俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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手負いの獣

 

 

 

 

鳳皇城(ほうおうじょう)にある御用部屋(ごようべや)文机(ふみづくえ)の前に座っているレオヴァが、訪れた男に話し掛ける。

 

 

 

「フーズ・フー、遠征終わりに呼び出してすまない。

正式発表はまだなんだが、先に話したい事があってな。」

 

「構わねぇよレオヴァさん。

今回の遠征もたいした敵も居なかったしな。

……で、その内容ってのは?」

 

 

文机の前に胡座(あぐら)をかいたフーズ・フーにレオヴァは微笑みながら告げた。

 

 

「新しく作る幹部候補、“飛び六胞(とびろっぽう)”にフーズ・フーを指名したい。

この話……受けてくれるか?」

 

 

フーズ・フーは息を飲んだ。

きっと仮面に隠れて見えない目は、見開かれているだろう。

 

(しば)し、動きの止まった彼から発せられた言葉は力強かった。

 

「……もちろんだ。

カイドウさんとレオヴァさんを失望させねぇと約束するさ!」

 

 

この言葉を聞いたレオヴァは満足げに笑ってみせた。

 

 

 

 

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大監獄インペルダウンから連れ出された100名以上の囚人達の中でも、特にフーズ・フーの損傷は酷いものであった。

 

精神的なものから、身体の機能に至るまで多くの傷を負っていたのだ。

 

日々、世界政府の追っ手に追われる悪夢や妄想に取り憑かれていたフーズ・フーは、脱獄後も精神が安定しなかった。

 

しかし、そんな状態でもレオヴァと言う男との取引は続けた。

少しでも生き長らえる為に、少しずつ自分の知り得る情報を小出しにして売り続けた。

 

自分の関わった任務、知っている政府内の能力者、政府の隠し持っている島々……

ほとんど全ての情報を出しきってしまったフーズ・フーは焦りに焦った。

 

 

このままでは、用無しになってしまう……!

 

 

世界政府の諜報機関として働いて来た経験から、最悪な精神状態でもなんとかレオヴァと取引を続けていたフーズ・フーだったが、限界を感じずにはいられなかった。

 

どうする?

もう有力な手札はない。目ぼしいものは出しきった。

おれには何が残ってる?

どうすればいい?打開策を……なにか…なにか!!

 

そう必死に考えているフーズ・フーの焦りとは裏腹にレオヴァとの次の取引の約束は近付いていた。

 

 

 

そして、良い打開策を思い付かぬまま迎えた6度目の取引でフーズ・フーは隙を見せるという失態を犯したのだ。

 

終わった……。

 

処分される。そう思い体を固くしたフーズ・フーにレオヴァは予想外な行動を取った。

 

 

『…海軍内や、政府の人間の給料や採用方法がしりたい。

他にも労働環境も気になっていたんだ。

……その情報を売ってくれるか?』

 

 

一瞬、フーズ・フーは呆気にとられた。

そんな事が情報としての価値があるなど思わなかったのだ。

それに、謂わば助け船の様な真似をしてきたレオヴァの考えも読めなかった。

 

だが、逆らうと言う選択肢はない。

多くの拷問によって四肢に深い傷を負っている自分が敵う相手ではないのだ。

 

フーズ・フーはレオヴァの問いかけに素早く答えを返した。

 

 

『そんな情報でよけりゃ売ってやるさ…。』

 

 

 

 

 

その後も幾度か取引を続けていたフーズ・フーだったが、ついに本当になにも取引出来るものがなくなった。

 

しかし、レオヴァはそんなフーズ・フーに新たな提案をしたのだ。

 

 

『一度、おれに雇われてみないか?

フーズ・フーは書類仕事も出来るんだろう?

国務が出来る者が少なくてな……待遇はしっかりとしていると自負しているし、悪くない提案だと思うが。』

 

『……は?』

 

 

フーズ・フーは理解に苦しんだ。

国務というのは重要な仕事だ。

それを直接決めるでないにしろ、事務作業として内容を見れるポジションに余所者の自分を置くと言うのか、と。

 

まるでフーズ・フーが断るなどと微塵も思っていなさそうな振る舞いのレオヴァに、苦い顔をしつつも返事を返す。

 

 

『……契約内容を聞いてからじゃねぇと、決めらんねぇよ。』

 

 

 

 

 

 

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それ以降、フーズ・フーは鳳凰城(ほうおうじょう)のある一室にて生活する事となった。

 

一室とは言うが、やたら広く。

部屋の中に仕切りがあり、生活スペースも確保されつつ、仕事部屋も……と言うような作りの綺麗な部屋であった。

 

挙げ句、頼んでもいないのにレオヴァの手によって、室内に小さな自然まで造られてしまった。

ししおどしと、そこに泳ぐ鯉。

そして、青々とした苔と小さな名も分からぬ白い花。

 

フーズ・フーはそれを見て、なんとも言えない顔をすることしか出来ない。

 

 

無理やり部屋に自然を造った張本人は自慢げに笑うと

 

『自然の緑には安らぐ効果があるんだ。

それに鯉は縁起物でな……見目も良くておれは好きなんだ。

フーズ・フーはあまり外に出ないだろう?

部屋に自然があるのも良いと思ったんだ。』

 

と、悪びれるどころか楽しげに話し出した。

 

そして、軽く相槌を打つフーズ・フーに

『餌はこれをあげてくれ。』

と言い残すと消えて行ったのだ。

 

 

『……いや、おれが面倒みんのかよ!!』

 

そう、突っ込んだフーズ・フーの言葉はレオヴァには届かなかった。

 

 

自分勝手な野郎だな……と悪態をつくフーズ・フーだったが、結局は鯉の面倒をみてやることにしたのだ。

 

それに、たまに仕事以外で鯉の様子を見に来るレオヴァとの会話は悪くはなかったし、レオヴァの手土産に持ってくる上手い酒を飲む為だと思えば、なかなか鯉も悪くはないかもしれない、とさえ思い始めていた。

 

 

 

 

 

そして、いつしかフーズ・フーの精神状態は、ほぼ全盛期の頃と変わらぬ程に持ち直していた。

 

精神が安定していくにつれて、少しの不満が心の中で膨らんでいく。

 

“おれはなにやってんだ……?”

 

世界政府の追っ手を恐れ部屋で淡々と事務をこなす日々。

 

何故、おれが怯えて暮らさなきゃならねぇんだ。

何故、おれが世界政府なんかの為に人生を駄目にされなきゃならねぇ。

何故、何故……。

 

そんな怯えよりも怒りがふつふつと沸き上がっていく、フーズ・フーの心を見透かすかの様にレオヴァから新しい仕事をしないかと誘いが掛かった。

 

 

『海軍がウチのナワバリに手を出してきているらしくてな……その討伐遠征に一緒に来る気はないか?』

 

 

フーズ・フーはその遠征に参加したかった。

だが、今の自分は右脚が不自由だ。

それに左手に至っては、指どころか手の半分が拷問によって壊死してなくなってしまっている。

 

ハッキリ言って戦力にはならないだろう。

それをフーズ・フーは自覚していた。

 

『おれが行っても足手まといだ。』

そう口から言葉を溢したフーズ・フーの仮面の下の目を真っ直ぐに捉えたレオヴァが強い声で言った。

 

『今のままなら……な。』

 

 

意味が分からずレオヴァの目を見つめ返しているフーズ・フーに新しい取引が差し出された。

 

 

『ウチに……百獣海賊団に入るなら、その手足はおれが治そう。

フーズ・フー……おれと来るか、逃げ続けるか選べ。』

 

 

ゴクリ…と、息を飲んだフーズ・フーだったが、(すで)に答えは決まっていた。

 

 

『アンタについて行く。

……おれは百獣に入る。』

 

 

その答えを待っていたかの様にレオヴァは目を細めた。

 

 

 

 

 

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その後、フーズ・フーはあり得ない現実に息を飲んだ。

 

レオヴァは何でもない様な顔でフーズ・フーの体のパーツを作りだし、ローと言う青年を呼び出してあっという間にフーズ・フーの四肢を治してしまったのだ。

 

信じられない出来事に言葉を失っているフーズ・フーにレオヴァは笑いかけると一言

『では、討伐遠征……楽しみにしてるぞ。』

と、言って部屋を後にしていった。

 

 

 

その後は言うまでもなく、フーズ・フーは元に戻った体と今までの戦闘経験を大いに()かし、討伐遠征にて最良の結果を残した。

 

身体(からだ)も心も、あの地獄のトラウマから解放されたフーズ・フーの働きぶりは周りも目を見張るものがあった。

 

もとより戦闘や指揮の才能があったフーズ・フーは、すぐに多くの遠征で勝ち星を上げ続け、実力社会である百獣海賊団で地位を確かなものへとしていったのだ。

 

 

 

 

過去の自分がなぜあんなにも政府…サイファーポールに固執していたのか。

今となっては過去の自分が馬鹿馬鹿しく感じてしまっていた。

ここ、百獣海賊団での生きやすさ。

何より上に立つカイドウとレオヴァの偉大さと強さを前にしたら、全てが霞んで見える。

 

そういう考えに至る程に、フーズ・フーは百獣を気に入っていた。

 

 

そして、ついにレオヴァからの幹部候補への抜擢。

 

フーズ・フーは新たに強く決意した。

 

 

『もう、この場所は何があっても手放さねぇ』

 

 

仮面の下の瞳には強い光が灯っている。

 

 

 

 

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俺は新しく作る幹部候補、飛び六胞のメンバーをどうするか頭を悩ませていた。

 

 

ロー、ドレーク、スレイマン、うるティ、ページワン、ササキ、ブラックマリア、フーズ・フー

候補はこの8人だ。

 

皆、一人一人に素晴らしい戦闘力と個性がある。

 

だが、父さんが“飛び六胞”と名付けたのだ。

選べるのは6名のみである。

 

飛び六胞とは別に、近衛隊の隊長も増やそうと考えている為

この8名の昇級は決定事項なのだが、誰を何処の地位に就けるべきか……それが悩みどころであった。

 

 

何かあれば父さんに、一番に相談するのが決まりだ。

勿論、すぐに父さんへこの話を持って行った。

 

 

ローは判断力、サポート能力共に申し分なく、遠征においても内政においても高い処理能力がある。

それに、誰と組ませても(うま)くやっていける処世術も強みだ。

 

ドレークは指揮能力と部下の管理能力が高く、遠征だけでなく取引なども任せられる逸材だ。

感情を抑えて任務を優先できる自制心も持っているし、部下からの信頼も厚い。

 

スレイマンは統率力、集団戦において良い結果を数多く残しているし、能力自体も汎用性が高い。

……稀に直情的になることがあるのは欠点だが、それも父さんを思ってのことだと思えば可愛らしいものだろう。

 

うるティは……………そうだな……戦闘力と打たれ強さ、この2点にはとても光るものがある。

……いや、まぁ少し上に立つ者としては不安要素もあるが………今後きっと成長してくれる……筈だ。

何より、駄目だと決めつけてはうるティの成長を妨げるからな。

 

ページワンは連戦での立ち回りや、機転は目を見張るものがある。

何より、あの忍耐力は素晴らしい。

……が、姉であるうるティと共に行動するとよく振り回されてしまっているのを見るから心配ではあるが、仲が良いのは良いことだろう。

 

ササキは部下とのコミュニケーション能力は勿論、耐久戦での安定感もあり、遠征や輸送などでの護衛能力が高い。

少しぬけている……天然な所が少し不安ではあるが、それもササキの愛嬌だ。

 

ブラックマリアは相手の懐に入るのが上手く、戦闘においても自分のやりやすい場を作れる才能がある。

ただ、現在任せている仕事柄あまり遠征は出られないが……。

…たまには遠征へ行かせてやるのも悪くはないだろう。

 

フーズ・フーは高い機動力と隠密行動の上手さが高く評価出来る点だ。

任務と私情をきっちり分けられる所も強みだろう。

……少し慢心気味な所があるのは否めないが、今後の“組手”でそれは改善出来る筈だ。

 

 

と、一通り俺の意見を言ってみた所で父さんの返答はこうだった。

 

 

『……よし、レオヴァの好きにしろ。』

 

 

結果的に父さんの要望などはなく、俺の好きにして良いとの事だった。

 

振り出しに戻った俺は執務をこなしながら考え続けた。

 

 

そして、キングの助言もあり6人を絞り込むことに成功したのだ。

 

 

俺は5日後の正式発表までに、6人全員に飛び六胞への昇進を受けるか否かの返答を聞くべく立ち上がったのだった。

 

 

 

 

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鬼ヶ島にて開かれた宴でカイドウより、新しい幹部の発表が行われた。

 

その幹部の名称は“飛び六胞”

 

カイドウより任命されたのは

ドレーク、ササキ、うるティ、ページワン、ブラックマリア、フーズ・フー

の6名である。

 

 

 「以上が飛び六胞のメンバーだ。

次に近衛隊の新制度についてだが……それはレオヴァから発表がある。」

 

 

画面いっぱいに映っていたカイドウがフェードアウトしていくと、入れ替わるようにレオヴァが現れ、話を引き継いだ。

 

 

 

「守護隊の人数増加や、仕事量の増加を受けて、近衛隊(このえたい)の制度を新しくする運びとなった。

元々、3名の隊長に数名の部下のみだったが

今後は隊長の人数を増やすと同時に、近衛隊の隊員も増やす事となる。

 

して、近衛隊隊長は引き続き、ヒョウ五郎、ロー、カヅチ。

そして、新たにスレイマンを任命し

計4名の隊長の下、数十から数百の隊員という規模になる。

 

船員の皆にはあまり近しくない話題だとは思うが、ここで発表させてもらった。

おれからは以上だ、では……父さん。」

 

 

スクリーン上のレオヴァは軽く微笑むと、カイドウと入れ替わった。

 

既に飲んでいたのか、酒瓶を片手に持ったカイドウがまた話し始める。

 

 

「そういうわけだ!

近衛隊隊長も飛び六胞と同等の地位の幹部とする。

 

……まぁ、もう細けぇことはいいだろ。好きに飲め!!」

 

 

カイドウのこの言葉を皮切りに船員たちは盛り上がり、本格的に宴が始まった。

 

 

わいわいと楽しげに酒を飲み、料理を口に運ぶ船員たちとは別室にいるササキ達も上機嫌に酒をあおっていた。

 

 

 

「へへ……カイドウ様とレオヴァ様に指名されんのは嬉しいな…」

 

「ふふ~ん!

さっすがカイドウ様とレオヴァ様ナリ!

ぺーたんと一緒に明日の遠征も頑張るッ!」

 

 

 

「カイドウさんに任命されっと、レオヴァさんにされるのとは別な喜びがあるよな!」

 

「……喜ぶのはいいが飲み過ぎるなよ、ササキ。」

 

「わかってるって!

ほら、ドレークも飲めよ!

本当は死ぬほど嬉しい癖によ~!!」

 

「う……嬉しくないはずがないだろ。

……まぁ、めでたい日だ。一杯頂くとしよう。」

 

 

 

「うふふ♡

でもスレイマンやローちゃんの近衛隊隊長への任命も羨ましいわよね。

レオヴァ様直属……なんて素敵な響きかしら♡」

 

「ローちゃんって呼ぶんじゃねぇ…!

……直属っつっても、いつも一緒に仕事できる訳じゃねぇよ。

レオヴァさんは色んな所飛び回るからな。」

 

 

「近衛隊だろうとなんだろうと、おれのやる事は変わらん。

カイドウ様とレオヴァ様の役に立つのみだ。」

 

「スレイマンは固いわね……けどそんな所も私好きよ♡」

 

 

 

「けどよ、フーズ・フーまで幹部に選ばれるとはなァ…」

 

「ウチは結果を出せれば誰だろうと上へ行ける。

フーズ・フーは確かに最近入ったばかりだが、ここ最近の功績を見れば頷ける結果だろう。」

 

「……へっ。そりゃどうも。」

 

 

 

別室で各々が好きに飲み食いをしながら、会話を夜中まで続けていた。

 

 

 

 

 

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【懐かしのラザニア】

 

 

 

自然豊かで綺麗な小島を、今日もネコマムシは散歩している。

 

これは島のパトロールを兼ねた大切なネコマムシの日課なのだ。

 

 

「ニャンニャニャニャ~~ン!

今日も獣人島は平和ぜよ!」

 

 

腕としっぽをゆらゆらと左右に振りながら、鼻歌交じりに散歩コースをドスドスと歩く。

 

 

ぐるりと島を一周して、中心にあるミンク族が住む町に戻ってきたネコマムシは親友と呼べる男の匂いを感じとり、弾かれたようにその場所へ突撃していった。

 

 

突然、物凄い勢いで現れたネコマムシにミンク族の町人達は目を丸くする。

 

 

ドゴォ…!!

 

凄まじい音を立てて突っ込んだネコマムシに、側にいたベポが声を上げる。

 

 

「えぇー!?レオヴァさまが潰れちゃった!?

ネコマムシの旦那危ないよぉ!!」

 

 

ベポの心配を余所に、土煙が晴れたその場所ではレオヴァが易々とネコマムシのタックルを受け止めていた。

 

 

「ガルチュー!!

レオヴァ、会いたかったぜよ!

全然顔を見せに()んきに……ずっと待っちょったき!」

 

「ガルチュー、ネコマムシ。

すまなかった……忙しくてなかなか会いに来れなくてな…」

 

「レオヴァはいつも働き詰めやか……

たまには、ここでゆっくりしゆうのも()か!

町の皆もレオヴァが居ると喜ぶきに。」

 

 

レオヴァに引っ付いたまま、ほのぼの会話を始めたネコマムシを周りのミンク族の町人たちは優しい顔で見ている。

 

 

 

「今日はラザニアの材料を持ってきているんだ。

久しぶりに、おれがネコマムシに振る舞おうと思ってな。」

 

 

ガルチューガルチューと言いくっついたまま一向にレオヴァから離れないネコマムシだったが、この一言で満面の笑みで跳ね上がった。

 

 

「レオヴァのお手製ラザニアやが!?」

 

「あぁ、今から作るから少し時間を貰うことになるが……」

 

「いくらでも待っちゅうきに!

ニャンニャニャ~ン ラッザニャ~ン!!♪」

 

 

喜ぶネコマムシのラザニアの歌を聞きながら、広間に設置してあった屋台のような料理器具台でレオヴァは手早く調理を始めた。

 

玉ねぎやセロリ、にんじんなどを、それぞれ皮や筋を除いてみじん切りにしていき、炒める。

途中でローリエと言うハーブを加え香りを付けつつ、きつね色になるまで火にかける。

いい頃合いで挽き肉を加え、白ワインを少々。

 

食欲をそそる匂いにネコマムシはレオヴァの周りをくるくると回る。

 

 

「レオヴァ!いい匂いぜよ~!

まっこと楽しみにゃあ!」

 

「ふふ……まだ作り始めたばかりなんだがな。

火が危ないから手を出しては駄目だぞ。」

 

「わかってるぜよ~!!

ン、ニャニャ~ン♪」

 

 

トマトソースを作りつつ、ホワイトソースも同時に作り終えたレオヴァはミルフィーユ状にラザニア用パスタとソースを盛り付けていく。

 

最後にこれでもかとチーズを上にトッピングし、オーブンへと投入した。

 

 

「焼き上がりが待ちきれんにゃあ!」

 

「レオヴァさまのご飯楽しみだよ~!!」

 

「あと20分は待たないとだからな。

……ベポ、オーブンは熱いから触っては駄目だぞ?」

 

「アイアイ、レオヴァさま~!」

 

 

「「 ラッザニャ~ン!♪ 」」

 

 

オーブンの前ではキラキラした瞳で、またラザニアの歌をネコマムシとベポが歌っている。

 

レオヴァはそれを横目に、他のミンク族の為にまたラザニア用のパスタをミルフィーユ状に敷き詰める作業に戻っていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ネコマムシの目の前には大好物のラザニアが置かれている。

 

早く食べたい!待ちきれない!とばかりにネコマムシがレオヴァを見た。

 

 

「どうぞ、召し上がれ。

ネコマムシは猫舌だったな……熱いから気をつけてくれ。

ほら、ベポも前掛けをしてから食べないと駄目だろう。」

 

 

「は~い、レオヴァさま!

んっ……と。前掛けしたよ!

いただきま~す!」

 

「ゴロニャニャニャ!いただくぜよ~!!」

 

 

微笑みながら召し上がれと声をかけてくれたレオヴァに笑顔で答えたネコマムシとベポは、出来立てのラザニアを火傷に気を付けつつ頬張った。

 

とろとろのチーズに旨味たっぷりのソース。

そして、もちもちの歯応えのパスタ。

 

大好きな味のラザニアにネコマムシの顔は緩みっぱなしである。

 

昔、レオヴァが初めて作ってくれた時と変わらぬ美味しさに、ネコマムシはどんどん平らげていった。

 

 

「美味しいにゃあ!

レオヴァの作ってくれゆう ラザニアが一番ぜよ!!」

 

「そうか?

ネコマムシがそんなに喜んでくれるなら、作った甲斐があったな。」

 

 

優しく笑うレオヴァとはしゃぐネコマムシを、周りの皆は暖かく見守りながら、手元にある美味しいラザニアを頂くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ー後書きー
前回もご感想、ここ好きありがとうございます!

感想にて数件、マゼラン副署長の世間体を心配してくださっている紳士の方々がいて少し笑ってしまいました。笑
マゼラン副署長はトイレに間に合っていたのか……それは本人のみぞ知る……。

誤字報告も助かります!

ここまで読んでくださりありがとうございました~!!ヾ(・ω・*)
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