俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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気が向きましたらアンケートよろしくお願いしますm(__)m


入り込んだが最後

 

 

 

私は元帥の命令で、ある海賊団に潜入する事となった。

 

その名は百獣海賊団。

 

近年、信じられぬ速さでナワバリを増やし、戦力拡大を続けている凶悪な海賊団だ。

 

しかも、つい最近では大監獄インペルダウンを突破するという暴挙にまで出ている。

 

世間では、この海軍の失態とも呼べる事態は報じられる事はなかったが、政府や海軍内部での百獣海賊団への警戒度は一気に跳ね上がったのは言うまでもないだろう。

 

 

それに元帥には気になることがあるらしかった。

 

私を呼び出し、任務を任せると告げた元帥との会話での事だ。

 

 

『百獣海賊団は……何かが変わった。

10年以上前から百獣のカイドウ及び、その部下2名の凶悪さは危険視されていたが……。

 

今回のインペルダウンでの事件は違和感を覚える。

百獣のカイドウであれば、破壊を尽くすはずだ。

だが、今回の件では上部に囮を置き、別動隊が最短時間で脱獄囚を連れて消えるという手際の良さ。

 

明らかに百獣海賊団に“異分子”と言える存在が加わり、この事件の指揮を取っていたとしか思えん!』

 

 

そう言って険しい顔をする元帥に私は強く言葉を返した。

 

 

「元帥!任せてください。

世界の平和の為、必ず私が情報を持って参ります!」

 

 

任せるぞ。と肩を叩かれ、私は強く頷いた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

潜入事態は至極簡単であった。

 

 

雑用としてでもいいから連れていって欲しいと、百獣海賊団の下っ端に取り入ったのだ。

 

女である私に鼻の下を伸ばしていた愚かな下っ端は

 

 

「ふへへへ、よ~し!

なら、ドレーク様に会わせてやるよ。

そこで簡単な試験を受けて、受かったらウチに入れて貰えるぜ?」

 

と簡単に百獣海賊団の幹部、X・ドレークに会わせると言い出したのだ。

 

トントン拍子に進む入団への道にほくそ笑みながら、私は下っ端に笑顔で礼を述べた。

 

 

 

必ず、この入団試験で受かって見せると気合いを入れていた私だが、内容は拍子抜けする様なものだった。

 

まず、本当にすぐにX・ドレークに会わされた。

こんなに簡単に幹部が出向くの!?と驚いたのは言うまでもない。

 

それだけでなく、X・ドレークの態度も想像とはかけ離れており、更に私は驚いた。

 

 

「おれはドレークと言う、よろしく頼む。

話は部下から聞いている……ウチに入りたいらしいな?

 

まず、始めにウチでは簡単な試験を受けて貰うのが決まりでな。

…あぁ、そう気負う必要はないぞ。

まぁ、とにかく付いてきてくれ。」

 

 

私は言われるがまま付いて行き、部屋に通された。

椅子に座るように指示をされ、X・ドレークと対面状態となる。

 

何が始まるのかとひっそりと警戒を強めた私の前で、X・ドレークは紙とペンを持つと話し始めた。

 

 

「……では、今からおれの問い掛けに思ったまま返してくれ。」

 

「はい。」

 

「持病やアレルギー……絶対に生理的に受け付けない物などはあるか?」

 

「……はい…? え、……え?」

 

 

予想だにしなかった質問に混乱する私に、X・ドレークは怒る事もなく、慣れているのか淡々と説明を始めた。

 

 

「今後、ウチで生きていく上で持病があれば治療を受けることになる。

それと、アレルギー持ちの者は特定の食べ物と別で作られている食べ物を選べる様になっているから、その申請をするかしないかの為の確認の質問だ。

そして、蛇だったり虫だったりと生理的に無理な物があると分かっている現場に出なくて済むように予め聞いている。

以上が、質問の詳細だ。

答えたく無いものは、今後も無回答で構わん。」

 

 

ポカンとしてしまった私だが、すぐに気を持ち直して返事を返す。

 

 

「な、なるほど…分かりました。

持病もアレルギーもありません。

生理的に無理な物も特には……。」

 

 

「了解した。

……アレルギーと言う言葉の意味がわかるとは、お前は随分と物知りだな。」

 

「……医学の知識が少しありまして。

簡単な手当てや、看病ならできます。」

 

「ほう……そうか、わかった。

お前が希望するのであれば、ウチで医学を学んでナワバリの島で医者をやるか、船医として働くか選べるが……どうする?

まぁ、これは後からでも申請さえすれば変更はできるから今すぐ決めなくても良いが。」

 

「え……医学の勉強…ですか。

船員として働きながら勉強……という事でしょうか?」

 

「そうだ。

だが、他の船員とは活動内容は異なる。

2時間ほどは雑務をこなし、それが終わり次第、5時間の医学手解きを他の志望者と受けて貰うことになるな。」

 

「そ、そうなんですか……。

ぜひ、船医として働きたいのですが…勉強資金はどれほどあれば足りますでしょうか?」

 

「いや?

雑務の時間は給金がでるが、医学の手解き中は給金がでないだけで、お前が支払うような事はない。」

 

「え…? 無償で受けられる……んですか?」

 

「あぁ、今後のお前がウチに貢献してくれれば良いだけだ。」

 

 

まったく意味がわからない。

医学書だけでも高価だと言うのに、指導者までつけて無償で医学が学べるなんて。

しかも、それを言ってるのが海賊だという事実が更に意味がわからない。

 

その後も趣味や志望した動機、座右の銘……何故聞かれるのかわからない事もたくさん聞かれ続けた。

 

20分ほどの質問責めを受け終わると、X・ドレークは私の入団を認めた。

 

 

「お前は戦闘より補佐向きか。

……じゃあ、大まかな仕事の流れは彼……いや彼女に聞いてくれ。

トネグマ、彼女への今後の指導は任せる。」

 

 

トネグマと呼ばれた派手な服装の屈強そうな大男は、その見た目からは考えられない様な高い声で返事をしながら近寄ってきた。

 

 

「はぁ~い♡

ドレーク様、任せてちょうだい!

んふふ、可愛らしい子が増えて嬉しいわ~!

名前は何て言うの? 私はトネグマよ。」

 

「あ……よ、よろしくお願いします。

私はトゥレ・チェリーです。」

 

「あらあら!見た目通り可愛い名前ね!

トゥレちゃんよろしくね~♡」

 

 

きゃっきゃと楽しげに話すトネグマに連れられ、私は仕事を教えられた。

本当に簡単な雑務ばかりで拍子抜けだったが、トネグマはその度に私を褒めたり、労ってきた。

 

 

『えぇ~!もう出来ちゃったの!?

トゥレちゃん優秀すぎよ~!』

 

『あらやだ! トゥレちゃん働きすぎ!

休憩時間はちゃんと休まなきゃダメよ!

ほら、それは私に任せて休憩取りなさい。』

 

 

そんなお節介なトネグマに付きまとわれつつ、私の百獣海賊団への潜入が始まったのだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

潜入開始から5ヶ月が経った。

 

百獣海賊団での生活は、私の予想を(ことごと)く裏切った。

 

一番驚かされたのは、女であるからと見くびられることがなかった事だ。

 

ここでは性別や見た目、種族などに対して差別的な言葉を“身内”に吐くことは禁止されているらしかった。

なんでも、レオヴァと言う百獣のカイドウの息子が決めた取り決めらしい。

 

百獣の船員たちは、何故かその言い付けを忠実に守っていた。

……寧ろ、言い合いに発展する姿すら見たことがない。

 

奴らは仲間意識がだいぶ強いようだった。

 

 

潜入から一ヶ月ほど経った時に、百獣海賊団の制度を聞いたとき、私は耳を疑ったりもした。

 

“シフト制”と言う聞き慣れない制度や“有給休暇”、他にも“傷害保険”など……

 

内容を詳しく知りたいと言った私にトネグマは

『申請所の受け付けに行けば貰えるわよ!

大きめなナワバリにはだいたいあるから、次の停泊の時にでも一緒に行く?』

と言うので、私は頼むことにした。

 

そして、資料を手に入れて、内容をしっかりと隅々まで読み言葉を失った。

こんな手厚い保障が受けられるのか!?…と。

 

 

いや、どんなに豊かな国でもここまでの制度がある国なんて、世界政府加盟国ですら聞いたことがない。

 

しかも、この制度を実施しているのが、あの破壊の化身カイドウ率いる百獣海賊団なのだ………一体。どうなっているのか……。

 

私は、元帥の懸念が現実になっている可能性を強く感じていた。

 

 

懸賞金額2億ベリー……百獣の息子、レオヴァ。

この男こそ怪しいのではないかと、私は睨んでいる。

 

懸賞金額とは、世界政府に対する“危険度”を指標にかけられる金額だ。

単純な戦闘力の高さだったり、世界政府への敵対行為や民間人に多大な被害を出すなどすると、その金額は上がっていく。

そして、数億ベリーを超えた辺りから海軍大将などからもチェックされるようになる。

 

…が、私は百獣の息子であるレオヴァの懸賞金額が、億を超えているから警戒しているわけではない。

 

なにせ、百獣海賊団には億超えの海賊が数多く所属しているし、カイドウの息子であるレオヴァよりも懸賞金が高い者は何名もいる。

 

事実、2億という懸賞金額も百獣海賊団総督であるカイドウの息子だという事と、総督補佐という地位という理由でのみ付けられた金額だ。

政府には百獣の息子レオヴァが、何かの大きな事件を起こした話は一切入ってきておらず、まったく危険視はされていない。

 

……のにも関わらずだ。

 

レオヴァという男は、百獣海賊団の中で圧倒的な人気があるのだ。

 

真打ちであるトネグマや下っ端たちは、毎日の様にレオヴァの話をしている。

それも全て良い話ばかりだ。

 

怪我を治療してもらった。

壊れてしまった大切なものを直してくれた。

労りの言葉をもらった。

ご飯をご馳走してもらった。

 

……などだ。

 

幹部ならまだしも、いち下っ端に対してもレオヴァと言う男は気さくに声をかけるらしい。

 

 

私は、このレオヴァが元帥の危惧している百獣海賊団の“異分子”だと、確信に近い感情を抱いてた。

 

きっと、レオヴァという男は百獣のカイドウの息子でありながらも、人格者なのだろう。

 

今まで大きな事件を起こさなかったのは、戦闘能力があまり高くなかった事と、その性格が合わさった結果なのではないかと、私は予測したのだ。

 

事実、レオヴァという男は基本的にはワノ国から出ないと聞いた。

なんでもワノ国のナワバリをカイドウ直々に任されているとか。

 

あの破壊の化身が自分の子どもを大切にするとは到底思えないが、トネグマやX・ドレークの会話を聞く限り、百獣のカイドウは息子を溺愛しているらしいのだ。

 

おそらく、カイドウは自分の息子が海軍に捕らわれぬ様に手回しをするため、総督補佐官と言う地位を渡してワノ国へ軟禁状態にしているのだろう。

 

 

……と言うのが5ヶ月間で掴めた情報だ。

 

 

私はこの情報を元帥へ送るため、専用の鳥の足に文書をくくりつけた。

 

 

次の報告日までの5ヶ月間の間に、必ずレオヴァという男との接点を作ってみせる。

 

その男こそ、百獣のカイドウを討てる可能性に繋がる鍵かもしれないのだから。

 

 

 

 

 

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4ヶ月前にトゥレちゃんと言う新人が入ってきた。

 

ドレーク様に言われて、私が面倒見ることになったのだけれどトゥレちゃんは物凄く美人で、仕事もバリバリにできちゃうからビックリ!

 

愛想も良いし、聞き上手だし良い子なのよね~。

 

 

本当に“出来すぎなくらい”可愛いくて良い子。

 

 

……けど、私って温度の変化に敏感なのよ。

レオヴァ様から頂いた“SMILE”のおかげなんだけど。

 

蛇のSMILEの能力……これがあると嘘が良くわかるの。

 

人間って嘘ついたり、焦ったりすると温度が上がるんだもの、分かりやすいわよね~。

 

 

トゥレちゃんは優秀なんだけど……あの子良く嘘つくのよ。

 

休みの日に一緒にお買い物したり、お話を沢山聞いてくれるトゥレちゃんの事は嫌いじゃないわ。

 

けど、レオヴァ様とカイドウ様の事が好きじゃない子は要らないのよね……。

 

 

そんな事を思いながら、私はロー様が待っている部屋へと早足で向かっていた。

 

部屋の前につき、ノックをしようと手を上げると同時に声がする。

 

 

「……入れ。」

 

「失礼します~!」

 

 

せっかちなロー様の部屋に入り、一礼する。

…あら?既にドレーク様もいらっしゃったみたい……私ったらお二人を待たせるなんて!

 

 

「ロー様 ドレーク様、お待たせしてしまったみたいで申し訳ないわ…」

 

 

「気にしなくていい。

おれが早く来すぎただけだからな。

……そこに座ってくれ。」

 

「謝罪はいい……さっさと、例の話を。

おれも暇じゃないんだ。」

 

 

優しいドレーク様とツンデレなロー様の前に、進められるまま座り、私は話を始める。

 

 

「では、お話を始めさせて頂きますね。

単刀直入に言わせてもらいますと

新人のトゥレ・チェリー……おそらく何処かの組織の回し者かと。」

 

 

「…スパイ、か。」

 

「……少し優秀すぎるとは思っていたが、やはり…。」

 

 

「えぇ、ドレーク様の言い付け通りに監視してたのですけれど……嘘ばかりつく子でしたわ。

中でも、カイドウ様に対して見せた嫌悪感は無視できない…!

……オホン…ごめんなさい、少し感情的に……。

とにかく、どこの回し者にせよ……カイドウ様に対して負の感情を抱くものは排除すべきかと。」

 

 

私の意見に、ドレーク様もロー様も頷いて同意を示している。

その後も疑わしいあの子の特徴や、行動などを事細かにお二人に伝えていった。

 

 

「カイドウさんに対しての嫌悪感か…。

共同生活への順応の早さ…それに戦闘時に見せた、その女の攻撃方法といい……政府の犬じゃねぇのか?」

 

「トラファルガーの言う通り、その可能性は高い。

…が、加盟国などからのスパイの可能性も否定できない。

近年、ウチの技術を盗もうとする輩は増えている。

レオヴァさんが寝る間も惜しんで開発した物を奪おうなどと考える馬鹿は早急に排除するべきだ。」

 

 

お二人の話はトントン拍子に進んでいく。

 

 

「…おおかた流れは決まったか。

まぁ、証拠確保は任せろ。」

 

「あぁ、頼む。

黒だと確定した場合は、おれが処分するとしよう。

……トネグマ、引き続き監視は続けてくれ。」

 

「はい!

ドレーク様、任せてちょうだい!」

 

 

仕事に戻ると立ち上がったドレーク様に続くように、私も部屋を後にする。

 

 

……カイドウ様とレオヴァ様を害することは、誰であろうと絶対に許さないわ…。

 

 

 

 

 

 

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情報を預けた伝書鳩を空に放ってから、一週間が経っていた。

 

今日も、朝2時間の仕事を終えて、医学の指導を5時間ほど受けた。

 

百獣海賊団のナワバリの中にある、船員専用の宿へ向かって帰路を進む。

 

私は今まで2つのナワバリを見てきたが、どこも気が抜けるほど平和だった。

 

島にすむ人々は飢えている様子もなく、百獣海賊団を恐れるどころか歓迎すらしていた。

港に着けば村人がわらわらと集まり、声をかけてくるのだ。

 

 

「おい、百獣の皆さんが来たぞ!!」

 

「本当だ…!」

 

「ドレーク様、お元気そうで!」

 

「お久しぶりです、ホールデム様!

今夜はウチに飲みにいらっしゃいますか?」

 

「わ~!ドレークさま~!

ぼく、おっきくなるやつ見た~い!」

 

 

海軍でさえ、ここまでの歓迎を受ける事は滅多にない。

挙げ句には、町の子どもたちと遊んでやっている部下たちまでいる始末だ。

 

何故こんなにも百獣を歓迎するのか、私は聞き込みを開始した。

 

村人たちが言うには、元々この島は新世界に浮かんでいる事もあり、天候が安定しない島だったらしい。

その為、作物も不作だったりすることが多々あり、食料はギリギリしか手に入らない。

にも関わらず、海賊や海軍に食料を奪われることが頻繁にあったとか。

 

……海軍が食料を奪ったと言う話は衝撃だった。

どうやら補給に訪れて、無理やり金品を握らせ、そのまま食料や水を積んで出港してしまったらしい。

……それも少しの金品のみであったと言う。

 

村人のお爺さんは

『少しの金なんかあっても……買う食料が島にないんだからね…

金じゃあ、腹はふくれないってのが嫌ってほど分かる日々だったよ。』

と昔を懐かしむ様に話してくれた。

 

そして、そんな飢餓に苦しむ村人たちの前に現れたのが、カイドウの息子だったと言うのだ。

 

カイドウの息子とその部下ドレークは、あっという間に町に上陸していた海賊達を倒し、村人たちに提案をしたという。

 

 

『この島をウチのナワバリにしたい。

もし、提案を飲んでくれるのならば、島の治安と食料問題は百獣海賊団が面倒をみると約束する。

……おれ達は4日ほど滞在する、それまでに話し合って答えを出してくれ。』

 

この提案はほぼ満場一致で、受け入れる形となった。

 

村人のお婆さんの話では、最初は皆が百獣の名に恐れ戦き、断ると言う選択肢はなかったらしい。

 

 

だけれど、実際に百獣海賊団のナワバリになってみると生活は良い方へ変化したと言うのだ。

ビニールハウスなる物が設置され、新しい作物の栽培方法も教えられたそうだ。

他にも、守備拠点が島に建てられ、襲い来る海賊たちを百獣の部下達が追い払った事で治安も安定。

更には島に病院まで建ち、良心的な金額で薬の調合や診察などをしてくれる……という厚待遇まで。

 

 

その後も、村人たちが恐れていた多額の献上金も要求されることはなく。

要求されたのは、島の特産品を決まった数献上する事と、百獣海賊団の補給地点になることだけだったらしい。

 

 

……私は正直、百獣海賊団を“海賊”と呼んで良いのか分からなくなっていた。

 

 

どうやら、本当に私の読み通りレオヴァと言う男は百獣海賊団の“異分子”であるようだ。

 

どこで誰に話を聞いても、その人物像は一言で表すならば “人格者”…である。

 

一刻も早く、百獣の息子であるレオヴァと接触し、情報を集め懐に入り込まなければ……。

 

 

 

そう思っていた私に転機が訪れた。

 

百獣海賊団の幹部……トラファルガー・ローから声がかかったのだ。

 

噂ではトラファルガー・ローは、レオヴァ直々に拾って育てた幹部らしい。

……近づくには、この幹部を使うのが手っ取り早いはず。

 

年齢も幹部たちの中では若く、サポート型だと言う話もある……きっと戦闘能力も幹部の中では下の方だろう。

最悪、問題が起きればトラファルガー・ローを消し、潜入を続ければ良いのだ。

 

私は手に入れた情報を整理しながら、その幹部へ呼ばれた場所へと向かって行った。

 

 

 

そして、幹部の待つ部屋に入る。

 

部屋の中には目の下に濃いクマのできた青年が、気だるげにソファーに腰掛けていた。

 

 

「……お前がトゥレ・チェリーか。」

 

恐ろしく感情の籠っていない声色に私は息を飲んだが、返事をせねば不味いと声を出す。

 

「っ……はい、トラファルガー様。

私がトゥレです。」

 

 

灰色の瞳がゆっくりと私を捉えた。

その瞳に宿る感情に身構えたが……遅かった。

 

 

「……お前に対する慈悲はねぇ。

全て洗いざらい吐いてもらうぞ。」

 

 

この言葉を最後に私の意識は途絶えた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

薄暗い部屋の中心で、何かがもぞもぞと動いていた。

ソレはよく見ると人の様な形をしている。

 

上半身しかない女の形をしたソレの顔は苦痛で歪み、まるで泣き叫んでいるかの様だ。

しかし、一切ソレから声は出ておらず、部屋ではカタカタという小さな音だけが聞こえていた。

 

 

だが、そんな異様過ぎる光景には似つかわしくない、ハキハキとした声がする。

 

 

「ロー、お前も忙しいだろ。

おれがキングにソレを渡しておこうか?」

 

 

「聞きたいことは聞けたしな…これはキングに譲るか。」

 

 

ドレークはソレを袋に詰めると部屋を出て歩き出した。

袋の中でもぞもぞと動いているソレに、不快そうに眉を潜めながら電伝虫を取り出す。

 

プルプルプル……ガチャッ

 

 

「……なんの用だ。」

 

低く唸るような声に怯むことなく、ドレークは用件を伝える。

 

「百獣海賊団の周りを嗅ぎ回ろうとしてた鼠を捕まえた。

……レオヴァさんから処分は好きにして良いと言われてるんだが。」

 

 

この説明だけでキングは察したのか、電伝虫越しにニヤリと笑う気配をドレークは感じた。

 

「レオヴァ坊っちゃんが“好きにしていい”と指示だすとはなァ……

随分と怒りを買ったらしい……ククク…おれが貰うとしよう。」

 

珍しく愉しげな声を出すキングに、すぐに持っていく。と伝えてドレークは電伝虫をきった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

レオヴァはドレークとローから報告を受けていた侵入者の情報をまとめていた。

 

しかし、海軍から送られてきたことまでは掴めたが、海軍全体の指示で来たのか、個人的な指示を受けて来たのかまで吐かせることは出来なかったと言っていた。

……どうやら、今回の侵入者は忠義高い性格らしい。

 

 

これ以上の情報はトゥレ・チェリーからは得られないだろうと、処分をどうするか聞いてきたドレークに指示を出す。

 

「“好きにしていい”……キングなら喜んで引き受けてくれるだろうしな。」

 

「…了解した、キングに処分を頼む方向で進める。」

 

 

みなまで言わずとも察してくれる優秀なドレークに、レオヴァの先ほどまでの怒りが和らぐ。

 

普段であれば手早く始末し、苦しませる事はあまりしないのだが。

トゥレ・チェリーと言う女は別だった。

この女は見事にレオヴァの地雷を踏み抜いていたのだ。

 

実は、報告の為に放たれた伝書鳩(でんしょばと)は、女を警戒していたローによって回収されており、その中身はレオヴァ達の預かり知る所となった。

 

が、その内容がレオヴァの怒りに触れたのだ。

 

 

これが、その密告書の解読された内容の一部である。

 

『レオヴァは指揮官要員であり、戦闘力は高くないと予想されるが、穏和な話の分かる人物である可能性は高く、七武海の地位またはその他の利益を提示することで、百獣海賊団内部の分裂を起こすことが出来る可能性あり。

 

百獣海賊団内部でのレオヴァの評判は高く、カイドウ対レオヴァの構図になった場合でも、多くの幹部や部下がレオヴァ側につくと予想。

カイドウを討ち取るまでは行かずとも、多大なるダメージを負わせることが出来ると推測。

 

レオヴァ陣営にカイドウを討たせる動きをさせるのが、現在の最善策であると提案します。』

 

 

他にもカイドウに対する物言いなどもレオヴァの怒りに触れる一因ではあったが

 

“レオヴァにカイドウを討たせる”

 

この一文を見た瞬間のレオヴァの表情は、外部には見せられぬほど恐ろしい顔だった。

体の周りにはバチバチと電気が漂い、拘束されていた女に数多の裂傷や火傷を作った。

 

今にも女を殺さんばかりの雰囲気にまでなったレオヴァだったが、側にいるドレークとローの気配で、自分の能力で二人に怪我を負わせてはならぬと己を律し、告げたのだ。

 

 

『手段は問わない、どこの人間か吐かせておいてくれ。

……おれは少し頭を冷やす。』

 

 

その後ローとドレークは、女から出させられる情報を吐かせて今に至る。

 

 

海軍が差し向けてきた侵入者……

レオヴァはおそらく組織全体の意向ではなく、個人の……元帥や大将などの差し金だと踏んでいた。

 

最初に頭に浮かんだのは、昔絡んできた馬鹿力爺さん……ガープだったが

その可能性は薄いのではないかと思い、その近しい人物が怪しいのではないかと考えた。

 

結果は誰の差し金かは判らず、情報が出て行かなかった事で良しとしたのだが。

 

 

 

 

情報をまとめ終え、国務も片付けたレオヴァは、百獣海賊団員の御意見箱に手を伸ばし、一枚一枚目を通して行く。

 

今頃、久々の玩具に口角を上げているであろうキングを思いながら、レオヴァは船員達の要望や困り事の内容を見ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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日が落ち、きらびやかな街灯に照らされた小道を狂死郎は歩いていた。

行き交う人々が会釈してくるのに対して、軽く目線で返していると、後ろから明るい声がかかる。

 

 

「おぉ、狂死郎じゃねぇか!

お前もレオヴァさんに誘われたのか!」

 

 

振り返ると満面の笑みで手を振りながらササキが歩いて来ている。

狂死郎はくるりとササキに向き直ると、普段のニヤリとした笑みとは違う笑顔を向けた。

 

 

「ササキか…!

そうか、じゃあお前もレオヴァ殿に?」

 

「そうそう、おれもレオヴァさんに誘われたんだよ。

狂死郎もいるなんて、今夜も旨い酒を楽しめそうだ!」

 

「レオヴァ殿とササキと飲めるのは久方(ひさかた)ぶりだ。

おれも今夜は純粋に楽しませてもらうとするか!」

 

 

ご機嫌に狂死郎の背をバシバシと叩きながら、レオヴァの待つ店へとササキは歩きだした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

この二人……正反対な性格の様だが、実はとても気の合う者同士だ。

 

狂死郎とササキの出会いは、レオヴァからの個人的な飲みの誘いだった。

 

レオヴァと二人で酒を酌み交わすのだと思っていた狂死郎とササキだったが、実際にレオヴァに言われた飲み屋へ入ると其処には接点のない男が居たのだ。

 

だが、お互いに話した事はなくとも、存在は知っていた。

 

ササキは真打ちの中でも指折りの強者であるともっぱらの噂であったし、元は敵船の船長であったがレオヴァに認められた男だ、との噂も狂死郎は耳にしていた。

 

一方ササキも噂や人伝に狂死郎の話は聞いていた。

 

なんでもレオヴァと共に悪名高い黒炭オロチという男を討ち取り、ワノ国の夜明けへの一歩を担ったとか。

他にも大名としても有能でレオヴァから厚い信頼を寄せられているとも聞いていた。

 

 

居る筈のレオヴァの代わりに現れた存在に狂死郎もササキも呆気にとられていたが、狂死郎の立て直しは早かった。

 

初対面……しかも真打ちという百獣海賊団幹部相手に突っ立っていては礼を欠くと、自己紹介を始めた。

 

 

「……お初お目にかかる、ササキ殿。

お噂はかねがね聞き及んでおりまする……。

拙者…狂死郎と申す者。以後お見知りおきを。」

 

「おー……おれもよくお前の話は聞いてたぜ。

まぁ、よろしくな。」

 

 

ササキは狂死郎の堅すぎる挨拶にさらっと返すと、呼び出した張本人であるレオヴァを二人で待つ流れになった。

 

 

そのあと、五分ほど経ってからやってきたレオヴァと、三人で酒を酌み交わすことになり、店が閉まるまでの数時間を共にしたのが初めての顔合わせだった。

 

 

 

狂死郎のササキへの第一印象は“単純な男”…である。

 

ササキは、レオヴァが褒めれば大きな口に弧を描かせ、嬉しげな顔になり

レオヴァが政策について話すと明らかに難しい顔をして、腕を組んで唸るのだ。

 

狂死郎は思った。

『……なんて分かり易い奴だ…扱い易過ぎる……』

 

 

パッと見でどんな感情なのか分かり易過ぎるササキの第一印象が、単純な男になってしまったのは仕方がないのかもしれない。

 

 

一方、ササキの狂死郎への第一印象は“物知りな奴”…である。

 

一見、何を考えているのか解らぬ笑みを浮かべている狂死郎だが、レオヴァの連れて来た男だと言うこともあり、ササキは狂死郎への警戒心はほぼゼロだ。

 

その為、いつも通り楽しくレオヴァと飲んでいたのだが、狂死郎とレオヴァの会話は少し難しかった。

 

そこで、ササキは思った。

『コイツ、レオヴァさんの話に付いていけるのかよ!

すげぇ頭良いんだろうなァ。』

 

 

……本当に単純な男である。

 

して、狂死郎はササキからの第一印象が物知りな奴に決定されたのだ。

 

 

 

二人はその後もレオヴァの誘いや金色神楽……ちょっとした宴などで度々、酒の席を共にした。

 

 

ササキは聞き上手で、話題の引き出しも沢山持っている狂死郎をすぐに気に入り、色んな話をするようになった。

ついには、狂死郎が大名として任されている町に自ら足を運ぶまでになっていたのだ。

 

 

狂死郎は裏表のない、気さくなササキと飲むのがストレス発散になっていた。

 

日頃から、傳ジローとしてではなく狂死郎として生きることに気を遣い、他の大名との小さな腹の読み合いなどにも神経を使う生活を送っている狂死郎にとって、本当に何も深いことを考えずに付き合えるササキは好ましかった。

 

 

それに、ササキが放ったある一言は、狂死郎を謀らずも救う形となっていた。

 

 

実は、狂死郎にはレオヴァに隠している事があり、それが自らを追い詰めていたのだ。

 

その秘密とは……モモの助と赤鞘が20年後に飛んでいる事だった。

 

ただでさえ、狂死郎は良くしてくれたレオヴァをお互いの立場上仕方がなかったとはいえ、討ち入りという形で裏切ったと負い目を感じている。

なのに、レオヴァは不満一つ漏らさず、ワノ国の民から おでんの娘と赤鞘を匿い続けてくれるのだ。

 

 

……20年後、モモの助が現れた時は事情を説明し、外へ逃がす…または共に逃げるという選択肢を狂死郎は取るつもりなのだ。

 

だが、やっと心からの笑顔を取り戻した日和をワノ国の外に連れて行くのは残酷な事ではないか…とも狂死郎は思っていた。

 

なにせ最近では、キャロットと言う小さなミンク族の友人が出来たと嬉しそうに話をする程、馴染んでいるのだ。

 

 

そんな色んな想いや20年後に現れる仲間達への対応を考え、いつも狂死郎は気を張り詰めていた。

 

しかし、狂死郎もひとりの人間なのだ。

 

普段のストレスとササキの裏表のない性格に、つい口から想いが溢れた。

 

 

『ササキ…おれが昔、レオヴァ殿からの恩を仇で返した(たわ)け者だとしたら……どう思う?

………償えると思うか?』

 

狂死郎らしからぬ話の振り方にササキはきょとんとしたが、すぐに笑いながら答えた。

 

 

『ははははっ!狂死郎…!

そりゃおれに対する嫌みかよ!

おれなんてレオヴァさんとの出会いは殺し合いだぜ?

……まぁ、殺し合いっつーか…レオヴァさんにボコボコにされたんだけどよ……

今なら、レオヴァさんがブチキレてた理由も分かるけどなぁ。

……ページワンをボコッちまったのが運の尽き……ん?

けど結果的には、今楽しいから運の尽きではねぇのか?』

 

 

豪快にケタケタと笑うササキは、空になった狂死郎の盃に酒を注ぐ。

狂死郎は並々に注がれた酒を見ながら、珍しく芯のない声で返した。

 

 

『……答えになってないぞ、ササキ。

おれは……どうしても昔の事を…………いや、すまない。

せっかくの美味い酒を濁すような話だった。

忘れてくれ……それより…』

 

 

パッと顔に笑顔を戻した狂死郎が別の話題を言うより早く、ササキがバシッと小気味良い音を立てながら狂死郎の背を励ますように叩いた。

 

 

『昔は昔、今は今だろ!

昔の事をぐるぐる考えるより、今後どうやって行くか考える方が、おれは好きだ。

 

狂死郎は先を読むのが上手ぇじゃねぇか、おれァ…お前のそう言うとこ……尊敬してんだぜ?』

 

と、笑ったササキの顔は眩しく見えた。

一瞬、ササキの方を見て目を大きく見開き、また目線を下げて狂死郎は渇いた笑いと自嘲を溢す。

 

 

『ハハッ……全てを話せぬ、後悔ばかりのおれでもか。』

 

 

『何でもかんでも全部知っとく必要ねぇだろ。

狂死郎の過去は知らねぇけど……今、お前と飲むのは楽しいし、おれにとってはそれで十分だ。』

 

 

狂死郎もおれと飲むの楽しいだろ?

そう冗談交じりに告げ、狂死郎にササキは笑顔を向け続ける。

 

……この時オロチを討って以降、狂死郎にとって初めて友と呼べる存在が出来たのだ。

 

 

 

 

 

 

そんな親友二人は、楽しげに話しながらレオヴァの待っている店の扉を開けた。

 

 

「レオヴァさん!悪い、待たせた!」

 

「レオヴァ殿、すまぬ…遅くなった!」

 

 

二人一緒に店に入ってきた姿を見て、レオヴァは相変わらず仲が良いと笑う。

 

 

「いや、おれもさっき着いたばかりなんだ。

……少し不快な事があってな…付き合ってくれ。」

 

 

「ははは、レオヴァ殿でも嫌なことがあるとは!」

 

「よし! レオヴァさん、朝まで付き合うぜ!」

 

 

三人は机に向き合うように座り、ササキが店員に注文を頼む。

 

 

「とりあえず酒と~……メニューの食いもん全部!

あ、あとアスパラ巻きは3皿で!」

 

 

「「いや、それは頼みすぎだろう!」」

 

 

狂死郎とレオヴァからの突っ込みにササキは口を大きく開けて笑った。

 

三人の小さな宴が今日も始まったのだった。

 

 

 

 

 

 





ー後書きー

前回も暖かい感想から鋭いコメントまで、ありがとうございます!!
誤字報告下さる優しき頭脳派の皆様にも感謝ですッ!

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