ!

刺身も炙りもあるけど……どうする?」

 

 

「ふふ、待たせて悪かった。

そうだな……刺身から頂こうか。」

 

 

酒瓶を抱えながら部屋へ入ってきたレオヴァを嬉しそうにササキは迎え入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

半分以上の酒瓶を空にしても二人は談笑を続けている。

 

ほとんど、ほろ酔い状態のササキが喋り続けているのだが、レオヴァも楽しげに話を聞いていた。

 

 

どんな話をしても上手くさばくレオヴァがササキは好きだった。

 

 

最初の出会いこそ、長時間生かさず殺さずな戦闘を続けられて散々な目に遭わされてはいるが、自分もレオヴァの部下を散々な目に遇わせたのだ。

 

それは互いに敵だったのだから当たり前だとササキは割り切っていた。

 

 

 

 

 

 

実験に失敗し、あわや大爆発だったというレオヴァらしからぬ話を聞き、ケタケタと大声でササキは笑う。

 

 

今日もいつも通り楽しく酒を飲む二人だったが、不意にレオヴァの雰囲気が変わった。

 

 

「……実は今日、ササキに提案をしに来たんだ。」

 

 

真剣味を帯びたレオヴァの声にササキもすっと姿勢をただした。

 

 

「んで、レオヴァさん……その提案ってのは。」

 

 

固唾(かたず)を飲むササキにレオヴァはゆっくりと口を開いた。

 

 

「ササキ……お前ウチに入らねぇか?」

 

 

「……へ?」

 

 

重々しく告げられた言葉とは裏腹な内容にすっとんきょうな声を漏らしたササキだっだが、レオヴァの話は続く。

 

 

 

「正直、最初は強さと悪魔の実の珍しさから捕虜として連れ帰ったのが本音なんだが……

ここ最近の晩酌を通して捕虜としてではなく、身内としてササキと共に歩みたいという考えが強くなってな…

 

……今の立場のササキにこんな事を言っても困らせるだけだろうか…?」

 

 

 

眉を下げながらこちらを伺うレオヴァを他所にササキは口を開けたまま(ほう)けていた。

 

 

 

てっきりササキはもう捕虜としてではあるが百獣海賊団に入ったと思っていたのだ。

 

そもそも、戦いで負けた時点で普通ならば問答無用で勝者に従う他ないのがこの世界。

 

だというのにササキの意見を尊重しようとするレオヴァの態度に、出会ってから何度目か解らぬ衝撃を受ける。

 

 

固まったままのササキにレオヴァは物悲しそうに目を伏せた。

 

 

 

「……すまない、唐突すぎた。

今の話は忘れてくれて構わない……」

 

 

沈黙を否定と取ったのかレオヴァが引き下がってしまう。

ササキは慌てて叫んだ。

 

 

 

「まっ、待ってくれレオヴァさん。

勿論、喜んでその話 受けさせて貰うぜ!」

 

 

机から身を乗り出す勢いで提案を受け入れたササキに、驚いた表情になったレオヴァがその言葉に続ける。

 

 

 

「……受けてくれるのか?」

 

 

「おう!

レオヴァさんの下だったら、おれも文句ねぇ!

それにやっぱり戦闘の方が性に合うみてぇだ。」

 

 

にっと牙のある大きな口を“三日月”形にして笑ったササキを見て、レオヴァも嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 

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あの晩酌の二日後にササキは “真打ち” に就任した。

 

 

そして、初めての遠征でカイドウに同行して帰って来たササキの態度に皆が驚いた。

 

 

 

『カイドウさん、飲むなら おれも誘ってくれよ~!!』

 

良い笑顔でカイドウの周りをドスドスとササキは付いて回っている。

 

 

そう、ササキはすっかりカイドウの強さに惚れ込んでしまっている様だったのだ。

 

 

 

たった二ヶ月の遠征でササキに惚れ込まれたカイドウを見てレオヴァは誇らしげに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 





ー後書きー

【現時点、真打ちメンバー】
・ドレーク、ロー、スレイマン、ブラックマリア、ササキ、うるティ

【レオヴァ】
・懸賞金額1億5000万ベリー
・カイドウの息子という肩書きで懸賞金がついていると思われている(実際に政府もその理由からこの金額をつけているので事実ではある)

【兎丼・採掘場】
原作と違い人を雇っている。
外から連れてきた海賊も此処で働いているが、基本的には自分の意思で働いている。
ササキの部下も半数が残って採掘場の作業員になることを望んだので、ワノ国の国民として働いている。


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