俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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オークション会場

──ワノ国での緊急事態から数時間後のシャボンディ諸島にて。

 

 

ローはレオヴァからの指示を受けベポ以外の部下を船へと戻らせ、人間(ヒューマン)オークション会場へとやって来ていた。

 

そして、後方の席にドカッと腰掛けながらオークションの開始とレオヴァの到着を待っていた。

 

 

「キャプテン~…なんかここ変な臭いだよ……

 雰囲気もすごいイヤな感じだし。」

 

回りをキョロキョロと見渡しながら訴えてくるベポにローはため息を吐く。

 

 

「だから言っただろベポ。

 面白いモンじゃねぇから先に船に行ってろって。」

 

「そうだけど…」

 

目をうるうるさせて此方(こちら)を見るベポの頭をペシッと軽くはたきながらローが口を開く。

 

 

「可愛こぶるな!

もうすぐレオヴァさんも来るから大人しくしてろ。」

 

「アイアイ~、キャプテ~ン…」

 

ベポはローの刀をキュッと握りながら大人しく座り直した。

 

そして、ローとベポが舞台へ向き直ったと同時に近くから狼狽えたような衛兵達の声が聞こえてくる。

 

 

「っ…!!

あいつ…“南の海(サウスブルー)”のキャプテンキッド!!」

 

「ま、マジかよ……暴れられたら大事(おおごと)じゃねぇか…!」

 

どよめく衛兵達(えいへいたち)になど目もやらずにキッドは仲間を連れてオークション会場の中へと歩みを進める。

 

 

「面白ェ奴がいたら買っていくか」

 

悪い笑みを浮かべながら、肩で風をきりつつ進むキッドにヒートが声をかける。

 

 

「キッドの(かしら)、アレを……」

 

「ん?」

 

ヒートに促されるまま座席の方へ目をやったキッドはそこに座っている男を見て、ニヤリと更に口角を吊り上げた。

 

 

「見た顔だな

“百獣海賊団”2億5千万の賞金首トラファルガー・ローだ…

色々と過激な噂を聞いてる。」

 

キッドが知っている情報を仲間達に教えていると、座席に腰掛けていたローが振り向き中指を立てた。

 

 

「………。

行儀が悪ィ野郎だ…」

 

キッドは獰猛な目付きで笑うとローへ向けていた目線を横にずらし、入り口側の壁を陣取ろうと仲間達を連れて動き始めた。

 

 

そんな億超えの男達のやり取りが何事もなく終わったことに会場の衛兵達がほっと胸を撫で下ろした時だった。

入り口からまた億を超える男が入って来たのだ。

 

(あら)たな大物の登場に、衛兵達は目玉が飛び出す勢いで入り口を凝視した。

 

 

そして、その人物の存在にキッドと仲間達も即座に気付き目を見開く。

 

 

「なっ…!?」

 

思わず声を漏らしたキラーの気持ちを代弁するかのようにキッドが言葉を続けた。

 

 

アイツ、レオヴァじゃねぇか…!?

なんだって百獣のNo.2がこんな場所に居やがるんだ!」

 

キッド達の存在に気付いたらしく、レオヴァがそちらへ顔を向ける。

 

突然のことに身構えたキッドとキラーだったが、レオヴァは2人にニコッと笑いかけ軽く手を振るとそのまま席が並ぶ方へと歩いて行ってしまった。

 

 

「チッ……相変わらず馴れ馴れしい野郎だぜ。」

 

レオヴァの行動にキッドが壁に寄り掛かりながら吐き捨てるように言うと、仲間達が不思議そうにキラーに問いかけた。

 

 

「相変わらずって……キッドの(かしら)とキラーさんはあの百獣のレオヴァを知ってんスか?」

 

「……昔に、少しな…」

 

歯切れ悪く答えたキラーに続けて、キッドが眉間に皺を寄せながら口を開いた。

 

 

「おい、キラー!

ありゃ少しどころか、結構しつこかっただろ…!!

理屈っぽくて、口煩い野郎だったぜ。」

 

「…だが一応、世話になったとも言えなくもない相手だ。」

 

「…………1万歩ぐれぇ譲りゃあ…まぁ、そう言えなくもねェ…」

 

キラーの言葉を聞き嫌そうな顔で言うキッドに仲間達はこれ以上追及するのは()めようと決め、別の話題を振ることにしたのだった。

 

 

 

 

所変わり、キッドとキラーに軽く挨拶をしたレオヴァはまっすぐにローとベポの下へと歩いていった。

 

 

「ロー、ベポ。

 待たせて悪かった。」

 

一言謝りながらローの隣に腰掛けたレオヴァにベポが嬉しそうな声を出す。

 

 

「レオヴァさま!」

 

「別に待たされてねぇよ、レオヴァさん。」

 

快く迎えてくれたローとベポに笑いかけながら、レオヴァは正面の舞台へ目を向けた。

そこにはピエロのような見た目の男がマイクを持って立っている。

 

 

「それでは、みなさん。

長らくお待たせ致しました!!

まもなく、毎月恒例1番GR(グローブ)人間(ヒューマン)オークションを開催したいと思います!

司会は勿論この人!!

Mr.(ミスター)~~~~~アッ!!ディスコ!!!

 

 

ピエロのような男が名を叫ぶと、舞台へ星形のサングラスをかけた男が現れ会場がドッと盛り上がる。

 

ディスコと呼ばれた男は慣れたようにマイク片手に司会としての仕事を始めた。

 

 

「今回も良質な奴隷を取り揃える事ができました。

皆様…ラッキーですよ!!

実は本日、超目玉商品も!!

お好みの奴隷をお持ち帰り頂けますことを心よりお祈りしております!!!

それでは早速、競売(オークション)を始めましょう~!!!

 

司会者ディスコの声を合図に最初の奴隷が絶望の舞台へ一歩を踏み出すのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

表の入り口から、盛り上がるオークション会場へ意気揚々と乗り込む者達の姿があった。

 

 

「私達の友達を奪い返せるのならいくらかかろうとも構わない!!

文句ないでしょ!?」

 

「勿論だ!!

金の話じゃねぇよなーーっ!!!」

 

ヒールの高い音を鳴らしながら険しい表情で言い切ったナミに、人の形に変形していたチョッパーが間髪いれずに力強く答えた。

そして、その後ろではハチがナミの言葉に心打たれて小さく震え、パッパグが泣きながら感謝をのべている。

 

ナミ、チョッパー、フランキー、ハチ、パッパグの5人は入り口の階段下でメロリン状態のサンジを置いてオークション会場の扉を開いた。

 

5人が中に入ると、素早くサンジがナミの側に飛んでくる。

 

そうして6人になった彼らがオークションに参加する為、空いている場所を探そうと歩き出した時だった。

座席の方を見たハチが驚いた声を上げたのだ。

 

 

「えっ…!!」

 

「どうしたんだ…?」

 

驚き固まったハチにチョッパーが声をかけ、他のメンバーも何事かとハチへ振り返った。

 

 

「まさか……レオヴァさんか…!?」

 

「「れおう"ぁさん…??」」

 

「えっ…レオヴァ!?」

 

ハチの言葉にチョッパーとナミは首を傾げたがサンジはその名前に大きく反応し、フランキーは腕を組んでクエスチョンマークを浮かべている。

 

 

「おいタコ野郎…!

今、レオヴァって言ったのか…!?どこだ!!」

 

「あ、あれ!あそこだ!!」

 

ハチが指を指した方向へサンジはすぐに視線をやり、驚きに目を見開いた。

 

 

「……ありゃ…マジでレオヴァじゃねぇか……」

 

「ちょ、ちょっとサンジくん!

さっきから、そのレオヴァって誰なのよ!」

 

ワケが分からないという表情で言うナミにサンジは笑顔で答える。

 

 

クソほど頼りになる野郎さ…!!

ジジィの店を設計したのもレオヴァだ!」

 

サンジの返答にナミが声を上げる。

 

 

「えっ…!?

サンジくんのいたバラティエを!?」

 

レオヴァの座っている席へ向けて歩き出したサンジとハチの背を、他のメンバーが慌てて追う。

 

 

「レオヴァ…!」

 

「レオヴァさん!」

 

サンジとハチの同時の呼び掛けに座っていた男がゆっくりと振り返る。

 

 

「サンジと……ハチ?

どういう組み合わせだ?

そもそもなんでこんな場所にいるんだ。

特にハチ、こう言う場所は危ないと教えただろう。」

 

「ニュ~…すまねぇ、レオヴァさん……けどそうも言ってらんなくて…」

 

ハチに優しく諭すように声をかけるレオヴァにサンジが間に入り、口を開く。

 

 

「それよりレオヴァこそ、こんな気分悪ィ場所でなにしてるんだよ。」

 

「それはサンジもだろう?

おれはちょっとした用事(・・・・・・・・)で来てる。

……で、なんでハチと一緒なんだ?」

 

首を傾げるレオヴァにサンジが言葉を続ける。

 

 

「用事か……まぁ、おれ達も用事があって来てるんだ。

ケイミーちゃんって子が人攫いにな……」

 

悔しげに唇を噛むサンジのその言葉だけでレオヴァは察したようで、不快そうに眉を寄せた。

 

 

「成る程……確かケイミーはたこ焼き屋で働いているハチの友人だったか。

海軍のお膝元だかなんだか知らないが、相変わらずここの治安は最悪だな。

……ところで、そのハチの友人を取り戻す為の資金はあるのか?」

 

心配そうな声を出すレオヴァにナミが答える。

 

 

「えぇ、2億ベリーはある。

絶対にケイミーは取り戻すわ。」

 

強い眼差しでキッパリと言い切ったナミにレオヴァが優しく笑いかける。

 

 

「そうか…!

何かあれば手を貸そう。

ハチはジンベエの大切な仲間だ。

その友人を助ける為の助力は惜しまない。」

 

「ニュ~~~!レオヴァさんっ!」

 

感激だと胸を押さえるハチの隣でサンジはニッと笑い、ナミも軽く返事を返した。

 

その時、扉をくぐった天竜人が奴隷へ文句をつけ騒ぐと同時に、舞台にいた男が血を流し倒れたせいでオークション会場が一気にザワザワと騒がしさを増す。

 

司会は瞬時に空気が悪くなった事を感じ舞台の幕を一度閉じて、意気揚々と目玉商品の紹介を始めた。

 

 

「──多くは語りません。その目で見て頂きましょう!!

魚人島からやってきた!!!

“人魚”のォ…ケイミー~~~!!!!

 

司会者の声と共に現れた若い人魚、ケイミーの姿に一気に会場が沸き立つ。

 

活気を取り戻した会場一帯に満足そうな笑みを浮かべながら司会者がマイクを口元へ持っていく。

そして、競りをいくらから始めるのかを宣言しようとするよりも早く会場に大きな声が響いた。

 

 

5億ベリーィ~~~!!!

5億で買うえ~~~~!!!

 

会場は一瞬にして静まり返り、愕然(がくぜん)とした表情をうかべている。

そして、誰もが相手が悪いと諦めたように項垂れた。

 

 

「……何それ…!!いきなり

 全然足りない……!!」

 

予想外の展開にナミが絶望したような声を出す。

けれど、無情にも司会者は落札を確定させるために言葉を紡いでいく。

 

 

「えー…一応!!

5億以上!!ありますでしょうか!?

なければこれで早くも打ち止めという事に!!」

 

静まり返る会場にチョッパー達が切羽詰まった様子で声を出す。

 

 

「何とか出来ねぇかな!何か方法ねぇかなァ~~!!

こんなのねぇよ!金で友達連れてかれるなんてイヤだよ!!」

 

取り乱すチョッパーの横でサンジは険しい顔をしながら、ケイミーを真っ直ぐ見ている。

 

 

「…マズいな……!!

これは予想だにしてなかった。

金で解決出来るならと身を引いたら状況は悪化しちまった。」

 

「ニュ~~おれこうなったら力強くであいつを海へ…!」

 

慌てて止めるパッパグを、ハチが振り切って前へ出ようとした時だった。

 

 

…6億だ。」

 

「へ……ろ、6!?………6億ベリー!!

後の席の御仁が6億ベリー入札!!

他の方で6億以上の入札希望ありますでしょうか…!?

 

司会者の声が裏返りながらの問いかけに、会場にどよめきが起こる。

 

辺りがザワつくなか、6億と宣言したレオヴァの方をサンジ達が驚きの表情で振り返った。

 

 

「ろ、6億って……そんな金あんのかよ!?」

 

思わず声を上げたサンジにレオヴァは何でもなさげに言って見せる。

 

 

「6億程度をおれが準備できないと思うのか、サンジ?」

 

「っ……そう言えばレオヴァは海賊とは思えねぇくらい商売ばっかりしてたな…!」

 

思い出したというようにサンジが笑ったのも束の間、会場にまた天竜人の声が響く。

 

 

7億ベリー出すえっ~~!!

 

「ななっ……7億にて世界貴族のチャルロス聖様っ!ご入札!!」

 

会場に響く驚きの声を背に天竜人であるチャルロスは勝ち誇ったようにレオヴァを振り返り、司会者も額に汗を浮かべながらレオヴァの方を伺った。

 

 

10億ベリー。

 

良く通る声でハッキリと告げられた膨大な金額に会場の人間も司会者も目を点にして固まる。

そして数秒の沈黙が流れていたが、それを破るようにガタッと音をたてながら天竜人が立ち上がった。

 

 

「お、お前っ……!

下々民(しもじみん)の癖に邪魔をするなんて生意気だえ!!」

 

癇癪を起こしている天竜人を見て、レオヴァは眉を潜め不快そうな表情で答える。

 

 

「邪魔…?

生憎なにを言っているのか分かりかねる。

ここはオークション会場、競り合うのは当たり前だと思うがな。

それとも何か?天竜人ともあろう者が下々民との競り合いにも勝てないほど金がないのか?」

 

っ~~!!

無礼…!無礼にも程があるえ~~!!

ムカつくからお前はここで死刑にすると…今、決めたえ!!!

 

顔を真っ赤にしている天竜人が銃口をレオヴァに向けた。

 

その行動に隣に座っていたローが素早くベポから刀を受け取り、天竜人に狙いを定めた時だった。

 

 

ドガァァン!!

という、けたたましい音と共にオークション会場に何かが降ってきた。

 

騒然となる会場だったが、そんな中でも降ってきた人物をいち早く発見したサンジが叫ぶ。

 

 

「ルフィ!!!」

 

しかし、そのサンジの呼び掛けは不時着直後でゴタゴタしているルフィとゾロには届かなかった。

そして、ケイミーを見つけたルフィが舞台の方へ走り出してしまう。

 

 

ケイミー探したぞ~~!!よかった~!!!

 

嬉しそうに叫ぶルフィの行動を不味いと判断したハチが誰よりも早く行動に移した。

なんと走り出したルフィを止めるべく、飛び付いたのだ。

 

 

「ちょっと待て麦わら!!何する気だよ!!」

 

「何ってケイミーがあそこに!!!」

 

「いるけど爆薬首輪がはめられてるから、そのまま連れ出せねぇんだ!!

今、レオヴァさんが落札しようとしてくれてるから待てッ!!!」

 

言い合いながら引きずられていたのだが、ハチの言葉にルフィが足を止める。

 

 

「えっ…!レオヴァって…

 ツノ()がいんのか!?

 

「そうだ!レオヴァさんが……って麦わらツノ()なんて呼び方失礼だぞ!?

って、そうじゃなくて!お前レオヴァさんを知ってんのか?」

 

ルフィの言葉にハチも驚きを露にしていたが、急に座席から悲鳴が上がった。

 

 

きゃああ~~~~!!!

魚人よ~~!!気持ち悪い~~~~!!!

 

「なにッ!?

ここの警備はどうなっているんだ!!」

 

「魚人!?嘘だろう!?」

 

座席にいた裕福そうな人間達の拒絶を示す態度にハチはしまったと、慌て始める。

どうやら先ほどルフィを止めようとした時に隠していた2つの腕を無意識に使ってしまったようだった。

 

次々に酷い言葉と物を投げ付けられるハチの姿にサンジ達が動揺している中、ルフィが怒った顔で前に進む。

 

 

おい、やめろよ!!

なんでハチに物を投げるんだ!!!

 

前の方の席から飛んできた物を叩き落としながらルフィは前に進む。

しかし、その進行を止めるようにオークション会場の衛兵達がルフィを押さえ込もうと掴みかかった時だった。

 

ハチに向かって何発もの銃弾が襲い掛かったのだ。

 

それはほんの一瞬の出来事だった。

息を飲んだナミ達の前で嬉しそうに天竜人が笑う。

 

 

「むふふふ むふーん むふーん♪

当たったえ~~っ!!魚人を仕留めたえ~~~!!

 

鼻歌を歌う天竜人の周りでは人間達がハチが倒れたことに安堵したような言葉を交わしている。

 

そんな惨劇を前に舞台上の水槽に閉じ込められているケイミーは泣きながらガラスを力一杯叩いた。

大好きなハチが撃たれた現実は彼女の心をどれ程抉ったかは計り知れない。

 

だが、ケイミーの叫びなど聞こえぬ天竜人は嬉しげに声を上げ続ける。

 

 

「自分で捕ったからこれタダだえ?

得したえー 魚人の奴隷がタダだえ~~~~!!

タ~ダ タ~ダタコがタダ~!!

 

その瞬間、踊る天竜人に向かってルフィが一歩を踏み出した。

 

怒りを纏ったルフィはそのまま階段を上り倒れたハチの横を通りすぎて、どんどん近づいて行く。

そのルフィの姿にパッパグが慌てたように声を振り絞って叫んだ。

 

 

やめろムギ!!!

おめェらもただじゃ済まねェぞ!!!

 

パッパグの叫びでも、(いか)るルフィの足を止めることは出来なかった。

 

そのまま天竜人へ距離をつめていくルフィに周りは嘘だろ!?と目を見開き、様子を見ていたキッドも本気か?と驚きを隠せない。

 

 

「なんだえ、その顔は!

お前もムカつくえ~~~!!!

 

そう言って近付いて来るルフィへ天竜人はまた引き金を引いた。

……が、銃弾がルフィに当たることはなかった。

 

そして代わりに気付けば天竜人であるチャルロスが凄い音と共に殴り飛ばされていた。

 

 

「悪いお前ら……

コイツ殴ったら海軍の“大将”が軍艦引っ張って来んだって」

 

数秒、世界が止まったかのように静まり返った。

そして起こった事をやっと周りの人間が理解すると同時に、チャルロスと同じ天竜人が怒りを露にしながら銃を乱射したことでオークション会場は大混乱に陥った。

 

だが、麦わらの一味はルフィの行動に満足そうに小さく笑みを溢した。

その勢いのままサンジは銃を乱射する天竜人を蹴り、ゾロと共に衛兵達を簡単に()していく。

 

会場にいた人間達はどんどん逃げ出して行き、麦わらの一味の残りのメンバーが屋根を壊しながら参戦して来たためオークション会場は混沌と化した。

 

大混乱を極める会場の中でも勢い付いていく麦わらの一味だったが、いつの間にか舞台の上に1人の天竜人が上がりケイミーへ銃を突き付けていた。

 

絶対絶命のピンチに麦わらの一味がそれぞれ動こうとした時だった。

 

 

ROOM(ルーム)”……“シャンブルズ”

 

会場にいた人間達が舞台からケイミーが一瞬で消えた事に困惑した直後、後から嬉しそうな声がこだまする。

 

 

は…はっちん!!良"か"った"あ"~~~!!

死んじゃったかと思ったよぉ~~!!!

 

「ニュ~~…

け、ケイミー静かにってレオヴァさんに言われたのに!」

 

何故か無傷なハチに抱き付いてケイミーは安堵の涙を流している事に麦わらの一味が目を見開く。

 

 

えぇ~~!?どうなってんだ!?

 ハチ無事なのか~~!?

 

そう叫ぶルフィを気にせずにレオヴァはケイミーの首輪に手をかけた。

突然の事に困惑しながらも、首輪が爆発してしまっては不味いとナミが声をあげる。

 

 

「ちょっと待って…!!その首輪は…!」

 

ナミが言い終わるよりも早く、爆発音が会場に響いた。

 

唖然とする一味だったが、煙が晴れたそこには何事もなくケイミー達がいる。

 

何がなんだか分からずに大きく目を見開いたままの麦わらの一味を余所にレオヴァが口を開く。

 

 

「すまないが、もうすぐここは爆発する予定なんだ。

そろそろ解散してもらっても構わないか?」

 

「爆発…?」

 

何を言ってるのかと言うような顔でレオヴァを見るサンジ達へ言葉を続ける。

 

 

「元々、おれはこの場所を潰す為に来たんだ。

本来は奴隷を全員買い取ってから爆発させる予定だったんだが……まぁ、この際それはいいか。

海賊らしく破壊していくことにした。」

 

「レオヴァの用事って人間(ヒューマン)オークションを潰すことだったのかよ…

相変わらず無茶苦茶やってんな。」

 

少し笑いつつも呆れたような顔で言うサンジにレオヴァは心外そうな顔をして口を開く。

 

 

「サンジ……お前の所の船長の方が無茶苦茶やってると思うが?」

 

「「「……ひ、否定できない」」」

 

サンジとナミとウソップの声が思わず揃う。

一瞬、気が抜けていた三人に衛兵達が襲い掛かろうとした時、舞台を仕切る壁代わりの布がビリビリと大きな音を立てながら破けた。

 

今度はなんだと衛兵達がそちらを振り向くと、巨人と老人が舞台の奥から現れた。

この場にいる全員の注目を浴びている老人は呑気に呟く。

 

 

「ん?

何だ、ちょっと注目を浴びたか。」

 

ゆったりとした老人とは真逆に衛兵達が商品が脱走したと騒ぎ、更には巨人なんか止められないと動揺し始めた。

 

一方で狼狽える衛兵達を気にする素振りもなく老人は辺りを見渡し、ある人物を見つけると嬉しそうな顔をして口を開いた。

 

 

「おお!?

ハチじゃないか!?そうだな!!?久しぶりだ。

何しとるこんな所で!!」

 

大きな声で問いかけた老人だったが、周りを見て何かを察したのか言葉を続ける。

 

 

「あ~…いやいや言わんでいいぞ。

……ふむ………ふむふむ……成る程。

…まったく、酷い目にあったなハチ。

どうやら、君たちが助けてくれたようだな。」

 

老人は優しい声で言うと、ふぅと息を吐きまた小さく呟いた。

 

 

「──さて…」

 

そう言うと同時に老人から凄まじい威圧感が放たれ、バタバタと衛兵達が倒れていく。

 

 

「え……え!?

何で!?何した今!?」

 

「何だこのじいさん…!!」

 

「………!!」

 

あまりの威圧感にルフィ達がうっすらと汗をかいていると老人が徐に言葉を紡いだ。

 

 

「その麦わら帽子(・・・・・)は……精悍(せいかん)な男によく似合う……!!

会いたかったぞ、モンキー・D・ルフィ。

そして……百獣海賊団総督補佐官レオヴァ。

 

真っ直ぐとルフィとレオヴァを見据える老人を見て、サンジやゾロ達はルフィに知り合いかと問う。

 

 

「おれ知らねェって、本当に!!」

 

ブンブンと首を横に振るルフィに仲間達も困惑が隠せずにいるとレオヴァが口を開く。

 

 

“冥王”シルバーズ・レイリー…!

伝説はいくつも聞いていたが……」

 

「めいおう…?」

 

レオヴァの言葉にルフィが首をかしげていると、レイリーが軽く眉を下げながら口を開いた。

 

 

「この島ではコーティング屋の“レイさん”で通ってる。

下手にその名を呼んでくれるな。

もはや老兵……平穏に暮らしたいのだよ。」

 

 

「それはすまない…

で、“レイさん”はハチと知り合いなのか?」

 

「「「いや、フレンドリーかよっ!!」」」

 

思わず突っ込みを入れたウソップとゾロとナミにレオヴァは首を傾げつつ答える。

 

 

「本人にそう呼んで欲しいと言われたからそうしただけだったんだが……

相手にも事情や立場があるだろう?」

 

「相変わらず真面目っつーかズレてるっつーか…」

 

呆れ顔で呟くサンジの正面で、思わずと言ったようにレイリーが笑う。

 

 

はっはっはっはっ…!

噂通り面白い男だな、百獣海賊団総督補佐官くん!

実は前々からぜひキミにも会いたいと思っていたのだよ。」

 

「ありがとう。

しかし、その呼び名は長いからな……レオヴァでかまわない。」

 

「そうか、ではレオヴァくんと呼ばせてもらうとしよう。

……だが、せっかく会いたかった2人に会えたと言うのに、どうやら時間がないようだな。

話は後にして、まずはここを抜けねば…」

 

レイリーの言葉尻に被せるように外からの呼び掛けが響く。

 

 

犯人は速やかにロズワード一家を解放しなさい!!

直、“大将”が到着する。

早々に降伏する事をすすめる!!どうなっても知らんぞ!!!百獣海賊団に、ルーキー共!!

 

スピーカーからの音声が終わるとレイリーがまた口を開いた。

 

 

「あー…私はさっきの様な“力”はもう使わんのでキミらで頼むぞ。

海軍に正体がバレては住みづらい。

まぁ、キミらならば問題なさそうだが。

私はハチや奴隷にされそうだった彼らを連れて先に行かせてもらうよ。」

 

ニコリとルフィとレオヴァ達に笑いかけるとレイリーは何人もの人達を連れて行ってしまった。

 

すると、一部始終を壁によりかかって眺めていたキッドが出口へ向かって動き出す。

 

 

「もののついでだ。

面白ェもんも見れたし、お前ら助けてやるよ!

表の掃除はしといてやるから安心しな。」

 

ヒラヒラと手を振りながら外へと歩いて行くキッドの方へ、むっとした表情でルフィが飛び出して行く。

 

 

「……レオヴァさんは座っててくれ、すぐに片付けてくる。」

 

「あぁ、任せたぞロー。

おれは本来の目的に取り掛かからせてもらう。」

 

ルフィとキッドの背を睨み付けながら立ち上がったローをレオヴァはクスりと笑いながら見送った。

 

 

「海軍大将……今、シャボンディ諸島に近いのは黄猿だけだな。」

 

そう呟いたレオヴァは懐から電伝虫を取り出し、連絡を取り始めたのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

───ほぼ同時刻の聖地マリージョアにて。

 

 

険しい表情で頭を抱えているセンゴクが唸るような声を出していた。

 

 

「……また百獣海賊団と…あの小僧か……!!

次から次へと……!」

 

忌々しげに呟くセンゴクに、報告に来ていた部下が続ける。

 

 

「情報では“百獣海賊団”と“麦わらの一味”に加え、海賊ユースタス・キッドと仲間数名。

さらに現在シャボンディ諸島内に賞金首は10名以上、億超えも多数確認されているとのことです!

主犯格は当然“天竜人”に危害を加えたモンキー・D・ルフィと、奴隷解放に動いた百獣の息子レオヴァと見られています。

人間屋(ヒューマンショップ)”……あっ……いや、“職業安定所”の衛兵達とも連絡が断たれており…

おそらく全員やられてしまっているのではと……

とにかく、天竜人を人質にとった前代未聞の凶悪事件と判断しております!」

 

苦虫を噛み潰したような顔で報告を終えた部下にセンゴクが間髪入れずに問う。

 

 

「──何か奴らから要求はあるのか?」

 

「いえ、今の所は……!!」

 

この最悪の事態に低く唸るセンゴクの姿を見て、ソファーに座っていた黄猿ことボルサリーノが声をあげた。

 

 

「何がどうであれ世界貴族に手を出されて我々が動かん訳にはいかんでしょう~…センゴクさん。」

 

「黄猿……」

 

「わっしが出ましょう。

それに“ベガパンク(・・・・・)”が造ったパシフィスタ(・・・・・・)の性能を知らしめるのに持ってこいの場面でしょうよ~?」

 

ボルサリーノの口から出たパシフィスタと言う単語にセンゴクは一瞬難しい顔をしたが、ゆっくりと頷いた。

 

 

「確かに、一理ある…

この後に控えた戦争の件もあるんだ、頼んだぞ。」

 

「えぇ~。すぐに戻りますんで……まぁ、ご安心なすって。」

 

そう言ってボルサリーノはシャボンディ諸島に向かうべく進み始めた。

 

そして、電伝虫にて指示を出す。

 

 

「もしも~~し、聞こえてるか~い?

今回はあっしが出るよぉ~。

パシフィスタも持って行こうと思うんだけど……そうだねぇ~2体でいいよ~。

この後の戦争で使うからほとんど、あっちに送られてるみたいだしねぇ~…

すぐに行くから、それまで頼むよ~~?」

 

ボルサリーノは電伝虫からの返事を聞くと、軍艦へ向けて光になって消えていったのだった。

 

 

 

 




ー補足ー

・人間オークション会場
数年前にドフラミンゴが捨て、他の貴族の経営になっている。
レオヴァはここを潰す為に来ていた。
理由はこの場所が前にワノ国の人間を売ろうとしていたので記録など諸々を抹消する為。
(実際にはワノ国の人間は売り飛ばされる前にレオヴァが交渉して買い取っている)

ベガパンク(?):遺体はレオヴァが管理しているはず…
ならば黄猿の言っているベガパンクとは…?

ハチ:ジンベエとも仲が良く、魚人街を豊かにしてくれたレオヴァの事を恩人と呼び慕っている
今作ではレオヴァの指示によってローがRoomで助けたので大きな怪我はない

アーロン:ハチや魚人街の人々経由でレオヴァとは知り合っている
人間は下等種族!という思想は持っていだがレオヴァは“鬼”だと言い、魚人と同じく優れた“種族”だと発言している
口には出さないが大切な魚人街の奴らを助けてくれた事で多少信頼を置いていた
(同じ魚人達への情は厚い男)

ルフィ:相変わらず考えなしだが、数ヵ月前より何十倍も強い
レオヴァがケイミーの首輪を取ってくれたので「やっぱり、レオヴァいい奴だ!」となっている

ロビン:“レオヴァ”という名前に少し思う所があるがあるが、同姓同名だろうと思うことにした

ナミ:レオヴァと初遭遇だが、昔にハチ達が話していた内容は本人は忘れているようだ

レイリー:ルフィに会いたかった理由とレオヴァに会いたかった理由には大きな違いがある
今の“時代”に手を出す気はないようだが、果たして…

ディスコ:今回の騒動で確実に全てを失う男
ドフラミンゴから見限られていた時点で死亡フラグ確定演出だったが、気付かずに今日まで仕事を続けた

キッド&キラー:相変わらずレオヴァの財力どうなってんだ?と呆れたように競り合いを後から眺めてた
実は伝説の男“冥王”に会えてテンションあがっている

フランキー:レオヴァを少し警戒している
こいつ、ウォーターセブンであいつと…?

レオヴァ:本当はオークション終了と同時に奴隷を解放して、会場を爆発させる予定だった
そして瓦礫の下敷きになった天竜人を一匹ほど拐って行こうと謀っていたが、果たして天竜人を持って帰れるのか?
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