俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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休暇命令

 

 

 

 

 

二年ほど前に魚人島のスラム街から百獣にやってきたオレ達はレオヴァ様直々に特殊部隊へ任命された。

 

何でも新しく作られた、この特殊部隊は “SMILE” を授けられた者とオレ達の少数精鋭で構成されているらしい。

 

奴らはギフターズや真打ちと呼ばれる地位を持ってるが、偉ぶらないし気の良い奴ばっかりだ!

 

 

新しく作られた部隊への初メンバーと言う大役……必ずレオヴァ様にご満足頂ける結果を出さねぇとな。

 

それにオレ達が遠征で結果を残せばワノ国の奴らも喜ぶ。

 

……なんて、昔じゃ他人の為なんて…ましてや人間の為にとか微塵も思わなかったんだがなぁ……。

 

 

 

 

元々、オレ達はあんまり人間に良い印象はなかったんだ。

 

それこそ、レオヴァ様やスレイマンさんにドレークさん、あとローさん達以外の人間なんて話すのも癪だと思ってた。

 

魚人だから人魚だからと変な目で見てくる人間ばっかりだと思ってたし、実際にワノ国に着くまでに石を投げつけられたり、気分の悪くなる経験も沢山したんだ……。

 

 

けど、その度にレオヴァ様、スレイマンさんやドレークさんはオレ達を慰めてくれた。

 

 

レオヴァ様の怒った姿を、オレはこの時初めて見た。

正直、泣きそうなぐれぇ嬉しかったなぁ…。

 

 

 

あの時は悪目立ちしちまったから、レオヴァ様に

『すいません、おれらのせいで……問題起きちまったみてぇで…』

と謝ったが

 

レオヴァ様はオレの肩に優しく手を置いて

『謝る必要は一切ない……辛い思いをさせたな…。

人間だとか魚人だとかは関係ない、皆が大切な部下だ。

おれァ…身内が謂われのない扱いを受けて黙ってるつもりはねぇ。』

と力強く言って下さった。

 

 

あぁ、やっぱりオレ……この人に付いてきて良かった。って、そんな嬉しさとか忠義とか色んな気持ちでいっぱいになったんだ。

 

 

だから、他の人間全員から嫌われようが、レオヴァ様達だけが味方でいてくれりゃ良い!……そう思ってた。

 

 

けど、ワノ国に来てまた考えが変わったんだ。

 

 

ワノ国の奴らは全然オレらを“気にしなかった”。

本当に普通にオレ達と接してくる。

 

 

今まで、悪い意味で特別扱いされてきたオレ達にとって、その“普通”がすごく嬉しかった。

 

それでオレ達は決めたんだ。

百獣とワノ国の奴らの為に遠征でもなんでも頑張ってやるぜ!ってな。

 

 

 

……話がずれすぎたな。

 

とにかく、新しい部隊への配属が嬉しかったんだ。

 

 

オレ達の中には SMILE が欲しい!ギフターズになりてぇ!と言っていた者達も多かったが。

 

レオヴァ様の

『お前達は海を自在に泳げる素晴らしい力を既に持ってるじゃないか。

おれにはない良い個性だ。

……おれが溺れた時は頼むぞ? 』

と冗談交じりのお言葉を頂いてから、SMILEを欲しがるやつは居なくなった様だった。

 

 

やっぱし、みんなSMILEっつーか、レオヴァ様から何かを貰いたくて騒いでただけみてぇだ。

…まぁ…気持ちはすげぇ分かるけどな!

 

 

今考えれば、レオヴァ様の周りのスレイマンさん達はみんなが能力者だ。

…だからこそ、オレ達は海を泳げるっつー強みを持ち続けるべきだよな!

 

陸はカイドウ様とレオヴァ様達が居れば怖いもんなし!

んで、海はオレ達が完璧にサポートするんだ!

 

 

オレ達は気合い十分で新しい部隊での遠征へと出発した。

 

 

 

 

 

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レオヴァは長期休暇と言う命令をカイドウから受け、偉大なる航路(グランドライン)前半へ来ていた。

 

 

楽園と呼ばれる地ならレオヴァもやることがない筈だ、と言うキングとクイーンの助言をカイドウが嬉々として採用していた姿を思い出し、苦笑いを溢す。

 

 

「……別に連休なんざ、いらねぇんだがなァ」

 

 

そう呟き、禁止リストをじっと見つめるレオヴァの乗る空船の進む方向には、のどかすぎる景色が広がっている。

 

 

やることがないと困り顔のレオヴァとは裏腹に、ドレークは溢れる笑みを抑えることが出来ずにいた。

 

 

 

今回、レオヴァの休暇の護衛……と言う名の“仕事させない係”の枠は1名のみであった。

 

それに対して、志願者は8名。

 

誰がこの褒美とも言える任務を勝ちとるか……ピリピリとした志願者達に告げられた選別方法は

 

“カイドウとの組手” であった。

 

 

この瞬間、志願者たちの脳裏には、あの地獄の光景が走馬灯のように駆け巡った。

 

 

『……は、旗抜き…ゲーム…ウッ、頭が……』

 

『…カイドウ様と棍棒耐久……また動けな…い……』

 

『あうぅ…鬼ごっこはもうイヤだぁ……海楼石(かいろうせき)きらいナリぃ…』

 

『…槍の雨……落雷……』

 

『…ク、クミテ…?……あ、あぁ、組手か………あれは組手なのか…?』

 

『ア"~~……シヌ……カイドウさん相手は…シヌゥ……』

 

『カイドウさんとの組手は久々だ……!』

 

『組手?  おれカイドウさまと組手するの初めてだ~!なにするのかなぁ?』

 

 

約2名を除き、全ての志願者達は幾度も繰り返された地獄を思い出し顔を引きつらせた。

 

しかし、志願を取り下げる者は居らず皆が決死の思いで“組手”へ挑んだ。

……約1名、ベポを除いて。

 

 

 

当初、ジャックが圧倒的有利ではないかと言われていたが、結果は意外にもドレークの勝ちで締め括られた。

 

 

なんと、今回の“組手” はレオヴァが参加しない代わりに、クイーンによる特別ルールが設けられていた。

 

単純ないつもの“組手”であれば、ジャックの勝ちは揺るがなかったのだが、頭脳戦とも言えるルールを追加された事によりドレークは志願者達の裏を取り、見事勝ち残ったのだ。

 

 

ローとページワンはドレークの行動を読めてはいたが、如何せん体力が保たず敗北。

 

うるティとササキはそもそもドレークの動きに気付けず敗北。

 

スレイマンは普段であれば気付けた筈だが、レオヴァとの遠征と言う褒美に目が眩み、隙を突かれ敗北。

 

ジャックはカイドウとの戦闘に意識を向けすぎていた為、裏を取られ優勢だったが敗北。

 

 

全体を冷静に見据え、勝ちにのみ固執した動きをしたドレークは見事カイドウから今回の護衛を仰せつかったのだった。

 

 

カイドウから褒められるだけでなく、更にはレオヴァとの休暇遠征という、百獣海賊団の人間なら誰もが羨むセットを手にしたのだ。

嬉しさを隠しきれないのも無理はないだろう。

 

 

 

……ちなみに、この “組手” には

『レオヴァは部下にめちゃくちゃ甘いし、厳しい条件を勝ち上がって喜んでる部下がいりゃ無下に休暇を断れないんじゃね?』

というクイーンの思惑から開催された。

 

流石は百獣海賊団屈指の天才である。

 

思惑通りレオヴァは普段であれば休暇を、長期ではなく短期にしようと何かと理由をつけてカイドウやキング、クイーンを丸め込むのだが

『今回の休暇遠征はカイドウさんから おれが護衛を頼まれた。

レオヴァさんとの遠征は本当に久し振りだ……楽しみにしてる、全て任せてくれ…!』

と言う、ドレークのあまりの喜び様にレオヴァは今回は素直に連休を受け入れた。

 

 

頑なに長い休みを取らないレオヴァの新しい弱点の発見にクイーンとカイドウは思わずニッコリである。

 

 

 

そんなこんなでレオヴァとドレーク、それと料理人などの数人の部下たちはキラキラと光る海の上をのんびりと進んでいたのだった。

 

 

 

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三つの無人島での生き物採集を終え、岸壁にひしめくように並び立つカラフルな家が特徴的な島へ観光に来ていた。

 

島についたばかりの午前中はレオヴァの付き添いで街をくまなく探索し、ドレークは多くの写真を撮った。

 

最近はレオヴァの収集癖によって集められたヘンテコな……いや、少し風変わりな物が増えすぎ自室を圧迫してしまっており、レオヴァは かさ張らない写真を好むようになり始めたのだが、それを知るのはまだカイドウとドレークのみである。

 

 

ドレークが写真を撮る度にレオヴァはそれを見て

『ふふ、ドリィの撮る写真は綺麗だなァ

おれにも焼き増してくれるか?』

と上機嫌に声をかけるので、ドレークは嬉しそうにまた沢山写真を撮る……そんなほのぼの観光だ。

 

 

歴史についても街の露店や、食事処などでレオヴァは色んな人に聞いて回るなど本当に楽しそうであった為、ドレークは本当に嬉しかった。

 

なにせ、今回の準備も遠征ルートも全てドレークが行っているのだ、嬉しくない筈がない。

 

 

 

 

1日の終わりも近づき、晩餐はこの島の名物料理である沢山の魚介フルコースだった。

この食事もレオヴァは喜び

『これは凄いな……ん、美味い。

島独自の料理は必ず食べたいと思っていたんだ。

何から何までありがとう、ドリィのおかげで楽しい休暇だ。』

と微笑みながら優しく礼を述べてくれる。

 

ドレークは普段の何倍も美味しく感じる食事を十分楽しんだ。

 

 

 

そして、無人島で捕まえた様々な爬虫類を眺めながら、島名物の甘いワインを嗜みドレークは楽しげに目を細める。

 

 

 

 

「珍しい種が捕まえられて良かったな。

……その、蛇がお気に入りか?」

 

 

後ろから聞こえた声にドレークは振り向き答えた。

 

 

「まさかスケールレスのボール蛇まで捕まえられるとは思ってなかった。

レオヴァさんが見つけてくれて良かった!」

 

 

笑みで返すドレークからの聞き慣れない単語にレオヴァは首をかしげた。

 

 

「スケールレス…? 初めて聞く単語だが……」

 

 

「スケールレスとは鱗のないものを言うんだが。

そう…だな……突然変異や品種と言うのが近いかも知れない。

肌触りも見た目も往来の蛇とは全く違うんだ!

……レオヴァさんもハンドリングしてみるか?」

 

 

そう言ってケージから蛇を取り出したドレークにレオヴァも興味を示した。

 

 

「それは気になるな。

…………おぉ…これは……ふふ、面白い感触だなァ。

色が明るいのも可愛らしくて良い。

スケールレスは皆、明るい色なのか?」

 

 

ドレークから受け取った蛇を腕に這わせながらレオヴァは疑問を口にする。

 

 

「いや、スケールレスは暗い色の個体も確認されてる。

レオヴァさんの飼ってる個体と交配させれば暗いスケールレスが生まれる可能性もある……試すのはどうだろうか?

色んな柄や色のスケールレスを揃えるのも、また飼育の楽しみだと思う…!」

 

 

「確かに、ドリィの言う通りだな。

……あぁ…だが、蛇は魅力的な品種が多すぎて困る……

全てを揃えようと思うと規模が大変だ…」

 

 

「はははは…!レオヴァさんの気持ちは おれも良く分かる!

いっそ、専用の飼育館でも建てたいくらいだ!」

 

 

二人はワイン片手に爬虫類の話題に遅くまで花を咲かせたのであった。

 

 

 

 

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とある島で生まれた、この少年は昔から気が弱く、何かされても言い返せないような子どもだったが

同時に優しく真っ直ぐな子どもでもあった。

 

 

そんなコビー少年の夢は、海軍に入り悪い奴らを取り締まることだ。

 

 

 

 

だが、目の前のこの光景はなんだろうか。

 

必死に子どもを庇う母親を寄って集って痛め付ける海兵たち。

 

 

…これが少年の夢見た理想の姿だと言うのだろうか?

 

 

 

 

「どうか……娘は…!

この子は何も……なにも知らないのですっ…」

 

 

涙ながらに訴える母親を取り囲む海兵たちの間を割るように現れた海軍大佐はめんどくさそうな顔をしながら銃を取り出した。

 

 

「知ってるか知ってないかじゃねぇ……

犯罪者のガキってだけで罪なんだよぉ…!!

んでもって、そのガキを庇うテメェも同罪だ!」

 

 

ドンドン……と2発の銃声に力なく母親は倒れ、子どもは泣きながら骸にすがり付いた。

 

 

 

「っとに……面倒な仕事を増やさせやがってよぉ!!」

 

 

血溜まりの中で咽び泣く子どもの頭を正義を背負った男が撃ち抜いた。

 

 

子どもだったモノに唾を吐くと海軍大佐は海兵をぞろぞろと連れながら海軍基地へと戻って行く。

 

 

残された者たちはただ震えながら惨い現状から目を反らすことしか出来なかった。

 

 

コビー少年は目の前の出来事を信じられずに、ただ呆然と立ち尽くした。

 

 

 

「……こんな………こんなの…正義なんかじゃないっ……」

 

 

 

その少年の呟きに答える者は一人としていなかった。

 

 

 

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楽園と呼ばれる海の上を進む空船の横を、並ぶように神々しい巨鳥が飛んでいる。

 

 

大きな鳥は雲の上をどんどんと進みながら溜め息をつく。

 

この大きな鳥は現在、とても困っていた。

 

 

ドレークの練った遠征案をやりつくし、いざ帰還と言うタイミングで、まさか休暇の延長期間を設けられるとは思ってもいなかった。

 

 

光る鳥は出発前の光景を思いだし、また溜め息をついた。

 

 

 

 

『レオヴァ坊っちゃん…

次の休みこそ絶対に、何もせずにゆっくり過ごしてもらうぞ……』

 

 

そう気合いの入った声で宣言するキングにレオヴァは苦笑いを溢した。

 

 

『キング……なにをそんなに意気込んでるんだ…』

 

 

『前回、前々回も……休みの間に利益を上げてることは割れてんだよレオヴァ坊っちゃん。

クイーンの馬鹿のサボり癖も目に余るが、レオヴァ坊っちゃんの仕事病も大概だ……!

……だが、今回は完全に休める様な場所を用意した。』

 

 

『…休みなのに場所を指定されると…?

…それは本当に休みと言えるのか…キング』

 

 

『無駄だ、レオヴァ坊っちゃん。

舌戦(ぜっせん)に持ち込ませる気はさらさらねぇ……勝てねぇからな…。

それに、すでにカイドウさんにも話は通してある…!』

 

 

『……随分と周到じゃねぇかキング…』

 

 

『フッ……今度こそ絶対にしっかりと休んで貰うからなァ…レオヴァ坊っちゃん。』

 

 

 

キングの休ませたいと言う思いと、レオヴァの働きたいと言う思いの(せめ)ぎ合いの結果、レオヴァの偉大なる航路(グランドライン)前半での休暇が決まったのだが、休暇の延長まで仕組んでいたとは流石のレオヴァもこの時は読めなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

目的も特にないレオヴァは

適当に海軍基地を減らしながらゆっくり帰るか……と目下に見えた海軍基地のある島の森へと潜水艦を下ろし、人の姿へと戻る。

 

 

そして、その潜水艦から出てきた部下たちへ

問題さえ起こさなければ好きなようにしていいと命をだしてから、レオヴァは街へと歩いて行く。

 

 

「…空から見た感じは良くある街並みだったが……

ふふ……だが初めての街…楽しみだ。」

 

 

 

 

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コビー少年はこの島での生活に耐えられなかった。

 

今まで憧れていた海軍の実態……日々怯える子どもたち…

どれもが少年を憂鬱な気持ちにさせる。

 

 

誰かがこんな日常を壊してくれたら……そんな夢物語を妄想するばかりの自分にも嫌気がさしていた。

 

なにより、不平や怒りを独り呟くだけで何も出来ない自分が情けなかった。

 

 

 

「いやだけど……なにか文句を言ったら殺されちゃうし…

しょうがないよ……うん、しょうがない……」

 

 

少年はそう呟いては、自分がどんどん嫌いになっていく。

 

 

 

 

 

また、大通りで悲鳴が聞こえる。

 

 

「あぁ……また、か。

なんで、なんで……守るべき市民を…傷付けるんだろう……

ぼくならそんなこと…絶対にしないのに……!」

 

 

 

震える腕を少年は無理やり押さえつけながら悲鳴が聞こえなくなることを願った。

 

 

 

 

暫くたつと、悲鳴は消えたが市民たちのざわざわと騒がしい声が聞こえてくる。

 

 

少年が首をかしげながら路地裏から広間へと出ていくと、そこには数十人の海兵が倒れていた。

 

驚きに目を白黒させていると、その横で母親と父親を手当てする大男たちが目に入った。

 

 

一人は泣く子どもを泣き止まそうとあたふたしていたが、もう一人が手当てを終えると、あたふたしている男を見て笑った。

 

 

「ふふっ……何してるんだドリィ

それでは怖がらせるだけだぞ?」

 

「れ、レオヴァさん……笑うことないだろう…」

 

 

落ち込んだドレークと言う男の前にいた少年に優しく微笑みかけながらお菓子を渡すレオヴァと呼ばれた男に、手当てを受けた親二人は頭を下げた。

 

 

「ありがとうございます……!

息子と嫁を助けて頂いてなんと礼を言ったら良いのか…」

 

「ありがとうございます……

で、ですがその……お二人が今……倒してしまった人たちはこの島の海兵でして……貴方様方も狙われてしまうかと…

ぜ、善意で助けて頂いたのに……お礼どころか……

…本当に申し訳ありませんっ……申し訳ありません……!」

 

 

 

頭を下げて一心不乱に謝る母親をドレークが落ち着かせる。

 

 

「お、おい…落ちついてくれ。

せっかくの散歩中に嫌な気分にさせられたから伸しただけだ

貴方が謝ることはない…!」

 

 

「ドリィの言う通りだ。

それに、おれたちは元から海軍と仲は良くなくてな…

この件があってもなくても目を付けられるさ」

 

 

大男二人は心身ともにボロボロな家族を労るように優しく声をかけていた。

 

 

コビー少年はその姿に息を呑む。

 

 

「……ヒーローだ………カッコいい……」

 

弱き者を助ける優しい二人組……少年の夢見た姿は目の前にあったのだ。

 

 

その日、コビー少年は寝る前までずっとあの二人を思い出しては心が震えるのを感じた。

 

 

 

 

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あのヒーロー達との出逢いから4日が過ぎていた。

 

 

コビーは釣りの帰りにまた、彼らの噂を耳にする。

 

 

 

「……聞いたかよ、あのレオヴァさんって人がまた病人を治してやったって…」

 

「聞いた聞いた!

他にもドレークさんが市場を襲ってた山賊を追い払ってくれたとか……」

 

「それおれも聞いたぜ!……すげぇよなぁ…」

 

「私、昨日薬を安く売ってもらったのよ!

……この街の医者はあの大佐の息がかかってるから高くてねぇ…」

 

「おいおい、ばぁさん……そりゃ口に出しちゃヤベェよ」

 

 

町人たちはこそこそと小声で話している。

 

ここ最近、彼らの話題を聞くのがコビーの楽しみでもあった。

 

山賊を倒したり、病人を救ったり、小さい子の困り事を解決したり……。

本当に彼らの話題はコビーの理想のヒーローそのものであった。

 

 

本来であれば全て、この島に拠点を構える海軍の仕事だが、海兵たちは威張り散らすだけで、普段はダラダラと何をしている素振りもない。

 

 

(……なんで、正義を背負うはずの海兵たちはみんなを助けないんだ…なにが正しいんだろう……)

 

 

そう考えながらとぼとぼ下を向いて歩いていたコビーは露店で買い物をしていた人にぶつかって尻餅をついてしまった。

 

衝撃で手に抱えていた魚籠(びく)がひっくり返り、中から魚が落ちる。

 

 

「…ぅわ!?

いてて……あ、す、すみません!!」

 

 

顔を上げた先にいる人物の洋服は、ばらまいた魚や水で汚れていたため、コビーは顔を青くした。

 

見るからに高級そうな服である。

 

 

(どどどどうしよう!?!

べ、弁償……いやけど、そんなお金ないよ!?)

 

 

尻餅をついたまま顔面蒼白で狼狽えるコビーの目の前に手が伸ばされる。

叩かれる…!と目を強くつぶったコビーの耳に、想像とは違う声が届いた。

 

 

 

「すまない、気付かなかった。

…怪我はないだろうか?」

 

 

 

こちらを心配するような声色にコビーは恐る恐る目を開き、その人物の顔を見た。

 

 

「……えぇ!?!れれれれレオヴァさん!?」

 

 

驚きに思わず叫んだコビーにレオヴァは不思議そうに顔をかしげた。

 

 

「…初対面だと思うが……まぁ、まず立ってはどうだろうか?」

 

 

伸ばされたままの手をおずおずと掴むと、すっと引っ張られコビーは立ち上がった。

 

しかし、コビーの脳内は混乱と恥ずかしさでいっぱいである。

 

 

(どう、どうしよ!?

つい、いつも噂でレオヴァさんって呼ばれてるから呼んじゃったけど……ぼ、ぼく初対面だよ!?

知らない奴にレオヴァさんとか呼ばれたら怖くないかな!?

いやいや、それよりぼくレオヴァさんの洋服を汚しちゃったの!?

あ、あわわわ……あ、憧れのヒーローになんてことを……)

 

 

立ち上がって以降、一人百面相を続けるコビーをレオヴァはじっと見つめる。

 

 

やっと視線に気付いたコビーは、それは綺麗な直角を(えが)いた姿勢で謝罪した。

 

 

「す、すみませんでしたぁ!!!」

 

 

泣きそうな情けない顔でオロオロとするコビーにレオヴァは目線を合わせる。

 

 

「いや、おれも露店に夢中で注意不足だった。

せっかくの魚も……すまない。」

 

 

「え、いや、そんな……別に魚は自分で釣ったやつですし、お気になさらず!

それより、その……お、お洋服が…」

 

 

「ん?……あぁ、別に服はいいさ、気にしないでくれ。

それより、その籠…すまなかった…弁償させてくれ。」

 

 

「いやいやいや!

それこそ、この魚籠(びく)なんてぼくの手作りですし……」

 

 

「手作り?自分で作ったのか……凄いな。

珍しい作りの物に見えたがこの島の伝統品だったりするのだろうか?

いや、それとも君の家は漁師でその関係の伝統的な作りなのだろうか……それとも」

 

 

突然、興味津々と言うように質問攻めを始めたレオヴァに目を白黒させるコビーを助けるように後ろから声がかかる。

 

 

 

「……レオヴァさん何してるんだ。

矢継ぎ早に聞かれて、そこの少年も困っている様だが?」

 

 

「…ドリィか、早かったな」

 

 

現れた男の言葉にレオヴァは確かにと、眉を下げコビーに詫びた。

 

 

「…すまない、つい……珍しい物に目がなくてな…

で、弁償の件だが。」

 

 

「弁償?

レオヴァさんが何かしたのか?」

 

 

「え、いえ!

ぼ、ぼくの不注意で……」

 

 

「いや、おれの不注意で彼の持ち物を破損させてしまってな…」

 

 

 

延々とお互いに譲り続けるコビーとレオヴァの姿に呆れ顔でドレークが間を取りに入った。

 

結局、コビーは釣った魚を2匹レオヴァに渡し、レオヴァはコビーに弁償代だと小袋を渡すことで解決となった。

 

 

 

思わぬアクシデントとは言え、憧れの二人と話せたコビーは上機嫌だ。

 

鼻歌交じりに部屋へ帰り、小袋を開けて……驚愕した。

 

 

「えええぇ~!!?

ちょ……えぇ!?」

 

 

驚きの余り叫んでしまったコビーは隣の部屋から壁がドンッと叩かれた音にハッと口を塞いだ。

 

 

両手の平くらいの大きさの小袋には大粒の宝石が六つも入っていたのだ。

 

慎ましやかに暮らしているコビーには考えられない金額になるであろう宝石に動揺は隠せない。

 

 

(も、もしかして……レオヴァさん渡す袋間違えちゃったんじゃ…?

……大変だ、返さなきゃ!)

 

 

普通であればラッキー!と思い懐に入れるであろう物をコビーは明日(あす)探して返そうと誓ったのである。

 

そう、コビー少年は根が優しく真面目な少年なのだ。

 

 

 

 

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レオヴァからの宝石を肩掛け鞄につめ、街を歩き回っていたコビーは途方にくれていた。

 

街の全ての宿を回ったと言うのに、どこにもレオヴァが居ないのだ。

 

 

大金になる宝石を持っていると思うと胃の痛さがコビーを襲う。

 

 

(は、早く返さなくちゃ……

けど、レオヴァさん何処で寝泊まりしてるんだろ…)

 

 

ため息をつくコビーの耳に助け船が届く。

 

なんと噂話によるとレオヴァは森の方へといつも消えていくらしい。

 

そこでコビーは思い至ったのだ

『レオヴァさんは船で寝泊まりしてるのでは?』

という考えに。

 

 

よくよく考えれば外からレオヴァは来たのだ。

船で寝泊まりは当たり前かもしれない。

 

単純な答えになぜ気付けなかったのだろう、とコビーは苦笑いを溢しながら頭をかいた。

 

 

 

 

 

 

森を進み海岸へと出たコビーは首をかしげる。

船らしき影が見当たらないのだ。

 

岩影などにあるのかと、海岸沿いを歩いていたコビーは1隻の船を見つけて息を呑んだ。

 

海賊船である。

 

 

 

早く、街のみんなに知らせなければ!と慌てたコビーは足をもつれさせ、躓いてしまった。

 

その音に反応した海賊たちはコビーを取り押さえる。

 

ガタガタと震えながら連れていかれた先の光景にコビーは言葉を失った。

 

 

この島の海軍大佐が海賊と話していたのだ。

 

 

「……おい、なんだぁ?そのガキは」

 

 

「こっちを見てやがったんで連れて来たんですよ

どうします?」

 

 

「ったくよぉ…今それどころじゃねぇんだよ!!

最近は百獣のナワバリがこっちまで出てきて忙しいってのに……」

 

 

「それより、街を襲う話が先だろうよぉ」

 

 

「それもそうだ。

アンタが昇進してくれりゃ、おれたちもやりやすいからなぁ!」

 

 

 

縛り上げられたコビーを無視して続けられる海賊と海軍の会談を、信じられないというような面持ちでコビーは聞いていた。

 

 

 

 

 

 






ーー後書きーー

ご感想、誤字報告ありがとうございます~!!

最近、Twitterにて“ #俺がカイドウの息子ss_まとめ ”
と言うタグを作りました!
後書きなどで書いたものを、まとめておりますので気が向きましたら是非~!

前回、感想にてシーザーの心臓を握ってる理由を的確に当てている方が居てニッコリしました!
他にも嬉しいコメントたくさん頂けて嬉しいです~!!
何だかんだシーザーは皆さんから愛されている…のか?
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