俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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基地攻略と少年の夢

 

 

 

あれから身動きの取れない状態で海に投げ捨てられたコビーは死を覚悟する他なかった。

 

どんどん沈んでいき、少しずつ息も苦しくなっていく。

 

 

暗い、苦しい、怖い。

 

 

パニックになりそうな自分と

あぁ、死ぬんだなと冷静に思う自分がいてコビーは混乱する。

 

縛られているために、踠くことも出来ずに海の中を沈む。

 

ついに、肺の中の空気が無くなったコビーの意識はプツリと途絶えた。

 

 

 

 

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ガヤガヤと騒がしい音にうっすらと少年は目を開く。

 

 

 

「お、コイツ起きたぞ~!」

 

「どうする?

おれらじゃ手当てとかわかんねぇし……」

 

「レオヴァ様に頼むか?」

 

「いや、レオヴァ様のお手を煩わせる訳にはいかねぇだろ!

レオヴァ様は休暇中なんだぜ?」

 

「そうそう、レオヴァ様は休暇中だからな!

船医のじぃちゃん戻ってくるまでそっとしとけば良いだろ」

 

 

 

周りにぞろぞろと集まった男達の声に少年…コビーの意識は少しずつ覚醒していく。

 

 

(……あれ?……ぼくは海に投げられて…それで……)

 

 

ぼんやりとした思考の中、コビーはあの事を思い出し飛び起きた。

 

 

「ま、まちが…襲われちゃう……!!」

 

そう叫んで飛び起きたコビーに周りの男達が驚く。

 

 

「うぉ!? な、なんだ?」

 

「うははは!人間のガキ、元気だな~!」

 

「バカか!急に立ち上がんな!

お前、死にかけてたんだぞ!?」

 

 

心配するような男の叫びと同時にふらっとコビーの体が傾く。

 

顔から倒れ込んだコビーは、来るであろう痛みに備えて体を強ばらせた。

 

 

……しかし、来るはずの痛みはなかった。

 

 

「なぜ、子どもが此処にいる?

……また、レオヴァさんが連れてきたのか?」

 

突如現れた眼帯の男の問いに周りの男達は答える。

 

 

「あ……いや、そいつはおれらが…」

 

「すいやせんドレーク様…その人間のガキ溺れてたんでつい助けちまって……」

 

「冷えてたし……外に放っておいちゃ死んじまうかと思いやして…」

 

 

申し訳なさそうに言う男達にドレークは溜め息をつく。

 

 

「……助けるのは良い事だ、責めるつもりはない。

だが、報告もなく部外者を船に乗せるのは良くない行為だ。

レオヴァさんも普段から、報告連絡相談の三つが大切だと口酸っぱく言っているだろう。」

 

 

「「「…すいません……。」」」

 

 

項垂れる男達にドレークは少し声のトーンを明るめに言う。

 

 

「次からは報告を忘れない様に

……少年を助けた行動自体は素晴らしい事だ、誇れ。」

 

 

「「「はい、ドレーク様!」」」

 

 

項垂れていたのが嘘のように元気な返事を返した男達にドレークは軽く笑みを溢しながら、腕の中で弱っている少年を見て……驚いた。

 

 

「……お前は確か……コビー…だったか?」

 

 

「は、はい……」

 

 

問われた少年は力の入らぬ声で答えた。

 

 

 

あれからコビーはドレークに船内の医務室へと運ばれ、戻って来た船医から治療を受けたのち、また眠りについていた。

 

 

そして、目覚めて驚愕したのである。

 

 

「え、……えぇ!?!

ドレークさんって……か、海賊だったんですか!?

れれれレオヴァさんも!?」

 

「あぁ。 一応、おれもドリィ…ドレークも手配書が出ているから変装はしているが、その手配書の通り海賊だ。」

 

海賊とは思えぬ所作で優雅に紅茶を口に運ぶレオヴァを見てコビーは更に混乱する。

 

 

「あ、いや、確かに言われて見ればドレークさんは髪型が違うだけで手配書と同じ顔ですけど……レオヴァさんの手配書、写真ないですし……なんか、あの……海賊って感じがしないと言うか…」

 

「……まぁ、お前の言いたいことも分かる。

レオヴァさんは一般的に想像される海賊のイメージとは噛み合ってないからな……。」

 

「そうか?

おれは生まれた時からずっと海賊なんだが…」

 

眉を下げながらも優雅にティーカップを置くレオヴァに、そう言う所作のせいだとドレークは思ったが口をつぐんだ。

 

しかし、コビーは未だに混乱し続けている。

 

 

怖くて悪い人達の集まりである筈の海賊は見ず知らずの自分を助けてくれた。

更にレオヴァさんやドレークさん達は街の人々と友好的な関係を気付いている。

 

頭を抱えるコビーに優しくレオヴァは話しかける。

 

 

 

「心配せずともお前には危害は加えないぞ?

…おれたちが怖いなら この部屋から出ていくが……」

 

「い、いえ……その、レオヴァさんは怖くないです!

ただ……何が悪で何が善でとか…分からなくなっちゃいまして……

……海賊は悪い人……海軍は正義…とかそう言う常識がひっくり返ってしまいそうと言うか……

ぼく、正義のヒーローみたいな……困ってる人を助けられる人になるのが夢で……

レオヴァさんやドレークさんみたいな、優しい強い男になりたいなって……でもお二人は海賊で………

け、けど海軍も…さっき、た、大佐が海賊と取り引きしてるし……ぼく…」

 

レオヴァは、ぼそぼそと小声で話し始めたコビーの話ひとつひとつに相づちを打つ。

馬鹿にするでもなく、しっかりと話を聞くレオヴァの姿に安堵しコビーは色んな思いが口から溢れていった。

 

 

「……って、すみません!

なんか…変な話しちゃって……」

 

「いや、構わない。

そうだな……おれの価値観だが、正義なんて言うモノは立場によって180度変わる。

…例えば、男が戦争で敵兵を倒したとしよう。

倒した側から見れば男は国のため戦った勇敢な戦士だが、殺された敵兵の家族にとっては愛する者を奪った人殺しだ。

コビー、お前はどちらが正義か決められるか?」

 

「それは…………そうですね……いや、ぼくには……決められない…」

 

「勿論、おれにも決められない。

コビー……価値観は人それぞれだ。

お前の誰かの為にと言う考えは素晴らしい考えだ、否定したい訳じゃない。

……だが少なくとも、おれはお前の考える様な正義の味方ではないと断言できる。

薬を安く売ったと言うが、あれはワノ国での定価で売っただけだ。

それに、海軍から親子を助けたと言うのも誤解だ、ドリィとの散歩の邪魔をされたから海軍を伸し、その結果たまたま親子が助かったに過ぎない。

……おれは善人じゃない。」

 

 

言葉尻に一瞬気配の鋭くなったレオヴァに息を呑む。

そのまま黙りこくってしまったコビーにレオヴァは

『……今日は此処で休んで行くといい』と一言告げるとドレークを連れて部屋を出ていった。

 

 

 

 

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部屋を出たレオヴァはドレークに指示を出した。

 

 

「……さっきのコビーの話が本当なら、岩壁沿いに海賊船がある筈だ。

どこの海賊か偵察してきてくれ。

基地潰しの邪魔をされると面倒だ。」

 

「了解だ、レオヴァさん。

……あの少年は?」

 

「せっかく部下達が助けたんだ、客人として扱ってやれば良い。」

 

「わかった、ならその様に手配する。

レオヴァさんは部屋で休んでいてくれ。」

 

「ありがとうドリィ、任せる。」

 

 

足早に外へ向かって行くドレークを見送りレオヴァは思考を巡らせた。

 

 

コビーの潜在能力は魅力的だ。

数年鍛えられて、あの実力を手に入れたのならば、今から鍛えれば百獣海賊団でも戦力として申し分なく成長するだろう。

 

だが、性格に難がある。

……彼は優しすぎるのだ。

 

キングの“趣味”を知れば全力で止めに入る可能性も大いにある、それにシーザーとの相性も最悪に違いない。

 

 

正直、レオヴァにとってシーザーはどうでも良いが、キングの趣味を否定するような真似をされれば怒りを抑える事は難しいだろう。

 

そう、数少ないレオヴァの地雷をコビー少年は踏む可能性があるのだ。

 

 

しかし、だからと言って野放しにすれば原作の様に海軍の戦力になりかねない存在だ。

せっかく“ゼファー”という男を消すことで後の若い海兵の質を下げる事に成功したというのに、海軍の希望になり得る少年を野放しにするのは得策ではないとレオヴァは考える。

 

ならば、殺せば良いのでは?

とも考えたが、部下達と親しくなったコビーを殺すことに躊躇(ためら)いを覚える。

 

……そう、レオヴァはカイドウに対して忠誠心の高い者にすこぶる甘いのだ。

 

 

普段からカイドウを称え、仕事もしっかりこなしている部下達がわざわざ助け、親しくなった人物をこの場で理由なく殺すのは少し可哀想に感じた。

 

しかし、無策で野放しにする……見逃すなんて言う優しさはレオヴァは持ち合わせて居なかった。

 

その為、レオヴァは頭にある幾つもの案の中から一つの案を採用した。

 

 

 

「……まぁ…アレとの接点を消せば良い話か。

ドリィとも相性が良さそうだしなァ…。」

 

一人きりの部屋で呟いたレオヴァの声に答える者はいない。

 

 

 

 

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海岸付近の森に面した街は見る影も無くなっており、街中の至る所が荒らされ、血痕の跡がある。

 

そんな街の少し開けた場所に海兵達は亡骸を山積みにしていく。

 

 

 

「……あ~、汚ねぇ……」

 

「後片付けが面倒だよなぁ……」

 

「しょうがねぇよ、放置すりゃ腐ってもっと面倒だ」

 

「片付けは海賊にさせりゃ良いのによ」

 

 

海兵達は不満を漏らしながら町人だったモノを一ヶ所に投げ捨てていく。

 

その光景を見ている生き残った町人達の目は虚ろだ。

彼らは先ほど街を襲った海賊と海軍大佐の

 

『コイツらはてめぇらにやる。

っとに、ネズミみてぇに増えやがるから、人口の増えすぎを管理するのも大変なんだよ…。』

 

『海軍大佐も大変だなぁ!

けど、ちょうどヒューマンショップ用のモンが欲しかったんだ……へへへへ、いつも助かるぜ大佐さん。』

 

と、いう死刑宣告に近しい会話を聞いてしまったのだ。

 

それに、目の前で家族や友人、隣人が弄ばれ殺されていく様をまざまざと見せられ続けた者が気をたしかに持っていられる筈もない。

 

 

縛られた状態の町人達は、ぶつぶつと許しを乞い続ける者や声もなく涙を流す者、廃人の様に焦点の合わなくなった者で溢れている。

 

 

見るに堪えない現場へ、海賊の船長と思わしき男が部下を引き連れ戻って来た。

 

 

「よぉ、海兵ども!

奴隷を受け取りにきたぜぇ。」

 

 

「そこの奴らを持ってけと大佐が」

 

 

「よしよし……結構な数いるな、儲けモンだ!

テメェら、さっさと運んじまうぞ!」

 

 

船長と思われる男の上げた声と同時に轟音が響いた。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「おい、基地から火が!!」

 

「待て、計画にはねぇ。聞いてねぇぞ!?」

 

 

ざわざわと騒ぎ始める海賊と海兵。

そして、音の方へと目をやった男達が見たのは燃える海軍基地であった。

 

意味がわからず狼狽える男達。

 

そんな中、船長の様な男はいち早く此処を退避するという考えに至ったのか、部下へ指示を出そうと動いた。

 

 

「くっ…と、とにかく奴隷をぉっ」 

 

 

しかし、船長の様な男の声は最後まで紡がれることはなかった。

 

ぼとり……と落ちた首だったモノを部下達は理解できずに眺めた。

まるで時が止まったと錯覚しそうな程、誰も動かない。

 

 

 

「一番重要な男は仕留めた、次は残りの処理か。

…レオヴァさんはもう基地の処理が終わりそうだな……急ぐとしよう。」

 

場にそぐわぬ凛とした声にやっと男達は動き始めた。

 

 

「こいつ誰だ!?」

 

「せ、船長っ……どうすりゃいい!?」

 

「おまえら、戦闘準備を!」

 

「あれは……百獣のドレークか!?」

 

「と、捕らえるぞ!」

 

 

構えだした男達を気にするでもなくドレークは縛られた町人達を解放すると告げた。

 

 

「逃げるか戦うか選べ。

絶望し、立ち止まっているのは死んでいるのと変わらん。」

 

 

戸惑う町人達の中に居た少年が呟く。

 

 

「……ぼく、戦います……こんなところで死にたくないっ!」

 

 

ドレークは少年を見て笑みを浮かべた。

 

 

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海軍基地を歩くレオヴァの後ろには屍が築かれている。

 

先ほどの喧騒とは打って変わり、静まり返った基地の内部を散策し、大佐室へと入る。

 

様々な書類に目を通し、レオヴァは頭を抱えた。

 

 

「……コーラが燃料になる世界だからな…木の実が燃料にもなり得るか……。

いや、だが本当に意味がわからない……どういう原理だ。」

 

 

そこには島由来の種である木の実が燃料になる裏付けとも言える内容が書かれていた。

 

もとより、基地を作る場所は何かしらの利点や資源などがある場所が多く、今回も何かしらあるだろうと予測していたレオヴァだったが木の実……それも食べられるフルーツが資源になるとは思っても居なかったのだ。

 

この世界のトンでも理論に遠い目をしつつも、海軍内の情報やその他の情報が書かれた紙を(ふところ)へしまう。

 

外で海軍基地内にあった貯蓄を船へ運んでいる部下達や、百獣海賊団のナワバリにちょっかいを掛けていた海賊を処理しているドレークの気配を読みながら出口へと向かう。 

 

屍の溢れる帰路だが、レオヴァの進む場所には血一つ流れていない。

 

 

扉が壊れ、開け放たれている出入口から外へ出るとレオヴァは大きな(いかづち)を一つ落とした。

 

恐ろしい程の轟音が辺りに響くと同時に海軍基地から火が上がる。

 

 

「…そろそろドリィと合流するか……」

 

きっと人々を上手く誘導してるであろう優秀な部下を思い、薄く笑った。

 

 

 

 

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ドレークさんの言葉と少年の宣言に背を押される様に、海賊と海兵たち相手に死に物狂いで戦った私たちは助けに駆け付けてくれたレオヴァさんのお陰もあり、命を拾うことができた。

 

 

奴隷として売られかけていた私たちの怪我を手当てしながらレオヴァさんは

『よく、耐えたな……今はゆっくり休んでくれ』

と優しく声をかけ、布団へと寝かせてくれた。

 

お父さんもお母さんも殺され、怖くてなにも出来なかった地獄の様な時間は去った。

……けれど大切な家族は戻って来ない。

 

安心できて初めて私は、失った悲しみに声を殺して泣いた。

 

次の日も悲しみから無気力に襲われ、呆ける私にレオヴァさんは倒壊した家から拾ってきたと言う一つの宝物を手渡してくれた。

 

…………写真立てだった。

優しく笑うお父さんとお母さん……そして、私。

 

 

人目も(はばか)らず私は泣いた。

 

顔は色んな体液でぐちゃぐちゃだったし、言葉にならない嗚咽も止まらなかった。

 

きっと見苦しい姿だったと思う。

周りにいるみんなも泣きそうな顔をしてたのをぼんやりと覚えてる。

 

でも、レオヴァさんはずっと私の背をとんとんと優しく叩き、側に居てくれた。

その優しさはお父さんを思い出させるような暖かさだった。

 

 

 

暫く、レオヴァさんとドレークさんは街の復興を手伝うと言ってくれて、部下の人たちも来た。

 

レオヴァさん達が海賊だと言うのは聞いていたけど、私には関係なかった。

確かに海賊にも襲われたけど、彼らは金品を漁っていただけで、実際に街の人たちを品定めしながら殺していったのは海軍だ。

 

なにより、仇であるあの大佐を殺してくれたレオヴァさんには感謝しかない。

 

 

復讐は駄目だと言うが、そんなもの大切な人を無残な形で奪われた事がないから言えるのだ。

 

 

けれど、この街から海軍の庇護がなくなったのは事実。

……本当はもとより庇護などなかったに等しいけれど…。

 

 

でも、それも心配ない。

だって、レオヴァさんがこの島をナワバリにすると言ってくれだのだから。

 

この街で一番のお爺さんと数十人の町人の懇願をレオヴァさんは受け入れてくれたのだ。

 

 

『わかった、そこまで言うのならば此処をナワバリにしよう。』

 

『ほ、本当ですか!?』

 

『しかし、だ。

おれ達は海賊だ、なんの利益もなしに島を守るつもりはない。』

 

『は、はい……仰る通りかと…。』

 

『だから、この島特有の、森にある木の実を定期的におれ達に譲ってくれ。』

 

『……へ? あのフルーツですか?』

 

『あぁ。

その木の実を供給できるなら、おれはこの島を守る理由が出来る。

……どうだ? そこまで理不尽な取り引きではないと思うが。』

 

『ぜ、ぜひ!!

そのフルーツでしたら生産できますし、レオヴァさんの望む量を献上させて頂きます!』

 

『よし、取り引きは完了だ。

元々海軍基地のあった場所におれの部下を住ませる家を建てさせてもらうが、それも構わないだろうか?』

 

『はい、もちろんでございます!』

 

 

 

聞いたことがあるだろうか、フルーツを代価に島を守ると約束してくれる海賊の話を。

 

 

そして、なんやかんやと復興作業を海賊のみなさんと一緒に進めている間に、空を飛ぶ見たこともないようなナニカが現れ、レオヴァさんと似た服を来たおじさん達が海軍基地の跡地に新しい建物を建ててしまった。

しかも、そのおじさん達はついでだからと、私たちの家まで直してくれたのだ。

 

 

『『『ありがとうございます!!』』』

 

 

町人一同で礼を述べるとおじさん達は照れたように笑い

 

 

『気にしなさんな。

おれたちゃレオヴァ様のお優しさを真似ただけよ!』

 

『そうさなぁ。

レオヴァ様がお助けになられた島の復興をお手伝いするのは、あたりめぇよ!』

 

『 “お互いを思いやり助け合う” …これレオヴァ様からの受け売りなんだが、良い言葉だろ?

……まっ!礼なんかいらねぇってことよぉ!』

 

 

と、頭を下げる町人達に気の良い言葉をかけてくれた。

私たちはワノ国という遠い国から駆け付けてくれたおじさんに心から感謝した。

 

 

他にも真打ちと呼ばれる不思議な力を持つ人達も来た。

 

この人たちも私たちの惨状を聞くと眉を下げ、手伝える事があれば言ってくれと気遣ってくれた。

 

 

『っとに、海軍なんてクズばっかだ!』

 

『世界政府は信用できねぇよ!

って、海賊のおれたちが言ってもあれだよなァ…』

 

『まぁまぁまぁ、安心しろよ!

レオヴァ様は約束守る奴には優しいし、寛大だからな!』

 

『レオヴァ様から任された以上、我々があなた方の安全を保証しましょう。

……ところで、なにか手伝える事はありますかな?』

 

 

 

個性的で親しみやすい彼らに、みんなもすっかり打ち解けている。

 

 

あの地獄が嘘のように平和な毎日を私は大切に過ごしていた。

 

……けれど来週、レオヴァさんが島から離れてしまう。

ずっとこの島にいて欲しい……なんて考えながら私は掛け布団を深く被った。

 

 

 

 

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レオヴァとその一味が出発する数時間前、コビーと言う少年は海賊たちと賑やかに話しており、町人たちや防衛として残る真打ちたちと話終えたレオヴァも合流し、コビーと話し込んでいた。

 

 

 

「いつかぼくもレオヴァさんみたいな人に……なんて 

あ、あははは……へ、変なことを聞かせてしまってすみません!

ぼくなんかが、レオヴァさんみたいになんて失礼ですよね!」 

 

慌てたようにコビーはレオヴァへ頭を下げた。

しかし、レオヴァは優しい声で返す。

 

 

「いいんじゃないか?

何を目指すかなんて人それぞれだろう。

 

かく言うおれも……父さんの様な男になりたいとがむしゃらだった時もあった…

まぁ、今では “父の隣に立つに相応しい男” がおれの理想だが。」

 

 

「レオヴァさんのお父さんかぁ……

きっと本当にカッコ良くて凄い人なんですね!」

 

「あぁ、強くて優しい自慢の父だ。

昔、オレが海賊の息子だと言うだけで海軍に連れていかれた時もな……」

 

 

懐かしむ様に話す想い出はどれも噂に聞く百獣のカイドウとはかけ離れていたが

レオヴァが嬉しそうに楽しそうに話す姿をみて話が嘘ではないと、コビーは何故か強い確信を持てていた。

 

 

誰かの為に戦う漢……それは別に “正義” でなくても良いのだ。

 

何故なら自分の信念さえあればいいのだから…!!

 

 

コビーは隣に立つ“理想の漢”の眩しさに目を細めた。

 

 

 

絶対に届かないかもしれない、すぐに死んでしまうかもしれない。

 

けれど構わなかった。

 

自分の夢の為に命をかける……その意味を心で理解したコビーは強い眼差しをレオヴァに向ける。

 

 

 

「レオヴァさん……ぼくも連れていってもらえませんか?

変わりたいんです……!

もう、ムリだって諦めてばかりの自分は嫌なんです!!

強くなって……夢を叶えたいんです!」

 

「…はっきり言おう、コビー……

今のお前では海で生き残れるかすら怪しい。

おれと来るのは死にに行くようなものだぞ…」

 

「構いません……!!

たとえ死ぬことになってもっ……!

自分の目指す理想の為に死ねるなら良いんです…!

だから……だからぼくを…船に乗せてくださいッ…!!!」

 

勢い良く頭を下げたまま、顔を上げないコビーをレオヴァがじっと見据える。

 

 

お願いしますの一点張りで動かない彼に根負けしたかのようにレオヴァは膝をつき、コビーの肩に手をおいて語りかけた。

 

 

 

「コビー…お前をすぐに海に出してやる事は出来ない。

……おれは死ぬと分かっている場所に気に入った奴を送り出すような真似はしたくないんだ……分かってくれ。」

 

 

申し訳なさそうなレオヴァの声に、ゆっくりとコビーは顔を上げた。

その顔は彼の落ち込み様をありありと物語っている。

 

 

「そう……ですよね…ぼく…弱いですもん…ね………

…だ、だけど…レオヴァさん、ぼくっ……」

 

ついに彼の瞳から一粒の涙が流れ落ちた時だった。

レオヴァは優しく笑いかけた。

 

 

「…すぐに海には出せない……が。

ウチで鍛えてからなら海へ出られるかもしれないな」

 

 

レオヴァの言葉にコビーは弾かれたようにレオヴァの顔を見た。

 

 

「え……え、じゃあ……!!

連れていってもらえるんですか!?」

 

「あぁ、一度おれとワノ国へ来い。

そこで鍛えて……話はそれからだ。」

 

「"れ、レ"オヴァさ"ん"ん"っ…!!!」

 

 

コビーはレオヴァの手を両手で握ると、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら感謝の言葉を伝え続け、レオヴァは優しく彼の背をたたいた。

 

 

 

そして、それを離れたところで見守っていた周りの船員もたまらず泣いていた。

 

 

「ぐすっ……さすがレオヴァ様だぁ……!」

 

「コビーとか言う奴、弱っちくて好きじゃねぇと思ったけど根性ある奴じゃねぇか…!」

 

「うおぉ~!!!コビー!

鍛えるならおれも手伝うからなァ!!」

 

「レオヴァ様~ コビ~!!うおぉお~ん!」

 

「レオヴァ様のクルーで良かった……!

おれもコビー鍛えるの手伝うからなぁ…!!」

 

「てめぇら!泣いてねぇでコビーの歓迎会の準備するぞ!!

……おれたちで面倒見てやろうぜ!!」

 

 

「「「「おお~!!!」」」」

 

 

その後ろでドレークは盛り上がる部下達に溜め息をついていた。

 

「……奴を身内にする気はないだろうに…本当にレオヴァさんの思考は読めん。」

 

 

 

 

 

 

 

 





ーー後書きーー

前回もご感想ありがとうございます!!
ここすき一覧も見させて頂いてます…嬉しみ(*´-`)


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