俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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国獲り編
編笠村と救いの手


 

 

 

 

 

─────ワノ国 編笠村付近 武器工場。

 

 

そこで俺たちは編笠村から“将軍命令“により連行され無理やり働かされていた。

 

 

工場での労働は極めて過酷であり、支払われる賃金や休憩などあって無いようなものであった。

 

家族に会うこともできず、自由な時間もなく

まさに“奴隷“の様な扱いを受けていた。

 

 

最初はこの過酷な労働に異議を唱える者たちもおり、監視と乱闘まで もつれ込んだのだが…

突如、全身黒づくめの奇っ怪な出で立ちの男が現れ

問題を起こした者たちは瞬く間に制圧されたのだった。

  

 

それ以降は皆、辛く厳しい状況に歯を食い縛り必死に堪え忍んでいた。

 

 

 

 

──── と、言うのも5ヶ月前までの話である。

 

 

5ヶ月前のあの日。

作業開始前に俺たちに召集令がかかった。

 

 

俺たちは、どうせまたオロチからの命令で無理難題を押し付けられるのだろう…と憂鬱な気持ちで見張り達について行くことしか出来なかった。

 

 

俺たちが全員揃うと見張りの中でも、いつも偉そうにしてるヤツが俺たちの前に緊張した面持ちで現れた。

 

 

「おめぇら これで全員だな!」

 

 

「はいッ! 全員連れて来やした……!!」

 

 

「よし……おめぇ達!

くれぐれも!!失礼のねぇようにするんだぞ!!」

 

 

「…………」

 

 

「返事をしろォ…!! ナメた態度を取るなら家族も此処で働かせるぞ!!」

 

 

「ッ……はい…」

 

 

「ったく…

じゃあ、俺は“レオヴァ様“をお連れする!

 おめぇらしっかり見張っとけよ!!」

 

 

「はい! 了解ですぜ!!」

 

 

 

見張りがドタドタと大きな音をたてながら出ていった。

あのいつも威張り倒しているヤツがあれだけ慌てた様子で迎えに行った“れおう"ぁ様“ってのは一体……?

 

 

俺たちはトンでもねぇ化け物が来るんじゃねぇかと大量の冷や汗を流した。

 

 

 

しかし、そこに現れたのは

黒い髪から白い角を生やした年端もいかぬ少年であった。

 

 

角が生えているという珍しき見目や、現れたのが少年だと言うことに俺はたいそう驚いた!

 

皆も同じ思いであったのだろう。

ざわざわと困惑が隠せないようであった。

 

 

見張り達は俺たちがざわついたのを見て怒りの形相で手に持った棍棒を振り上げた。

 

 

 

「おいおめぇらァ!!失礼のねぇようにと言ったよなァ!!!!」

 

 

俺は来るであろう痛みに耐えるべく反射的に目を閉じ歯を強く食い縛った。

 

……だが、すぐに訪れるはずであった痛みはなく、

ただ周りのどよめきが聞こえるのみである。

 

 

 

「レ、レオヴァ様…!?」

 

 

「はぁ……まったく。

…此処ではすぐに体罰を行うのか…?」

 

 

まだ声変わり前の様な幼さの残る声にはっと目を開けた。

 

 

すると、角の少年が俺と見張りの間に立っていた。

見張りが持っていた棍棒は地面に転がっている。

 

…信じられないが、この角の少年は自分よりも大きな見張りの暴力から

俺を庇ってくれたようである。

 

それを理解した俺は咄嗟に礼を口走っていた。

 

 

「あ、ありがとうごぜぇやす…!」

 

 

「ん? いや、礼は必要ない。 

……むしろ、おれの部下が失礼した。すまない。」

 

 

「えぇ!? い、いや、そんな!!」

 

 

「「レレレレ、レオヴァ様ァ~~!?!!」」

 

 

なんと…その角の少年は俺に頭を下げたのだ……!

これには見張り含め、周りの皆も大変驚いた!

 

この工場に連れてこられてから俺たちに真摯な対応をする者など、一人たりとも居なかったこともあり尚更驚きはでかい…!

 

 

あたふたと慌てる見張りや、開いた口が塞がらない状態の俺たちを特に気にする様子もなく

角の少年は元の場所へと戻ると話し始めた。

 

 

 

「 おれの名はレオヴァ。

今日から編笠村と武器工場を正式に仕切らせてもらう事となった。

 以後、よろしく頼む。

さっそくだが、今後この工場の方針はおれの考えた案を基に大きく変更させてもらう。」

 

 

 

堂々とした佇まいでそう告げる角の少年を見て思う所があったのか誰かがポツリと呟いた。

 

 

「……子どもがここを仕切るのか…?」

 

 

「…テメェ! レオヴァ様に言ってやがるのか!?!」

 

 

「! いや、だけどよ…」

 

「こいつは磔だ……!!!」

 

「おら!立てェ!!!」

 

「そんな…! ま、まってくれ…」

 

 

言葉を洩らした男が数人の見張りに掴まれた。

しかしまた 角の少年がその行動を咎めた。

 

 

「落ち着かねぇか……!

何でもかんでも直ぐに暴力で片付けようとするな!」

 

 

「ですが、レオヴァ様……!

こいつはレオヴァ様をガキ扱いしやがったんですぜ!?」

 

 

「それの何が問題なんだ?

そいつはおれを馬鹿にしたワケじゃねぇ、ただ年端もいかぬ者が仕切ることを疑問に思っただけだろう。

 違うか?」

 

 

「まぁ…確かに……そうかもしれやせんが…」

 

 

「は、はい! その、アンタがまだ子どもに見えたもんで……つい…」

 

 

「あぁ…まだ大人とは言えない歳だ。

ここにいる皆の中に、おれの歳に不安を感じた者も少なくはないだろう。

だが、一度おれの方針で働いてもらう。

それでもし不満があるのならば聞こう…!

…あと、人を見た目で判断するのは良くないぞ?」

 

 

「……す、すいやせん…」

 

 

「わかってくれれば良いんだ。

では、方針を発表させてもらおう!」

 

 

その後、角の少年…レオヴァ様の方針を聞いた俺たちは また驚いた。

俺は自分の耳を疑ったほどだ!

 

何度確認してもこの方針で行く。と揺るぎねぇ姿勢を保ち

 

「で、この方針で行くが……文句はあるか?」

 

と俺たちに問うレオヴァ様に

俺も…周りの皆も、藁にもすがる思いで大きく返事をした。

 

 

 

「「「ぜひ!!その方針でやらせて頂きてぇ…!!!」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

いやぁ……! 5ヶ月以上前の俺に今の状況を話してもきっと信じねぇだろう…!!!

 

今じゃ、武器工場は編笠村では憧れの職業だ!

 

 

レオヴァ様は俺たちを "武器作りの匠"と呼んで下さる。

 

しかも、しっかりした休憩と少し多すぎじゃないかと思うくらいの賃金も貰えてる。

 

 

一度貰いすぎじゃねぇかと不安になった俺たちは

 

『こんなに多くもらって良いんですかね…

…もっと少なくしてもらっても……』と交渉しに行ったんだが

 

 

レオヴァ様は、

『皆が造る武器はどれも素晴らしい出来だ。

おれはそれに対して見合う対価を払ってるにすぎない。

なにより、おれの考え方は信賞必罰だ。

…誰にでも出来る事じゃねぇんだ、もっと自信を持て。』

と減らすどころか俺たちを励ますお言葉を下さる始末……!

 

その言葉を聞いた俺たちは、この仕事を誇ることにした。

 

 

それからは俺も同志の皆も全力で仕事に挑んだ。

前よりも良い武器をつくる為、そして編笠村の発展とレオヴァ様の為に!!!

 

 

今や、ワノ国の工場の中じゃ俺たち以上に良い武器を造れてる所はねぇ。

それも全てレオヴァ様の指導の賜物だ!

 

 

だがそれだけじゃねぇ……!

あの方は村も大きく変えてくれた!

 

町は、工場から流れ出たモノのせいで川が汚れ始め、その水を飲んだ者が体調を崩すなど

あまり宜しくねぇことになってたんだが…

 

レオヴァ様は工場から出る汚染物質を“ろか“する仕組みを作り、さらに水を綺麗にしてくれる変わった生き物まで連れてきてくれた

そのお陰で川は綺麗な姿にもどり、魚介もまた たくさん捕れるようになったんだ!

 

 

農作業も便利になった…!

“ひりょう“って言う不思議なものを撒くと農作物が良く育つらしい。

俺は農作業はからっきしだが、嫁が言うには昔の倍以上収穫量が増えたってんだから驚きだ。

 

 

こんなに仕事が楽しく、豊かな生活は生まれて初めてだった…!!

 

スキヤキ様の時代は飢えちゃいなかったが、仕事をここまで楽しく感じたことはねぇし、こんなに旨いモンを食べられたこともなかった。

 

 

一時は自害も考えるほど悲惨な毎日だったが、生きてりゃ良いことがあるってのは本当だった…!

 

 

 

しかし、レオヴァ様はあの“カイドウ様“のご子息……らしい。

 

 

最初は海賊の息子だという事実に嫌悪感を感じた者たちも居たようだったが、レオヴァ様の行う善政や人柄に今や嫌悪感を露にする不届き者はいない。

 

 

カイドウ様は恐ろしい方だと聞いていたのだが

レオヴァ様がそんな事はないと、色々とお話を聞かせてくださった。

 

 

なんでもカイドウ様は強く、仲間思いな素晴らしい御仁であるらしい!

 

息子であるレオヴァ様の為に単身で敵に立ち向かい

見事、勝利を収めた事も一度や二度のことではないと

普段は大人の様な態度を取っていらっしゃるあの、レオヴァ様が本当に誇らしげに…そして年相応に微笑むのだ。

 

 

願わくば…俺たちに分け隔てなく接してくださるレオヴァ様がずっとこの村を仕切ってくださるように……

 

俺は嫁と夜の一杯を交わしながら

発展し平和になった村を眺めそう願った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

────── 場所は変わり、ある豪華な部屋。

 

 

 

 

 

「‐‐‐‐‐‐と言うワケで、編笠の武器工場から送られてくる武器は他の工場よりも質が良く、さらには反抗的な者どころか、進んで武器の開発及び改良に勤しむような者ばかりいるようで…」

 

 

「ムハハハハ~~!おいおい!やるじゃねぇかレオヴァのやつ…!!」

 

「レオヴァ坊っちゃんならやってのけるとは思っていたが……ここまで成果をだしてくるか…」

 

「ウォロロロロロロ~~!!

さすがは おれの息子…!!」

 

 

「あの~…カイドウ様……まだあるのですが…」

 

 

「なに…? 聞かせろ…!」

 

「まだあんのかよ!?」

 

「……他にもあるだと…?」

 

 

「編笠村の農業の発展、村の家々の修復。

そして汚染され始めた川の水質改善及び新しい漁業の導入…

……今の所、全て成功している様子でして…」

 

 

「ウォロロロロロ……!

他の工場もレオヴァに任せるか…!?」

 

「おいおい……レオヴァあんまり結果だしすぎんなよ…

……おれたちへのハードル上がるぜェ…」

 

「村まで発展させてるのか…

侍が力を振るえる状況を作るべきじゃねぇ…が、レオヴァ坊っちゃんなら なにか考えがあるはずだ。」

 

「確かに! 健康に生活できちまうと反乱が起きたとき面倒だ…!

カイドウさん レオヴァの方針聞くってのはどうすか?」

 

「…最近ほとんど顔を見せに来やしねぇしなァ。

よし、レオヴァの考えを聞くか。

キング、呼んでこい…!

クイーンは飯を用意させて来い!海鮮系を必ず入れろ!」

 

「了解した。」

 

「カイドウさん毎回言わねぇでも 海鮮はわかってるって…!」

 

 

「ウォロロロ……!

久々にレオヴァも呼んで宴だ!!!」

 

 

 

「いや、情報交換だからなカイドウさん!?」

 

 

 

 

突然の宴発言によって部下たちがてんやわんやになっている中、上機嫌にカイドウは酒瓶を煽りながらレオヴァの到着を待つのであった。

 

 

 

 

 

 


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