俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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ー前書き ー
・パンサル(オリキャラ)
今回登場2回目、ベポの兄貴の友人であり
ベポの兄貴が出ていった後世話をしていたヒョウのミンク
“ゾウでの一件”からネコマムシと共にワノ国へ移住し、百獣海賊団の船員になった。




再び巻き起こる脱獄事件

その場を支配する重い空気を前に、報告へ来ていた海兵はダラダラと冷や汗を流している。

 

そんな海兵からの報告を受けたセンゴクは仕事机の上で頭を抱え、忌々しそうな瞳で数枚の手配書を睨み付けた。

 

 

「天竜人に手を出されたというだけで、前代未聞だと言うのに…!

数日もの間2000人以上の人員を割いて捜索してもなお、その内の1人であるロズワード聖の行方(ゆくえ)が不明とは一体どういう事だ!!」

 

ドスッと机を拳で叩いたセンゴクの剣幕に完全に圧されながらも海兵はおずおずと口を開く。

 

 

「わ、我々が“人間屋(ヒューマンショップ)”……いや、“職業安定所”にお迎えに上がった時には既に完全に賊に制圧されており…

その後、謎の爆発によりオークション会場が倒壊。

そして突然の火災により全焼……なんとか天竜人である御二人の救出には成功し……様態は安定してはいるのですが、まだ目覚めておらず……ロズワード聖だけはどれだけ捜索してもご遺体すら見つかりません…」

 

項垂れる海兵にセンゴクは疑問を問いかける。

 

 

「これだけシャボンディ諸島を捜索しても見つからんと言うことは、連れ去られた可能性があるんじゃないのか?

その方面の捜索はどうなっている?」

 

「は、はい!

その元帥の仰っていた可能性についての捜索も同時並行で進めてはいたのですが……」

 

「…なんだ、まさかまた何か問題が起きたのか…?」

 

言い淀む海兵にセンゴクは勘弁してくれと言わんばかりに額を押さえた。

 

 

「いえ、その…問題という事ではなく……

そもそも目撃情報すらないのです。

もし、ロズワード聖が誘拐されているのならば麦わらの一味、キッド海賊団、百獣海賊団のどこかだと思いあらゆる方面から情報を集めたのですが……どの海賊団も逃亡中にロズワード聖と思われる人物を連れておらず…

この海賊団たちではないとすると……大将黄猿の報告にあった…“冥王”がやったと言うことに……なるかと……」

 

「……なに?冥王…シルバーズ・レイリーだと!?」

 

センゴクは驚愕に目を見開いたが、すぐに首を横に降った。

 

 

「いや、そんな…有り得ん!

あの“冥王”が何故、天竜人を連れていく!?

奴はとうの昔に隠居した身……今さら大きな事件を起こすなど考えにくい。

我々は重大な“何か”を見落している筈だ!

なにより数日後には奴の公開処刑も控えているんだぞ…!!

同時に2つの伝説を相手取るなど、不可能だ!!!

 

部屋に響くセンゴクの鬼気迫る声に海兵は返す事が出来ずに俯く。

 

 

───これはエース処刑の数日前の出来事である。

 

 

 

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行方不明になった天竜人の件で海軍が頭を抱えていた日から約5日後の空船にて。

 

必要な準備を終え監獄に潜入させたカメラで状況確認を行っていたレオヴァ達は、獄中の状況に各々の反応を見せていた。

 

 

「何故、“麦わら”がここに…!?」

 

「……天竜人の件といい…麦わら屋はおれ達の邪魔ばかりするな…」

 

カメラに映った麦わら帽子がトレードマークの少年の姿にドレークは驚きに声を上げ、ローは眉間にシワを寄せる。

 

2人は想定外の現状になっている監獄を目の当たりにし、レオヴァの意見を仰ぐべく振り返った。

 

 

「…レオヴァさん、どうする?」

 

「突入を遅らせるという手も…」

 

指示を待つ2人にレオヴァは迷う素振りもなく答える。

 

 

「いや、予定通り監獄に突入する。

この作戦の為におれは父さんとの遠征を断腸の思いで延期にしたんだ…

父さんをこれ以上待たせる訳にはいかない…!!」

 

「……カイドウさんが暴れてワノ国が潰れる前に戻らねェとだしな。」

 

「レオヴァさんなら、そう言うと思ってはいたが…」

 

 

作戦を実行すると宣言したレオヴァの言葉を受け、ドレークは再びカメラの映像へ目線を移す。

 

 

「……こんな状態の場所で作戦を実行できるだろうか…」

 

「こんな状態だからこそだ、ドレーク。

これだけ混乱しているなら潜入ではなく、正面から突破出来るだろう。

気を付けるべきはマゼランの毒だけだ。

今回はスレイマンが別の任務でいないからな…」

 

「確かにレオヴァさんの意見は尤もか…

先ほど少し睨み合っただけであっさり手を引いた黒ひげ(・・・)も気になる……時間はかけられないな。」

 

ドレークの発言にレオヴァは頷き、言葉を続ける。

 

 

「あの程度の威嚇で簡単に身を引くという事は、必ず何が考えがある筈だ。

…大方の予想はついてはいるのだが、奴の行動は毎回斜め上を行く。

早めに部下を救出し勧誘を終え、奴の動きを阻止することが重要になってくる。」

 

「レオヴァさんが仕掛けたアレ(・・)があれば居場所は分かるからな。

……だが、戦争の召集を無視してまでの用事を少し睨まれただけで…あんな簡単に諦めて引き返す意図がわからねェ。」

 

腑に落ちないと眉をしかめるローの肩を軽くたたきながらレオヴァは更に言葉を続ける。

 

 

「少なくとも奴は今、この付近には居ない。

兎に角、まずは監獄での任務を終えることに集中しよう。」

 

ドレークとローがレオヴァの言葉に頷く。

 

 

「では、作戦を開始する。」

 

その声と同時に3人は空船から飛び降りた。

 

 

 

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───LEVEL-1紅蓮地獄にて。

 

 

たった3人だ!!

“百獣海賊団”を止めろォ~~!!!

 

看守達による一斉射撃を気に止めることなくレオヴァ達はインペルダウンを突き進む。

 

 

「想像以上の手薄具合じゃねェか。」

 

前線にいた看守達を吹き飛ばしたローが呟くと、レオヴァが口を開く。

 

 

「相変わらず政府関係の場所は人材不足だな。

言っては悪いが、これでは所長であるマゼランに全てを背負わせ過ぎだろう。

おれなら少なくともあと3名ほど実力のある人間を配置し、定期的な視察を送って問題解決に動くんだが…」

 

「レオヴァさんの案は素晴らしいが……そもそも優秀な人材が政府にはいないんじゃないのか?」

 

ドレークの返事を受けてレオヴァは確かに、と小さく頷いた。

 

 

「それもそうか…

政府にウチと同じく優秀な人材がいるとは限らないな。

そう考えるとおれは本当に恵まれている…

ロー、ドレークいつもありがとう。」

 

少し先を進む2人にレオヴァが場違いなほど穏やかに笑いかける。

 

 

このタイミングで…!?

いや、もちろん嬉しいのは嬉しいんだが!」

 

「レオヴァさん、そのほのぼのした空気引き締めてくれ…!!

こっちまで気が抜ける!」

 

進むべき扉の前に立ち塞がっていた看守達を全員沈め終えたローとドレークが叫ぶ。

 

監獄の中だと言うのに相変わらずいつも通りのやり取りを繰り広げていた3人だったが、目の前の扉が開いたことで皆の纏う空気が引き締まる。

 

刀を腰にさげ葉巻を咥えた男が扉から現れる。

 

その男はレオヴァを視界に捉えると口を開いた。

 

 

「その(ツラ)……間違いねェ。

百獣海賊団総督補佐官…レオヴァだな?」

 

「そう言うお前は……看守長シリュウ。

…いや、()看守長だったか?」

 

ニコリと口元だけ笑って見せたレオヴァを相変わらず視界に捉えながらシリュウは続けた。

 

 

「そう、“元”だ。

……おれァ、お前と話がしたかった。」

 

此方に向かって歩みを進め出したシリュウにドレークが声を上げる。

 

 

待て、それ以上レオヴァさんに近づくな…!!

 

ドレークの声にシリュウはピタリと動きを止める。

 

 

「“異竜”ドレーク…何年も前にマゼランを止めたっていう海賊だな。

…おれは知ってるぜ。

あの事件では重要人物としてドレーク・ササキ・スレイマン、そしてトラファルガー・ローが上げられていたが……一番危険視すべき男の名(・・・・・・・・・・・)がここ最近まで上がってなかった事をな。」

 

シリュウの言葉にローとドレークの警戒心は強まっていく。

 

その雰囲気を察したのかシリュウは小さく笑った。

 

 

「おいおい……そう警戒するな。

おれも馬鹿じゃない。

何の利も出さずに、ただ話をしてくれって訳じゃねェ。」

 

 

そう言うとシリュウは瞬きの間に自分が入って来た扉を破壊した。

 

突然の動きにドレークとローがレオヴァを守るように後方へ飛び退く。

そしてシリュウへ攻撃を仕掛けようとしたが、壊された扉の奥から現れた人物に2人は目を見開いた。

 

 

「レオヴァ様!」

 

「鳳皇レオヴァ…!

アンタが来てくれたと聞いていてもたってもいられなかった!!」

 

レオヴァの名を叫びながら此方へ走ってくる巨人とミンク族の顔には喜びが溢れている。

 

 

「ハイルディン、パンサル…!

迎えが遅くなったな……また会えて嬉しいぞ!」

 

巨人族であるハイルディンとミンク族であるパンサルにレオヴァは満面の笑みを向ける。

 

2人はそのレオヴァの姿に更に感極まった様子で走り寄って来た。

 

ハイルディンとパンサルが既に檻から脱獄していた事により、今回のレオヴァ達の目的の1つである部下達の救出は思いも寄らぬ速さで終わりを告げた。

 

想定していた状況とは違うが、これはレオヴァにとっては良い想定外である。

 

しかし、この状況を作り出したシリュウという存在がレオヴァ達にとってプラスとなるのかは判断に迷うのが現状だ。

 

レオヴァはハイルディンとパンサルをまずはこの監獄から完全に脱獄させる為にローに声をかける。

 

 

「ロー、先に二人を船に連れて行きその後合流してくれ。」

 

ローは頷くと2人を連れて一瞬で消え、レオヴァは3人の気配が上へ行った事を確認すると、シリュウに向き直り口を開く。

 

 

「……シリュウ。

まずは部下をここまで連れてきてくれた事、感謝する…ありがとう。

確か、おれと話がしたいんだったな?」

 

「あぁ、聞いて損はさせねェよ。」

 

ニッと笑うとシリュウはレオヴァに話を始めるのだった。

 

 

 

 

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レオヴァ達の侵入から約10分後のLEVEL-4焦熱(しょうねつ)地獄にて。

 

 

 

LEVEL-3に繋がる扉の前で、ボロボロになりながらもふらふらとハンニャバルは立ち上がろうと踏ん張っていた。

 

 

「ハ、ハンニャバル副所長…!

もう立たないで下さい…死んじまいます!!!

 

悲痛な部下の声が響く中、薙刀(なぎなた)を杖にハンニャバルは息も絶え絶えに立ち上がる。

 

 

「ハァ…っ…何を……貴様らシャバで悪名上げただけの…ハァ…“海賊”に“謀反人”…!!!

何が兄貴を助けるだ!!綺麗事抜かすな!!!

貴様らが海へ出て存在するだけで、庶民は愛する者を失う恐怖で夜も眠れない!!!

か弱き人々にご安心して頂く為に凶悪な犯罪者達を閉じ込めておく、ここは地獄の大砦!!!

それが破れちゃこの世は恐怖のドン底じゃろうがィ!!!

出さんと言ったら一歩も出さん!!!

 

今にも倒れそうな男から発せられるとは思えぬほど力強く鬼気迫る声に、そこにいた者達は息を飲む。

 

しかし、ルフィには助けたい人がいる。

ハンニャバルにこれ以上、この場に止められ続ける訳にはいかないのだ。

 

 

おれはエースの命が大事だ!!!だからどけ!!

 

「……!!

バカには何を言っても…」

 

ハンニャバルが顔をしかめた時だった。

 

背後の階段で構えていた筈のバズーカ部隊がバタバタと倒れてく。

 

その光景に驚き、ハンニャバルは目を見開いた。

 

 

「な!?おい、どうしたお前達!!」

 

困惑するハンニャバルの目に、倒れたバズーカ部隊を踏み越えて来る男達が映る。

 

背後から現れた男達の顔を認識すると同時にハンニャバルは驚愕の声を上げた。

 

 

「え……えぇ!!?

 

「職務、そして自らが掲げた庶民を守ると言う信念の為に立ち上がるその姿勢……感服する。」

 

そう言いながら階段の扉から現れたレオヴァは穏やかな笑みを浮かべ、ハンニャバルを見た。

 

 

ツノ()…!!?

 

何故、アイツがこんな場所に…!

 

一方、ハンニャバルや看守達だけでなくレオヴァの登場に周りの海賊達も驚きを露にしていた。

 

混乱する皆を置き去りにレオヴァはハンニャバルの方へ向かって行くと、柔らかい声色で話し掛ける。

 

 

「確か、副所長の……ハンニャバルだったか…?

この監獄はマゼランだけと思っていたが、おれの思い違いだった。

まさか、お前の様な男がいるとは…!」

 

ニコニコと笑顔で話し掛けてくるレオヴァにハンニャバルは戸惑いながらも薙刀を構える。

 

 

「な、なんだ貴様…!!

馴れ馴れし過ぎてビックリしたァ!!

 

「すまない、唐突だった。

おれはレオヴァ、百獣海賊団に所属している。」

 

「それは知ってるわ!!」

 

軽く頭を下げ、丁寧に自己紹介をしてきたレオヴァに叫ぶように返しながらハンニャバルは薙刀(なぎなた)を振るう。

 

しかし、その攻撃はレオヴァに当たる前にドレークによって弾かれた。

それにより満身創痍であったハンニャバルの手は握力を失い、薙刀は背後へ舞って行ってしまう。

 

しまった!と冷や汗を流すハンニャバルに穏やかにレオヴァは言葉をかける。

 

 

「1つ提案なんだが……百獣に入る気はないか?」

 

あまりにも突然過ぎる提案に周りの看守達は目が飛び出す勢いで驚くが、ハンニャバルは強い意志を持って返した。

 

 

「なめるな、海賊…!!!

どんな状況であろうとも、貴様らに(こうべ)を垂れる真似はせん!!

何故なら私はこの大監獄の副所長!!

いつ如何なる時も庶民の皆様の“味方”でなきゃならない!!!

海賊に下るなんざ、笑わせるなァ…!!!

 

大海賊の幹部相手に臆することなく言葉を紡いだハンニャバルにレオヴァの目が珍しい物を見る時のように興味深げに細められる。

 

 

「ますます惜しい人材だ…!

……だが、それだけの覚悟がある者をこれ以上誘うのは失礼か…

ではハンニャバル、少し道を譲ってもらうぞ?」

 

「譲るワケに行くか…ッ…!?」

 

レオヴァの纏う雰囲気が一瞬重々しくなったと思うと、ハンニャバルは気を失いその場に倒れ込んだ。

 

全てが唐突すぎた出来事に看守や海賊達は言葉を失っていたが、一歩前へ出たジンベエが声を発する。

 

 

「レオヴァ。」

 

驚いた表情のジンベエにレオヴァは向き直る。

 

 

「ジンベエ、LEVEL-6まで会いに行こうと思っていたんだが…

まったく、無茶をしたな。」

 

「親父さんやエースさんの一大事じゃ、動かん訳にはいかん!

じゃが、レオヴァは何をしにわざわざ…?」

 

「部下を迎えに来たんだ、その時にジンベエも連れていこうと思っていたんだが……その様子なら余計なお世話だったようだな。

あとは、昔した“約束”を果たしに」

 

「レオヴァ、心配かけたようですまん…!!

…約束か……深掘りはせんが、急ぐことを勧める。」

 

「ありがとう、ジンベエ。

だがお前も魚人島の皆や、お前を慕うおれの部下達の為に無茶は控えてくれ。」

 

「仁義の為、この身を削ることを躊躇することはない!!

が……レオヴァからの言葉胸に刻んでおくとしよう。」

 

「ジンベエらしい…

一応、次の階へ上がる道は綺麗になってる。

……間に合うと良いな。」

 

「感謝する…!!

ルフィ君、先を急ごう!!」

 

「わかった…!

ツノ()、ありがとう!!」

 

ルフィはニカッと人好きのする笑みでレオヴァに礼を述べた。

 

 

「気にするな。

流れ上、偶然手助けする形になったに過ぎない。」

 

「そうなのか…?

わかんねェけど、助かった!

じゃあ、おれ急いでるから!!」

 

走り出したルフィ達と入れ違うようにレオヴァは最下層に向けて進み出す。

 

すれ違いざまにレオヴァはクロコダイルと目が合ったが、お互いに言葉を交わすことはなかった。

 

 

 

そうして、奥へ進もうとするレオヴァとドレークの目の前に瞬間移動のようにローが現れる。

 

 

「…っと、レオヴァさん遅くなった。

おれの能力で一気に降りよう。

船のカメラで確認したら、マゼランがこの階に向かって来てた。」

 

「なに!?

レオヴァさん、ここは予定より早いがローの能力で下へ…!」

 

ドレークとローの言葉に頷くとレオヴァは鳥の姿へと変化する。

 

 

「よし、やってくれロー。

穴を開けたら、おれの背に飛び乗れ。」

 

「わかった。

ROOM(ルーム)”…“切断(アンピュテート)”!」

 

ローの技で炎の海に穴が空き、その穴は更に深くまで続いているようだった。

 

レオヴァは翼で穴の周りの炎を吹き飛ばすと、その空洞へ向けて降下していく。

 

ローとドレークはその背に飛び乗ると、風の抵抗を減らすように身を屈めた。

 

 

「レオヴァさんとローがいると要塞攻略も力業だけで終えられるな…」

 

「まぁな。」

 

ドレークの呟きにローは心なしか自慢げに返し、巨大な鳥になっているレオヴァの背に掴まる。

 

 

そして、空洞が途切れた場所にレオヴァが着地すると2人は地面に降り立った。

レオヴァは2人が降りたと同時に人に戻り、辺りを見回して眉間に皺を寄せた。

 

 

「……少し薬品の臭いがするな。」

 

「睡眠系統の薬品だな。」

 

ローの言葉にドレークが反応を示す。

 

 

「睡眠系?

ならマスクが必要か?」

 

「いや…この薄さじゃ効き目はねェし、殆ど流れちまってるから問題ねェ。」

 

「そうか、ローが言うなら間違いないか。」

 

会話する2人を後目(しりめ)に監獄へ目線をやっていたレオヴァは目的の人物を見つけ、嬉しそうに微笑む。

 

 

「ロー、ドレーク。

おれは話をしてくる、2人は予定通り動いていてくれ。」

 

「了解した…!」

 

「分かった。

そうだ…レオヴァさん、鍵渡しとく。」

 

「ありがとう、ロー。

じゃあ、頼んだぞ。」

 

ローから鍵を受けとるとレオヴァは目的の人物がいる檻の前に立つ。

 

檻の中の人物はレオヴァを見ると口を開いた。

 

 

「まさか、本当に来るとはな…」

 

「当たり前だろう。

おれは名に誓った約束は守る。

それで前の件だが、考えてくれたか?

……バレット。」

 

バレットと呼ばれた男は立ち上がり、柵の前まで来るとレオヴァの目を見据える。

 

 

「考える時間は無限にあったからな。

貴様の持ち掛けてきた話は確かに悪くなかった。

この場所に居続ける必要性も、もう感じねェ。」

 

「なら…」

 

口を開きかけたレオヴァの声をバレットは遮る。

 

 

「だが、ここでその話を二つ返事で受けるつもりはねェ…!

……おれと勝負しろ。

貴様が勝てば、あの話は飲んでやる。」

 

「ほう……では、負けた場合は?」

 

「その時はお前におれの目指す場所への…“道”を作る道具になってもらう!!」

 

告げられた言葉にレオヴァは笑うと、牢屋の扉を開いた。

そして、手錠の鍵をバレットに投げ渡す。

 

 

「いいだろう、バレット。

お前のその提案を受けよう…!!

海賊らしいやり方は好きだ。」

 

上機嫌に答えたレオヴァを少し意外そうな顔で見ながらも、バレットは渡された鍵で手錠を外した。

 

 

「……細かいルールはねェ。

やり合って、先に倒れた奴の負けだ。」

 

「分かった。

……と、少し待ってくれ。

ドレークとローに連絡だけしておく。

何も言わずに始めたら、おれに加勢するかもしれないからな。」

 

「勝手にしろ……準備できたら言え。」

 

バレットはそう言うと牢屋の中で腰を下ろし、電伝虫を手にしたレオヴァを横目で眺めた。

 

 

「…おれだ、ドレーク。

バレットと話し合った結果、お互いの実力を計る為に組手をすることになったんだが…」

 

レオヴァの言葉に驚きを見せた電伝虫は何かを訴えている。

その姿に困ったように眉を下げながら、少しの時間レオヴァはドレークと、その隣にいるであろうローの説得をするのだった。

 

 

 

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一方、とある島にて。

 

カイドウを追っていた筈のキングとクイーンは何故かずっと戦闘を続けていた。

 

その戦場にカイドウの姿は見当たらない。

 

 

だあ~~~!!クソッ…!!

しつけェんだよ!!

こちとら、テメェらに構ってる暇ねェんだっての!!

 

苛立ったように叫びながら首長竜の姿で暴れるクイーンの周りの男達が次々に吹き飛ばされていく。

 

 

「おっと……お前ら少し下がれ!

ルウ、行くぞ…!!」

 

「よ~し……おれに合わせろよ!」

 

ラッキー・ルウに合わせようと動いたベン・ベックマンの前にキングが立ち塞がる。

 

 

「テメェの相手はおれだ。

逃げられると思うな…!!」   

 

振り下ろされた刀を避けながら、ベックマンはクイーンへ数発の玉を見舞う。

 

 

「…っぶねぇ!?

おいコラ、キングてめぇこの野郎!!!

そいつ一匹くれェ、ちゃんと押さえとけよ!?」

 

「うるせぇぞ、ボール野郎…!

グダグダやってねェで、さっさと片付けてカイドウさんを追うぞ…!!」

 

「分かってる!!

…つーワケだ、さっさとくたばれ!!!

 

島を破壊する勢いで暴れるキングとクイーンだけでも厄介極まりないと言うのに、フーズ・フーやササキに加え真打ち達の勢いも衰える未来が見えない状況下でも、一歩も遅れを取らずに赤髪海賊団は応戦していく。

 

 

「はははは…!

いや~カイドウ1人だと思ってたら、まさか幹部がこんなに来るとはな!」

 

能天気に笑っているシャンクスにヤソップは呆れ顔になる。

 

 

「頼むぜ、お(かしら)……こりゃ簡単にはいかねェぞ?」

 

「そうだな、ヤソップ。

……気合い、入れて行くか…!!

 

クイーンに向けて飛び出していくシャンクスの背をヤソップ達は頼もしげに見送るのだった。

 

 

 

そもそも何故、百獣海賊団と赤髪海賊団が衝突することになったのか。

 

それは数時間以上、前に遡る。

 

 

カイドウは何日も何日も空を飛び続けていた。

たまに地上に降りる時はあったが、それは食料と酒を補給する為だけであり、憎い奴らがいる場所へ進む事こそが何よりも重要だった。

 

その日もカイドウは酒を浴びるほど飲みながら空を駆けていた。

 

 

うおおぉ~~ん…!!

なんでレオヴァとの遠征が先延ばしにされなくちゃならねェってんだよぉ~~~!!!うおぉ~~!!

 

「カイドウさん…その気持ちは分かるが……」

 

泣き上戸のまま空をゆくカイドウの側をキングも飛び続けていた。

ここ数日同じような愚痴を聞かされながらも、キングは出来る限りカイドウを落ち着けようとあらゆる手を尽くしたが、状況は一向に好転しない。

 

 

キング、てめぇもムカつくだろ!?

憎き海軍共とあの馬鹿(・・・・)のせいで!!

おれがレオヴァの為に整えた手筈が全部パァになったんだぞォ!!?

レオヴァの誕生日前に公開処刑なんざ予定しやがって、海軍の野郎ォ…

レオヴァもレオヴァだ!

テメェの誕生日と仕事、どっちが大切だってんだァ!!?

 

泣き上戸から怒り上戸に移り変わったカイドウに、遠い目をしながらキングは言葉を紡ぐ。

 

 

「海軍の無能共に腹が立つ気持ちは分かる。

だが、カイドウさん…レオヴァ坊っちゃんはアンタの役に立ちたい一心で……」

 

そりゃ分かってる…!!!

そうだ、レオヴァは悪くなんざねェ!!分かってんだ!!!

全部、海軍…そしてあの馬鹿野郎のせいだ!!!

マリンフォードだかなんだか知らねぇが、おれが沈めてやる…!!

キング、お前なら分かるよなァ!!

 

「…………そうだな、カイドウさん。

(駄目だ、止まる未来が見えねェ……すまねぇレオヴァ坊っちゃん…)」

 

内心で頭を抱えながらキングは進んでいた。

 

しかし、後を追ってきている筈のクイーンに内心でほぼ八つ当たりの様に呪詛を吐いていたキングを更なる厄介が襲う。

 

それが赤髪海賊団だった。

彼らは何故かカイドウを足止めしようとしているようであった。

しかし、カイドウへの手出しをキングが許す筈もない。

 

その結果、赤髪海賊団VSキングが幕を開けた。

 

この時、カイドウは酔っていた為に独り先に進んでしまっていた。

キングがカイドウを呼び止めなかったことも起因していたが、兎に角カイドウは進み続けてしまった。

 

 

更にその後、キングが激しい戦闘を繰り広げている所にワノ国から追ってきていたクイーンと幹部達が合流し、百獣海賊団VS赤髪海賊団へと構図は変化した。

 

そして、疲労困憊だったキングはクイーンから渡された“ある回復薬”により持ち直し、この戦いは泥沼化していったのだ。

 

 

 

時は戻り、現在。

 

未だに小競り合いを続ける両者だったが、赤髪海賊団の部下達に強い疲労が見え始めていた。

 

 

動物(ゾオン)系のタフさは異常すぎるな……押さえるにも一苦労だ。」

 

眉をひそめるベックマンを見下ろし、キングは口を開く。

 

 

「押さえるだと…?

テメェらごときが本当に押さえられると思ってんのか?」

 

翼竜の姿でベックマンを吹き飛ばしたキングを見て、クイーンと対峙していたシャンクスが微かに眉を動かす。

 

相対してクイーンは、そのシャンクスの様子に笑みを浮かべた。

 

 

「あの野郎の頑丈さは動物(ゾオン)系以上だからなァ!

自慢の右腕らしいが、助けに行くかァ!?」

 

嫌味ったらしく言うクイーンにシャンクスは爽やかに答える。

 

 

「いや、助けは必要ないさ。

おれの仲間は強いからな。」

 

「ムカつく野郎だぜ…!

テメェの首持って帰って、レオヴァにプレゼントすりゃ喜ぶかもなァ!

…よっしゃ、首よこせ!」

 

ドスンと大きな音を立てながら襲い来るクイーンの攻撃をヒラリと華麗に躱しながら、シャンクスは呟く。

 

 

「……にしても、困ったなぁ。

本当に止めたかったのは百獣のカイドウだったんだが…」

 

「笑わせんな!!

テメェがカイドウさんを止められるワケねェだろ!!?」

 

怒ったような表情で光線を放つクイーンへ一瞬で距離を詰めると、シャンクスの顔から笑みが消える。

 

懐に入られたクイーンが不味いと顔を歪めるよりも早くシャンクスの一太刀が襲った。

 

斬り飛ばされたクイーンの姿に驚く百獣海賊団の面々を前にシャンクスは凛とした声で告げた。

 

 

「……そろそろ、本気でやらせてもらおうか。」

 

ただならぬ、その雰囲気に百獣海賊団の面々は息を飲む。

 

シャンクスが反撃の一歩を踏み出した。

 

 

 




ー補足ー

ジンベエ:レオヴァとは長い付き合いの中で、敬称を付けずに呼ぶようになるほど親しくなった。
本当はエース救出を手伝って欲しいという思いがあるが、レオヴァにはレオヴァのやる事があるのだろうと言葉を飲み込んだ。

クロコダイル:ドフラミンゴ経由でレオヴァから武器を購入した過去がある。
レオヴァへの警戒心は高め。

ルフィ:今はエース救出のことしか頭になく、レオヴァ云々どころではない。

ハイルディン:レオヴァに恩があり、百獣海賊団に加わった。
鳳皇レオヴァと呼び、絶大な信頼を寄せている。
詳しい過去編はそのうち…

パンサル:とある証言をする為にワザと捕まって時期を見つつ、指示通りセンゴクに情報を流したりしていた。
結構辛い役回りだったが、流石の忠誠心である。

黒ひげ:インペルダウンに向かっている途中にレオヴァと遭遇して睨み合いになった結果、踵を返した。
インペルダウンでの用事よりも、“最も優先すべき用事”の方へ向けて作戦を変更したと思われる。

シリュウ:檻から一時的に解放された事を最大限利用している模様。

レオヴァ:思いの外早く部下を回収出来たので上機嫌。
今回、ドフラミンゴ救出の時に話していたのはバレットだった事が判明。

バレット:レオヴァから“ある話”を持ちかけられていた。
強さだけを信じる男はレオヴァを試すべく、勝負を申し込んだ。
出来ればレオヴァを野望の為に使いたい(有能なのは理解している為)

シャンクス:真意が謎。
ただ、カイドウを追い返したかったのは事実。
彼の動き次第で色々起こるかも…?
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