俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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訪れるはシャボンディ諸島

ぽわぽわと特大のシャボンが天へ舞ってゆく、幻想的な景色のこの場所の名はシャボンディ諸島。

 

今、このシャボンディ諸島には数多(あまた)の海賊達が上陸している。

 

 

 

 

──とあるレストランにて。

 

きらびやかなシャンデリアが照らす良い雰囲気のレストラン内には似つかわしくない食器のぶつかる音や咀嚼音が響く。

 

その音を放つのは無作法にもテーブルの上に座り、ばくばくと食べ物を口に詰め込む女海賊

大食(おおぐら)い” ジュエリー・ボニー であった。

 

そして、その女海賊から少し離れた席で不快そうに眉を顰める男の名は

カポネ・“ギャング”ベッジ である。

 

 

「下品な女め…

 こっちの食事が不味くなる。」

 

上品に口元を拭きながら忌々しげに呟いたベッジの声は、口に食べ物を入れたまま騒ぎ立てるボニーの声量でかき消された。

 

 

「おかわりまだか!?

 なくなりそうだ!!!」

 

「今、全力で作ってるそうで…船長。」

 

「間に合わねぇだろ!!!

 ピザお~か~わ~り~!!!」

 

ダンッダンッとかかとで机を鳴らすボニーに周りの船員達は少し困り顔になっていたが、その隣でボニーは不満そうな顔をしながらもどんどん平らげてゆく。

 

 

一方、出口付近では退店しようとしていた海賊達の1人がウェイターの不注意によってパスタで服を汚され、怒りを露にしていた。

 

 

「おいッ…てめぇ、よくもおれの服に!」

 

「も、申し訳ありませんっ……」

 

そんなウェイターに掴みかからん勢いの海賊を長髪の男が止めた。

この無表情なブロンドの長髪の男は

魔術師(まじゅつし)” バジル・ホーキンス だ。

 

 

「何故です!?

こいつ、おれがホーキンス様に選んでもらった服にスパゲティを!」

 

「服ならまた選んでやる。

今、起きたことはその服の運命(さだめ)……諦めろ。」

 

「っ……ホーキンス様がそう言うなら…」

 

拳を収めた部下に向けていた目線をウェイターに移すとホーキンスは抑揚のない声で告げた。

 

 

「脅かして()まなかったな。

今日は殺生(せっしょう)をすると運気が落ちる日なんだ。」

 

ウェイターが訳も分からず声を出せずにいると、ホーキンスはベリーの入った袋をレジカウンターに置き店の出口へと歩きだし、後ろにいた男達もホーキンスに続くように店を後にする。

 

 

その光景を横目で見ていたベッジがおもむろに口を開いた。

 

 

「……百獣海賊団は一般人には手を出さないって噂はあながち間違いでもないってワケか。

海賊が、善人気取りかァ?」

 

頭目(ファーザー)、百獣はあの悪の軍団(・・・・・・)と手を組んでるって噂もあるし善人なわけないレロ!」

 

「ヴィト、お前のジェルマ関係の噂への耳の良さは相変わらずだな。」

 

「ニョロロロ~!」

 

葉巻を取り出したベッジにすかさずジッポを差し出しながらヴィトは笑った。

 

 

 

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ドガシャァ~ッン!!

という大きな破壊音がシャボンディ諸島のある場所に響き渡り、また海賊達だと一般人は逃げるようにその場から離れていく。

 

その爆発を起こした張本人は食えない笑みを浮かべながら黒煙をあげている建物の方へ声をかける。

 

 

「ケンカなら“壁”の向こうへお預けにしようぜ。

なァおい、お前オラッチの強さ知らねェな?」

 

煽るような動きと声を発する男の名は

海鳴(うみな)り” スクラッチメン・アプーである。

 

そのアプーの目線の先にある瓦礫と化した建物からは真っ赤な髪を逆立てた目付きの悪い男が出てくる。

 

 

「だったらジロジロ見てんじゃねェよ

ムナクソ悪ィ野郎だぜ………今消してやってもいいんだ。」

 

(かしら)っ!!

ダメですよ!!!」

 

部下の静止の声を聞かずに臨戦態勢を取るこの男の名は

ユースタス・“キャプテン”キッドだ。

 

 

「やべぇよ…アプーさんマジでやる気かよ!?

大事(おおごと)になっちまいますよ!?」

 

「あ~…キラーさん居ないし、こりゃおれらじゃ(かしら)を止めらンねぇよ…」

 

キッドとアプーは部下の困りきったような声を背に、お互いへ向けて一歩前へ踏み出した。

 

 

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またシャボンディ諸島の別の場所でも騒ぎが起きていた。

 

 

怪僧(かいそう)が暴れてる!」

 

そう叫ばれている笑顔が不気味な屈強な男こそ

怪僧(かいそう)” ウルージである。

 

そしてそのウルージの巨大な六角(鉛筆)を華麗な動きで避けているマスクの男の名は

殺戮武人(さつりくぶじん)” キラーだ。

 

だが、そんな街中にも関わらず派手な戦闘を繰り広げる2人の間に素早い動きで別の男が割って入ってくる。

 

ガキンッ…!

と、武器がぶつかり合う大きな音が響く。

 

 

「ここは街中だぞ!

暴れたいのなら、“新世界”へ!!」

 

ウルージとキラーの衝突を止めて叫んだ男の名は

異竜(いりゅう)(ディエス)・ドレーク

 

 

「あの百獣海賊団幹部のドレークか……

ふふ、命を拾いなさったな…マスクの人。」

 

「…………」

 

キラーはウルージの言葉に返事を返すことなく、さっと刃を仕舞うと踵を返してゆく。

 

そんなキラーの対応に怒るでもなくウルージも背を向け当初の目的の場所へと歩みを進め始める。

 

二人が完全に戦闘を止めたことを確認すると、今度はドレークが武器をしまった。

そして心配そうにこちらを眺める部下の方へ戻って行くと、木箱に腰掛けていた男が口を開いた。

 

 

「今、いいところだったってのに…

そのなんでもかんでも首突っ込む性格、直したらどうだ…ドレーク。」

 

ウルージとキラーの戦闘を薄ら笑いを浮かべながら静観していた男の名は

死の外科医(し げかい)” トラファルガー・ロー

 

 

「必要だから手を出したに過ぎない。

別に何でもかんでも首を突っ込むワケじゃあない。」

 

少しムッとした表情で言い返してきたドレークをローは鼻で笑いつつ、腰掛けていた木箱から立ち上がった。

 

 

「ま、見せ物も終わったならお開きだろ…おれは行く。」

 

「どこに行くんだ?

そもそも、何故ローがここに……

レオヴァさんの護衛は今、誰が担当している!」

 

「いちいち声がでかい奴だな…

レオヴァさんの護衛ならホーキンスが担当してる。」

 

「なるほど、ホーキンスが……

なら問題ないか、あいつは真面目だからな。」

 

「そもそも、レオヴァさんに護衛なんて必要ねぇだろ。

おれらの中で一番強いのはレオヴァさんなんだ。」

 

「…それはそうだが、カイドウさん直々の命令である以上軽視などもっての他だ。」

 

「カイドウさんは心配性すぎなんだ。

……いや、アレは心配とはまた違うか。」

 

未だにレオヴァには護衛(休ませ係)をつけろと毎回命令を下すカイドウを思い出し、ローは思うところがあったが口を閉じた。

 

昔からカイドウとレオヴァには少し変わった親子の決まりがあるのは幹部ならば知っている事であり、ローも今さらそれに口を出すつもりは微塵もないのだ。

 

今度こそ、歩きだそうとしたローをまたドレークが呼び止める。

 

 

「待て、ロー。

結局レオヴァさんの所に行くわけじゃないのなら、何処へ行くんだ?」

 

「そんなモン決まってんだろ。

……“シャボンディパーク”だ。」

 

「「「「楽しみだぜ、シャボンディパークゥ!!」」」」

 

ローの言葉の後に部下達がワッと興奮を抑えられぬ様子で叫び声を上げた。

それを見たドレークは小さく溜め息をつく。

 

 

「まったく……遊びに来ているわけじゃないんだぞ…」

 

「別におれも好きで行くんじゃねぇよ。

レオヴァさんが数年前に百獣で作った“遊園地”と比べたいから、その偵察に行けって言われて行くだけだ。」

 

「そうだぜ、ドレーク様!

おれたちゃ遊びに行くわけじゃないんスよ!」

 

「えへへ~!そうだよ!

キャプテンとみんなで偵察に行くだけだよ!」

 

ノリノリで答えるローの部下達になんとも言えない表情をしながらドレークは答える。

 

 

「はぁ…なるほど。

レオヴァさんからの命令だったのか。」

 

「そう言うワケだ、じゃあなドレーク。

おれ達はおれ達の仕事があるんだ……行くぞ、お前ら。」

 

「「「「イエッサー、キャプテ~ン!!

レッツゴー!ジャボンディパークゥ~!!」」」」

 

「いや、お前達めちゃくちゃ遊ぶ気だろう!!?」

 

ドレークの突っ込みなどどこ吹く風のように流し、ローはワクワクを抑えきれない部下達に担がれ凄い早さでシャボンディパークの方向へ消えて行った。

 

 

「……あの感じだと、ローも満更じゃないな…」

 

まったく、と頭を抱えるドレークだったがソワソワし出した部下達に気付き後ろを振り返ると数人の部下達は小声で会話していたが、ドレークが振り返ったことに気付きピシッと背筋を伸ばす。

 

 

「…言いたい事があるなら言え。」

 

ドレークの言葉に暫し沈黙を続けていた部下達だったが、おずおずと口を開く。

 

 

「あ~……いや、その…」

 

「べ、別に大したことじゃなくてですね…」

 

「なんだ?

ハッキリ言ってくれ、別に怒ったりはしない。」

 

部下達はその言葉で気持ちを決めたのか、揃って口を開いた。

 

 

「「「お、おれらもシャボンディパークに行ってみたいです!!」」」

 

「……なんだって?」

 

予想になかった答えにドレークが目を見開くと、部下達は恥ずかしそうに口を開く。

 

 

「その…おれらガキの頃は生きるのに必死で遊園地なんてモン興味なかったんですけど……

なんか百獣入って余裕が出来てきたら、気になるようになってしまったというか…」

 

「そうなんスよ!

ガキの頃はなんとも思わなかったんスけど~…」

 

「レオヴァさんが作った遊園地にも行きたかったんですが、おれらもういい年した男なんで…

なかなか休暇の日も行きたいって言いづらくてっ…!」

 

「百獣海賊団入って、ドレーク様といるうちにテーマパークとか、そういう金とか女じゃない平和な娯楽も悪くねぇかなァ……なんて思ってやして…」

 

モゴモゴと口ごもりながら思いを吐き出した部下達にドレークは間髪入れずに答えた。

 

 

「お前達…!

そうか……よし、わかった!

今任されている任務を完了し次第レオヴァさんに許可を取り…

おれ達もシャボンディパークへ向かうぞ!!!

 

ドレークのその宣言に部下達はパァッと明るい表情になり、元気よく答えた。

 

「「「「はい、ドレーク様ァ…!!!」」」」

 

そして、ドレーク達は迅速に任務を完了させるべく走り出したのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

昼休憩にレストランへ食事に出ていたホーキンスがレオヴァの下へ戻ると、少しバタついているようであった。

 

その事にホーキンスは小さく首を傾げつつ、近くに寄ると気付いたレオヴァが笑顔で声をかけてくる。

 

 

「おかえり、ホーキンス。

シャボンディ諸島の食事はどうだった?」

 

「可もなく不可もなくですね、百獣の料理には敵わないかと。

……ところで何故、空船を上空へ?

守備が必要ならおれが。」

 

ホーキンスの船の見張り番の申し出にレオヴァは首を横にふる。

 

 

「守備を考えていると言うよりすぐに出港できるように手筈を進めているだけだ。

ほら、空船は浮かび上がるまで少し時間がかかるだろう?」

 

「出港……何か問題でも?」

 

「いや、特に今なにか問題が起きたわけじゃないんだが……この後に起こるだろう(・・・・・・)からな。」

 

「この後に起こる…?

またレオヴァさんの予言(・・)ですか。」

 

「ふふふ、予言なんて大層なものじゃない。

まぁ、念のためというやつだ。

あまり気にしないでくれ。」

 

「わかりました。」

 

ホーキンスはレオヴァの行動ならば良い方に転ぶだろうと考え、それ以上の追及を止めた。

 

部下達にホーキンスは積み荷を手伝うように指示を出し、自分はレオヴァの側に立つ。

 

レオヴァが迷いなく部下達を動かしているいつもの光景を見つつ、周りの警戒も怠らない。

護衛を任された以上、レオヴァの手を煩わせないという静かな覚悟をホーキンスは持っているのだ。

 

 

そしてレオヴァが指示を出し終え、シャボンディ諸島へ買い物にでも行こうとホーキンスを振り返ろうとした時だった。

プルプルプル…と電伝虫が鳴る。

 

 

「…おれだ。」

 

電伝虫を取ったレオヴァが声を発すると、ハキハキとした声が返ってくる。

 

 

「レオヴァさん、こちらドレーク。

()ドフラミンゴ経営の人間(ヒューマン)オークション会場での仕込みは完了した。」

 

「そうか…!

早かったな、さすがドレークだ。」

 

レオヴァの言葉に電伝虫の口元が緩んだが、それを誤魔化すようにドレークは咳払いをすると続ける。

 

 

「ンンッ…だがレオヴァさん、ひとつ想定外なことが…」

 

「想定外……それは今日売られる予定の奴隷についてか?」

 

電伝虫の向こうでドレークが驚いた顔をする。

 

 

「まさか、もうレオヴァさん情報を?」

 

「ドレークの言う想定外の報告が“冥王”についてなら、おれも情報は握ってる。」

 

「フッ…レオヴァさんの情報網には敵わないな!

レオヴァさんの予想通り、あの冥王が今回のオークションにただの老人として出品される予定らしいんだ。

それにしても、レオヴァさんはその情報何処で手に入れたんだ?」

 

海軍の人間の連絡を少し盗み聞き(・・・・・・・・・・・・・・・)してた時にな…

まぁ冥王といっても隠居した身、面倒事は嫌うはずだ。

なにか大きなアクションは取ってこないとは思うが……一応、そちらの対策もおれが練っておこう。」

 

「了解した。

 それと…任務とは関係ない話なんだが……」

 

突然、言いにくそうにし出したドレークにレオヴァが不思議そうな声を出す。

 

 

「どうした、ドレーク?

なにか他に問題でもあったのか?」

 

「いや!問題はないんだ。

 ただ、その……今から部下を連れてシャボンディパークに行っても良いかという…許可を貰えないかと……」

 

「シャボンディパーク…?あの遊園地のか?」

 

レオヴァの驚きを含んだ声にドレークは恥ずかしさが限界を超えそうになったが、大切な部下達の願いの為に声を振り絞る。

 

 

「そ、そう……その、遊園地に部下達と行きたいと……思っていて…」

 

真っ赤になっている電伝虫を見てレオヴァは笑いながら返事を返す。

 

 

ふははははっ…!いいじゃねぇかドリィ!

任務が終わったらあとは自由時間なんだ、好きにすれば良い。

出来れば後で感想でも聞かせてくれ。

…そうだ、今度の休暇に部下達を連れてウチが経営してる遊園地にも行って来るといい!貸し切りに出来るよう都合を付けておこう!」

 

「ありがとう、レオヴァさん!

だが…その、貸し切りは勘弁してくれ……フーズ・フーやクイーンがうるさいのが目に見える…」

 

「ふふふふ…それもそうか。

まぁ、部下達とゆっくり楽しんで来てくれ。

オークションでの担当はローだから、今から行くなら遊園地で鉢合(はちあ)うこともねぇだろう。

たまには部下達とハメを外してくればいい。」

 

「れ、レオヴァさん!

もうおれはハメを外すような歳じゃ…」

 

電伝虫越しにわたわたしているドレークにレオヴァは笑い、部下達との休憩時間を楽しむようにと告げ通信を切る。

 

そして後ろで話を聞いていたであろうホーキンスに満面の笑みで振り返った。

 

 

「ホーキンス達もこの後はフリーだろう。

行ってきたらどうだ?」

 

「いえ、おれはそういうものに興味はないので。」

 

「ふふっ…そうか。

じゃあ、オークションの時間まで買い物に付き合ってくれ。

ホーキンス以外の皆は船で待機だ、船番は任せたぞ。」

 

「わかりました。」

 

「「「「はい、レオヴァ様!!」」」」

 

部下達はレオヴァとホーキンスが街へ歩きだしたのを見送ると空へ船を浮かせて待機しながら、いつでも出港できるよう準備を始めたのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

レオヴァ達がシャボンディ諸島で活動していたのと、ほぼ同時刻のワノ国にて。

 

 

カイドウに報告に来ていたクイーンが顔面蒼白な状態で声を荒げていた。

 

 

「おいおいおいおい!?

どうなってんだこの状況はよォ…!!!」

 

カイドウとキングがいる筈の部屋には誰もおらず、壁に大きな風穴が空いているという大惨事。

これはカイドウが龍になって開けた穴であるのは明白であった。

そして、カイドウが飛び出して行ったということは……

 

レオヴァから頼まれていたにも関わらず怒り心頭のカイドウから目を離してしまったことを後悔しながらクイーンは叫ぶ。

 

 

「これヤベェ~~だろォ!!?

あ"~~も"~~!!なんてレオヴァに報告すりゃいいんだよ!?

てか、キングのヤツちゃんとカイドウさん抑えとけよなァ!?!」

 

さらっとキングに責任転嫁しつつ、クイーンは思考をフル回転させる。

どうすれば飛び立っていったカイドウを止められるだろうか…と。

 

しかし、いくら考えても答えは出ない。

そもそも地面にいてもカイドウを止める手段などほぼ無いに等しい。

だと言うのにそれが空を飛んでいるとなれば、もはやクイーンの手には負えないだろう。

 

こうなっては、どうしようもない。

クイーンの天才的な脳はそんな非情な答えを弾き出した。

 

 

「…オワッタァ……これ絶対レオヴァに詰められるヤツゥ~……」

 

 

カイドウの部屋の前で呆然と立ち尽くすクイーンに瓦礫だらけの入り口からピョコッと顔を覗かせたバオファンが話しかける。

 

 

「クイーン様~~、電伝虫で連絡があって~!」

 

「ムリムリ……今、おれ様は深ぁ~~く絶望してんだ…フーズ・フーにでも回しとけ……」

 

オーバーリアクションと言っていいほど、大袈裟に頭を抱えているクイーンを気にする様子もなくバオファンは軽い足取りで瓦礫の山から出てくる。

 

 

「そっか~~!

緊急だって、キング様だったんだけど~…」

 

「なんだとォ…!?

よし、今すぐかせ!!!」

 

「はわっ!」

 

バオファンの掲げていた電伝虫を凄いスピードで奪い去るとクイーンは受話器を手にして叫ぶ。

 

 

「おいコラキングてめぇ…!!!

今どこだよ!!カイドウさん居なくなっちまってるじゃねぇかァ!!!」

 

クイーンの叫びに電伝虫がグッと顔を歪める。

 

 

「うるせぇぞ、ボール野郎…!

こっちは飛べねぇテメェと違って、カイドウさんを追ってる最中(さいちゅう)だ。」

 

「追ってる…?

ってことは、カイドウさんの居場所わかるのか!?」

 

希望が見えたというようにクイーンの表情が明るくなるが、キングの声は相変わらず低いままだ。

 

 

「居場所どころか100メートル前にカイドウさんが飛んでる。」

 

「よしっ…!

お前なら一瞬で追い付く距離じゃねぇか!

そのままどっかの島でカイドウさん引き止めとけ!!」

 

ガッツポーズを決めるクイーンにキングが苛立ったように唸る。

 

 

「馬鹿かテメェ…

カイドウさんが話を聞ける状態なら、そもそも部屋から出ていくのだって止められてるに決まってンだろ。」

 

「え……じゃあ、もしかして今…カイドウさん……」

 

「もしかしなくてもだ、マヌケ。

完全に出来上がってる(・・・・・・・)以外の可能性があると思ってんのかァ…?」

 

苛立ちを隠しもせず全面に押し出すキングの言葉にクイーンはまた絶望する。

 

キングがいるのならワンチャンどっかの島で止めて時間稼ぎができるかもしれないというクイーンの僅かな希望が打ち砕かれたのだ。

 

 

「…あ~……ところでカイドウさん今、なに上戸(じょうご)?」

 

恐る恐るという感じに問い掛けるクイーンにキングは間髪入れずに答える。

 

 

「飛び出す前までは泣き上戸だったが、今は完全に怒り上戸だ。」

 

「やっぱ怒り上戸かよォ~~

そんじゃもう完全に手ェつけらんねぇじゃねぇかァ…!!!」

 

膝から崩れ落ちるクイーンをキングは言葉で切り捨てる。

 

 

「黙れボール野郎。

ゴチャゴチャ言ってても状況は好転しねぇんだ、テメェもさっさと船を出せ。

ちんたらやってるは暇ねェ、レオヴァ坊っちゃんの改造した空船を使え。」

 

「生意気言うなアホキング…!!それくらい分かってるわ!!

てか、やっばカイドウさんが向かってんのって……」

 

「……あぁ、いつも誕生日前にあるレオヴァ坊っちゃんとの遠征…その予定を潰した奴ら(・・・・・・・・・・)を殺すと息巻いてる。」

 

「やっぱそうだよなァ~!?

マァ~ジで全部レオヴァの予想通りになってんじゃん!!

レオヴァもこの未来読めてたなら作戦後回しにしてカイドウさんと遠征行けよォ…」

 

半分泣き言混じりなクイーンとはうって変わって、キングは冷静に言葉を紡ぐ。

 

 

「今さら言ってもしょうがねぇだろうが…!

レオヴァ坊っちゃんは、今回の作戦は“絶対(・・)”だと言ってる。

それにレオヴァ坊っちゃんがカイドウさんとの遠征を先延ばしにしてまで取り組むと言い出した作戦ってことは、実行する“時期(・・)”が大切だってことだろ。

カイドウさんの目的地は分かってんだ、テメェは空船を出して真っ直ぐそこへ向かえ。

……それでも止められなきゃ、レオヴァ坊っちゃんに連絡する他ねぇ…」

 

「ぐっ…命令口調なのがスゲェムカつくがそんなこと言ってらんねぇか……

よし、キングてめぇしっかり定期的に連絡よこせよ!」

 

「言われなくてもだ。」

 

ガチャンッ!と乱暴に電伝虫の受話器を置くとクイーンはバオファンの方を振り向いた。

 

 

「バオファン!

今すぐササキとフーズ・フーに連絡して空船のある港まで来るように伝えろ!!」

 

「は~い!

分かったよ、クイーン様~~!」

 

バオファンの返事を聞くと同時にクイーンは空船へ向かって早歩きで進み始めると、同時にスマシで部下に連絡をする。

 

 

「…ダイフゴー、こちらクイーン!!

今すぐ空船にありったけのお汁粉を積み込んどけ!!出航するぞ!!!」

 

「えぇ…!?出航ッスかクイーン様!?

りょ、了解しやした!すぐに準備を…」

 

「急げよダイフゴー…!フルスピードだ!!」

 

そういってスマシを切ると更にクイーンは歩く速度を上げていきながら、憂鬱そうな表情でボソリと呟いた。

 

 

「超絶機嫌悪いカイドウさんの相手とか……したくねェ~…」

 

その呟きは心からのクイーンの本音であった。

 

まさに死地に出向くような顔で空船のある場所へ進むクイーンの背中にはこれでもかと哀愁が漂っていたと、(のち)にその姿を廊下で見掛けた部下達は語る。

 

 

そうして、あの事件(・・・・)へのカウントダウンが始まったのだった。

 

 

 

 

 




ー後書き&補足ー
公式設定でウルージさんの武器が鉛筆だと知って震え上がる今日この頃。
そりゃ鉛筆であれだけ戦えたらウルジストも増えますわな…

・超新星の人数変更ついて(最悪の世代とは別)
[メンバー一覧]
ベッジ・ボニー・ウルージ・キッド・キラー・ルフィ・ゾロ・ホーキンス・アプー

[理由]
数名は既に百獣海賊団の船員としてやや早めに名が売れてしまっていた為、原作と時期がずれた。
ホーキンスは入隊後暫く近衛隊として暗躍していた為、他よりも名が売れるのが遅れたので超新星にメンバー入りした。


ベッジ:ほぼ原作通り、今は誰の傘下でもない
未来には良きパパフラグが立っている…?

ボニー:こちらもほぼ原作通り
過去などについてレオヴァの部下が色々探り中

キッド:原作通りの暴れん坊。
ただ、過去にレオヴァとの接点あり

キラー:原作通りキッド海賊団の保護者
同じく過去にレオヴァとの接点あり

ウルージさん:原作通りの破戒僧。
今後どんな活躍をするのか一番気になる人物

アプー:ほぼ原作通りの食えない奴
実は今、考えてることがありこっそり動いている

ルフィ:我らがワンピの主人公、実力は原作と少し違う(エネルが自然系の能力者じゃないなど、他一部の人間との戦闘がなかった為)
一方、持ち前の伸び代と豪運は健在
レオヴァがどの相手よりも警戒している男

ゾロ:ほぼ原作通りで相変わらずのプロ迷子
剣の腕の伸び代が半端ではなく、こちらもレオヴァから最大に警戒されている
剣と刀の二刀流であるドレークに興味がある
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