バジル・ホーキンス及び、その部下達が百獣海賊団の傘下に下ってから2週間と5日の時が経っていた。
慣れぬ場所で過ごす時間とはあっという間である。
百獣海賊団での掟、珍しい仕事、慣れぬ立場、新しい同僚達。
全てが一新された環境、普通の海賊であれば疲れきっているだろう状況だが、ホーキンスもその部下達も周りが思うよりも早く百獣海賊団に適応していた。
理由はおそらく、根の生真面目さだろう。
どんな仕事であれ、迅速かつ的確にホーキンスは片付けて行った。
もちろん、部下達もホーキンスの足は引っ張るまいと素早く仕事を終わらせている。
一種の軍隊の様な動きでホーキンスの指示通り動く姿に、感心したように他の百獣の部下たちが感嘆の声を上げたのも1度ではない。
そして、そんなホーキンスはワノ国へ戻る道すがら、幾つかの手柄を立てていた。
現れた海軍の軍艦共の一隻を元部下を連れ10名ほどの少数で短時間撃破した事や、酔って何処かへ消えたカイドウの居場所を占いにて言い当てたりなど、その功績は多岐に渡る。
見事、ホーキンスは戦闘だけでなく日常的な問題においても、その真価を発揮して見せたのだ。
百獣海賊団ではレオヴァの意向もあり、戦力以外の能力も大幅な追加点となりうる。
結果、カイドウ直々にホーキンスは“真打ち”と言う幹部の地位を預けられた。
…とてつもないスピード出世である。
ここ、百獣海賊団は実力主義だ。
その為ホーキンスの戦場での活躍や、日常的な活躍を見ていた他の百獣の船員は驚くことはなかった。
寧ろ、やっぱりな!といった顔で頷いている。
きっと誰よりもこの昇進に驚いていたのはホーキンス自身だろう。
たったの2週間ほどで幹部になれるなど、想像してすらいなかった。
勿論、ホーキンスは上を目指すつもりではあったのだ。
理由は幾つかあるがその中でも大半を占めていた理由は2つ。
まず1つ目は幹部になれば
そして2つ目は自分が上に行けば元部下達の待遇も良くなり、少しは楽をさせてやれるだろうと言うことだ。
共に来ると言ってくれた部下達を早く自分専属にして、常に守れる範囲に入れてしまいたい。
あわよくば、尽くしてくれる部下の待遇も良くしてやりたい。
それがホーキンスの今一番の望みであった。
……が、その内の1つはあっさりと叶った。
あの任命の時。
周りの船員達から色々と声をかけられながら、ホーキンスはカイドウの下へ向かっていた。
『お!ホーキンスお前やっぱり昇格かよ!!』
『馬鹿野郎!ホーキンス“さま”って呼ばねぇとだろぉ?
ははは!けどカイドウ様から直接なんて贅沢なヤツだぜ~!』
『海軍の野郎共との戦い見てたから、おれはそろそろだなと思ってたけどな?』
『おいおい、そりゃワシだって思ってたわ!
ま!真打ちになっても頑張るんじゃぞホーキンス!…様!』
『……あぁ。』
そんな、わいわいと騒がしく見送ってくる男たちに一言のみ返し、船長室へ向かったホーキンスは洋式と和式の混ざった作りの大きな部屋の中心でどっしりと座椅子に構えるカイドウに告げられたのだ。
『おぉ、来たか…!
ローから話は聞いてるぜ。
海戦での戦績も、珍しい趣味の話もなァ。
ま、早ぇ話……お前に真打ちの称号をやろうって事だ。』
ホーキンスは珍しく酔っていないカイドウの言葉に深く礼を取り、言葉を紡いだ。
『ありがとうございます、総督……拝命いたします』
『おう、その調子でどんどん暴れてけ。
……そういや、お前部下がいたよなァ?』
突然部下の話を振られ、ホーキンスは思わず下げていた頭を上げた。
しかし、その動作を気にするでもなくカイドウはついでとばかりに告げた。
『真打ちになったんだ、専属の部下を付けてやる。
元々お前が連れてた奴らを専属にするかァ?
10人以上となると真打ちとしては、ちょっとばかし多い気もするが…まぁ、構わねぇ!
おれァ実力とやる気のある奴ァ嫌いじゃねぇ、好きに選べ。』
『っ……で、でしたら、総督の提案通りに。
おれと共に来た者達を部下にしたく存じます。』
『ウオロロロロ……よし、わかった。
他に欲しいモンはあるかァ?』
『いえ……既に身に余る褒美でございます、総督。』
『無欲な野郎だ。
……これで用件は済んだ、戻っていいぞ。』
『はい、失礼致します。』
朱色の
そして、その日の夕方には配属が変更になり、元部下達は正式に専属の部下となった。
仕事内容も少し変わりウェイターズやギフターズの指示なども追加されたが、船長をやっていた彼にとっては苦ではなく、逆に嫌がらせやホーキンスの命令を聞かないなどの事態を懸念していたが、それも杞憂に終わった。
そして現在、任命から5日たった今も特に問題もなく、以前からの部下達と共にワノ国への道を進んでいた。
「ホーキンス様~!
ワノ国には温泉という文化が栄えてるらしいですよ!」
「あ、おれはレオヴァ様とか言う人が珍しい家具などを沢山持ってるって話聞きました!」
「ワノ国には動物占いと言うものもあると私は聞きました。」
「…そうか、少し楽しみではあるな。」
「「「そうですね、ホーキンス様!」」」
少しばかり呑気すぎる部下達の言葉だが、ホーキンスを思って聞き込みをしたことは分かっている為、咎めずに軽く返事をする。
ほぼ自然体に戻ったホーキンスに嬉しげに部下達は微笑んだ。
ワノ国に居る幹部達や百獣のNo.2でありカイドウの息子のことで不安もあるが、きっと乗り越えていけるだろう。
そう思いながら、ホーキンス達は到着までの日々を過ごした。
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ワノ国では、レオヴァが王として国務中は近衛隊が
更に、百獣海賊団の総督補佐官として働いている間は側仕えとして真打ちや飛び六胞、近衛隊隊長がつくのが定例にもなっていた。
もちろん、どちらもレオヴァが決めた決まりではない。
ワノ国の決まりはヒョウ五郎が制定し、百獣海賊団の決まりはカイドウが始め、そのまま暗黙の了解となったのだ。
そして、その決まりによってホーキンスはここ数ヶ月間、百獣海賊団のNo.2と共に過ごす事となっていた。
だが、これは珍しい事である。
基本的には側仕えは日替わりであり、たまに少しの間同じ時もあるが、長くて2週間ほどだ。
それも遠征が少ないローやベポが主である。
ならば、なぜホーキンスが長く側仕えを任されているのか。
それは最近の百獣海賊団の内部事情にある。
以前から広げ続けていたナワバリの数が増えに増えた結果、治安維持や管理が大変になったのだ。
その為、レオヴァによって改革案や更なる島のテコ入れが発案された。
幹部クラスの者達は全員がその任務に就くこととなり、手が空いてるのが一部のナワバリ検定を持たぬ真打ちのみとなった。
そしてその真打ちの中で唯一、ホーキンスだけがレオヴァに丸め込まれる事なく休憩を取らせる事に成功した為、暫くの間側仕え専属としてキングに指名されたのだった。
だが、当初ホーキンスは気が気ではなかった。
なぜ百獣海賊団のNo.2の側仕え……謂わば護衛に自分が就かされるのか、下手を打っては部下共々首が飛ぶかもしれない……そんな緊張が胸を占めていた。
けれど今現在、数ヶ月も側仕えをこなしたホーキンスはそれが杞憂であったと思い知っていた。
レオヴァは穏やかで、どこまでも身内に甘い男だったのだ。
ホーキンスの部下が失態を演じた時も、占いの結果の為に
それどころかヘマを踏んだ部下の落ち込みようを気にかけて、茶を用意し慰め
更に占いに理解を見せて、ホーキンスに穏やかに話題をふったりもしていた。
その行動は彼らをおおいに驚かせたのだが、本人はそれが自然体である様であった。
よって、ホーキンスは大きな悩みを1つ、杞憂で終わらせる事に成功した訳である。
そして同時に、ホーキンスの中の大きな疑問も1つ解決したのだ。
その疑問、それは “何故、レオヴァが重宝されているのか” である。
カイドウとは違い、穏やかでおおらかな……言い換えれば海賊としては頼りなく見えるレオヴァが百獣海賊団において重宝される理由がホーキンスは理解出来なかった。
おおらかなことも穏やかなことも悪いことではないが、海賊を指揮する者としてはやはり頼りないだろう。
最初こそ、噂に聞いていたカイドウの息子だから地位を得ているという話が有力だろうと考えていたホーキンスだったが、すぐに違うと気付いた。
カイドウという男は徹底的に実力主義であったのだ。
息子だからと優遇するとは考えられなかった。
そんな中、ホーキンスが辿り着いた答えは…政策力と人望、である。
レオヴァの持つ知力と人柄からくる人気を気に入られ、重宝されているのだろう。
そう言う、答えに辿り着いたのだ。
事実、レオヴァの海賊とは思えぬような静かで穏やかな雰囲気はホーキンスにとっても嫌なものではなかった。
無関心ではないが深入りしすぎる訳でもない、そんな会話の距離は居心地が良く
仕事中や趣味の時間、レオヴァとの間に流れる沈黙も悪くなかった。
羽ペンが紙の上を滑る音も、器具が掠めた音も
何故かひどく穏やかで、心地よく感じたのだ。
レオヴァの側にいる間は、まるで時間がゆっくりと流れているようだ……そうホーキンスは感じた。
同時に、この雰囲気だからこそ好かれるのだろうとも思っていた。
海賊になった人間には感じることが難しい、暖かく穏やかな空気をレオヴァは発しているのだ。
例え、鬼のように強くなくとも
この人ならば重宝されるのも頷ける。
……そう思っていたのだ。
「……そ、う……思っていたんだが…な…ハァ…ッ」
「無駄口を…叩いてる暇はないぞッ…ホーキンス!」
痛む横腹を抱えながら呟いていたホーキンスの頭上に迫るトマホークを、ドレークが尻尾で払い除ける。
肩で息をするスレイマンの黄金に巻き取られる形でホーキンスは後方にさがり、それをドレークが恐竜の巨体を生かし庇いながら援護する。
「何をしてる…!
あれだけ…ハァ…油断するなと言っただろう。」
「わる、かった…フゥ…レオヴァさんに気を取られた…ゴホッゴホッ…」
「戦闘中のレオヴァ様に……っ、見惚れる気持ちはわかるが、死にたくなければ気を付けろ!」
「……ッガハ…いや…見惚れ、てはいないのだが」
血を吐きながら否定するホーキンスの言葉を遮るように、カイドウに吹っ飛ばされたドレークが真横の崖に激突する。
「グッ……ぅう…お前達……何を呑気に話してるんだ……」
ガラガラと崩れる崖の中から出てきたドレークに二人は申し訳なさそうに謝る。
「悪かった、ドレーク!
レオヴァ様の話をされたから、つい答えてしまっていた…」
「…すまない。
今の場面は…後退したおれ達が援護するべきだった。」
「……まったく…呑気がすぎるぞ、カイドウさんもいるんだ…このままでは3人仲良くベッド生活になると思え…」
ドレークの言葉に2人は真剣な表情で頷く。
だが、そんなヘトヘトになっている3人の下に無数の風の刃が考えられぬ速さで迫ってくる。
ドレークはいち早く気付くと獣人化して素早く避け、スレイマンは自分とホーキンスの前に何重にも黄金の障壁を作り出しなんとか耐えきった。
風の刃に気を取られていた3人の前には、一息つく暇もなく獣化しているレオヴァが帯電した状態で飛行している。
バチバチと音を鳴らしながらレオヴァが尾を振ると同時に、3人の体に激痛が走る。
声もなく悶える3人を頭上から見下ろし、レオヴァは追い討ちをかけるべく槍を作り始めた。
「なんだァ、立てねぇのか?
こりゃ終わっちまいそうだなァ…」
レオヴァの背後で酒を呷りながら、つまらなそうにカイドウがつぶやいた。
その声を背に、造り出した3本の槍をレオヴァが尾で
「ッ…!!」
「…しまった、」
避けられぬと身構えたホーキンスとドレークだったが間一髪の所で地面に沈み、事なきを得た。
見上げると50センチほど上には槍先が突き出ている。
「すまん、スレイマン助かった。」
「あぁ……危なかった…礼を言う。」
「構わん、それより次の作戦だ。
暫くはこのまま地面の下を黄金に変えつつ、移動し策を練るとして……」
既のところで地中に黄金の空間を築き2人を助けたスレイマンは、冷静に次の出方を問う。
「……どちらにせよ、ここは地中。
長く空気は保たない…まぁ、カイドウさんとレオヴァさんが悠長に空気が絶えるまで待ってくれるとも思わんが…」
「ドレークの言う通りだ……やはりここは守りに徹するしかあるまい?
…おい、貴様もカードを見ていないで何か案を…!」
話し合いを繰り広げている中、カードを手に何かしているホーキンスをスレイマンが睨み付ける。
「防衛成功確率9%、進軍成功確率11%……奇襲奪還成功確率…35%
…おれは奇襲することを推そう。」
「………カードで決めるつもりか?
貴様、現状をわかっているのか!?遊んでる場合ではないんだ!
言っておくが、今回はカイドウ様もいる……下手な作戦をすれば機嫌を損ねて延長戦になり……大変な事になるぞ…」
「…スレイマンの言っていることは尤もだ。
ホーキンス、お前はまだ知らないかもしれないがレオヴァさんに奇襲は通じない……先の動きは全て見られてしまっているものとして動かなければ…」
2人の言葉をホーキンスが手を前にかざし止める。
「…おれも分かっている、レオヴァさんとカイドウさん相手に小細工が利かない事など……
だが、未来が見えるなら……見える未来を利用しよう。」
「……どういう意味だ?」
「レオヴァさんの力を逆手に取ると?
……そんなことが出来るのか…」
眉を顰める2人にホーキンスは案を告げた。
一方、地上ではレオヴァとカイドウが楽しげに地面を見ていた。
「ウォロロロロ…あの一瞬で地面に避難するとはなァ!
スレイマンの奴、なかなか機転が利くじゃねぇか!!」
「ふふふふ、おれもまさか地中に潜るとは思わなかった!
ドレークの2人を後退させる時の手際も、スレイマンのこの機転も評価点だなァ……」
「破壊力不足は否めねぇが、スレイマンの技はなかなか面白ぇ
ドレークもありゃもう少し死線をくぐりゃ化けるんじゃねぇか?」
人の形に戻り談笑しているが、カイドウもレオヴァもしっかりと足下に近づいている気配は察知していた。
「………父さん、後方4メートル後ろだ!」
「よォし、交代だレオヴァ!旗を守っとけェ…!俺が行く!!」
レオヴァの声と同時に地面がどんどん黄金へと変わり、何本もの黄金の柱が生成されていく。
スレイマン“達”に棍棒を振り下ろすカイドウを後目に、レオヴァは未来を見て……驚いた。
居るはずのない“4人目”の影にレオヴァは腰に下げている刀を抜いて、斬りかかる。
刀の交じり合う音が響くのとカイドウがレオヴァへ声をかけるのは同時だった。
「レオヴァ、そっちにいやがるぞ…!!」
カイドウの言葉が終ると同時にレオヴァは二撃目を見舞う。
しかし、それは人影を斬り倒すには至らない。
レオヴァの斬撃を二双の刃で受け止めたのは、黄金の柱の影に潜んでいた獣人化したドレークであった。
「ゥぐ……やはりレオヴァさんには読まれていたか!だがッ…!」
「
ドレークと斬られた黄金に隠れて見えていなかったホーキンスが“旗”に向けて進撃する。
このままでは確実に“旗”を抜かれる…!
それに気付いたレオヴァはホーキンスに向き直そうとしたが、ドレークの邪魔が入り数秒切り替えが遅れた。
しかし、数秒の遅れはあってもレオヴァはすぐにドレークを吹き飛ばし、自分の射程範囲にホーキンスを捉えた。
すっと刀を構え鋭い斬撃を数発繰り出すと……驚いた顔をし、小さく笑った。
レオヴァの放った無数の斬撃はホーキンスに命中し、大きな音と砂埃を巻き上げさせた。
それを見ていたカイドウが攻撃の手を止める。
スレイマンは悔しげに眉を顰め、ドレークもその場に力尽きた様に膝をつく。
「ゼェッ……ゼェ…やはり、レオヴァ様は躱せぬか…」
「ハァ…ッ……惜しかった、が…な。」
「ふははは!!やるなァ…ホーキンス!
まさか、取られるとは思ってなかった…!」
スレイマン、ドレーク、レオヴァが声を発したのは同時であった。
レオヴァの言葉に驚いた様に2人がホーキンスを見る。
砂埃が晴れたそこにはレオヴァから受けた斬撃でバックりと開いた肩から溢れる血を、手で押さえ眉を顰めるホーキンスと、旗を掴んだ
2人は旗を取れていた事実に大きく目を見開き、そして嬉しげに笑う。
「あの状態で防御を捨てて旗を取っていたのか…!?
まさか、本当にカイドウさんとレオヴァさんから旗を取れるなんてッ……」
「やるではないか、ホーキンス!
あの状態から旗を取るとは見上げた根性だ!!」
「…ッ…フゥ……運が、味方…した、ようだ……」
はしゃぐ2人に疲れきった顔をしたホーキンスが小さく途切れ途切れに答えた。
ゆらゆらと歩きながら旗をレオヴァに差し出すと、限界だったのかふらっと倒れ込んだ。
そのまま気を失ったホーキンスを危なげなく抱き止め、レオヴァは笑う。
「“見ていた”ことが裏目に出て気付くのが遅れるとはなァ…!
……ホーキンスがあれほど大胆に仕掛けてくるのも想定外だった。」
「ウォロロロロ……スレイマンが黄金で人影を作ってたのもレオヴァみてぇな奇策だった。
やるじゃねぇか、てめぇら!
旗も取れたんだ、褒美は何がいいか考えとけ…!」
「父さんの言う通りだな。
ドレークの反応速度もタフさも想定以上だった……任務を3人組でやらせるのも良さそうか…
……よし、今日はお開きとしよう。2人はこのままおれと医務室へ行くぞ。
父さんは風呂場を使える様に手配してあるから使ってくれ、あとで部屋に酒を持って行くよ。」
「「はい…!」」
「そりゃあいい!
さっさと手当てさせて戻って来い。」
カイドウが龍になり空に消えて行くのを見送ると、気を失っているホーキンスを抱き上げたままレオヴァが歩き出す。
ドレークもスレイマンに肩を貸し、足を引きずりながら付いて行った。
始めた頃は真上にあったはずの太陽はすっかり傾いていた。
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ゆっくりと目蓋をあけると、そこは医務室の天井だった。
ホーキンスは疲労から石の様に重い体を起こし、ベッドの脇にある水へ手を伸ばす。
「目が覚めたのか、ホーキンス。」
「……ドレークか、ここで何をしている。」
水を飲み終え、コップを脇へ置きながらホーキンスは入り口から声をかけてきたドレークへ目線をやる。
ドレークはベッドに歩みよると、側の椅子に腰かけた。
「目が覚めているか様子を見に来た。
それと、カイドウさんからの伝言もある。」
「カイドウさんからの……内容は。」
「いい組手だった。褒美を考えとけ…だ、そうだ。
……問題はないか?」
「なるほど……褒美を、か。
体に異常はない、おれの担当はトラファルガーだったからな。」
「…もう痛まないか、と言う意味だったんだが……
まぁ、トラファルガーが手当てしたなら愚問だったか。」
小さく笑うドレークを横目に、ホーキンスはレオヴァに斬られた肩に触れる。
数時間前まで大きく裂けていたはずだったのだが、今やすっかり綺麗に塞がっている。
本当に百獣海賊団は医療技術が高い。
病気だけでなく怪我も綺麗に治せると知った時に、とても驚いたのが懐かしく感じるな
……と、思い耽っていたホーキンスにドレークが何かの袋を手渡した。
「……なんだ、これは?」
「レオヴァさんからだ。
もしかしたらホーキンスが気に入るかもしれないから、と。」
ドレークの目線に促されるまま、袋をあける。
中にはよく分からない物が幾つかとカードが入っていた。
“ 温泉ボム、船キャンドルセット
これで少しでも組手の疲れを癒して欲しい。
最後の奇策と根性には本当に驚いた、次も楽しみにしている ”
と、カードには書いてある。
「……出来れば、もう次は勘弁願いたいものだ…」
げっそりとした表情で呟いたホーキンスの言葉にドレークは苦笑いのみで返す。
少しの沈黙の後、ホーキンスは袋の中から丸いものを取り出し、首をかしげた。
「それにしても…温泉ボムに船キャンドル?
聞いたことがないが……何に使うんだ…」
思わず溢れたホーキンスの言葉に、ドレークは楽しげに笑う。
「フッ…やはり初見はそう言う反応になるか!」
「……お前は知っているのか?」
「あぁ、それはレオヴァさんが作った物なんだが。
温泉ボムは浴槽にいれると、湯がそのボム特有の色や匂いになるんだ。
しかも、血流をよくする効果もあって疲労回復に良い。
船キャンドルは浴槽で使う蝋燭で
浮かぶ作りになっていて、香り付きの物から無臭の物まであってリラックス効果が期待できる。」
意気揚々と説明を始めたドレークの言葉を聞きながら、ホーキンスは手に取っていた温泉ボムをまじまじと見つめる。
丸いそれは、深い緑と鮮やかな青い色をしていた。
「随分と、詳しいんだなドレーク。」
「おれも貰った事があってな。
その時のレオヴァさんからの受け売りだ。
……風呂が楽しくなるのは保証しよう、おれ自身の体験だ。」
「そうか、今晩にでも使わせてもらうとしよう。」
「あぁ、レオヴァさんも喜ぶ!
そうだ…気に入ったら言ってくれ、風呂関係の物を売ってる店を知ってるんだ。」
「…分かった。」
「っと、すまない……長居してしまった。
用は済んだし、おれは戻るとしよう。
……組手での作戦も最後の動きも良かった。
旗を取れたのはホーキンスのおかげだ、ありがとう……では。」
言うだけ言うと足早に去って行ったドレークの背をきょとんとホーキンスは見つめていたが、ボソリと呟く。
「……旗を取れたのは、おれのおかげ…だけではないだろう。」
味わった事がないような感覚にホーキンスはむず痒さを感じながら、ベッドから立ち上がった。
まだ怠さを感じるが、痛みはない。
ドレークから手渡された袋を持つと、部屋に戻る事を告げにトラファルガーの下へと歩き出したのだった。
ー後書きー
私の中でホーキンスは自分の部下は大切にしてるイメージなので、それを元に書いてます!
原作(漫画)では“自分の部下”をライフにしてるっぽい描写ないですし(百獣の部下やワノ国の人間はしてた気がしますが…)
アニメや映画版だと部下もライフにする非情な人になってる時もあり…少し悲しい
私はホーキンスは身内は大切にしてるに一票!!
いつもご感想やコメント、誤字報告にここすき一覧ありがとうございます!!
ー補足ー
レオヴァ今回の組手で刀を使用。
カイドウさんも普段とは違う棍棒を使用
ホーキンスの呼び方の変化
カイドウ:総督→カイドウさん
レオヴァ:総督補佐殿→レオヴァさん