数日前に発行された、百獣海賊団総督補佐官レオヴァの手配書は大きな話題を呼んでいた。
様々な国の人々、ナワバリの町人たち、数多いる海賊団達…良くも悪くも本当に多くの者の話題に上がっていたのだが…
特に百獣海賊団の船員達の反応はレオヴァの想定とは違うものであった。
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穏やかな昼下がり。
遠征先からワノ国へ戻り、休日を堪能していたページワンは遠くの廊下から響く足音に体を強ばらせた。
真っ直ぐこちらに向かって走ってきているであろう、この足音、そして大きくページワンを呼んでいるだろう声……間違いなく
自室でゆったりと
そう、模擬札の価値を分からぬ奴に踏み荒らされては困るのだ。
今までさんざん、それでレアな
部屋の引出しにページワンが模擬札BOXを仕舞うと同時に扉が開く…いや、吹っ飛ばされた。
「ぺーたん、ぺーたん~!!!
これ見て、これこれこれ~!!!」
「ウブッ…な、なんだよ姉貴!」
扉をぶち破りそのままページワンを押し倒し下敷きにしながら、うるティは興奮冷めやらぬ表情で手に持っていたものをページワンの顔面に押し付けた。
「ちょっ……近い!!近すぎるんだよ姉貴!!
なんも見えねぇよ……ぅぐ…てか、早く上から退けって!」
ガバッと起き上がったページワンの動きで、うるティは床へ落とされる。
「…痛~い!…お姉ちゃんかわいそう…
…………おい、ぺーたん!!なんか言え!
お姉ちゃんを落とすなんて、なんて酷い事するんだ!!!」
「毎回、毎回弟の部屋を壊すのは酷い事じゃねぇのかよ!!」
「うるせぇ~~!!
嫌ならお姉ちゃんと一緒の部屋で寝ろ!!」
「絶ッ対ェやだ!!!」
「なんだと!?
前までお姉ちゃんと寝てただろ!!」
「ちょ…!それデケェ声で言うなって!」
「
そこから数十分に渡り喧嘩と言う名の、うるティによる一方的な攻撃が続いた。
…が、それは騒ぎを聞き付けたキングにより何とか終わりを告げたのだった。
「チッ……ガキ共が…余計な仕事を増やしやがって。」
そう吐き捨てたキングにうるティとページワンはムッとした顔で噛みつく。
「「ガキじゃねぇ!!」」
「……これ以上仕事を増やすってんなら、レオヴァ坊っちゃんに報告するぞ。」
「うっ……れ、レオヴァ様を出すなんて卑怯だ…」
「ううぅ~!レオヴァ様に怒られるのは嫌ぁ…
…けどキングはムカつく~!!」
地団駄を踏むうるティと睨むページワンを相手にしてられるかと言わんばかりの態度でキングは二人を無視し、仕事へと戻っていった。
未だ、その後ろ姿を憎々しげに睨んでいるうるティにページワンが思い出したように声をかける。
「あ、そうだ。
姉貴そういえば、何を見せに来たんだよ。」
首を傾げるページワンの言葉に、うるティの表情がパァッと明るくなる。
「んふふふ~!ぺーたんよくぞ聞いてくれたでごんす♡
…じゃじゃ~ん!レオヴァ様の手配書~なり~!」
「レオヴァ様の手配書?
…あの、全然似てねぇ似顔絵のやつの事か?」
何をはしゃいでいるのかと、ページワンは高々と掲げられた手配書を見て口を開けたまま固まった。
「えっ…!」
「海軍潰してる時のレオヴァ様も好きだけど、私このレオヴァ様も好き~!!
ぺーたんもでしょ!?
クイーンの馬鹿にコピーしてもらったから、一枚あげる!!
えへへへ…お姉ちゃん優しい……」
一人でうんうんと頷いているうるティに手渡された手配書を握り、ページワンはハッとして今度は手元の手配書をじっと見つめた。
手配書にはいつも自分たちと話す時に見せる、優しい表情で楽しげに笑うレオヴァが写っていた。
ページワンは無意識に口角が緩んでいることも気付かずに、うるティに礼を述べた。
「へへへっ…姉貴、ありがとう。
……本当レオヴァ様カッコいいよなぁ~…ベポ一緒とか羨ましいな…」
「へっ!?
ぺ、ぺーたん…今ありがとうって言った!?
~~っ!!ぺーたんぺーたん可愛い~!!!」
「お、おいっ…!?
危ねぇって姉貴!!手配書が…!」
久々のページワンの素直な反応に我を忘れたうるティの暴走により、本日2度目のキングによる鉄拳制裁が行われたのは10分後の話であった。
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フーズ・フーは先ほど押し付けられる形で渡された物を手にしたまま、
少し前までクイーンの馬鹿が何やら大騒ぎしていると聞き、またか…と呆れるのみで“何故騒いでいる”のかに興味を持っていなかったフーズ・フーだったのだが。
クイーンと共にあのうるティまではしゃいでいる姿を見てしまったフーズ・フーは、少し…ほんの少しだけ騒ぎの理由に興味をそそられたのだ。
そう、フーズ・フーは昔の名残の情報収集癖が治っていなかった。
無論、その癖はレオヴァから高く買われており、当の本人も治すつもりなどはないのだが。
けれど、今回はその癖がフーズ・フーを困らせる事となってしまった。
気になってしまった以上知らなければ気が済まないと、騒ぎの方へとカツカツ音を立てながら早足で近付いていく。
…とほぼ同時にこちらに気付いたクイーンに絡まれた。
「よぉ、ナイスタイミングだぜ~♪
いつもシケた面してるテメェに~
このクイーン様がスペシャルで~…グレイトな施しをくれてやるぜ!!
ほらよ!受けとれ!……あ!そうそう、レオヴァには言うなよ。」
その巨体からは考えられぬほど軽やかなステップを踏みながら近寄り、フーズ・フーに1枚の紙を押し付ける。
上機嫌に笑っているクイーンをマスクの下から睨み付け、フーズ・フーは吐き捨てた。
「ハッ…!
ツリーに飾り付けるクーゲル見てぇなヤツにうだうだ言われたくねぇがな。」
「聞こえてんぞ、ヘンテコマスクぅ…!!」
「聞こえるように言ってんだよ。」
「よ~し、そのシケた面かせ。
上下関係ってのを教えてやる!」
「ちょうどいい、そのままおれが大看板に…」
「フーズ・フーいらねぇなら私に寄越せ~!!!
あ~!レオヴァ様最高でごんす~♡
…おいクイーン、ぺーたんの分も早く渡せ!!」
ピリピリした雰囲気を醸し出す二人だったが、すぐ隣でうるさいほど騒ぐうるティに気を削がれたのか、ため息をつく。
「はぁ~…生意気すぎてムカつく超えて笑っちまうぜ。
レオヴァが甘やかし過ぎなんだよなァ……
ほら、もう一枚やるからあっちいけ!」
「ガキが何を騒いで…」
「ぺーた~~ん!!すぐ持ってってあげるナリ~!!!」
フーズ・フーの言葉が終わるより早くうるティは新しい1枚を受け取り、凄まじいスピードで消えて行ってしまう。
相変わらずの人の話を聞かぬ姿勢にフーズ・フーは眉間に青筋を立てた。
レオヴァが甘やかしすぎると言うクイーンの言葉に内心で賛同しつつ、煙草を取り出し火を付ける。
うるティが駄目ならばクイーンに騒ぎの理由を聞こうとして振り向くと、あの巨体はすっかり向こうの方でまた別の者と騒いでいるではないか。
わざわざ追いかけて聞くのも癪だな…と思っていたフーズ・フーは先ほど渡された物の存在を忘れていた事に気付く。
それを見れば少しは何か分かるのでは?と、咥え煙草のまま左手に持っていた紙を見やった。
…そして、時は冒頭に戻る。
手元には見慣れた表情のレオヴァとベポのものと思われる後頭部が写った紙が1枚。
見た瞬間、奴らがはしゃいでいた理由をフーズ・フーは理解した。
そりゃ部下共が欲しがってクイーンに群がるわけだ…と納得すると同時に問題が発生したのだ。
“この手配書をどうするべきか”…という問題だ。
結果、フーズ・フーはあらゆる事を頭の中で思考する事となった。
長考を続けていたフーズ・フーだったが、おもむろにレオヴァから貰った携帯灰皿に吸い殻を入れると自室に戻るべく歩きだした。
「……まぁ、押し付けられたモンは仕方ねぇ。」
いったい、小さく呟かれた言葉は誰に向けてなのか。
捨てるのも忍びないしな…と早足で部屋に戻ったフーズ・フーを見たものは居ない。
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ドレークはナワバリの巡回任務中であった。
ナワバリ護衛任務をしている部下達とコミュニケーションを取りつつ、情報の交換や問題の解決をテキパキとこなしている。
百獣海賊団の中で、こういった任務を迅速かつ丁寧に遂行できると言う
その為、こう言う任務を中心に任されているのだが、ドレークは嫌ではなかった。
むしろ、世話焼きなドレークに取ってはやり甲斐のある仕事だ。
それにカイドウとレオヴァから仕事の出来に、お墨付きを貰えている。
この仕事が誇らしくない訳がなかった。
ナワバリで離れて働いている部下へのヒアリングや、ナワバリで生活している町人達との関係維持もドレークに取っては難しい事じゃない。
なにより、ドレークは
そう、ドレークは部下や町人達も皆が認める“頼りになる人物”なのだ。
仕事も悩みも、困り事もなんでも助けてくれるドレークは、皆に取ってまさにヒーローと呼べるだろう。
そんなドレークが、手渡したニュースクーの朝刊を開いて暫くした後に、頭を抱えて黙り込んでしまったのだ。
船内にあるドレークの自室へ朝刊を持ってきた部下は
一体どんな大変なニュースが入っていたというのか!?…と。
だが、声をかけられる雰囲気ではない。
あの百獣海賊団幹部の中で指折りの優しさ溢れる人物であるドレークの…あんなにも険しい表情を部下は初めて目にしたのだ。
緊張感から部下が、ゴクリ…と喉をならしてしまった。
思いの外静かな部屋に響いてしまった音に部下が慌てていると、ドレークがハッとしたように顔を上げて声をかけてくる。
「…悪いな、少し思案していた。
朝刊を届けてくれて助かった、仕事に戻ってくれ。」
普段の声色と表情で告げられた言葉だったが、追及を許さぬ雰囲気を感じ取った部下は軽く頭を下げて部屋を後にした。
「………何故こんな写真が…」
部下が完全に離れた気配を感じ、ドレークは独り言ちた。
朝刊に挟まっていた手配書には
きっとベポが釣って来た魚を褒めていた所を撮られた写真だろうとドレークは推測した。
この写真は良い写真だ、とドレークは思う。
それこそドレークが遠征先やワノ国で度々撮っている写真たちに負けず劣らず、レオヴァの自然体を捉えた素晴らしい一枚だ……と。
だが、これが全世界に出回っているのかと思うとドレークはモヤっとした気持ちを抱かずにはいられなかった。
ドレークにとってレオヴァとは良い意味で複雑な存在だ。
家族あり、同志でもあり、師のようでもあり…絶対的な存在でもあった。
カイドウとレオヴァこそが
ドレークの世界を作り上げ彩る
ドレークの見たカイドウの手配書は敵に向ける顔であった。
だから、手配書を見た時の気持ちは
『写真でもカイドウさんの勇ましさは滲み出るな…流石、百獣海賊団の頂点に君臨する人は他とは違う!』
と感心と誇らしさだけであった。
しかし…だ。
手配書に写るこのレオヴァの表情は身内に向ける顔ではないか。
このレオヴァさんは、おれが……おれたち百獣海賊団の人間だけが知っていればいい姿だ…そう言う感情を抱いてしまった結果の長い沈黙だったのだ。
「…いや、おれは何を考えて……
この手配書が出回ろうともレオヴァさんが他へ行ってしまうわけでもないというのに…
……はぁ…おれのこれは、どうにかならんのか……」
落ち込んだような表情で手配書を見つめた。
暫く眺めていたドレークだったが、引出しにそれを大切そうに仕舞うと考えを振り切るように立ち上がった。
「駄目だ、ひとりで考えていても負の連鎖だ。
…今日のナワバリ巡回が終われば帰れる、速く終わらせてカイドウさんとレオヴァさんと飲もう……そうだ、それが良い!」
ドレークは笑顔を取り戻すと、勢い良く任務へと向かって行った。
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ローは
今日も午前はレオヴァと執務を行い、ワノ国の見回りもサポートした。
午後からは急ぎの予定がない為、医術の勉強でも進めるか…とレオヴァお手製のおにぎりを頬張る。
普通のサイズより大きく形の良いおにぎりは、昔からローの胃袋を掴んでいた。
小さい頃は2個も食べられれば御の字であったが、今では6個も平らげている。
焼き鮭おにぎり、塩むすび、イクラおにぎり、エビマヨおにぎり…などなど。
毎回多種多様な様々なおにぎりが楽しめるのだ。
側仕えの任務になるとレオヴァは必ずおにぎりを握って手渡してくれるのだが、ローはそれが
極希に、これをおにぎりの具にするのか!?と言うような変わり種があったりするのだが
レオヴァ曰く
『おにぎりに合わないだろうと決めつけて食べないのは良くないぞ、ロー。
どんなことでも試さないと分からないからな。
…ん?昨日のアジの天ぷらのおにぎり?
なんだ?ちゃんと味見はしてから渡してるぞ。
味は良かっただろ?……なに?おにぎりから尾が出ていた…?
………まぁ、あれだ。斬新なアイディアだと思ってくれ。』
と言うことらしい。
簡単に言うと、料理も冒険なのだそうだ。
だが、なんだかんだ言いつつもローはそんなおにぎりが好きだった。
レオヴァが色々と試行錯誤し、新しい具を探してくれている事も、早朝からローの為に調理場で黙々と握ってくれている事も嬉しかった。
だから、ローは側仕えの日の昼食は邪魔されぬように専用の休憩室でゆっくり食べるのだ。
そんなローの憩いの時間に、終わりがやってきた。
おにぎりの最後の一口を頬張った時、部屋の外から自分を大きな声で呼ぶのが聞こえたのだ。
声の主をすぐに察したローは、おにぎりを飲み込み茶をすすった。
もうじき部屋に入ってくるであろう人物が茶を飲めるように、もう一つの湯のみを準備しようと立ち上がると、部屋の襖が勢い良く開く。
「キャプテ~ン!!
これ見てよ~!おれね、レオヴァさまと一緒に写ってるんだ!!
えへへ…有名になっちゃうかも!」
「ベポ、部屋に入る前は一言かけろといつも言ってるだろ。」
「あ…!忘れてた……キャプテンごめん…」
予想通り声かけもなく部屋に押し入ってきたベポに注意しながらローは茶飲み片手に座布団の上にもどった。
入り口でショボくれているベポに手招きをし、座れと自分の正面を指差す。
大人しく座布団の上に座ったベポの前にお茶と、この部屋に常備してある茶菓子を差し出し、頬杖をつく。
「…で?
何をそんなに、はしゃいでたんだ?」
「お茶とお菓子ありがとう、キャプテン!
実はね、これなんだけど…」
ベポの持っていた紙の束を見て、ローは驚きに目を見開いた。
そこには数十枚のレオヴァの手配書があった。
それも似顔絵ではなく、写真の手配書だ。
そうして、少しの間驚いていたローだったが思わず吹き出した。
「…ック…ははは!
レオヴァさん凄い笑顔の所を撮られてるじゃねぇか!
手前にいるのがベポか?」
「うん、おれだよ!
たぶんこれ、前回の遠征でアザラシみたいなのが釣れたときのやつ!」
「…あぁ!レオヴァさんが鍋にしたやつか。」
ローが思い出したと言うように頷く。
確かにあの島にいる間、妙な気配に付けられていた。
だが、レオヴァが構わないと言ったからローは見逃してやったのだが…
まさか何枚も撮っていたであろう写真から、これが選ばれるとは思わなかったとローは笑う。
ローの記憶が正しければこの写真はベポが釣り上げたマダライッカクという生き物を、初めて見る生き物だ!とレオヴァが興奮し、ベポを褒めちぎっていた時のだろう。
「レオヴァさん、追尾者気にせずに楽しんでたもんな…」
珍しいものや初見のものに目がないレオヴァを思うローの口角は上がったままだ。
「これがあれば、レオヴァさまにいっぱい褒めて貰ったのいつでも思い出せるよ~!
キャプテンにもあげる!2枚?…10枚くらいいる?」
「いや、そんなにいらねぇよ!」
「そっか、なら…はい!キャプテンのぶんね!」
手配書の束から2枚をローへ渡すと、目の前のお菓子を口に詰め込みベポは立ち上がった。
「ん、モグモグ…ばいふぁい、きゃふてん!
おれ、しほとあるはら!」
「おい、ベポ!
口にもの入れたまま喋るな、飛ぶだろ!」
「もぐ、むぐむぐ…ごくん
えへへ…ごめんよ、キャプテン。
おれ、仕事戻るね!
…勝手に抜けて来ちゃったからヒョウ五郎さんに怒られちゃう。」
手を振って出ていったベポを見送り、ローもそろそろ休憩は終わりにするかと立ち上がった。
そして、机の上にベポが置いていった手配書をそっと手に取り、また小さく笑う。
「……カイドウさんも喜びそうな写真だ。」
羽織のうちポケットに手配書を仕舞い、ローは襖に手をかけた。
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ホーキンスはワノ国への帰路を進んでいた。
百獣海賊団にて見事、真打ちから
飛び六胞と並ぶ幹部である、近衛隊隊長になったことで念願だった船も手に入れた。
しかし、船を渡された時、予想外の出来事にホーキンスも部下達も目を見開いて驚いた。
何故ならその船はホーキンス達があの時リスクを犯してまで造ろうと百獣海賊団のナワバリに侵入し、なんとかもうすぐ完成…という状態だった“あの理想の船”そのものだったのだ。
なぜこの船が…と言葉を詰まらせたホーキンスにレオヴァは事も無げに告げた。
『あのナワバリにいる船大工とは、おれがワノ国に来たばかりの時からの付き合いでな。
たまたま話を聞いて、ホーキンスが欲しいと思っていた船ならばそのまま完成させてくれと頼んであったんだ。
……実を言うとホーキンスと初めて組手をした3日後には完成していたんだが、せっかくなら何かの祝いに渡そうと思って隠していた。』
驚いただろ?ちょっとしたサプライズだ、と目を細めてレオヴァは楽しげに笑った。
本当に
そんな思い入れのある船に揺られながら、甲板で空を見上げた。
そこには当初掲げようと思っていた旗とは違う旗が優雅に潮風になびいている。
「……この旗も、悪くはない…か。」
微かに口角を上げたホーキンスだったが、空を飛ぶ見慣れた鳥を見つけて腰にあるベリーの入った袋を開けた。
ニュース・クーは慣れたようにホーキンスの目の前の手すりに降り立つと、ひょいと新聞を掲げた。
交換するように、指定分の金額のベリーを手渡すとニュース・クーはホーキンスの手に新聞を置いて、飛び立って行った。
さっそく目を通そうと、右手にある新聞を開くと数枚の手配書の中に見慣れた顔を見つけた。
「……これは、レオヴァさん…?」
思わず手配書をまじまじとホーキンスは見つめたが、どうみてもそこに写っているのはレオヴァだ。
海賊とは思えない表情で写っている写真に、またほんの少しホーキンスの口角が上がる。
「フッ…まったく、いつも予想の斜め上を行く人だ。
……ドレークがまたうるさそうな写真だが、スレイマン辺りは舞い上がっているだろうな。」
比較的、交流の多い二人を思い出しホーキンスは呟いた。
ワノ国に戻ったらうじうじと面倒な状態になってそうなドレークの話くらい聞いてやってもいいか、とホーキンスは考えながら後ろで遠慮がちに手配書を見たがっている部下へその手配書を手渡した。
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その日の午前、レオヴァはドレークとフーズ・フーがハチノスで有望そうな人材をまとめた書類を確認していた。
文机の上に山のように積まれていた書類を3時間ほどで選別を終え、次の作業員に移ろうというタイミングで現れた部下に休憩を取って欲しいと懇願され、やむなく休息を取る事に。
なんとなしに鬼ヶ島城内を散歩していると、なにやら部下達が騒がしい。
レオヴァは今日は何か催し物があっただろうか?と首を傾げたが、その理由はすぐに発覚した。
前方30mほど前でクイーンが何かを配り歩いていたのだ。
何かを貰い嬉しげに笑っている部下達を見て、またクイーンが催し物をしているのかとレオヴァは笑う。
しかし、そちらに歩みよりつつ目を凝らしてレオヴァは固まった。
クイーンとその部下達が小脇に抱える紙の束…あれは自分の手配書ではないのか?
それを理解した瞬間、レオヴァは頭を抱えた。
なぜ、
クイーンの方へ歩く道すがらも、レオヴァに挨拶をしてくる部下の手には手配書がある。
なんなら、数枚持っている者も見受けられた。
レオヴァはそっとクイーンの背後へ近付き、笑顔を作ると明るい声で話しかけた。
「…クイーン、ずいぶんと楽しそうだな。
何をしているのか、おれにも教えてくれないか?」
「ぅおっ!?レ、レオヴァじゃねぇか~!
あ~…っと~、今仕事中じゃなかったか?」
ビクリと肩を揺らし、凄い速さでレオヴァを振り返ったクイーンの額に一筋の汗が伝う。
相も変わらずニコニコと笑顔なレオヴァは動揺するクイーンをしり目に周りにいる部下達に声をかけられ、それに答えている。
完全に
「すまないクイーン、話の途中だったな。
おれは今ちょうど休憩時間中なんだ。
クイーンはその様子だと休みなんだろ?
ゆっくりと
「……オォ…ワカッタゼ、レオヴァー!!」
目の笑っていないレオヴァの有無を言わせぬ圧力に、涼しい室内でダラダラと汗を流しながらクイーンはやけくそで返事を返した。
無論、レオヴァの手配書を自慢半分おもしろ半分で配ったクイーンの自滅なのだが。
レオヴァは周りの部下達に少しの間借りていく、と笑顔で対応し静かになったクイーンを連れて去って行ったのだった。
あれから少しの時間クイーンと
クイーンの話によるとあの手配書はかなりの数配り歩いたと言うではないか。
挙げ句、カイドウにも数枚手渡してあると言う。
レオヴァは深いため息をついた。
普段であればこんなにも頭を抱えることなどないのだが、今回の手配書は別である。
……
よりによって遠征先で初めて見た生き物にはしゃいでいた写真を手配書に採用されるなど、誰が予想出来ようか。
あの時、尾行していたコラソン…いや、ロシナンテからドフラミンゴを脱獄させた事の仕返しの嫌がらせなのではないかと深読みしてしまいそうな選出だ。
…と、レオヴァが思っていた矢先だった。
クイーンが満面の笑みでその問題の手配書をバラ撒いていたのは。
先ほど話をしたので、これ以上鬼ヶ島内にバラ撒かれる心配はないだろうと安心しつつ、レオヴァはロシナンテへの小言を溢した。
「…コラソン、お前は本当におれにとって都合の悪いことばかりするなァ……食えないところは兄弟揃って同じか…」
今さら写真について考え込んでも仕方がないと割りきったレオヴァは仕事に戻ろうと立ち上がった。
……懲りずにまたクイーンが幹部達に手配書を配り歩く未来を読めずに。
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時は遡り、手配書発行日早朝。
新しく刷られた手配書数枚を見て、一人の男が大声で叫んだ。
「や、やっちまった…!!」
どうしよう…と頭を抱えるこの大男こそ、海軍に所属するロシナンテ大佐である。
あのドフラミンゴの捕縛に大いに貢献し、さらにあの百獣海賊団レオヴァの写真を撮ることに成功した実力者なのだが……彼は生まれながらのドジっ子だった。
その“生まれながらのサガ”は今回の大仕事でロシナンテに大きなミスを犯させたのだ。
その大きな失態こそが…“写真の送り間違い”である。
2日間、遠征先に滞在していたレオヴァを尾行し数十枚の写真を撮ることに成功していたロシナンテ大佐は、さっそくそれを印刷所へと送った。
そして、あとは写真だけで完成予定だったこともあり、再度の確認もなく手配書は大量に刷られ、朝刊と共に全世界へと配られた。
本来、ロシナンテが使いたかったのはレオヴァの他海賊との戦闘中の1枚であり、あの手配書に使われてしまった写真は“ボツ”として別に封筒に入れていたものであったのだ。
しかし、ロシナンテは気付かずに“ボツ”の封筒を送ってしまっていた。
きっと一番の原因は、採用する写真とボツの写真を同じ色の封筒に入れて保管していた事だろう。
案の定、印もなにもないそれをロシナンテは間違えて送ってしまったのだった。
髪をぐしゃぐしゃにしながら頭を抱えていたロシナンテの電伝虫がプルプルと震える。
ロシナンテは観念したように恐る恐るガチャリと受話器を取った。
「ロシナンテ!なんだあの手配書の写真は!?」
「す、すみませんセンゴクさんっ!!!」
受話器から聞こえた叱りの声にロシナンテはおもいっきり頭を下げた。
ゴツリと机に頭をぶつけつつもセンゴクの小言に耳を傾ける。
「はい……本当にすみません…ドジっちまって……」
「ロシナンテ……お前のそれはなんとかならんのか…
そもそも、同じ封筒に入れたならどちらかにバツ印でも付ければ良かっただろうに。」
「ハッ…確かに!!」
「……ロシナンテェ…」
「うぅ…センゴクさん……すみません…次からは気を付けます。」
「はぁ……もう、世に出てしまったものは仕方ないか。
…次からは頼むぞロシィ、体の怪我にも気を付けなさい。」
「っ…はい!センゴクさん!
また、次の定期連絡で。」
そっと受話器を戻したロシナンテは自分の頬を軽く叩いて立ち上がった。
「…よし、もうドジらねぇぞ!
センゴクさんに心配ばかりかけられないもんな!」
今の任務の遂行の為に情報を集めるべくロシナンテは部屋から意気揚々と飛び出した。
そして、階段でいつもの様にツルッと足を滑らせて転げ落ちるのだった。
ー後書き&補足ー
何件か『他の幹部の反応もみたい!』とご希望ありましたので、急遽前回の続編の様な形で書きました!
オマケ回なので軽く読める感じに……全員は無理でしたm(_ _)m
↓【補足】
・船について
飛び六胞クラスの幹部から専用の船を持てる。
(例:ジャックならマンモス号など)
大看板になると専用の空船が作られる。
(空船はそもそも幹部クラスがいなければ動かせない決まりあり)
↓【質問返答】
質問:海軍三大将のレオヴァへの認識など
赤犬:海賊という時点で印象は最悪。
近年海を騒がせている百獣海賊団を早く消すべきとの考え。海賊は皆殺し一択の過激派
ーーーーーーーーーーーーーーーー
黄猿:センゴクの意見も踏まえた上で、泳がせておきたい派。
現状、民間人に大きな害を与えていない事と、捕まえる為のリスクが高く、百獣海賊団との全面戦争は海兵と民間人に被害が出過ぎると考えてい為。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
青キジ:ある意味では四皇よりも危険な存在ではないかと考えており、独自に情報収集中。
出来れば大々的な衝突は避けて、時期をみたいと思っている。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
質問:レオヴァの手配へのリアクション
カイドウ:悪くねぇ写真だ!と喜ぶ。
しかし、金額には少しご立腹な様子。
その後は鬼ヶ島の自室に置いてある。
キング:ジャックにあげた。
手配書はただの紙切れ、レオヴァはレオヴァという思考。
カイドウに対してもレオヴァに対しても本人そのものにしか興味ない。
クイーン:騒ぐだけ騒いで手配書は欲しがる部下にバラ巻いた。
(コピーして沢山保持していた)
ジャック:キングからもらった。
あのあと部屋で額縁に移した。
飾ろうか悩んだが、レオヴァに見られては気恥ずかしいので、カイドウの手配書と一緒にそっと隠してある。
スレイマン:新聞に入っていた手配書を見て数十秒固まる
コピーして一枚は持ち歩き、数枚を自室にしまってある
街中でレオヴァの手配書を見つけると回収しており、それをうるティに引かれている事に気付いていない。
ブラマリ:遊女から手配書をもらった。
部屋にある棚の上に額に入れて置いてある。
(カイドウ含め、幹部達の手配書は全部ある)
ササキ:部下達と大盛り上がり。
後に自分専用の船にレオヴァの手配書を部下達とノリノリで飾った。