「いったい何がどうなってるんだッ…!!?」
そこにいる男達の叫び声や怒号に、この声は掻き消された。
「よォ~し、ドンドン行くぜ!!」
「おい、貴様! 一人で先走るな…!」
「ア"? お前は今回の指揮権ねぇだろうが!」
「あぁ…まったく! 二人とも、喧嘩は後にしろ!!」
この騒動を巻き起こした三人はガヤガヤと言い合いながらも、取り押さえようと襲ってくる男達を口喧嘩の片手間に一人、また一人と打ち倒してゆく。
そんな姿を見た男達は顔を歪める。
「お、おい……くそ、嘘だろ!どうやって此処に!」
「無理だ……敵わないっ!…ぞ、増援を」
「クッ……これ以上、進ませるな!死守するんだ!!」
「こんな事が…ありえん!!」
必死の男達の守備を横目に見つつ、騒動の渦中にいる三人はそれぞれの反応を示していた。
中心で一番派手に暴れている男
百獣海賊団のササキは
「はははは…! 最近ヒマだったんだ!
思う存分暴れてやる…!!」
と、楽しそうに男達を薙ぎ払っている。
そんなササキの少し後ろで溜め息をつく男は
百獣海賊団のドレークだ。
「初めの30分は隠れつつ各個撃破する予定だったと言うのに……はぁ…。」
彼はササキの自由奔放さに気疲れしている様であった。
そして暴れまわるササキの右側では、黄金で男達を締め上げながら
百獣海賊団のスレイマンが
「せっかく、ドレークが考えた案を無駄に…
ササキめ……アイツは本当によく風紀を乱す…!」
と、呟きながら睨みをきかせている。
既に、この騒ぎが起きてから10分ほどが経過していた。
その為、あらゆる場所に力尽きた男達が転がっている。
焦りを隠せない男達だったが、ある人物の登場で表情が一転する。
「これ以上、被害は出させんぞ…!!!」
そう言いながら現れた男。
彼こそ、インペルダウン監獄副署長…マゼランである。
彼の登場に男…看守達は歓声を上げた。
「副署長ぉ…!!」
「マゼラン副署長さえいれば!」
「これでやっと奴らを捕らえられるぞ……」
しかし、看守達の考えとは裏腹にマゼランの登場に侵入者達は狼狽えるどころか、不敵に笑って見せた。
「っし!! ドレーク、やるぜ!」
「……予定より早いが、どうする?ドレーク。」
「いや、早いが問題ない。
レオヴァさんの言う通りにやれば、間違いないだろう。
……おい、ササキ突っ込み過ぎるなよ。
渡されてる解毒剤は限られてる。」
「わかってる!」
三人は頷き合うと、マゼランから距離を取った場所でそれぞれ臨戦態勢へと入った。
看守達もマゼランの邪魔にならぬ様にと、門前まで警備網を下げる。
そして、ついにマゼランの体から溢れる猛毒が、侵入者へ襲いかかった。
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時は遡り……大監獄インペルダウン、最上階の地上部で騒動が起きる少し前のこと。
監獄内部LEVEL-2猛獣地獄。
そこへの侵入をレオヴァとローは成功させていた。
物陰へ隠れている二人は小さな声で会話を交わしている。
「…いつも思うがローの能力は本当に便利だな。
地上から一瞬で此処まで来れたのは大きい。」
褒められたローは嬉しさを隠すかの様に、話を変える。
「…それよりレオヴァさん。
此処からどうするんだ?
……また、おれの能力で移動するか?」
ローの提案にレオヴァは首を横に降った。
「いや、実は新開発した道具があるんだ。
それを試したい。
ローの能力は帰りに絶対に必要だからな…ここでは温存しよう。」
「それはそうだが……レオヴァさん、その新作試したいだけじゃねぇのか?」
「…………では、使い方だが」
「いや、図星なのかよ…!」
指摘を笑顔で誤魔化し、話を進めるレオヴァに思わずローはツッコんだ。
敵地であるのにも関わらずマイペースなレオヴァに呆れつつも、ローはレオヴァの説明を聞く。
「……と、いうわけだ。
まぁ、兎に角これを至る所へ投げてくれればいい。」
「わかった。
じゃあ、1分後にまた此処に戻って来れば良いのか」
「あぁ、頼んだぞ。」
その言葉が終わると同時に二人は一瞬でその場から消えた。
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ローはレオヴァから渡された謎の玉を
正直、レオヴァから説明を受けたが原理は良く分かっておらず
ただ、RIN酸第ニテツを主とした成分で作られていると言う事しか理解出来ていない。
そんなローにとって、手の中にある謎の玉で
この謎の玉は投げて
そして、ローは見たのだ。
壁についている電伝虫がコロリと地面へと落ちる瞬間を。
「…おぉ……本当に効いた…。」
ローは感心したように呟きながらも手は休めない。
能力を使いつつ、1分間である程度の数を撒き終わり、約束の場所へ戻る。
レオヴァと合流したローは大監獄インペルダウンLEVEL-3へと続く小さな穴を開けた。
その穴の前で、二人は最終確認を行う。
「ロー、移動前に確認だ。
続く3階も今と同じ作業を繰り返し5分以内に4階へと移動し、4階にある職員用エリアを破壊……そして監獄署長をおれが
「あぁ、問題ない。」
「ん、では次だ。
一応、暴れられぬように麻酔もあるが、万が一おれが捕縛を失敗
「それも了解だ。
捕縛が予定通りいかなければ、レオヴァさんがフロア内を破壊し囚人を放ち…そのまま監獄署長の相手……だろ?」
「ん、しっかりと理解出来ている様で何よりだ。
問題が起きた場合は臨機応変な対応を頼む……が、第一に優先すべきは彼の回収だ。
最悪、時間が掛かりすぎた時は彼を連れて先に船を出してくれ。
ドレーク達は俺が回収する。」
「……了解。」
「ふふ…そう、不満そうな顔をするな。
最悪の場合の話だろう?」
「わかってる……レオヴァさんなら最悪の場合はまずないだろうしな…。」
レオヴァはローの頭を帽子ごとポンと軽くたたくと、穴を通って下の階へと降りた。
ローも帽子を被り直すと続くように下の階へ足を踏み入れたのだった。
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時は戻り、現在。
大監獄インペルダウンLEVEL-4にて。
署長含め、数十名の看守を捕らえたレオヴァは牢獄の鍵を物色していた。
山のようにある鍵の中から目当てのものを手に入れ、予定通り食料庫を壊して来たローに声をかける。
「ロー…そっちも予定通り行ったようだな。」
「……レオヴァさんも思った以上にあっさり終わったみてぇだな。」
「先手必勝の不意打ちだったからなァ……
まぁ、
血塗れで気を失っている監獄署長の側で呑気に話すレオヴァにローは苦笑いしつつ、事前に話していた次の動きを思い出す。
「レオヴァさん、監獄署長と署長室は押さえられたんだ。
LEVEL-5の極寒地獄からは普通に壁壊して行くんだろ?」
「そうだ、一応事前作戦ではその手筈だが……何かあるのか?」
「いや、鍵があるなら壊さず行くのもありだと思う。
壁を壊すとどうしても看守共が集まる…それに囚人を出しながら行けば撹乱もしやすいんじゃないか?」
「ふむ……確かにな。
事前作戦ではこんなに鍵が手に入る予定はなかったから、壁を壊すつもりでいたが……ローのその作戦の方が良いな。」
「じゃあ……」
「あぁ、それで行こう。」
レオヴァは手に持っていた鍵の一部をローへ渡すと、監獄署長を引き
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同時刻。
インペルダウン監獄、最上階の地上部にて。
マゼランは手も足も出せぬ苦戦を強いられていた。
侵入者三人の実力が高いことも苦戦の理由ではあったが、それだけではない。
もとよりマゼランはこの監獄にて、数多の凶悪かつ凶暴な犯罪者を相手取って来たのだ。
いくら侵入者の実力が高いとは言え、手も足も出せぬことなどまず有り得ない。
しかし現状、マゼランは侵入者に一撃を与える事も叶わず防戦一方を
まず、ササキはあのパワーと巨体だけでも手強いと言うのに、動きが速い……いや、正しくは加速力が桁違いなのだ。
通常時はそこまで速くない分、その緩急や突然の加速にマゼランは振り回されていた。
更にその横から
それも、一撃加えてすぐ下がると言う徹底ぶりだ。
決めの一手を焦らぬその動きからは、絶対的な自制心の高さを感じさせる。
しかし、苦戦を
黄金を操り、中距離攻撃をしかけつつも、ササキとドレークの死角の毒を弾くという芸当を完璧にやってみせるスレイマンこそが、マゼランを苦しませる一番の理由なのだ。
そんなマゼランの焦りを
続いて、その焦りを助長させるかのようにドレークが声をかけてくる。
「マゼラン…そろそろ限界も近いんじゃないのか?」
「なにを…お前たちを捕まえるまで限界なぞ来ん!!」
「そうか……あとどれだけ“活動時間”が残っているのか見物だな。」
「ッ……そんなもの存在せん!
お前たち犯罪者は必ず牢に入れるぞ…!!」
マゼランの鬼気迫る叫びにも少しも怯むことなく、ドレークは口元に笑みを浮かべた。
だが、事実マゼランの限界は近付いていた。
ドレークの言った通り彼には“活動時間”があるのだ。
ドクドクの実という強い力の代償のようなもので
マゼランは能力の反動による下痢で約10時間はトイレに拘束されるのだ。
他にも睡眠や食事などを差し引けば、実際の活動時間は4時間ほどしかない。
しかも、この襲撃はまるで狙ったかの様に、マゼランの勤務交代時間直前に起こったのだ。
やっとトイレに籠れる…というタイミングでの襲撃。
色んな意味でマゼランの限界が近いと言うのは事実なのだ。
そんな防戦一方の戦いを看守達は息を呑んで見守ることしか出来ない。
一方、ドレークは予定通り進んでいる作戦に笑みを溢す。
最初こそ、ササキとスレイマンが
作戦が始まればしっかりと“指揮権”を委ねられているドレークの指示を確実にこなしている。
今回、ドレーク、ササキ、スレイマンの三人に任されたのは大監獄インペルダウン内の看守の誘導兼、副署長であるマゼランの足止めである。
レオヴァ
『今回の作戦において一番厄介なのが、ドクドクの実の能力者マゼランだ。
確実性を増す為にも、数名で“封じる”事に専念してもらいたい。』
とのことであった。
始め、ササキは俺一人でやってみせる!と意気込んでいたがレオヴァの、毒がどれ程厄介なのかという説明を受けて納得。
その後、レオヴァの選出により。
機敏性があり、頑丈かつ経験豊富なササキ。
状況判断力と自制心に優れ、パワーのあるドレーク。
防御性能が高く、中距離戦闘も行えるスレイマン。
の三人が選ばれたのだ。
そして、丸1日に及ぶレオヴァからの“指導”を受け、相手に直接触れずに封じる立ち回りを確立させた。
その結果、予めレオヴァから注意されていた点や、貰った情報を基に優勢を築けているのだ。
ドレークは監獄内のレオヴァからの連絡を待ちつつも、現在の有利かつ完全な状態を維持すべく全力を尽くす。
「……レオヴァさんから任されたんだ…絶対に油断はしない。」
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インペルダウン監獄内、LEVEL-6 無限地獄にて。
目の前に現れた人物を見てドフラミンゴは目を見開き……そして笑った。
「フッフッフッフッ…!!
おいおいおい……いったい此処でなにしてる!?」
四股に海楼石を付けられたドフラミンゴは笑っている様な怒っている様な顔でレオヴァを見た。
「それは、おれの台詞だ。
ドフラミンゴ……悪いが牢獄休暇は今日までだ。」
レオヴァはそう言うと鍵を使って牢屋へ入って行き、ドフラミンゴに幾つも付けられている海楼石を外した。
ドフラミンゴは立ち上がると、動きを確かめるように手を動かし。
次の瞬間、牢獄が砕け散った。
「…!? レオヴァさん!
ドフラミンゴどういうつもりだ…」
ローが突然レオヴァへ攻撃をしかけたドフラミンゴを睨み戦闘態勢へ入るが、それをレオヴァが手で止める。
レオヴァの周りの牢屋の壁は無惨に切り裂かれているが、当の本人は無傷だ。
「フフフフフフ……どういうつもりか…だと?
そりゃあ、おれが聞きてぇよ。
わざわざこんな場所まで何しに来たレオヴァ……」
口は
「お優しい聖人君子の百獣の息子……その株上げにおれを使おうってのかァ…?」
「ドフラミンゴ……おれが株上げなんていう事の為にこんな所まで来ると思うのか?」
「なら、傘下に入れってか?
このおれに人の下につけ……と。」
「はぁ…本当に深読みがすぎるぞ……。
疑う気持ちは解るが、冷静になれ。」
レオヴァの言葉にドフラミンゴのこめかみがピクリと動く。
「フフ…フフフフフフ…ふざけてんのか?おれはいつだって冷静だ…。
さっさと目的を言ったらどうだ、レオヴァ?」
「目的はお前の脱獄だ。」
弧を描いていたドフラミンゴの口がへの字に変わる。
「……てめぇ…いい加減に……」
ドフラミンゴが言いきる前にレオヴァが続ける。
「はぁ……さっきからお前は有りもしない おれの裏の目的を聞こうとするが普段のお前なら解る筈だ。だが解っていない…
…それだけで今のお前が怒りから冷静ではないのは一目瞭然だ。
そもそも、お前がいなければ武器や兵器の利益がパァだ。
それに他にも日用品や薬もお前に任せて捌いて貰っている物も多い。
そんなに納得いかないならハッキリ言おう。
ウチの利益の為にお前には此処から出てもらう、以上だ。
悪いが暴れるなら無理やりにでもシャバに連れていくぞ…。」
普段よりも低い声で捲し立てるレオヴァに一瞬面食らった様な顔をしたドフラミンゴへ、更に釘を刺すように告げる。
「あぁ、それとお前のファミリーはウチで既に“保護”してある。」
その一言でドフラミンゴは冷静になったのか、レオヴァが
「……本当に食えねぇ野郎だ。」
「ありがとう、褒め言葉として受け取っておく。」
刺々しい雰囲気だが殺気を完全に収めたドフラミンゴと、先ほどの圧が嘘のように穏やかに返すレオヴァにローは冷や汗をかきながら溜め息をついた。
渋々大人しくなったドフラミンゴの
「ロー、ドフラミンゴを連れて地上へ。
その後、誘導班と囚人だった皆を回収し船へ戻っていてくれ。」
レオヴァの言葉にローは怪訝そうな顔をする。
「待ってくれ、レオヴァさん。
なんで別行動みたいな言い方なんだ…まさか……」
「……あぁ、すまないが おれは少し野暮用だ。」
「…………」
「ロー、わかってくれ。
すぐに合流するから…」
「…………わかった、何かあればすぐ連絡してくれ。」
任せたぞ。と言い残すと奥へ進み “牢屋の中の誰か” と会話を始めたレオヴァを見てローはまた溜め息をつく。
「フッフッフッ……アイツが嫌ならうちにくりゃ良い」
「……黙れ、さっさと出るぞ。」
「…可愛くねぇガキだ。」
ローがドフラミンゴを睨むと同時に、LEVEL-6 無限地獄から二人の姿が一瞬で消えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
インペルダウン監獄内、拷問室。
そこでは日々囚人への拷問が行われている。
左向きに寝かされ、台にくくりつけられている男のボサボサな桃色の髪の間から見える瞳は絶望で色褪せていた。
とある失態から罪人としてインペルダウン監獄に幽閉され水責めや虫責め、電気椅子……
体の至る箇所を少しずつ削がれたりなど、あらゆる拷問を受けた。
そんな彼の全身は傷のない場所はないのではないかと思うほど痛々しい
手や足の指は拷問での過程で ちぎれてしまっているか、潰れており、全ての指の長さがちぐはぐだ。
太ももや二の腕の肉は、削がれては治ってを繰り返したせいで歪にもり上がってしまっている。
拷問官によってまた繰り返される地獄に彼は呻き声を上げる人形の様になって、ただひたすら悲痛な音を口から吐き出していた。
「ヒッ…ぐぁあッ……ウゥ…や"め"…てく、れ……」
彼の懇願を聞き拷問官は笑う。
「ヘッヘッヘ……助かりてぇナら“太陽の神”にでも祈れヨぉ!
まぁ、助けなんザこねぇけどナぁ!ヘッヘッヘッヘッヘッ……」
拷問官の嘲笑を受けながらも彼は祈った。
誰でも良い……その太陽の神だって…いや悪魔でも構わない。
この地獄から助けて欲しい。
最悪の日々から救われるならなんだってする。
どうか…どうか……どうか…………助けてくれっ……
心の中で祈り続ける彼の横たわる拷問台へ、薄ら笑いを浮かべた拷問官の手がのびる。
バチバチッ
その音と共に倒れていく拷問官を彼は唖然と目で追っていた。
地面をズルズルと這いつくばる焦げたソレは、喉が焼けて声が出ないのか、静かな部屋にヒュウ…ヒュウ……と空気を吸う音が響いた。
「……な………にが…」
長らく続いた拷問と死の恐怖でカラカラだった喉から、なんとか絞り出すように発せられた声は しわがれている。
張り付け台から動くことも出来ず、固定された視界にグチョグチョと
何故なら、自分の背後に気配を感じるのだ。
この後ろにいる“誰か”が、目の前の拷問官をこの姿にしたのは明白。
死にたくない。
けれど、一方的な暴力に晒され続けるのは嫌だ。
彼が震える唇を動かそうとした時だった。
「……お前は元政府の人間で間違いないな?」
後ろにいる誰かが、そう声を発した。
彼はすぐにそうだ。と答えようと口を動かしたが、ボロボロの体は言うことを聞かない。
だが、極度の緊張でパニックを起こしそうになっていた彼の頭と首の拘束具が外された。
急に楽になった頭と首に驚く彼のすぐ後ろから、優しい声がかかる。
「すまない、声が出ないとは思っていなかったんだ。
今、拘束具の一部を外した……肯定なら首を縦に、否定なら首を横に動かしてくれ。
……あぁ、傷に響くだろうから、ほんの少しでいい。」
その声に彼は小さく頷いた。
「では、先ほどの質問を繰り返すが……元政府の人間か?」
彼は首を縦にゆっくりと動かす。
「そうか……では、次に。
その情報をおれに売るつもりはあるか?
内容によって報酬は上下するから、今この場で金額は確約できないが……少なくとも此処からは出すことを約束しよう。」
彼は目を見開いた。
此処から出られる……?
その可能性に飛び付かずにはいられなかった。
彼は痛む体も忘れて大きく首を縦にふった。
「ふふ、契約成立だ……一緒に此処から出ようか。」
彼の後ろで“誰か”が微笑んだ。
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あのインペルダウン監獄騒動から4日後のワノ国にて。
監獄襲撃を終え、ワノ国にいたドレークとスレイマンは新聞を読んでいた。
その隣では更新された手配書を手に、ササキが不満げに騒いでいる。
「はぁ!? なんでレオヴァさんの懸賞金上がってねぇんだよ!!
政府の奴らは馬鹿しかいねぇのか!?」
そんなササキの手に握られる手配書は、自分の物とドレーク、スレイマン、ロー……そしてドフラミンゴの5枚である。
そこにレオヴァの手配書がないのだ。
それもそうだろう、レオヴァの懸賞金は変動していないのだから。
金額の変更がなければ新しく発行されることもなく……。
さらに今回の事件はそもそもニュースにすらなっていない。
ただニュースクーの朝刊に値上がりしたササキ達の手配書が混ざっているのみである。
納得いかねぇ!と騒ぐササキにスレイマンは言う。
「そんなに懸賞金額にこだわる必要などないだろう。
金額がイコール強さではないんだ。」
「けどよぉ……作戦から実行までほとんどレオヴァさんのモンなのに…
おれらが上がって、レオヴァさんは無しとか納得できねぇだろ」
ムッとした顔で反論するササキにドレークが溜め息混じりに返す。
「スレイマンの言う通りだ。
実際、レオヴァさんは故意に懸賞金が上がらないようにしている様にも思えるしな。」
「なんでわざわざ?
レオヴァさんなら数十億くらい余裕だろ?
それに低いとナメられちまうしよ」
「問題ない、レオヴァ様にふざけた態度を取る輩はおれが始末する。」
「……スレイマンは話になんねぇ。
で、ドレーク!なんでレオヴァさんが懸賞金低く保ってると思うんだよ。」
レオヴァ過激派のスレイマンに呆れたような顔をしながら、ササキがドレークへ詰め寄る。
ドレークは一瞬考える素振りを見せたが、ササキの疑問に答えるべく口を開いた。
「いや、おれがそう思ってるだけでレオヴァさんが言ったワケではないんだが……」
「そう勿体ぶらずに教えてくれてもいいだろ?」
「……わかったよ。
じゃあ、第一に懸賞金が上がる事のメリットはなんだと思う?」
突然の問いかけに少し唸るササキだったが、思い付いたのか声を上げた。
「あれだろ、
それにナメられづらくなるしな。」
「おれもササキの言う様に、メリットはそれぐらいしか思い付かん。
……で、次はデメリットだが。
まず、政府から狙われやすくなる事。
そして、海軍本部の面倒な奴らにマークされやすくなる事だ。
他にも細かい事で言うなら、民間人から通報される可能性が上がることや、マイナスな印象を持たれたり悪い噂を流される可能性……と、上げれば多々ある訳だ。」
「うっ……まぁ、確かに。
おれも身に覚えのねぇ噂流されてた時もあったしなぁ」
「そうだろう?
で、ここからがおれの予測なんだが。
レオヴァさんがこれだけのデメリットを抱えてまで箔だなんだに拘ると思うか?」
「…いや、思わねぇ。
そもそもレオヴァさん自身が噂とか他人からの評価とかアテにしてねぇもんな…。」
「元よりレオヴァ様には懸賞金など関係なく、素晴らしい貫禄をお持ちだ。
噂や手配書の額でどんな印象を抱こうとも、実際に会えばナメた態度などとれまい。」
会話に割って入り、レオヴァ様自慢を始めたスレイマンの言葉にドレークも相槌を打つ。
「スレイマンの言う通り、懸賞金でデメリットを背負ってまでレオヴァさんが箔をつける意味はないんだ。
レオヴァさんの風格は初めから素晴らしい……っと、少し逸れたがそう言う訳で おれはレオヴァさんが金額が上がらないように立ち回ってるんじゃないかと考えてる。」
「は~……レオヴァさんもお前も小難しい考え方するよな。
けどそれなら納得だ。
理由もレオヴァさんらしいしな!」
「まぁ、全て憶測だがササキが納得いったなら良いか。」
「おう!
んじゃ、おれは部下と懸賞金上がった祝いで飲んでくるぜ!
ドレークも来るか?」
「いや、おれはまだ仕事が残ってる。
また誘ってくれ。」
「おれも断る。」
「いや、スレイマンは誘ってねぇよ!!
……んじゃ、ドレークまたな!」
ご機嫌に去っていくササキを尻目にスレイマンも持ち場へと歩きだし、ドレークも苦笑いを溢しつつも残っている仕事を片付けるべく動き出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
同時刻、鬼ヶ島内の城にて。
目の前でレオヴァに付き従うように並ぶ珍獣達を見てクイーンが顔を引きつらせていた。
「いや、いやいやいや……レオヴァ…お前の珍しい物好きは知ってるけどよォ……それでもなァ……。」
そんなクイーンが苦々しく放った言葉が聞こえているのかいないのか、レオヴァは興味ありげなカイドウに珍獣の説明をしていた。
「そのバジリスクってのはニワトリがヘビを生んだ結果って事なのか。」
「あぁ、普通ではあり得ないことで珍しい生き物なんだ。
他にも、この白いオオカミは軍隊ウルフと言うんだが、高い攻撃性と集団性を兼ね備えているんだ。
しっかり躾ければ鈴後の護衛として役立つと思う。
品種改良を重ねれば、民の家庭での荷物運び要員としても使える可能性もあるんだ。
それからこっちの生き物は……」
生き生きと語るレオヴァの話に楽しげに相槌を打つカイドウを見てクイーンは口をつぐんだ。
既にカイドウとレオヴァ、二人だけの世界状態である。
この時に何を言おうと無駄なのは周知の事実。
インペルダウンへの侵入の成功や、連れ帰った囚人達、手に入れた政府関係の情報などについては簡単にのみ説明し
『まぁ、あとは報告書の通りだ。
…で 父さん、この動物達についてなんだが……』
と、まるで世間話の如く簡単に済ませたレオヴァにクイーンはツッコみたい気持ちをグッと抑えた。
世界一の海底大監獄を、貿易の利益の為だけに攻略して帰って来たレオヴァに対するこの叫びたい気持ちは夜にまでとっておこう。
そうクイーンは決めたのだ。
一方、キングに至っては驚きを通り越して“
この親子には今さらツッコむだけ無駄。と言わんばかりの雰囲気を漂わせている。
カイドウの桁外れの暴れっぷりも、レオヴァの予想外の手柄も
……そう、今さらなのだ。
後で突っ込もうと
ーー後書きーー
前回も感想に“ここ好き”の投票ありがとうございます~!!
誤字報告も助かります!
更新頻度早かったり遅かったり疎らで申し訳ないですが、頂いた感想を糧に邁進致します~!
ONE PIECE100巻おめでとう!!
百獣海賊団最高~! ビブルカード発売もおめでとう!!