俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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シャボンディからの脱出

「い、一体どうなってるんだ…!?」

 

「駄目だ…!!奴らに迫撃砲はきかない!!

三人共…能力者だ…!!!」

 

そう叫ぶ海軍の前衛は三人の億越えの賞金首達によって完全に崩壊させられている。

 

ほんの少しの間に陣形も士気も崩された海軍が唇を噛んでいる間にオークション会場から一味が現れ、現場は大乱闘状態と化した。

 

 

「行くぞ、お前らァ!!」

 

前線を崩壊させた内の1人であるキャプテン・キッドの掛け声でキッド海賊団が道を阻む海兵達をなぎ払って行く。

 

ローが前進を始めたキッド海賊団を横目に入れていると、正面の数十人の海兵が一瞬で雷の餌食となる。

 

 

「な、な、なんで雷が…!?」

 

「今は晴天だぞッ…!?」

 

混乱する海兵達など気にせずにローは雷を落とした張本人を振り返った。

 

 

「レオヴァさん、もう例の用は済んだのか?」

 

「あぁ、この袋に入れてある。

おれはホーキンスとドリィを迎えに行くから、コレを持って先に船で待機していてくれ。」

 

満足げなレオヴァから袋を受け取るとローは頷いた。

 

 

「わかった。

コレは船で解体して、先に帰還する奴らにワノ国に持って帰らせるんだよな?」

 

「そうだ。

この後に一番重要な仕事(・・・・・・・)があるからな…

死なれたら回収した意味がなくなるだろう?

…運び(にく)いなら、今解体しても良い。

生きた状態で船に運んでくれ。」

 

「了解。

適当にバラして運ぶことにする。

……ベポ、行くぞ…!!」 

 

「アイアイ~!キャプテン!

じゃあ、レオヴァさま!おれ達船で待ってるね!」

 

「すぐに戻る、頼んだぞ。」

 

「うん!任せてよ!!」

 

指示を受けたローとベポは海兵を振り払うように走り出した。

 

レオヴァは飛び交う銃弾を気にすることもなく、先ほど流れで解放した奴隷に声をかける。

 

 

「…で、海賊キャプテン・ジャンバール。

どうだ、おれと来るか?」

 

その問いにジャンバールは周りの海兵を大きな拳で潰しながら答える。

 

 

「もちろんだ!!

天竜人から解放されるなら、喜んでアンタの部下になろう!!!」

 

ジャンバールの答えを聞いてレオヴァは嬉しそうに笑うと、ローとベポの背を指さした。

 

 

「なら、さっそくで悪いが…初仕事だジャンバール。

ローとベポ……あの2人について行き、さっきおれが回収したアレを無事船まで運んでくれ。」

 

「あんなのを回収した意味は分からねぇが……まぁ、任せてくれ。

あの2人の道を塞ぐ奴らをなぎ払えば良いんだろ?」

 

「いい返事だ……2人を頼むぞ。」

 

「あぁ…!

解放してもらった恩は返す!!」

 

そう言うとジャンバールは大きな音を立てながらローとベポの下へ向けて走り出す。

 

それを止めようと動く海兵達だが、ジャンバールの巨体はそれをものともせずに進んで行った。

レオヴァはジャンバールにロー達に追い付く勢いがあることを確信する。

そして目線を横に移し麦わらの一味を目の端に捉えると、彼らも海兵達に押し負けることなく、しっかりと退路を確保していた。 

 

 

そんな大乱戦の中で息の合った連携を見せながら走っている一味だったが、突然ルフィがレオヴァの方を振り向いて叫んだ。

 

 

「お~~い、ツノ()~~!!

ケイミーを助けてくれてありがとう…!!!」

 

後ろ向きに走りながら手を振ってくるルフィにレオヴァはニッコリと表情を作って返す。

 

 

「気にするな…!!

それよりも今は仲間を守ることを考えた方がいい!」

 

「おう…!わかった!!

またな~~!!!」

 

元気よく手を振るとルフィは仲間達と共にどんどん遠くへと走って行く。

 

そんな海賊達がいなくなった広場に1人残ったレオヴァへ海兵達が目標を定め、一斉砲撃をしようとした瞬間だった。

 

ドガァッン…!!

という爆発音が鳴り響き、オークション会場が吹き飛んだのだ。

 

唖然とする海兵達にレオヴァの声が届く。

 

 

「天竜人を助けに来たんだろう?

おれ達に構っていないで、瓦礫の下敷きになっているかもしれない天竜人を捜索することを勧めるが。」

 

告げられた言葉を受け、ハッとしたように海兵をまとめている男が指示を出す。

 

 

ろ、ロズワード一家の捜索にかかれ…!!

事は一刻を争うぞ!!!」

 

顔を真っ青にしながら崩れたオークション会場へ向かって走り出した海兵達が必死に瓦礫を掻き分けている姿を後目(しりめ)に、レオヴァは腕を翼に変えた。

 

そして空へ舞うと、小さな火の玉を数個作り出す。

 

 

その火の玉はレオヴァの翼の風圧で瓦礫の方へふわふわと舞って行った。

レオヴァはその火の玉が着地するのを見届けずに、ドレークの気配がする方へ空を進んで行く。

 

 

小さな火の玉たちはそっと瓦礫へと降り注いだ。

 

 

 

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オークション会場から船へと向かっていたロー達は追手を振り切るべく、橋を壊すことに成功していた。

 

 

「橋を壊すのはいい判断だな。」

 

そう言ってニッと笑うローにジャンバールが軽く頷いて答えていると、追手がある程度撒けたことで余裕を見せ始めたベポが横につき、口をひらいた。

 

 

「なぁ、名前なんて言うの?」

 

「ジャンバールだ。」

 

「そっか、よろしく!

あとお前新入りだから、おれの下ね!」

 

「奴隷でなきゃなんでもいい…」

 

気の抜けた会話をしていたベポとジャンバールだったが、いち早く何かに気付きベポが声を上げる。

 

 

キャプテン、アレ…!!

 

ベポの緊張感のある声にローがそちらを見て、少し目を見開いた。

 

 

「……!?

ユースタス屋と……アレは…!!」

 

ロー達がそのまま走って行くと、七武海バーソロミュー・クマの様な男(・・・・・・・・・・・・・・)がキッド達と戦闘を繰り広げている。

 

 

「トラファルガー・ロー……」

 

七武海と思われる男がローを視界に捉えながら呟いた。

 

自分を前にしながらローへ目線を向けた目の前の男にキッドが苛立ったように叫ぶ。

 

 

「手当たり次第かコイツ!!

トラファルガー、てめぇ邪魔だぞ。」

 

「消されたいのか?

命令するなと言った筈だ。

……それにコイツとはやりあって情報を得る必要がある。」

 

「チッ……てめぇ、足引っ張んなよ…!!

 

「…こっちの台詞だ。」

 

キッドとローが同時に構えると七武海と思われる男の口から光線が放たれる。

 

2人はそれを危なげなく躱すと、各々攻撃を始めた。

 

そしてローとキッドに続くようにキラー達とベポ達も光線を放つバーソロミュー・クマのような男へ向かって行くのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

───シャボンディ諸島のある広間にて。

 

 

懸念通り現れた大将と七武海バーソロミュー・クマの様な男(・・・・・・・・・・・・・・)に挟まれる形で海賊達が死闘を繰り広げていた。

 

 

 

そんな中先ほどまで満身創痍に見えたウルージが突然巨大化し、物凄いパワーで七武海であるクマの様な男を吹き飛ばす。

 

その光景を見たホーキンスは驚いた表情で呟いた。

 

 

「今の今までくたばり損ないだった男が……巨大化した上にこの(パワー)……能力者なのか?」

 

そう呟くホーキンスはウルージの正体を計りかねていた。

 

しかし、ウルージの強烈な一撃を受け、崩れた建物の方向から急に光線が放たれた。

 

 

「ぐわァ!!()つ…!」

 

肩に風穴が空き、ドサリと倒れ込んだウルージを見下ろすように砂埃から現れたクマのような男はピンピンしているように見える。

 

 

一方、今までの一連の状況を見ていたドレークは冷静にクマのような男をじっと見据えていた。

 

 

「(あれがレオヴァさんの言っていた平和主義者(パシフィスタ)…!

レーザー光線の設置も成功しているようだな……)」

 

考え事を終えるとドレークはクマのような男、パシフィスタ(・・・・・・)に向かって走り出した。

 

ウルージに追撃を与えようとしていたパシフィスタだったが、その突撃に気付いたのか左手をドレークに向ける。

 

 

その頃、この光景を建物の上から見物していたアプーが面白そうだと声を上げていた。

 

 

「うっは!!

コリャまた面白ェ展開になってきたじゃねぇか…!

百獣海賊団幹部VS七武海…!!

だが、黄猿もいるとあっちゃ…ちょいとアンフェアすぎるかァ?」

 

「ちょ、アプーさん!

冗談抜きにそろそろ逃げねぇと…!!」

 

焦ったアプーの部下が叫ぶのと、それは同時だった。

 

 

「おぉ…!!」

 

ウルージの感心したような声が上がると、パシフィスタの左手がボタッと地面に落ちたのだ。

斬られた左手首からは赤い液体がポタポタと草の上に垂れている。

 

 

「ほォ……貴様にも赤い血が通っているとは驚いた!」

 

パシフィスタとの戦闘でも少しの余裕を覗かせるドレークの姿にウルージは感心したように笑う。

 

 

「流石はあの百獣海賊団の幹部と言った所か…!」

 

しかし、その一瞬の隙にウルージの背後に回っていた黄猿ことボルサリーノが口を開いた。

 

 

「わっしもいると言ったハズだよォ~…」

 

振り返るよりも早くボルサリーノの重い蹴りが横腹を貫き、その一撃でウルージは幾つもの建物を突き抜けて行ってしまう。

 

すると側にいたホーキンスの体を藁が覆っていき、怪物のような姿でボルサリーノに攻撃をしかけた。

 

 

「どいつもこいつも…“億”を越える様な輩は化け物じみていてコワイね~……」

 

「ッ……グ…!」

 

そう言いながらホーキンスの攻撃をさらっと躱し、何発もの光線を浴びせる黄猿からは余裕が伺える。

 

 

「ホーキンス…!!

それ以上は攻撃を受けすぎだ!」

 

叫びながら助けに入ろうとするドレークの耳に賑やかな音が届く。

 

 

届いてるかーー!? この音楽(ミュージック)

聞こえてたらステイチューン!! 海軍大将黄猿ゥ~!

 

建物の上から小気味の良い音を響かせるアプーを思わず一同は見上げた。

 

 

「あいつは……“海鳴り”」

 

そう呟くドレークの声がかき消される勢いで音楽は続く。

 

 

エッビバーリー!!聞いてけ“戦う音楽(ミュージック)”♪

スクラ~~~~ッチ!!“(シャーン)♪”

 

アプーの音楽と同時にボルサリーノの左腕が斬られたかのように飛んで行く。

さらに畳み掛けるようにアプーが長い腕で自分の胸を叩いた。

 

 

(ドーン)”♪

 

その音楽と同時に激しい爆発がボルサリーノを襲い、その体は地面に音を立てて倒れていく。

 

 

「アッパッパッパッパ!!

チェケラァ~~~~~~っ!!!

 

ビシッと楽しげにポーズを決めるとアプーは続ける。

 

 

「ま!こんなもんでやられてちゃ海軍本部“最高戦力”とは呼ばれねェだろうがなっ!!

面白ェモンも見れたし、ほんじゃトンズラこくぜ!!あばよっ!!」

 

 

高笑いしながら建物の上をピョンピョンと走り去って行くアプーだったが、おもむろにボルサリーノは立ち上がり光が集まるようにして元の体に戻っていく。

 

 

「お~~~~……びっくりしたね~~…」

 

あれだけの爆発を受けてもなお、無傷なボルサリーノがそっと手で円を作る。

 

 

「“八咫鏡(やたのかがみ)”」

 

その声と共に一瞬でボルサリーノが消え、突然遠くにいたアプーの視界が(まばゆ)い光で遮られた。

 

次の瞬間、物凄い音と同時にアプーが真下へ蹴りおとされている。

 

あまりに一瞬の出来事で目を見開いていたドレークとホーキンスだったが、アプーを蹴りおとした筈のボルサリーノがまた視界から消えた。

 

そして、気付けば目の前に移動してきていたボルサリーノにドレークは防御が間に合わないことを悟る。

 

 

「しまった…!!」

 

 

ドレークが避ける間もなく、衝撃音が広間に響き渡った。

 

 

 

「おっかしいねェ~~…

今、そこの賞金首の頭を文字通り消し飛ばすつもりだったんだけど

これ止められちまうのは想定外だねェ~~…」

 

ボルサリーノはサングラス越しにジロリと突然現れたレオヴァを凝視した。

 

レオヴァはボルサリーノの蹴りを同じく蹴りで弾き返し、ドレークとホーキンスの前に立つといつも通りの物腰柔らかな態度で答えた。

 

 

「これ以上、おれの大切な部下に手を出すのは止めてくれ。

ここからはおれが相手になる。」

 

言い終えると同時に黄猿を蹴り飛ばしたレオヴァは、こちらへレーザーを放とうとしてくるパシフィスタの首を造り出した槍で切り落とすと、そのままドレークとホーキンスに向き直り眉を下げながら声をかけた。

 

 

「迎えが遅くなって済まなかった。」

 

謝るレオヴァにドレークとホーキンスが申し訳なさげに答える。

 

 

「……もう少しストックを保てるよう立ち回れなかったおれのミスです…」

 

「大将相手とはいえ不甲斐ない姿を…!

すまない、レオヴァさん!!」

 

深刻そうな顔をする2人にレオヴァは小さく笑う。

 

 

「いや、大将相手に倒されずにこれだけ時間を稼げたのは凄いことだ。

ロー達には“アレ”を持たせて船に向かわせた。

ドレークとホーキンスも船へ戻って次の“本命の任務”の準備を進めていてくれ。」

 

「承知しました。」

 

「了解だ、レオヴァさん。」

 

ドレークとホーキンスは頷くと即座に船に向かって踵を返した。

 

 

「億越の賞金首を逃がす訳にはいかんでしょ~~…」

 

いつの間にかドレークとホーキンスの正面に回っていたボルサリーノに2人は驚きに目を見開いたが、レオヴァの振り下ろした刀によってボルサリーノは後退を余儀なくされる。

 

ドレークとホーキンスはボルサリーノを抑えるレオヴァの背を見ると、そのまま指示通り船への帰路を走り出した。

 

 

「“天叢雲剣(あまのむらくも)”」

 

ボルサリーノは光で剣を造り出し、レオヴァの刀を受け止める。

 

 

「フー……困ったねェ~~

百獣のカイドウの息子は病弱で指揮しか取れないって話じゃなかったか~い…?

う~ん…ルーキーと数名の若い幹部を捕える簡単な仕事だった筈なんだけどね~……」

 

「おれは1度も自分で病弱だと宣言したことはない。

それとウチの幹部を簡単に捕えられると思っていたなら……それは楽観視がすぎるな。」

 

会話しながらも戦闘を続ける2人の周りの建物や木はどんどん無残な形へと変わり、街が廃墟と見紛う姿になり始めていた。

 

そしてボルサリーノの斬撃と光線をレオヴァが易々と往なし、反撃の為に一歩踏み込んだ時だった。

 

 

ガキィッン…!

と鋭い音と共にレオヴァとボルサリーノの攻撃が止められる。

 

2人の間に割って入って来た男、レイリーが男らしい笑みを浮かべながら口を開いた。

 

 

「そこまでにしないか、2人とも。

このままキミらが戦闘を続けてはシャボンディ諸島がめちゃくちゃになってしまう。

…ここは私の顔を立てて剣を収めてはくれないかね?」

 

涼しい顔で攻撃を受け止めているレイリーにボルサリーノが驚いた表情を浮かべた。

 

 

「あんたがこの島にいる事は度々耳にしていたけどねぇ……本当だったんだねぇ~~」  

 

ボルサリーノはすっと少し距離を取ると、悩むような仕草のあとに言葉を続けた。

 

 

「わっしとしても……ここでレイリーさんと情報とは違う(・・・・・・)カイドウの息子相手にするのは避けたいけど…

報告では病気がちで指揮のみの存在だと聞いていたのに、実物は親と同じで怪物じみているし……本当に困ったねェ~~…」

 

ポリポリと頭をかくボルサリーノにレイリーが笑顔で話しかける。

 

 

「私もレオヴァくんの噂以上の実力には驚かされたよ!

……だが、この場所でまだ戦闘を続けると言うのなら

私はレオヴァくんとの共闘もやぶさかではないがね。」

 

レイリーはボルサリーノからレオヴァに目線を向けてニッと笑った。

 

レオヴァは少し困った顔で笑いつつ言葉を繋げる。

 

 

「冥…“レイさん”が言うなら協力しよう。

おれは大切な部下達さえ無事に連れ帰れればいい。」

 

「……と、いう訳だが…

どうするかね、黄猿くん。」

 

ニッコリと笑顔で問うレイリーにボルサリーノは肩をすくめる。

 

 

「まったく、腐っても海賊って訳なのかいレイリーさん…!

今回の事件、百獣海賊団と麦わらの一味が主犯だと報告が上がってるんだけどね~~…

………んー、まぁ~…“百獣海賊団”からは一旦手を引くとするよ~~…」

 

そう宣言するとボルサリーノは光になって一瞬で消えて行き、その場にはレイリーとレオヴァだけが残った。

 

 

「……黄猿が居なくなったのなら、おれは船に戻らせてもらう。」

 

踵を返そうとしたレオヴァにレイリーが声をかける。

 

 

「ここに来る前、少しルフィくん達と話をしてきたよ。」

 

突拍子もない会話を降られたレオヴァは足を止め、それを見てレイリーは話を続ける。

 

 

「彼もまた“海賊王”を目指しているそうだ。

……まっすぐで、どこまでも自由な男だと私は感じた。」

 

優しく目を細めるレイリーへレオヴァが振り返った。

レイリーはそのレオヴァの目を真っ直ぐ見ながら言葉を続ける。

 

 

「ルフィくんは“自由”を体現したような男で、どこまでも自信に満ち溢れていた。

レオヴァくん……キミの立ち振舞いからはルフィくんとは少し違うが、確かに揺るぎない自信を感じる。

……だが、いまいちキミは分からないな。

大将相手にも引けをとらない圧倒的な力を持っていながら、自らが(・・・)他を支配しようという欲を感じない。

かと言って、自由……とは違うようにも思う。

ルフィくんとは違う意味で、私はキミを注目しているんだ。

レオヴァくん、一体キミは何処を目指しているのかね?」

 

こちらを見据えるレイリーにレオヴァは少し困ったように眉を下げた。

 

 

「……質問の真意を計りかねるな…

何故、おれに注目しているのかも疑問だ。」

 

「うむ…あまり深い意味などないのだがね…

ただ実力と正体をおぼろげにしていた(・・・・・・・・・)キミの情報が何故ここ最近で一気に出回ったのか……まるで情報を隠蔽しているのかと思う程に少し前まではキミの情報は噂程度のものしかなかったというのにだ。

謎多い男は魅力的だがレオヴァくん、キミの情報の少なさは異質に感じる。」

 

全てを見透かすような瞳で、いまだ此方を見据えるレイリーにレオヴァは少し目を細める。

 

 

「確かに、一理ある。

おれの情報が少なかったのは事実だ。

しかし、情報が少ない事とおれに注目することは別の話じゃないか?

世の中、話題にもならず情報も少ない者の方が多いと思うが…」

 

尤もなレオヴァの言葉にレイリーは笑ってみせる。

 

 

「はははは!

レオヴァくんの言う通りだな。

この広い世界では情報が多い者の方が少ないのは確かだ。

だが、そうだな…ならばキミに注目する理由を何と言えばいいか……」

 

少し考えるような素振りをみせたレイリーだったが、すぐにまた言葉を紡ぐ。

 

 

「勘…そう、年寄りの勘というヤツさ。

こう長く生きているとピンとくるものがあるものでね。

キミの“ある噂”を聞いた時に感じるものがあって、それからずっと注目していたのだよ。

けれど、なかなか情報が得られなくてな。

それでキミの情報の少なさに小さな違和感を感じいて、先のような話をふってしまったんだ。

不快にさせたのなら、謝ろう……すまなかったね。」

 

「いや、謝ってもらうようなことじゃない。

おれも少し意地が悪かった…奴隷になりそうだった彼らを誘導してくれた恩ある相手に対する態度ではないな……申し訳ない。」

 

真摯な対応で返して来たレオヴァを一瞬推し量るような目で見たあと、レイリーは心なしか申し訳なさげに眉を下げてみせる。

 

 

「いやはや、まったく噂通りだ。

突然、踏み込んでしまって悪かったね。

キミの目指す場所……目標が気になってしまって遠慮を忘れていたようだよ。」

 

そう小さく呟き一呼吸おくレイリーにレオヴァは口を開いた。

 

 

「……おれの目標が知りたいと言うなら、オークション会場での件もある。

しかし、聞いて面白いものでもないと思うが……」

 

遠慮がちに言うレオヴァにレイリーは小さく目を見開く。

 

 

「レオヴァくんが良いのなら、ぜひ聞かせて欲しいな…!」

 

またレオヴァの目を正面から見据えながら聞きたいと言うレイリーの為におもむろに言葉を紡いだ。

 

 

「……一言で表すなら…親孝行だ。」

 

「…親孝行?」

 

少し驚いた表情のまま、おうむ返しで聞いてきたレイリーにレオヴァは頷く。

 

 

「そうだ。

育ててくれた父さんに恩を返したい。

おれは笑ってる父さんが特に好きなんだ。」

 

きっぱりと言い放ったレオヴァの瞳をまじまじと見つめ、レイリーは困ったように笑った。

 

 

「……まったく、キミを知ろうと思って1度此方へ来たんだが…

まさか更に分からなくなるとは思わなかったよ……」

 

肩をすくめながら言うレイリーにレオヴァが少し不満そうな顔をする。

 

 

「聞かれたから答えたと言うのに、そんな反応をされても困る…」

 

「はっはっはっ!

それもそうだな、悪かった!」

 

思いの外素直なレオヴァの表情にレイリーは笑った。

 

その反応にレオヴァが少し文句でも言おうかと口を開いて、ハッした表情で話題を変える。

 

 

「冥お……“レイさん”、どうやら黄猿は麦わらのルフィ達の所に行ったようだが…?」

 

「レイさん呼びが言いづらいなら別に無理はしなくて良いぞ?

……っと、そのようだな。

先ほどの戦闘を見るにレオヴァくんは武装色が得意だと思っていたんだが、見聞色もずいぶんと鍛えているようだ。

話の続きはまた今度にしようか!百獣製の酒は美味いと聞いているよ…?

では、私はルフィくん達を少し手伝いに行くとする!」

 

次が楽しみだなと、言い残しレイリーは一瞬でその場を後にした。

 

ほぼ一方的に話すだけ話して去っていったレイリーに小さく溜め息をつくとレオヴァは今度こそ船へ戻るべく踵を返したのだった。

 

 

 

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不本意ながらもキッド海賊団と共闘しパシフィスタを破壊したロー達は無事船にたどり着いた。

 

その後、すぐローはベポとジャンバールに甲板で見張りをするように指示を出し、船の一番奥にある倉庫へと来ていた。

 

 

ドサリとレオヴァから預かった袋を台の上に置き1つずつ中身を取り出し、台の下にある箱へ移していく。

袋の中身はバラバラになった人間だが、どうやらローの能力らしくしっかりと息がある。

 

頭以外の部位を箱に入れ終わり、ローが施術用の針を取り出した時、コンコン…と控えめなノックの音が聞こえた。

 

ローは扉の前にいる男の気配を察知して振り向きもせずに答える。 

 

 

「…鍵は開いてる。」

 

返事を聞くとスッと扉が開き、ドレークが部屋の中へと入ってきた。

 

 

「レオヴァさんから預かったアレは無事か?」

 

台の方へ歩みを進めながら聞いてくるドレークにローは当たり前だというように首だけになったソレを持ち上げて見せた。

 

生首状態のソレが息をしている事を確認するとドレークは口を開く。

 

 

「相変わらず、生き物を解体して持ち運べる能力は便利だな…」

 

「まぁな。

…だが、天竜人を解体して持ち運ぶ日が来るのは予想外だった。」

 

ローの言葉に小さくドレークは笑う。

 

 

「フッ…そりゃ誰だって予想出来ないだろう。

……で、ソレの名前はなんだ?

生きたまま箱詰めするならラベルを貼らないとだろう?」

 

「確か……ロズワード聖、とレオヴァさんが言ってたな。」

 

「なるほど、ならラベルはT・R01だな…!」

 

どや顔で言うドレークにローは呆れ顔で返す。

 

 

「…お前……そうやって暗号みたいにするの好きだよな…」

 

「うっ……お前も薬に色んな記号を付けているだろう。

そ、それと同じだ!」

 

「それは研究用と医療用にレオヴァさんとクイーンも分かるように統一した記号だ。」

 

「そうだったのか…?

てっきりカッコいいからかと……」

 

「お前……」

 

ローは嘘だろ?と言うような表情でドレークを見やった。

 

ドレークはそのローの目線に堪えられなくなったのか、軽く咳払いをすると話題を変えるべく口を開く。

 

 

「ンンッ……そ、そんなことより!

パシフィスタとは戦闘したか?」

 

話題をすり替えたドレークにローは溜め息を吐きつつ、答えを返す。

 

 

「あぁ、ユースタス屋のせいで詳細なデータを取る間もなかったが…一応な。」

 

「そうか…

おれもホーキンスと共にデータを取るべく対峙したんだが、大将黄猿の襲来で詳しいデータは取れなかった…」

 

大きく肩を落とすドレークにある怪我を見て、ローは納得したような顔をする。

 

 

「珍しく怪我してるなとは思ったが、大将と鉢合わせたのか。

まぁ…少しの情報しか手に入らなかったとは言え、パシフィスタの構想(・・・・・・・・・)はレオヴァさんなんだ。

そこまで神経質になる必要もねぇだろ。」

 

「…確かにそうだな。

海軍の開発できる兵器の大半をレオヴァさんがコントロール出来ている現状があるのは事実……少し気負いすぎだったか。

今回パシフィスタのデータはあまり取れなかったが、もうすぐ起こる戦争で好きなだけ記録は取れるしな。」

 

「……ドレーク、また自称弟子からの情報か?」

 

「…あまり嫌な顔をしてやるな、コビーからの情報も役には立ってるだろう。

“別の案件”を任されているから今回の戦争には出られないそうだが、情報は握っていたようでな。」

 

「へぇ……まぁ一応使える奴ではあるみてぇだな。

レオヴァさんが生かしておいてる時点で利用価値があるのは分かってたが…」

 

ローの言葉にドレークは苦笑いし、話を続けようと口を開いた時だった。

 

 

~~っ!!?

な、なんだえ!?これはどうなって……!!

 

首だけになっていたロズワード聖が目を覚まし、騒ぎだしたのだ。

 

ローは思い出したかのように施術用の針を再度手に取った。

 

 

「口を縫い合わせる所だったのを忘れてた。」

 

「ぬ、ぬい……合わせる?

何、を……く…来るな!!近づくんじゃないえ…!!!

そんっ、そんな事してただで済むと…」

 

喚きたてるロズワード聖を気にせずにローは慣れた手付きで針に糸を付け、台の前に立つ。

 

 

「悪いが麻酔は使わない。

お前相手じゃ、薬の無駄遣いだからな。」

 

そう言ってローはロズワード聖の頭を抑え唇に針を刺していく。

 

尋常ではない叫び声に反応することなく、ローは淡々とした動作で唇を縫い合わせた。

 

そしてモゴモゴと何かを訴える頭を箱に投げ入れるとローはドレークを振り返った。

 

 

「なぁ…ドレーク、話は変わるが……

レオヴァさんがリスクを取ってコレを手に入れてまで調べたいって言うマリージョアには…一体何があるんだろうな?」

 

ニヤっとした顔で問いかけて来たローに、ドレークは少し考える素振りをみせた。

 

 

「……正直、まったく予想もつかん。

だが、レオヴァさんがそれを望むのなら…おれはそれを邪魔する奴らを排除するだけだ。」

 

キッパリと言い切ったドレークの言葉にローは笑うと同意するように口を開いた。

 

 

「だよな。

レオヴァさんがやるってんなら、おれもやる。

……邪魔する馬鹿共は切り捨てる。」

 

ローは縫合に使った針をゴミ箱に捨てると、箱にラベルを貼って出口へと歩きだした。

 

 

「行くぞ、ドレーク。

そろそろレオヴァさんも帰ってくる頃だ。」

 

「そうだな…!」

 

ローとドレークは重い扉を開き、甲板へと向かって行った。

重い扉で閉ざされた部屋に何重にも鍵をかけて。

 

 

 

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シャボンディ諸島から出航し、大空をゆったりと進む船に向かってキラキラと光る大きな鳥が向かってきていた。

 

その鳥は船の更に上まで飛んでくると、一瞬で人の姿になり甲板に着地する。

 

 

「レオヴァさま、おかえり~!」

 

「ただいま。」

 

飛び付いてくるベポを受け止め、船の中から出てきたローとドレークとホーキンスに目線を移す。

 

 

「ロー、箱詰めは終えたか?」

 

「さっき終えた所だ。

一応、口は閉じさせてあるから…あとは管を通せば持ち運びには問題ねェ。」

 

レオヴァはローの返事に満足げに頷く。

 

 

「よし、なら島に着いたら二手(ふたて)に分かれる。

ローとドレークはおれと共に捕まっている部下の救出へ。

ホーキンスはここにいる部下達全員を連れワノ国へ帰還して回収したアレを研究室に運び、おれが戻るまで監視してくれ。

…皆、今回のシャボンディでの任務はこれで完了だ。

予定通り進められたのは皆のおかげだ、ありがとう。」

 

その言葉に笑顔を浮かべる者や頭を軽く下げる者など各々の反応を返す。

 

レオヴァは締めの言葉を終え、真面目な顔からいつもの表情に戻るとパンッと軽く手を叩いた。

 

 

「じゃあ、島までは時間もあるし皆で茶でも飲んで一息つこうか!」

 

「いや、暢気(のんき)すぎるだろレオヴァさん…!!」

 

思わず声を上げたローをドレークが宥める。

 

 

「まぁ、島に着くまではやることもないんだ。

…おれは茶を用意してくる。」

 

「ドレーク……お前も悠長(ゆうちょう)なこと言いやがって…」

 

ムッとした表情をするローにホーキンスが口を挟む。

 

 

「時間はある、気を張り詰めすぎることもないだろう。

……お前はあの監獄に行くのは2度目と聞いているが…

それにレオヴァさんもいると言うのに、何を焦る必要があるんだ?」

 

「はぁ…ホーキンス、お前だいぶ変わったな。」

 

「……否定はしない。

ここに来てから少し価値観は変わったからな。」

 

話すホーキンスとローの背からレオヴァは声をかける。

 

 

「仕事熱心なのはローの良い所の1つだな。

しかし、メリハリも大切だぞ?

……と、いう訳でロー、甘くない塩味クッキーもあるしお茶にしよう。」

 

とても良い笑顔で懐からクッキーを取り出したレオヴァにローは悟ったような顔をする。

 

 

「……いつの間にクッキーなんて買ってたんだ…」

 

「ホーキンスと買い物に行ったんだ。」

 

「レオヴァさんは他にも幾つか菓子を買っていたぞ。」

 

「完全にレオヴァさんがその菓子試したいだけじゃねぇか!」

 

「流石はロー、おれの思惑がバレたか…

……だが、甘くないクッキーは珍しい(・・・)だろう?

ローも気に入るかもしれない!

そろそろドレークが茶を淹れ終わる頃だろうし、行くぞホーキンス。」

 

言い終わるとレオヴァはローの腕を掴んで船内へと歩き出した。

 

 

「ちょっ……レオヴァさん、おれ行くなんて…!」

 

腕を引かれて慌てるローをレオヴァは歩きながら首だけで振り返る。

 

 

「……じゃあ、一緒に茶をしないのか?」

 

「…………いや、まぁ飲むけど…」

 

ローの返事にレオヴァは嬉しそうに笑うと船の中の会議室へと歩みを進めるのだった。

 

 

 




ベガパンク(?):レオヴァが企てたシーザー引き入れの際に本人は確保された
このベガパンクの代役として送り込まれた人物はサイボーグであり、脳部分にも改造が施されている。
定期的にとある方法で脳のアップデートが行われることで、軍にて研究成果を出すことが可能に
本編でベガパンクが殺害されたと騒がれているシーンがなかったのは、政府が入れ替わりに気付いていない為(襲撃されたことは把握している)

シーザー:例の襲撃の際に政府からは死亡したと思われている為、手配書などは出ていない
今はワノ国で贅沢を満喫しており、少し太った

パシフィスタ:構想→レオヴァ、製造→ベガパンク(?)
作りや性能は原作とほぼ同じだが、所々で違うところがある
とある人造悪魔の実の能力者の力とレオヴァ渾身の研究成果を使い、本物のベガパンクの頭を覗くことで性能を原作に寄せることに成功
本来レオヴァの思い描いていた“パシフィスタ”とは別物になったが、結果原作通り七武海であるバーソロミュー・クマが犠牲になる

レオヴァ:昔からのクイーンの指導&知識欲のおかげでかなり優秀な脳を持っていたが、ベガパンクの頭を覗いたことで更に成長
しかし、全てを正しく理解出来ているとは限らない

クイーン:レオヴァとの共同研究と突拍子もないレオヴァの注文で科学者としての腕前が上がっており、専門分野以外のスキルも大幅レベルアップ
最近ではレオヴァの勧めで生物関係の研究も幅広く始めたことでウイルス兵器の強化も捗っている

ロズワード聖:体がバラバラになった状態で箱に入れられているが命に別状はなく、意識もある。
この後、ローによって栄養補給と排泄の為の管を入れられることを彼はまだ知らない…

ジャンバール:奴隷だったがレオヴァが首輪を壊したことで解放された
元々海賊だったという実績もありレオヴァに勧誘され、それを快諾
この後、レオヴァの指示によりローの直属の部下になる
ベポに弟分扱いされているが適当に合わせている辺り、彼はいい奴なのかもしれない
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