俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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勘違いとプレゼント

 

俺は作ったウイルスの実験の為、クイーンが任されている ある島の殲滅任務に参加した。

 

 

何かあっては困るので今回の任務はクイーン以外は入団したての弱い部下で固めてあり、基本的にクイーンは指示と監視のみを行う手筈だった。

その為、3日ほどかかると予想していたのだが……

 

 

──── 島の殲滅は1日半で完了した。

 

 

 

 実験の結果は

     "失敗" である。

 

 

 

 

……一応、強化には成功してはいた。

ウイルスに侵された部下たちは簡単に倒れる事はなく、通常よりも速さも力も上がっている。

さらに長時間の戦闘も可能であった。

 

 

ただし…理性はなくなり、無理矢理引き出した力を28時間ほど使い続けた部下たちは

ほぼ全員が死亡し、生きている者は目が見えなくなったり、音が聴こえなくなったりと使い物にならなくなってしまっていた。

 

なにより理性を失い、敵味方関係なく攻撃してしまう事と命令を聞ける状態じゃない事が一番の誤算である。

 

 

理性が保てないのであればウイルスの量を減らしても強化用としては使用不可能だ。

 

 

 

屍で溢れかえる島を眺めながら俺は大きく溜め息をついた。

 

 

 

「すまないクイーン……無駄に時間を取らせた…」

 

 

「えぇ~~!?

なんでそんなに落ち込んでんだよ?!」

 

 

  「失敗だからな…」

  「成功じゃねぇか…!」

 

 

   「「……え?」」

 

 

二人が疑問の声を漏らしながら相手の顔を見るのは同時であった。

レオヴァは“成功“という言葉に首をかしげ、クイーンもまた“失敗“という言葉に首をかしげた。

 

 

「いやいやいやいや!成功だろ…!?

強化出来てんじゃねぇか!」

 

 

「いや、失敗だろう…!

強化は出来たが生きてる奴いないぞ!?」

 

 

「え? 別に良いだろ 死んでも 」

 

 

「一回の戦闘で毎回大勢の部下が死ぬ様なモン使えるか…!!」

 

 

「えぇ~~……どっちにしろ今死んだ奴らなんて普段の戦闘にでりゃほぼ100%死ぬ程度の奴らだぜ?」

 

 

「いや、それはわかってる。

だから強化出来るウイルスを作りたかったんだが……

……まぁ…仕方がない。このウイルスは破棄する。」

 

 

「待て待て…!? え、それ捨てんの!?

なら、おれにくれ!!」

 

 

「全然構わないが……使うのか?」

 

 

「使う!いい案浮かんだぜ…!」

 

 

「確かにクイーンならもっと凄い物が造れそうだな。」

 

 

「おう! それ使って面白いモン造るぜぇ~~!!

  ムハハハハハ~~!!」

 

 

 

 

さっそくウイルスを持って船室に戻ってしまったクイーンに苦笑いしつつ、引き攣った顔で待機していた部下たちに出港の指示をだすのであった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ナワバリについてすぐにキングがレオヴァを呼びに現れた。

わざわざキングが来た理由は不明であったが、カイドウがレオヴァを呼んでいるらしい。

 

レオヴァはクイーンに後の事を頼み、すぐにキングの背に飛び乗って行った。

 

 

 

 

 

 

「父さん、今帰った。」

 

 

「おぉ!! レオヴァ!

 実験はどうだった?」

 

 

「…失敗だ。強化は成功して想定よりも早く終わったが……90%以上が副作用で死んだ……」

 

 

「そうか。 だが、そう落ち込むこともねぇ。

一年でそこまでウイルスを扱えるヤツはいねぇとクイーンも言ってたからなァ…!」

 

 

「ありがとう父さん。

ウイルスはクイーンが何か考えがある様だったから渡した。

きっと使える物を作ってくれると思う!」

 

 

 

「そりゃ良い…!! 出来たらそこらの海軍にでも使わせるか!」

 

 

「それは ぜひ、おれも見学させてもらいたいな…!

……と、そういえば急用だとキングから聞いたんだが。」

 

 

「あぁ……!! そうだ!お前が欲しがってたモンがちょうど手に入った!

おい、キング 持ってこい……!」

 

 

「カイドウさん。

そう言うと思って もう、此処に持ってきてある。」

 

 

 

そう言うとキングは流れる様な動作でカイドウに装飾の施された小さい宝箱を渡した。

 

 

 

「持ってきてあったのか!

相変わらず気のきくヤツだ…! ウォロロロロ!」

 

 

カイドウは満足そうに受け取るとキングを褒めた。

キングはそれに対し軽く頭を下げ、入り口付近まで下がって待機する。

 

 

「ウォロロロロロ……!

これは…お前の欲しがってた

 

 ─── “悪魔の実“ だ……!!!!」

 

 

「……!?」

 

 

レオヴァが目を開き驚愕に固まると、カイドウはドッキリが成功したと言わんばかりの 愉快そうな様子でレオヴァを見ていた。

 

 

 

「悪魔の実…! 

いや、そもそも おれは父さんにその話をした覚えがないんだが!?」

 

 

 

「……レオヴァ坊っちゃんは手間をかけたら悪ぃとカイドウさんに言おうとしねぇから、おれからカイドウさんに話した。」

 

 

 

「ったく、欲しいなら言え…!

お前は息子のクセに全然ワガママも言いやがらねぇ…」

 

 

 

「う……だが父さんも色々と忙しいだろうし…手間取らせんのは……」

 

 

 

「手間取らせる…? 

レオヴァ! おれを誰だと思ってやがる……!?

息子のワガママの 1つや 2つ叶えられねぇとでも言いてぇのか……!?」

 

 

 

「そんなことは思ってない…!!

…寧ろ父さんは絶対に叶えようとしてくれるから…手間になるかと……」

 

 

 

「手間だなんておれが一回でも言ったのかァ……?

おれの事を優先するのは構わねぇが、こればっかりは頂けねぇ!

 おれの息子が遠慮なんかしてんじゃねぇぞ…!!!」

 

 

 

「す、すまない父さん…………ありがとう…

これからは何かあれば一番に父さんに言う。」

 

 

 

「! わかりゃ良い……!! ウォロロロ…!

これからは“おれ“に“一番“に伝えろ!!」

 

 

 

「あぁ、わかった…!」

 

 

 

 

一瞬部屋の温度が下がったと錯覚するほどカイドウの機嫌が下がったことに、キング含め回りの部下たちは冷や汗を流した。

しかし、大事にはならず丸くおさまり、気付かれない程度の安堵の息をもらす。

 

 

 

 

「ところで父さん。

その悪魔の実はなんの実なんだ?」

 

 

「わからねぇ……!!

図鑑にも載ってねぇ様だったからな」

 

 

「そうなのか。

いや、何の実かわかる方が珍しいのか?」

 

 

「まぁ良いじゃねぇか!!

食うも食わねぇも好きにすりゃいい…!

レオヴァが目を掛けてる………ジャック?…だったか?

そいつに食わせてぇなら…まぁ、それでもいいが」

 

 

「それは嫌だ。

父さんがおれの為に手に入れてくれたんだ、他のヤツにやるつもりはねぇ! おれが食う……!!」

 

 

「……良いのか? なんの能力かもわからねぇモンだぞ」

 

 

「構わない! どんな能力だろうと使い方と鍛え方次第だ。」

 

 

「ウォロロロロロ……!!

やっぱりお前はおれの息子だ!!

 よし、食え…!!!」

 

 

「あぁ…!!」

 

 

 

カイドウが宝箱から悪魔の実を取り出し投げ渡すとレオヴァはそれを受け取り、腰のナイフで一口分切り取りシャクシャクと食べた

……と思うと ウ"ッ!! と声を上げ盛大に顔をしかめる。

そして、なんとか飲み込んだのか近くにいた部下に水を頼んでいる。

 

 

「……レオヴァ坊っちゃん…わざわざ悪魔の実を切って食べんのか…」

 

 

 

「…………ここまでマズイとは……」

 

 

 

「で、どうだ レオヴァ!

力を使えるか試してみろ……!!」

 

 

 

「わかった。

……ん、こう……か?」

 

 

 

突然、室内がバチバチッ!という音と点滅する光で埋め尽くされた。

 

 

 

「レオヴァ坊っちゃん…!?」

 

 

「レオヴァ様ぁ~~」

 

 

「痛ぇ……! まぶしい!!」

 

 

「おぉ……!! 」

 

 

 

部下たちが突然のことに慌てそれぞれ驚きの声をだした。

 

しかし、徐々にその音と光が小さくなると

レオヴァが居た場所には“全身が金で創られたかの様な淡い光を放つ巨鳥“がいた。

 

その神々しい出で立ちに部下たちは見入っていたが、カイドウの笑い声にハッとしたように、カイドウの方に顔を向けた。

 

 

 

「動物系か…!!」

 

 

「そうみたいだな。

 父さんと同じなのは嬉しいな…!」

 

 

「ウォロロロ…!!

 なかなか悪くねぇな。」

 

 

「……ところで父さん」

 

 

「どうした…?」

 

 

「…戻り方が……わからないんだが…」

 

 

「……なんだと…?」

 

 

「えぇ~~!? じゃあレオヴァ様ずっとそのまま!?!」

 

 

「うるせぇぞテメェら……!!

レオヴァ坊っちゃん…感覚でわからねぇか…?」

 

 

「おれの時は戻れねぇことなんざ無かったがなァ……」

 

 

「……か、感覚…?

 ………わからねぇ……」

 

 

 

 

その後、合流したクイーンが目が飛び出るほど驚き

何事かと尋ね、カイドウから事の顛末を聞き

珍しくもキングと共に必死の指導を行ったことにより

レオヴァは無事人型へと戻ることができたのであった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「……クイーン…助かった……

 キングもすまない……世話をかける…」

 

 

「…問題ない……とにかく人型に戻れた様でなによりだ…」

 

 

「いやマジでビビったぜ……

…扉開けたら見たことねぇ様なキラッキラの鳥がいるんだからよォ

それにしても自力で獣化できたのに元には戻れねぇなんてなぁ

 ムハハハハハ~~ 」

 

 

「ぅ……すまない……本当に…返す言葉もない…」

 

 

「…おい、クイーンてめぇ……!

口のきき方がなってねェんだよ…!!

レオヴァ坊っちゃんはついさっき能力を初めて使ったんだ、すぐに使いこなせるワケねぇだろ…!!」

 

 

「あ"~~? んなこたぁ分かってんだよキング…!!

そもそもテメェは…」

 

 

「ったく、よさねぇか…!

まだレオヴァに伝えられてねぇこともあるってのに」

 

 

「すまねぇカイドウさん ………クイーンのマヌケが…」

 

 

「悪ぃカイドウさん…! ………キングのくそ野郎が……」

 

 

 

謝りつつも小声でお互いに罵倒する二人を気にすることもなく、カイドウは先ほどの騒動で肩を落とすレオヴァに向き直り…告げた。

 

 

 

「レオヴァ、お前の指揮力と知識を活かせる新しい仕事をやる……!」

 

 

「…! 新しい仕事!」

 

 

「あぁ。 “ワノ国の工場“を1つ任せる…!!

確かモノづくりにも興味があったよな?

 ウォロロロ…! 悪くねぇ仕事だろう…!!」

 

 

「!? ……わの…くに……?」

 

 

「あぁ、数年前にナワバリになった国だ。

…………この仕事は気に入らねぇか…?」

 

 

「いや…! モノづくりは好きだ!

ぜひ、おれに やらせて欲しい……!!」

 

 

「そうだろう…!!

レオヴァ、お前なら気に入る仕事だと思ったぜ…!

さっそく今からワノ国に向かうぞ。

  キング…!」

 

 

「あぁ、カイドウさん

既に船の準備はできてる 」

 

 

「よし!! レオヴァ、準備の時間は必要か?」

 

 

「いや、身1つで充分だ。」

 

 

「ならすぐに行くぞ

ワノ国には お前の好きな珍しい文化もある…!」

 

 

「! 楽しみだ……!!」

 

 

「本当に珍しいモン好きだよな…レオヴァは…」

 

 

「レオヴァ坊っちゃんが気に入りそうな海鮮系の料理もある。」

 

 

「海鮮か! 他には?」

 

 

「おい、キング  あまり話すな

レオヴァの驚く顔が見れねぇだろう!!」

 

 

「確かに…! すまねぇがレオヴァ坊っちゃん、これ以上は着くまで秘密にさせてもらう。」

 

 

「ん、そうか。 なら着くまで楽しみにさせてもらうことにしよう」

 

 

 

 

そんな会話をしながらカイドウと三人は船へと乗り込みワノ国へと出港したのである。

 

 

 

 

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……まさか父さんが既にワノ国と取引しているとは思わなかった…

 

この世界は原作とは違う歴史なのでは!?と思い始めて数十分。

 

あの後、自分の船室へ戻った俺は必死に記憶を思い起こしていた。

 

 

 

そして、やっと俺は思い出した

ジャックが8歳の時に取り引きが始まる訳ではないと。

 

……正しくは “おでん“ との戦いである。

 

 

そして確か原作では “おでん“は4~5年ほど裸踊りをする契約をオロチとかわしていたはずだ

 

 

……なぜ裸踊りをしたのかの記憶は曖昧だが、民の為だったか…?

………いや、それとも家族のためだったか…?

 

 

とにかく、原作と全く違う進みでは無いことは分かった

 

 

 

 

 

詳しい事柄を思い出せない事実に少し沈んだが、船はワノ国へと進むので俺は今後やるべき事を考え直すのであった。

 

 

 

 

 




前回に引き続き、ご感想等ありがとうございます…!
大事に読ませて頂いております。
今後とも趣味で書いてる話が一時でも皆さまの暇潰しになれれば嬉しいです。
今回もお読み頂き感謝です!!

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