俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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龍の子は鯉と偽る

百獣海賊団が海賊島ハチノスを獲ったと言う話は瞬く間に広がっていた。

 

ある者は

「チッ…また百獣かよ!!

どんどん侵略して来やがってよぉ…やりにくいったらありゃしねぇ!」

と酒場で愚痴を溢し

 

ある者は

「おいおい!!こりゃ海賊島に行きゃあ百獣に入れちまうんじゃねぇか…?

傘下でもかまわねぇ!乗れる波にゃ乗らねぇとなぁ!?」

と意気揚々と海賊島ハチノスを目指し

 

またある者は

「ふざけるな…!海軍の奴らは何をしてる!?

これではまた海賊共が勢い付いてしまうではないか!!」

と豪邸で部下相手に声を荒げている。

 

 

だが、広まった噂はこれだけではなかった。

海賊達の溜まり場となっているハチノスを百獣が獲ったことの他に、謎多い人物についても話が上がっていた。

 

その人物こそ、百獣海賊団総督補佐官レオヴァである。

 

 

百獣海賊団大幹部という並々ならぬ“地位”や、最強生物と名高いあの男の“血筋”であるという強大な肩書きとは違い、当の本人は大きな事件や話題などまったく無いに等しい平凡な人物である。

ではそんな彼が何故、様々な人々の興味を集めたのか。

 

もとより、あのカイドウの息子という事も相まって、親の七光りやら病弱だなどと言う噂で少しの間話題には上がってはいたのだ。

だが、特に話題性の欠片もない“レオヴァ”という人物に人々はすぐに飽きてしまい、触れる者も減っていた。

 

しかし、今回のハチノス攻略において指揮を取った人物こそカイドウの息子レオヴァであると、そのハチノスから命からがら生き延びたという男達が言うのだ。

 

その話に人々は多様な反応を見せた。

 

やはりカイドウの息子は油断出来ぬと危険視する者。

どうせただの噂だろうと取り合わぬ者。

指揮を取っていただけだろうと気に止めぬ者。

前々からの疑念を確信に変える者。

やはりレオヴァが関わっていたかと笑う者。

 

まさに三者三様の反応であった。

 

 

少しずつ確実に動いている世界の流れは、“あの大事件”の始まりへと進んで行くのだが……それはまだ誰も知らない未来の話。

 

 

 

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とある海賊団の新世界に浮かぶ国にて。

 

 

「お兄ちゃん…!!

カタクリお兄ちゃ~ん!ちょっと見てよ!!

レオヴァの懸賞き…んっ!?」

 

ドタドタとカタクリへ向けて一直線に走っていたブリュレが盛大に(つまず)く。

 

しかし、見越していたのかカタクリは漫画のように綺麗に転んだ妹を餅で受け止めると、小さくため息をついた。

 

 

「ブリュレ、廊下は走るなとあれほど…」

 

「う…ご、ごめんなさいカタクリお兄ちゃん……

って、違うのよ!!レオヴァの懸賞金額がね!」

 

「レオヴァ?

…レオヴァの懸賞金額が低いのは前からだろう。」

 

「逆よ、逆!!カタクリお兄ちゃんこれ見て!!」

 

押し付ける様に手渡された手配書を見て、カタクリは目を見開いた。

 

まず、今まで全く似ていない似顔絵だった手配書が写真になっている事に驚いた。

手配書には前方にあの白くまと思わしき後頭部が見切れており、それにレオヴァが微笑んでいる写真が印刷されている。

 

あれだけ情報を隠したがっていたレオヴァがうっかり撮られるはずもない……そう思いながら目線を少し下げ、またカタクリは驚いた。

 

出会ってからずっと上がる事のなかった懸賞金額が上がっているではないか。

 

“5億6千万ベリー”

 

億単位で上がっている、この上がり方はカタクリでなくとも驚く額である。

 

今さら動いたのかと政府に呆れつつも、カタクリはマフラーの下の口角を上げた。

 

 

「フッ…5億程度じゃレオヴァには少なすぎる額だ。」

 

「お兄ちゃんなに笑ってるのよ~!

レオヴァの奴、こんな無防備な表情を写真で撮られちゃってるし……ベポが居たみたいだし気が抜けてたのかしら…」

 

レオヴァが隠蔽(いんぺい)に失敗したのではと心配するブリュレにカタクリは普段より少し明るい声で話す。

 

 

「ブリュレ、レオヴァが本当に隠蔽を失敗すると思うのか?

あのママの注文に全て完璧に応え、ペロス兄にも気に入られる男が……たかが政府に出し抜かれると?

ありえんな…レオヴァはうっかり撮られるなんて言うミスをする男じゃねぇ。

……整ったということなんだろう。」

 

「…整った?」

 

わからないとキョトンとしているブリュレの方を見て、カタクリは楽しげな声色で続ける。

 

 

準備が整った(・・・・・・)と言う事だ。

自分の実力や動きを知られても、もう問題ない段階に来たと示してんだろう。

こうやって遠回しに伝えてくるとは……フッ、相変わらずだなレオヴァの奴は。」

 

「そ、そう言うことなの!?

なによレオヴァのやつ!……心配して損したわ…

 

「…?

レオヴァの心配をしてたのか。」

 

「え!……し、してない!言葉のあやみたいなのでっ…」

 

「あいつに心配は不要だろうな。

何も気に揉む必要はねぇ…貿易の事もあるんだ、すぐにまた会える。」

 

「……そ、そうよね!

って、ごめんねお兄ちゃん!遠征前に引き留めちゃって…行ってらっしゃい!」

 

「気にするな、ブリュレ……行ってくる。」

 

少しズレた答えでブリュレを慰めたカタクリは手配書を懐に仕舞うと、遠征の為に船へと歩き出す。

 

 

「(レオヴァ……おれも胡座(あぐら)をかいてはいられんな。)」

 

心なしか楽しげに見えるカタクリの背を見送り、ブリュレは嬉しげに笑った。

 

「お兄ちゃんったら、嬉しそうなの隠せてないわね。」

 

優しげな兄を想う瞳は、晴れ渡る空よりも澄んでいた。

 

 

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とある政府の執務室にて。

 

 

「全て後手へ後手へと回りすぎた…!!」

 

頭を抱えるセンゴクを側に座るガープが笑う。

 

 

「ぶわっはっはっは!!

あの小僧、やはり実力者じゃったようじゃな!

いや~!やっぱりワシは見る目あるのぅ~。」

 

ボリボリと呑気に煎餅を頬張るガープを鋭い目線が貫く。

 

「呑気にバクバクと……この阿保は…!

懸賞金額を上げるための証言や証拠集めに、私やロシナンテがどれ程苦労したか!」

 

「大変じゃったらしいな~?」

 

「貴様も少しは手伝おうとは思わんのか!!!」

 

怒り始めたセンゴクを見てもケラケラとガープは呑気に笑うだけである。

 

その姿を見て、言うだけ無駄だと大きなため息をついたセンゴクはまた頭を抱える。

 

今回、レオヴァの懸賞金額の増額において新事実の発覚やら、上からの小言やらでセンゴクは疲れきっていたのだ。

 

 

特に新たに発覚した事実は見過ごせぬものであった。

それは、インペルダウン監獄署長…マゼランからの証言だった。

 

内容はあの忌々しいインペルダウン襲撃事件(・・・・・・・・・・・)の話だ。

当時、副署長であったマゼランの話によると飛び六胞と呼ばれる男達は確かに脅威であったが、その男達に的確にマゼランの攻略を教えたであろう人物がいたのではないかと言う。

 

100%確実とは言えないが、レオヴァと呼ばれた男が怪しい……そうマゼランは口にした。

 

 

『スレイマンと呼ばれる飛び六胞の男が、しきりに“レオヴァさん”と言う男を気にする発言をしておりまして…

他にも飛び六胞のササキと言う男も、まるでおれの能力を把握しているかの様な発言も……更にそれはその“レオヴァさん”と呼ばれている男が指示を出したと思われる発言も見受けられました。

……言い訳になるようですが…その攻略にまんまと……申し訳ありません、センゴク元帥…』

 

責任感の強い真面目な男であるマゼランは、本当に申し訳なさそうにセンゴクに告げたのだ。

 

 

そして、更には当時署長だった男を倒したのもレオヴァではないかと言う疑惑が持ち上がった。

 

監視室にいたバラバラの状態で何故か生きている瀕死の看守を治療したところ、なんとか一命を取り留めた。

しかし、彼は酷い目にあった反動で心を壊してしまっており、ブツブツと独り言を発する様になってしまっていた。

だが、センゴクは彼の独り言に目を付けたのだ。

 

『しょ、署長は……角の…角のある男っ……黒い髪の!

ヒト、ひ、ひとじゃなくなるぅあにあ化け物鳥がぁ!!

ああぁあ!!おれ、おれは食べられたくないぃ殺してくれ殺してくれェ!!!

アンタもみんな殺される!署長がクロくて!ハッハッハッハ!!あ~れうばさまぁ~~!!!』

 

狂人になってしまったのだろうと皆が哀れむ中、センゴクは角のある黒髪の男という言葉、そして化け物鳥という言葉に注目した。

 

あの時のメンバーで黒い髪の男は確認出来ている限りトラファルガー・ローのみであった。

そして、おそらく看守をバラバラにし、食料庫を破壊したのも彼であると予想されていた。

 

しかし、トラファルガー・ローには角などない。

黒い髪に角、そして鳥。

この3点がそろう人物こそ、レオヴァではないか。

そうセンゴクは深読みしたのだ。

 

レオヴァは黒髪であり、カイドウと同じく角がある。

そしてガープの証言にあった、レオヴァは空を飛べる“翼”のある能力者であると言う情報がセンゴクの中で決め手となった。

 

無論、狂人になってしまった看守の言葉だけでは証拠足り得ない。

当時署長だった彼に話を聞ければ一番手っ取り早いのだが、彼はあの事件以降行方不明(・・・・)なのだ。

 

よってセンゴクはインペルダウンへと(おもむ)き、マゼランや他の看守達に話を聞いて回った訳である。

 

そして、LEVEL-6にいる囚人達にとある条件を出し、情報を吐かせたところ。

なんと本当にあの場所にレオヴァが居たと言うではないか。

 

それだけでなく、囚人達の証言ではあのドフラミンゴの攻撃も涼しい顔で捌いていたと言う。

 

 

センゴクは何故、その話が此方に回ってこないのかと苛立ちを覚えた。

 

しかし、看守達に事情を聞いた所によると、報告は上げていたという。

ただ、上がった情報を上層部が揉み消したらしいのだ。

 

ただでさえ、体面がよくない事件を隠すのに手間が掛かるというのに、更に煽る様な……監獄署長が七光りと噂の息子に封じられたなど認めては大変だ、という事に違いなかった。

 

結果、上層部はレオヴァがいた事実は証拠不十分であるとして、囚人の戯言と片付けた。

 

センゴクは強く拳を握りしめることしか出来ない。

一部の馬鹿な上層部のせいで、回り回って自分たち海軍が被害を(こうむ)るのだ。

海軍の立場からすれば冗談ではないと、怒りが込み上げるのも無理もない話だった。

 

そこからセンゴクは至急ロシナンテに協力を仰ぎ、あらゆる場所や人から情報を集めたのだ。

なんとしても百獣の息子が脅威であると示すために。

 

そして、やっとのことで苦労は実り、今回レオヴァの懸賞金を上げる事と本人の写真を手に入れる事に成功したのだった。 

 

 

センゴクは本来であれば12億は付けたいと掛け合っていたのだが、突然懸賞金額が5倍以上になるなど不自然だと突っぱねられてしまったのだ。

 

結局センゴクは5億という、想定よりも少額だったとしても懸賞金を上げられた事で妥協し、今後少しずつ上げて行けばいいと前向きに考えることにした。

 

けれど、それでセンゴクの懸念が消えた訳ではない。

世間が少しでもあの男の危険性を意識し始めたのは良いことだが、根本的な解決にはならないのだ。

 

一刻も早く、百獣海賊団の進撃を押さえなければ…!

そう焦る気持ちを落ち着かせるように、センゴクは机の上の茶飲みを手に取った。

 

 

「以前より龍であるカイドウから鯉のごとき凡庸(ぼんよう)な子が生まれたと比喩する馬鹿達が多数いたが……まったく、鯉だったらどれ程良かったか…

奴はまさしく龍の子だ……きっと、嵐を呼ぶだろう……」

 

苦々しい顔で呟かれた言葉は、居眠りを始めたガープのイビキにかき消された。

 

 

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とある海底の美しい島にて。

 

 

ジンベエの持ってきた手配書を前に数人の人魚が集まっていた。

 

 

「これはレオヴァの手配書!?

ジンベエ、1枚私にくれないか!?」

 

「おぉ…レオヴァか!!

って懸賞金額が上がってるんじゃもん!?

…お人好しなレオヴァが変な事件に巻き込まれてなければいいが…」

 

「うふふふ、そう言えば彼は海賊でしたね!

あらあら、本当にカッコよく写ってるわ。

しらほしにあげたいから、私も1枚…」

 

「お、オトヒメ王妃もフカボシ王子も待っとくれ! 

この手配書は手持ちは1枚だけで…」

 

嬉しげに手配書を眺めるフカボシとオトヒメ王妃にあわあわとジンベエが慌て、困り顔をした。

そんな直ぐ側ではネプチューン王はそれを微笑ましげに眺めながら、フカボシを止めるべく口を開いた。

 

 

「まぁ、フカボシ。それはジンベエに返すんじゃもん。

またレオヴァが来たときにでも一緒に写真は取ればいい。

そうじゃもん!レオヴァとワシ達で記念撮影をしよう!」

 

「はい……ジンベエ、無理を言ってすまなかった。

父上、その案は良いですね!!

弟妹たちも喜びます!」

 

「あら!記念撮影なんて楽しみね!」

 

「わっはっは!ネプチューン王、それじゃあワシがカメラ役を!」 

 

「何を言ってるんだジンベエ、一緒に写ろう!

レオヴァもきっとそう言ってくれる。」

 

「わ、ワシも?

……いやぁ、ワシのような荒くれもんが王家の人らと一緒ちゅうのは」

 

渋るジンベエの言葉をネプチューン王もオトヒメ王妃も笑顔で否定する。

 

「なにを言うかジンベエ!

王族なんて立場関係なく、ワシらは身を粉にして国の為に共に歩む同士じゃもん!」

 

「そうですよ、ジンベエ親分さん。

それにみんなで撮った方がきっと楽しいわ!

そうよねアナタ?」

 

「オトヒメの言う通りじゃもん!」

 

「ネプチューン王…オトヒメ王妃……ありがたい…」

 

嬉しさと気恥ずかしさの混じった笑顔で礼を述べたジンベエに三人は優しい表情で応えた。

 

平和な時間がゆっくりと流れる海の中の城には、レオヴァがフカボシの為に作った人工メンダコがふよふよと泳いでいる。

 

 

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ワノ国、鬼ヶ島にて。

 

「ムハハハハハ~!

よく写ってんじゃねぇかレオヴァのやつゥ!」

 

上機嫌に新しい手配書を見て笑うクイーンの周りでウンウンと部下達が頷く。

 

「手配書でもレオヴァ様のオーラを感じるぜ!

……ってベポのやつちゃっかり後頭部が写り込んでやがる…」

 

「やっぱ格好いいよなァ!

佇まいがそこらの奴らとは比べものにならねぇもんよ!」

 

「これいつの写真だろうな?最近っぽいけど。」

 

「やっぱりレオヴァ様の笑顔素敵~!」

 

それぞれ楽しげに反応する部下を見て、何故かクイーンが満足げに頷く。

 

 

「いや~!やっぱり日々イケてる男No.1として、レオヴァを指導してきたこのクイーン様のおかげだな!!

ガキの頃から指導してきたおれ様の手にかかれば……まぁこんなもんよォ!」

 

渾身のどや顔を決めるクイーンに部下達は一気に盛り上がる。

 

「「「「うおぉお!!さすがQUEEN様だぜ~!!!」」」」

 

 

 

 

一方QUEENコールが巻き起こっている頃、百獣海賊団の別ナワバリにて。

 

 

その場にいる男や女から巻き起こる阿鼻叫喚に包まれながらも表情一つ崩さぬ全身黒尽くめの大男は、先ほど部下から手渡された手配書を見て、呆れた様にため息を吐いていた。

 

「……レオヴァ坊っちゃんに対して、たかだか5億程度だと?

フンッ、政府の馬鹿共は話にならねぇな。

まぁ…それだけレオヴァ坊っちゃんの隠蔽力が高い証明にもなるわけだが……」

 

小さく呟いた独り言だった筈の言葉に、後ろから返事が帰ってくる。

 

 

「キングの兄御、政府の奴らが無能なのは今に始まったことじゃないぜ。

そんな奴らにレオヴァさんの凄さが理解できるはずねぇよ。」

 

マンモスの姿で破壊を終え、ドスンドスンと音を立てながら近付いて来たジャックを見上げてキングはそれもそうかと鼻で笑う。

 

 

「ジャックにしては的を得た事を言うじゃねぇか。

…政府の馬鹿共にレオヴァ坊っちゃんのことが理解できる筈もなかったな。

所詮、無能共の集まりだ。」

 

足元に転がる死にかけの男の頭蓋を踏み潰しながら言うキングにジャックは大きく頷いて同意を示すと、人の姿に戻ると同時にキングに紙を手渡した。

 

 

「兄御、一応例の書類に署名をさせておいた。

海岸へ逃げた奴らも始末済みだ。」

 

「……クイーンの馬鹿と違って気が利くじゃねぇかジャック。」

 

書類を確認すると普段よりも上機嫌にキングはジャックを見やった。

それにジャックは軽く頭を下げて応えると、キングは船へと踵を返す。

 

歩きながらも、後ろを続く弟分の熱い視線が手元に向いている事に気づいたキングは薄く笑い、ジャックに手配書を押し付けた。

 

 

「…っ…あ、兄御…?

これ、貰っちまって良いのか?」

 

「物欲しそうにジロジロ見てきたのはお前だろう。」

 

「っ……そんなに顔に出してたつもりはねぇんだが…」

 

「ハァ…ずっこけジャックが……テメェは分かりやす過ぎる。

クイーンの馬鹿じゃなく、もっとレオヴァ坊っちゃんのポーカーフェイスを見習え。」

 

「うっ…すまねぇ兄御……ありがとう。」

 

レオヴァの手配書を大きな手で破かぬ様大切そうに持つ弟分に、やれやれと半ば呆れながらキングは進むスピードを速めたのだった。

 

 

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鬼ヶ島城内のレオヴァの寝室にて。

 

 

 

父さんとの組手を終えた俺はローから恒例の小言を聞かされながらも治療を受け、血と汗まみれになった体を風呂で流し、ボロボロになった服を着替えて自室へと戻っていた。

 

ローと百獣海賊団の医療技術をもってしても、俺の体は未だに軋んでいる…流石は父さんだ。

集大成の医術を使おうとも、簡単には治せぬ深い傷を相手に付けられるのだから……と父さんの素晴らしさに頬が緩んでいたが、やらなければならぬ事を思い出し、切り替える。

 

 

昨日、俺の手配書が更新された。

それも賞金額が倍額以上になり、今までは似顔絵だったものが写真になると言う大更新だ。

……突然のことに驚いた……と言うのは表向きだけだ。

 

政府の人間、いや正しくは海軍の人間がこそこそ動き回っていた事は知っていた。 

少し交流のあったコラソン……今はロシナンテか。

彼が中心になって情報を至る所からかき集めている、と言う話はすぐに俺の元に届いた。

 

何より俺もそろそろ頃合いだろう、と考えていたのもある。

だから写真を撮った男も見逃したし、情報も流れる様にした。

……まぁ、まさかベポとの会話中の写真を使われるとは夢にも思っていなかったが…

 

 

…インペルダウンのLEVEL-6で任務を(まっと)うしてくれている可愛い部下達も近いうちに迎えに行くとしよう。

百獣の為なら死も(いと)わない……そんな忠義高い部下を見捨てるつもりは微塵もない。

それに近い未来……あそこでやらなければならぬ事もある。

 

 

だが10年以上情報を遮断し隠蔽し続ける事は大変だった。

キングやジャック、他の皆にもその為に本当に沢山苦労をかけてしまった……無論、かけた苦労は今後の百獣の発展と拡大でしっかり返すつもりだが。

 

それにしても、今後は俺について必要以上に隠さなければならない手間が省けるのは大きい。

費やしていた時間も人員も他に捌けるのだ、開発やナワバリ拡大を更に早く進められるだろう。

 

やっと、百獣海賊団の内部制度もほぼ完璧に整えられ、重要ナワバリの維持の為の制度と強化も終えた。

 

契約をしている国々や島々との関係も、外からは崩せぬ様に何重にも伏線を張り、必要であれば百獣に依存するようにも仕向けた。

 

今さら世界政府や他の海賊団に話がいっても、どうしようもない現状にまで完成させたのだ。

 

 

あとはこのまま焦らず、慢心せずに確実に一歩ずつワンピースを手に入れるべく行動をし続けゆくゆくは“俺の夢”を。

……父さんを海賊王にする(・・・・・・・・・・)夢を叶えられる筈だ。

 

世界の頂点に父さんが君臨し、俺と皆でそれを支えることが出来れば……きっとどれ程楽しい日々になるだろう。

 

父さんの好きな暴力の世界も、百獣の皆が笑って過ごせる世界も両立できる。

なにせ、戦争ってのはコントロールができるのだから。

 

父さんが頂点に立とうとしている理由はきっと、その座を狙いに来る猛者と戦いたい……と言うような理由なのだろうが、それも叶うはずだ。

……いや、必ず父さんの望みは叶える。

最悪、父さんに挑もうと言う根性のある者が居なければ育てれば良い(・・・・・・)のだ。

 

 

………俺は思わず小さく笑ってしまった。

獲る前から、獲ったあとのことを考えていてもしょうがないだろうに。

 

少しばかり浮かれてしまっている自分を戒めながら、俺は紅茶を一口飲んだ。

 

そして、文机の上にあるハチノスで見つけた有望そうな人材をまとめた書類を手に取り、選別作業を再開するのだった。

 

 

 

 




ー後書き&補足ー

人工・メンダコ:レオヴァ作った防衛兼監視ロボット
迷彩機能を搭載しており隠密性も高く、水中移動も素早く可能。
口から捕縛用の網と攻撃専用の痺れ玉を出せる。
ただし、陸上では上手く移動できない欠点もある。
竜宮城を守る為だけにレオヴァが好意(?)で作ったらしい。

人工・オウム貝:レオヴァが作った護衛ロボット
とにかく防御性能が高くオトヒメ王妃が3匹、しらほし姫10匹連れている。
何かあると数匹が変形し、対象者を包み込み防御壁となりつつ逃げる様に作られており、スピードは人魚に匹敵する。
意志疎通のようなことも少しならば可能で、しらほし姫は一匹ずつ名前をつけている。
欠点は同じく陸上で上手く活動できない事。
これもレオヴァが好意(?)で作ったらしい。

今回も読んでくださりありがとうございました~!
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