俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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先を見据え、笑う者

 

 

 

 

病室のベッドの上に白い髪を持つ目付きの悪い男が横になっており、ベッドの脇の椅子には癖っ毛と思われる黒髪とアイマスクが特徴的な男が腰かけていた。

 

 

「いや~、調子はどうよスモーカー。」

 

「見ての通り、最悪だ。

……そう言うアンタは元気そうだな。」

 

「いやいや、結構キツイのよ?おれも。

まぁ…サカズキやセンゴクさん程じゃないけどね。」

 

そう言って眉を下げる男の名はクザン。

マリンフォードでの事件にて、海軍の被害を減らすために全力を尽くした男の一人である。

 

そして、ベッドに横たわりながらクザンを見上げるこの男も海軍の被害を減らすために全力を尽くした一人であり、名をスモーカーと言う。

 

クザンが“大将”、スモーカーが“准将”と地位に大きな違いはあるが2人の雰囲気に強い上下間系は伺えない。

 

 

「……で、アンタ…こんな所で何してんだ。

マリンフォードが落ちて、今は上がてんやわんやしてんだろ。

撤退の件(・・・・)で、アンタも詰められてるって聞いたが……」 

 

少し心配を含んだ声色にクザンは軽く眉を下げる。

 

 

「おれも一応、重傷患者なワケだし病棟にいても変じゃないでしょ?

確かに上は大騒ぎだけど、おれが解決できる内容じゃねェしな~…

撤退の件も……センゴクさんが全責任負うって聞かねぇんだ。

……勝手に撤退命令出したの、おれなんだけどな…」

 

らしくない表情をしたクザンにスモーカーは強い声で返す。

 

 

あの時のアンタの撤退の判断は正しかった…!!

上の奴らがグチグチと煩く言ってるらしいが、あのまま続けてりゃあ、暴れる海賊共と意味の分からねェウイルスで全滅するのは目に見えてたんだ。

前線にも出ねぇで、毎度好き勝手言ってくれる……」

 

怒りを含んだ言葉に、クザンはスモーカーらしいと小さく笑う。

 

 

「っとに…お前さんあんまりソレ、おれ以外の前で言うなよ?」

 

「……分かってる!

それより、さっきの口振りから察するに

撤退の件はアンタもおれも、お咎め無しってことでいいのか?」

 

一瞬微妙な表情をしたあと、いつものようにクザンは呑気な声で返した。

 

 

「元々、スモーカーのことは黙ってたからな。

おれもお前もお咎めはナシ!」

 

「……そうか。

でも、アンタまで何も罰が無いなんてな…」

 

「え、なに……スモーカーおれに何かあって欲しかったワケ?」

 

おどけた様に言うクザンをスモーカーが睨む。

 

 

ンな訳あるか!アンタにも罰はないに越したことねェ!

……ただ、上の奴らが簡単にお咎めなしって言うなんざ…あり得ねぇだろ。」

 

今までの上層部のやり方を思いだし眉をひそめるスモーカーを見据え、クザンは考える素振りを見せる。

 

すると考えがまとまったのか周りをキョロキョロと見渡した後、扉を氷漬けにしてしまった。

 

突然、扉を凍らされたスモーカーは驚いて声を上げようとしたが、目の前で真面目な表情をするクザンを視界に捉え、思わず口を閉じた。

 

黙ったまま此方を伺うスモーカーの方へ寄ると、小声でクザンは話し出した。

 

 

「…おれは今回、ちょっとした手柄を上げたおかげで元々決定されてた罰が帳消しって形になったんだよ。」

 

「……手柄?」

 

予想通り、(いぶか)しげな表情をするスモーカーにクザンは話を続ける。

 

 

「そう、手柄。

…シャボンディ諸島での“天竜人誘拐(・・・・・)”、スモーカーはどこまで知ってる?」

 

クザンの問いに、スモーカーは記憶を探った。

 

 

「……確か、百獣と麦わらが結託したって事件だろ?

その件なら少し前に世界政府の人間が“天竜人”を保護したことで有耶無耶(うやむや)になった筈だ。」

 

「…ん~~。

一応、表向きはそうなってるな。」

 

「表向き……だと?」

 

案の定、知らなかったと眉間に皺を寄せているスモーカーにクザンは話せる範囲で説明を始めた。

 

 

あのシャボンディ諸島にて起こった事件。

その中でも一番の大事件が、“天竜人誘拐事件”である。

 

誰が連れ去ったのか、生きているのか。

全てが分からない状態に海軍どころか世界政府までもが大混乱に陥る事となる。

 

そして、世界政府はこの事件を世に公表することなく握りつぶした。

……見つかっていなかった“天竜人”を(・・・・・・・・・・・・・・・)見付かったことにして(・・・・・・・・・・)

 

結果、海兵達にもその様に伝えられたことでスモーカーは解決したと思っていたワケである。

 

 

 

その話を聞いたスモーカーは呆れと怒りが混じったような顔をした。

 

 

「……なんだ?

じゃあ、結局見付かってねェ訳か…」

 

「そう、見付かってなかったんだ……3日前まではな。」

 

「3日前まではって…!…うっ」

 

驚きに思わず起き上がってしまったスモーカーは体の痛みに唸る。

そんなスモーカーを手でベッドに押し戻すと、クザンは話を続けた。

 

 

「…3日前におれの部下が発見して、おれがそれを連れ帰った。

そしたら急に呼び出されて罰はナシになるわ、口止めされるわで…

そりゃもう色々大変だったんだぜ?」

 

肩をすくめるクザンにスモーカーは何とも言えない目を向けた。

 

 

「おい、アンタ……それおれに喋っちゃまずい案件だろ…」

 

「……まぁ、そう言うワケだから……アレだ…あ~……」

 

「内密にってんだろ!?

それぐらい分かってるわ!!」

 

「そうそう、ソレ。

んじゃまぁ、よろしく頼むわ。」

 

そう言って立ち上がると凍らせていた扉を戻し、クザンはスモーカーのいる病室からスタスタと出ていってしまった。

 

 

「……結局、何しに来たんだ…」

 

相変わらず行動の読めないクザンに頭を抱えつつ、スモーカーは見舞いに貰った新聞を手に取るのだった。

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

場所は変わり、ビッグ・マムの治める万国(トットランド)にて。

 

 

女王シャーロット・リンリンが住まう城はてんやわんや状態に陥っていた。

 

 

「どいつもコイツも!!馬鹿みてぇに!

 百獣だの百雷だのと!!!」

 

怒り心頭だとばかりに叫ぶビッグ・マムの周りをあわあわと娘や息子達が顔を青くして動き回っている。

 

 

「そもそもあの時にカイドウが結婚を了承してりゃ、あのアイツの息子も私のモンだったんだ!!!

今からでも無理やり結婚させてやる~!!」

 

ドスドスとビッグ・マムが怒りを露にする度に、城はあり得ないほど揺れている。

 

無茶なことを言い出したビッグ・マムにペロスペローは口元を引き吊らせながら言葉を返す。

 

 

「あ~…ママ、流石に無理やり結婚させるのは難しいんじゃないか?」

 

このド正論にビッグ・マムはの怒りに満ちた顔がペロスペローに向けられる。

 

 

「なんだい、ペロスペロー…

……お前、おれの息子の癖に百獣には勝てないって言いたいのかいッ!!

 

覇気を纏った叫びにバタバタと気を失っていく兄弟達を視界の端に捉えつつ、ペロスペローは大量の汗をかいていた。

 

 

「ま、まさか!

ママが勝てない相手がいるって言いたい訳じゃあないぜ!?

おれ達はずっとママが海賊王になるのを夢見て来たんだ!

そんな事、言う訳ないじゃないか!!」

 

本心だと分かる言葉に少しビッグ・マムの覇気が弱まる。

 

ペロスペローはホッとした様に胸を撫で下ろしたが、ビッグ・マムは不満げな顔で次の言葉を発した。

 

 

「じゃあ、なんで難しいだなんて言うんだい!!」

 

一言でも間違えれば我が子であれ容赦しない、という雰囲気のビッグ・マムにまたしてもペロスペローの体から大量に汗が流れ始める。

 

言葉を必死に吟味するペロスペローの横に、すっと大きな影が落ちた。

 

 

「ママ、ペロス兄の言うことも一理ある。

今、無理やりレオヴァをうちに取り込もうとしたら百獣との全面戦争は避けられない。」

 

ペロスペローや兄弟を守るように一歩前に出たカタクリにビッグ・マムの怒りが向けられる。

 

 

全面戦争がなんだってのさ!!!

カタクリ、お前まさか…怖じ気付いたんじゃないだろうねぇ?」

 

凄んでくるビッグ・マムの圧を眉ひとつ動かすことなく受け止めながら、カタクリは言葉を返す。

 

 

「…いや、正直レオヴァと本気でやり合える場は歓迎だ。」

 

「じゃあ、なんだってお前まで…」

 

訝しげな表情をするビッグ・マムの前に大量のお菓子を差し出すと、カタクリは淡々と口を開いた。

 

 

「今、ママの前に広げた菓子は全てレオヴァとの貿易で入手しているモノだ。

もし、百獣と揉めれば暫くはどんな手を使っても手に入らない品物ばかり……そして!

無論、その中にはママが絶賛していたクッキーシュークリーム、フルーツサンドの材料や生どら焼きも入っている…!!」

 

ドドンッ…!と効果音が付きそうなほどの力説にビッグ・マムは瞳を揺らす。

 

 

「そ…それ全部、食べられなくなるって…?

クッキーシュークリームも生どら焼きも!?

フルーツサンドだって朝には欠かせない一品じゃないか!!」

 

驚愕するビッグ・マムにカタクリは落ち着いた声で告げる。

 

 

「……レオヴァが持ってきた取引がこれだけ魅力的だったからこそ…ママは百獣との貿易に頷いたんじゃないのか?」

 

黙り込むビッグ・マムを見てカタクリも口を閉じる。

 

広間に静けさが漂うと、いつの間にか何処かへ行っていたペロスペローが再び部屋へと現れた。

そして、大きなワゴンをビッグ・マムの前に持って行く。

 

 

「ママ、これを!」

 

そういって差し出されたワゴンを見るとビッグ・マムの顔が驚きに満ちた。

 

 

「……ペロスペロー、これは…?」

 

「ひゃく…ンンッ、レオヴァからだ。」

 

ワゴンに乗っているビッグ・マムサイズの菓子を、無言で1つ頬張る。

すると突然ビッグ・マムの瞳がキラキラと輝き出した。

 

ばくばくとワゴンごと食べてしまいそうな勢いでその菓子を食べ終えると、ビッグ・マムは王座の背もたれに幸せそうな顔で寄りかかった。

 

 

突然のことに、殆どの兄弟達がきょとんとしている中でペロスペローは声を上げる。

 

 

「これはレオヴァが、ママへ献上する(・・・・)と言っていた!!

最高傑作の菓子、“セムラ”だそうだ!

……ママの為だけに作られた(・・・・・・・・・・・)特別な一品さ、ペロリン

 

その言葉に上機嫌にビッグ・マムはペロスペローを見下ろす。

 

 

「あ~これは幸せの味マンママンマ~

そうかい、そうかい!

相変わらずカイドウと違って気が利くねェ、レオヴァってのは!

……ってなると、そうだねぇ…」

 

にんまりと笑うビッグ・マムに息子達は注目する。

 

 

「……おれのモンにしようと思ったが、もう少しそのままで良いかもしれないね!

カイドウの奴の下でしか手に入れられないモノもあるかもしれないし、ポーネグリフの件だってそうさ!

マンママンマ~!

……ところで、ペロスペロー。

もうそのセムラはないのかい?」

 

「まだまだあるぜ、ママ!!

すぐに持ってこさせるから待っててくれ!」

 

「マママママ~

これからずぅっ~と、この味が食べられるなんて夢みたいだねぇ~!」

 

ご機嫌に体をゆらゆらと左右に動かすビッグ・マムの姿に、息子達は一斉に胸を撫で下ろすのだった。

 

 

 

 

─────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

なんとか機嫌の回復したビッグ・マムの様子に一安心しつつ、ペロスペローは自室へと戻って来ていた。

 

あと少しでもレオヴァからの荷物が届くのが遅れていたらどうなっていたのか、それを想像しかけてペロスペローは頭を横に振った。

 

 

「(いやいや……考えるだけでも億劫だぜ…)」

 

食器棚からティーカップを取り出し紅茶を注ぐ準備をしていると、扉がノックされる。

 

訪問者が誰かすぐに察したペロスペローはティーカップを机に並べ、そのまま扉の前へと歩いて行く。

そして、ゆっくりと扉を開くと訪問者にニコリと笑顔を向けた。

 

 

「いらっしゃい、カタクリ。

ちょうど紅茶を注ぐところだぜ。」

 

「……ペロス兄の紅茶は久々だな、楽しみだ。」

 

カタクリの素直な言葉にペロスペローは兄らしい笑みを浮かべると弟を部屋へと招き入れる。

 

カタクリは少し小さめな椅子を横に退かし、自分の能力で椅子を作るとそこにそっと腰掛けた。

 

ペロスペローはそのいつも通りの行動に内心で和みつつ、カタクリの前にあるカップと自分のカップに紅茶を注いだ。

 

そしてペロスペローはそのまま席に座ると、優雅な所作で紅茶の香りを楽しみ、ゆっくりと口に含んで飲み込んだ。

 

何気なくカタクリを伺うと、カップの中身が減っている。

きっといつも通りに目にも止まらぬ速さで口にしたのだろうと思い、ペロスペローは口元を緩める。

 

 

「…美味いな、ペロス兄。

これは、初めて飲む味かもしれん。」

 

味覚の鋭い弟に更にペロスペローの口元は緩んでいく。

 

 

「くくく……流石はカタクリ!

この紅茶はおれのオリジナルブレンドってやつさ、ペロリン

 

「ペロス兄の…?」

 

カタクリの珍しく驚いた表情に満足げにペロスペローは頷く。

 

 

「そう!

レオヴァに色んな種類の茶葉を頼んで、それを自分でブレンドしたんだ。

……まぁ、ブレンドの基礎的な方法はレオヴァから聞いたんだがな。」

 

最後の言葉で軽く肩を上げておどけてみせるペロスペローに構わず、カタクリは尊敬の目を向けている。

 

 

「おれも少しレオヴァから方法を聞いたが…アレは複雑で奥深い。

実はおれも試しに作らせてもらったが……飲めたものじゃなかった…

だが、ペロス兄のこの紅茶は美味い…!

ブレンドを完璧にモノにしていると言える!!」

 

「止せ、カタクリ……お前に言われると照れるぜ…

それにまだ完璧には程遠い!

まだまだ多くの試行錯誤が出来るさ。

お前の言う通り、紅茶は奥深いぜ!

そのうち、ママもレオヴァも唸らせる完璧な紅茶をおれは作る!」

 

「ペロス兄なら出来る。

完成品を飲める日が待ち遠しい…!」

 

カタクリから兄への信頼が込められた言葉にペロスペローは微笑んだ。

 

そのまま二人は暫く紅茶やカタクリの新しい餅のレシピについて雑談していたが、話は先ほどのセムラの事へと変わって行く。

 

 

「…ところで、ペロス兄。

さっきのセムラ……本当にレオヴァが?」

 

そわそわを隠しきれずに尋ねて来たカタクリに内心でペロスペローは笑う。

ここに訪れた理由もレオヴァの事が理由なのだろうとペロスペローは分かっていたからだ。

 

 

「あぁ、もちろん。

ママに嘘を()くなんて真似しねェさ。」

 

「……じゃあ、本当にレオヴァが…

しかし、何故このタイミングで…」

 

考え込むカタクリにペロスペローは少し前の話を語り始めた。

 

 

「実はレオヴァから連絡があってな…」

 

 

 

 

今朝は酷くビッグ・マムが荒れていた。

……いや、訂正しよう。

百獣海賊団のニュース以降、数日間ビッグ・マムはずっと荒れていた。

 

 

その時もペロスペローはげっそりしながら部屋へと戻り、紅茶で気分を変えようとしていたのだが。

突然、電伝虫が鳴った。

 

こんな時に誰だと眉間に皺を寄せつつも、可愛い弟妹達からの“SOS”かも知れないとペロスペローは出たくない気持ちに蓋をして受話器を手に取った。

 

 

『こちら、ペロスペロー。』

 

『…ペロスペロー、久しぶりだな。』

 

既に聞き慣れてしまった赤の他人の声に、ペロスペローの声が不満げな色を含む。

 

 

『……レオヴァ…お前、よくもぬけぬけと連絡してこれたなァ…?

てめェらが派手にやってくれたおかげで、こっちは大迷惑だ!!』

 

ほぼ100%の八つ当たりにも電伝虫越しのレオヴァは笑っていた。

 

 

『あぁ、ペロスペロー。

お前も父さんの活躍の記事をみてくれたのか。』

 

呑気な声を出すレオヴァに小さな殺意を覚えたペロスペローは口元をひくつかせた。

 

 

『……相変わらずてめェは…!

言っておくが、今日は長ったらしいてめェのカイドウ自慢に付き合える余裕はねェ!!切るぞ!?』

 

怒りを滲ませた声に怯むことなく、レオヴァは相変わらずマイペースに言葉を返した。

 

 

『そうだろうと思ってな。

一応、今日は父さん自慢をするために連絡した訳じゃないんだ。

前に頼まれて開発を進めてたビッグ・マム専用の菓子が出来たという報告をだな…』

 

『なに!?

例の菓子が完成したのか…!?』

 

思わず食い気味に声をあげたペロスペローだったが、それも無理はない。

何故ならレオヴァの提供してくる菓子はほぼ全てビッグ・マムのお眼鏡に叶い、多くがお気に入り認定されている。

もしかしたら、その新しいお菓子さえあれば

今のイライラが最高潮なビッグ・マムの機嫌を取れるかもしれない!

と、ペロスペローに一筋の光が差したのだ。

 

 

『よし、レオヴァ!

今すぐその菓子を送ってくれ!

どれくらいで着く!? 1週間か!? 2週間か!?

とにかく至急で頼むぜ!!!』

 

珍しく必死さを隠しもしないペロスペローにレオヴァは本当に緊急事態なんだな、と苦笑いを溢す。

 

 

『…そう言うだろうと思って、とっくに発送済みだ。

今日の夕方前までには到着すると連絡が来てる。』

 

『……今日…?

本当に今日届くんだな!?』

 

今度は歓喜を滲ませるペロスペローの声にまたレオヴァは苦笑いを溢しつつ、言葉を続ける。

 

 

『……あぁ、それと。

そっちも大変そうだからな…今回だけはペロスペローの加減で、多少話を盛ってくれて構わない(・・・・・・・・・・・・・・)

 

レオヴァの言葉の意味を正しく読み取ったペロスペローは目を細める。

 

 

『ほう…?なるほど、なるほど。

それはおれに貸しを作らせるのが目的ってワケか。』

 

『まさか…!

善意に決まってるだろう?ペロスペロー。

まぁ、何かあれば手伝ってくれたりすると助かるがなァ…?』

 

胡散臭いほど爽やかな声に思わずペロスペローは笑った。

電伝虫の向こう側でニッコリと悪い笑みを浮かべているレオヴァが容易に想像出来てしまう。

 

 

『くくくくっ…!

まったく本当にイイ性格してるなァ、レオヴァ!

いいだろう、何かあればおれが個人的に(・・・・)手を貸すさ!ペロリン

 

『ふふふ…それは有難い。

では、例の菓子はペロスペローが(うま)く使ってくれ。』

 

『もちろん、存分に使わせてもらうぜ…!!』

 

話がまとまり、そろそろ電伝虫を切ろうかとペロスペローが言葉を紡ぎ、レオヴァもそれに答える。

 

そして、電伝虫を切ろうとした瞬間だった。

 

 

『あぁ、そう言えば例の菓子の他にオマケとしてペロスペローの好きな牛タンも乗せてあるから食べてくれ。

疲れも吹き飛ぶ一級品だ……では。』

 

ガチャリと切れた電伝虫を前にペロスペローは一瞬、目を点にしたが、すぐにくつくつと笑った。

 

 

『気が利きすぎる奴だぜ、レオヴァ…!』

 

千里眼でも使えるのかと思うほど見通してくるレオヴァとのやり取りは楽しいとペロスペローは笑う。

そして、夕方前までビッグ・マムが暴れないように奔走するべく立ち上がるのだった。

 

 

 

 

 

「……ってワケだ。」

 

事の顛末を語り終えたペロスペローは喉を潤す為にティーカップに口をつけた。

 

聞き終えたカタクリはそのレオヴァらしい内容に目元を緩める。

 

 

「納得が行った。

それでペロス兄は“献上”だのと普通ならあり得ない言葉を使ったと言う事か。」

 

「そう言うことだぜ。ペロリン♪

レオヴァの許可も得ているし、少し大袈裟に言っただけでママにも嘘はついてねェってワケだ。」

 

悪い顔をするペロスペローに、こういう所はいつまでも兄には勝てないなとカタクリはマフラーの下で小さく笑った。

 

穏やかな空気が流れるペロスペローとカタクリのティータイム。

 

そんな中、ふと疑問に思った事をカタクリは口にした。

 

 

「ところで、さっきのレオヴァやペロス兄の口振りだと……普段から良く連絡を取っているように聞こえたんだが

…レオヴァはペロス兄にもカイドウ自慢をしているのか…?」

 

「その言い方……まさか、カタクリもあの長い自慢話を聞かされてんのか!?」

 

驚きに目を見開くペロスペローにカタクリは何でもないように返す。

 

 

「まぁ、おれも兄弟達や新しい菓子の話をするからな…

その分レオヴァの話も聞くのは道理だろう。

……それにしてもペロス兄がレオヴァと貿易以外に話しているのは少し意外だった。」

 

うんうんと小さく頷くカタクリにペロスペローは思わず突っ込む。

 

 

「いや、おれに言わせればカタクリの方が意外だぜ!?

そもそもお前、そんな話に花を咲かせるタイプじゃ…」

 

驚くペロスペローに、カタクリは少し気恥ずかしそうに目を反らすのだった。

 

 

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

黒ひげに付けていた受信機の電波を追いかけて、ある島にキングはやって来ていた。

 

だが、そこに黒ひげの姿はなく。

発信源を辿った先には、布で巻かれた血の滲む小包を抱えたバージェスという男がいるのみであった。

 

その光景にキングが少し目を見開くとバージェスはかかったな!と、したり顔で叫ぶ。

 

 

「残念だったな…!

ティーチ船長はここにはいねェ!!

 

作戦通りだとバージェスが笑う中、キングは冷静な声を出す。

 

 

「……発信器が取り付けられていた足首を切り落とし、部下に運ばせていたか。」

 

「ウィ~ハッハッハ!そういう事だ!

てめェら百獣はまんまと、ティーチ船長の策にハマったってワケだ!!」

 

完全勝利だというように口角をあげたバージェスはその表情とは裏腹に、挑発することでキングの気を自分に反らし、少しでもティーチの為に時間を稼ごうと画策していた。

 

 

しかし、笑いを抑えるかの様にキングはマスクに覆われた口の前に手をやって喉を鳴らしており、マスク越しの目には嘲り笑う色も浮かんでいる。

 

そのあまりにも想定とかけ離れた反応にバージェスがたじろぐと、キングはゆったりとした動作で足を踏み出した。

 

 

「……あぁ、本当にレオヴァ坊っちゃんには敵わねェ。」

 

心底嬉しげに呟かれた言葉はバージェスに向けられたものではないのだろう。

その証拠にキングの足は真っ直ぐとバージェスに向かっていたが、瞳はバージェス自身を捉えてなどいなかった。

 

 

静かな空間にキングの足音だけが響いている、この状況にバージェスが息を飲んだ瞬間。

キングの背に揺らめいていた炎が消えた(・・・・・)

 

次の瞬間、バージェスが抱えていた小包が地面にボタりと落ち、包まれていたティーチの足首が顔を出す。

 

状況が飲み込めずにバージェスがゆっくりと腹に手をやると、背中から突き出るように刀が生えていた。

 

 

「…ガハッ……ど、なって……やがる…?」

 

赤黒い液体と共に吐き出された言葉に、背後から返事が返ってくる。

 

 

「喜べ、無能。

…本来ならすぐに処分だが……お前はレオヴァ坊っちゃんの役に立ってから死ねる事になった。」

 

嬉しいだろ?と言わんばかりの声色にバージェスは顔を青くするが、キングはそんな事お構い無しに刀を引き抜いた。

 

支えが無くなり崩れ落ちたバージェスは、何とかこの場を凌ごうと頭を回転させる。

そして、地盤の緩そうなこの場所なら自身の拳で崩せるのではないかと思い至った。

 

しかし、キングはそんなバージェスの考えなどお見通しだとばかりに足首(・・)を刀で切り落とすと、不快そうにマスクの下の眉を潜めた。

 

 

「レオヴァ坊っちゃんの役に立てる機会をやるってのに……小賢しい真似をするな。」

 

足首を落とされ叫ぶバージェスの首に刀を押し当てながら、キングは底冷えしそうな声色で言葉を続ける。

 

 

「足掻こうたって無駄だ。

おれの仕込み刀は血液に触れると神経を麻痺させる毒(・・・・・・・・・)が出るようになってる。

悠長に何秒も刺されてた時点で、てめェは詰んでるんだよ。」

 

体が上手く動かせなくなってきているバージェスはその言葉に返すことも出来ず、くぐもった声を上げるだけだった。

 

何も出来ず、ただ見下ろされるだけの状態になったバージェスに満足そうにキングは目を細める。

 

そして、慣れた手つきで拘束用の道具を取り出し、バージェスに取り付け、二つの足首も鎖に繋ぐと引きずるように歩きだした。

 

ずるずると地面を擦る音と、バージェスの呻き声に上機嫌にキングはレオヴァとの晩酌時の会話を思い出す。

 

 

 

 

その日もキングはマスクを外し、晩酌しつつもレオヴァと今後について話を進めていた。

 

 

『……黒ひげを殺るんじゃねェのか?レオヴァ坊っちゃん。』

 

そう言って首を傾げたキングにレオヴァは酒を一口飲むと、小さく笑う。

 

 

『黒ひげは捕らえる(・・・・)

だが……この発信器の先に黒ひげはいないだろうな。』

 

言いきったレオヴァを見て、更にキングは首を傾げた。

 

なぜ、発信器の先に黒ひげは居ないとレオヴァは断言しているのか?

キングは色々と考えてみるが、ピンと来る答えは思い付かない。

 

普通に考えて、発信器は黒ひげの体に埋め込んである(・・・・・・・・・)のだ。

その発信器の電波を追えば黒ひげに辿り着くと考えるのは当たり前と言えば当たり前である。

 

それに未だに発信器は移動を続けている。

壊されている訳でもないと言うのに、何故そこに黒ひげが居ないとレオヴァは考えるのか。

それがキングには良く分からなかった。

 

なので、キングはそのままをレオヴァに告げる。

 

するとレオヴァは何でもないと言うようにキングが驚く言葉を発した。

 

 

『黒ひげならば、必ず発信器の存在に気付く。

おれに作戦を全て邪魔されたんだ、勘繰らない方が可笑しいと思わないか?

そして、その発信器が無理やり外せば壊れるようなモノだという事にも気付くはずだ。

そうなったら普通の思考を持つ者が選べる選択は二択。

発信器が壊れても良いと無理やり外し多少の体へのダメージを受け入れるか、体へのダメージを考慮して…あえてそのまま放置するかだ。

だが……おそらく黒ひげなら“第三の選択肢”を選ぶだろう。

発信器の取り付けられた自分の一部を切り落とし…発信器は壊さずに利用する、という選択肢をな。』

 

その内容にキングは驚きを隠せなかった。

これは見方を変えれば、まるで黒ひげを信頼しているとも取れる言動だ。

 

目を見開くキングの内心を見透かすようにレオヴァはまた小さく笑う。

 

 

『キングの言いたいことも分かる。

おれは黒ひげという男の“未知数さ”を信じてる。

前回のように、必ず奴はおれの計画の斜め上を行こうとする筈だ。』

 

『……そこまで、レオヴァ坊っちゃんが奴を警戒する理由は何なんだ?』

 

キングからすれば、あの場にいた黒ひげは大した脅威には思えなかった。

 

カイドウとレオヴァを前に手も足も出せず逃げ出した鼠の一匹……その程度の認識だったのだ。

 

そんなキングの問いにレオヴァは答える。

 

 

『……キング、以前お前がおれに

“周りにごちゃごちゃ言う馬鹿がいる中で、実力を完璧に隠し続けるなんてのは常人の出来ることじゃねェ”と言ったのを覚えているか?』

 

『あぁ、もちろん覚えている。』

 

レオヴァが何十年も外部の何も知らない馬鹿達の嘲りの言葉を気にせずに実力を隠し続けている現状に、思わず出た言葉だったとキングは記憶していた。

 

どんなにレオヴァが優れているのか、どれ程レオヴァの持つ実力が高いのか。

それを外部の嘲り笑う馬鹿達に解らせてやりたいと憤慨していた頃のキングの言葉だ。忘れる筈もない。

 

 

『確か、あの時レオヴァ坊っちゃんはおれの言葉に

“そりゃあ、キング。おれは常人じゃねェ、父さんの息子だからな”…と笑ってたな。』

 

懐かしむような声で言うキングにレオヴァは目を細める。

 

 

『ふふっ……よく覚えてるな。』

 

『当たり前だ。

カイドウさんとレオヴァ坊っちゃんの事は全部……覚えてる。』

 

赤い瞳でレオヴァの目を真っ直ぐに見てキングは言う。

 

それにレオヴァは嬉しそうに一言、そうか。と言うと話を戻した。

 

 

『要するに、だな。

黒ひげはおれと同じく実力を隠して居たんだ、それもおれと違いその事実をほぼ自分の中だけに止めてな…

……そう言えば、キングなら奴の異様さが分かるだろう?』

 

レオヴァの言葉にキングは確かに…と頷いた。

 

 

『それにあの早さで七武海に入るというのも、簡単に出来るような事じゃない。

ある程度の実力を証明するだけでなく、交渉も出来なきゃならねェ。

キングの思う様に、今は大した実力はないかもしれないが……一年、二年…と積み上げられたら間違いなく面倒な存在になる。

おれは父さんを海賊王にしたいんだ。

…それはキングも同じだろう?』

 

『…カイドウさんこそ、海賊王になる男。

その考えは永劫変わらねェよ、レオヴァ坊っちゃん。』

 

酒瓶を机に置いて、ハッキリとした声で言い切ったキングにレオヴァは、それでこそだと笑う。

 

 

『そうだ、他の誰でもない……父さんこそ海賊王になる男。

キング、おれはどんな相手でも父さんは負けないと信じてる。

父さんはおれ達の上に立つ、世界最強の男だからな。

……だが、それでもだ。

おれは追々、父さんやおれ達の邪魔になりそうな相手を野放しに出来るような性格じゃねェ…』

 

『……フッ、あぁ。

分かった、レオヴァ坊っちゃん…任せてくれ。

おれも同意だ。

カイドウさんが負けねェとしても、邪魔な馬鹿をのさばらせる理由にはならねェもんなァ…』

 

少し長い白い髪を揺らして海賊らしい笑みを浮かべるキングを見てレオヴァはまた一口、酒を呷った。

 

キングもレオヴァに続くように一口酒を呷ると、最初の疑問を口にした。

 

 

『……で、レオヴァ坊っちゃん。

黒ひげがいねェってんなら、何故発信器を追えと?』

 

レオヴァなら必ず意味があるんだろうと、キングはしっかりと耳を傾ける。

 

 

『おれの読みでは……発信器を取り付けた足首は部下に持たせている筈だ。

ラフィットという男は、身動きしずらい今の黒ひげには欠かせない存在だろうからな。

…そうなるとヴァン・オーガーかバージェス辺りが囮役をやっているだろうな。』

 

キングが話に相づちを打っていることを目で確認しつつ、レオヴァは話を続ける。

 

 

『囮役を引き受けていると言う事は、黒ひげへの忠誠心が高いと見ていいだろう。

きっと、黒ひげは囮を見つかる前提の時間稼ぎに使って来る筈だからな。

…そこでなんだが……おれはその囮役が欲しいんだ。』

 

『……囮役が欲しい?

レオヴァ坊っちゃんの顔を見るに、うちに勧誘するって訳じゃなさそうだが?』

 

的確に表情を読み取るキングにレオヴァはニヤリと笑う。

 

 

『流石、キングだ。

そう…別にうちに欲しい訳じゃねェ。

忠誠心が高い奴を取り込むのはなかなかに面倒だしな…

何より、その手間をかけてまで欲しい人材は黒ひげ海賊団にはいねェ。』

 

そう言い切ったレオヴァに同感だとキングは頷く。

 

 

『だが忠誠心が高いってことは黒ひげから、仲間としてか道具としてかは知らないが多少は信頼されている筈だ。

……そこで、少し案がある。

おれとしても、元々あの発信器は見付かる前提の捨て石(・・・・・・・・・・)でな。

本命は別にあるんだ。』

 

身内の前でしか見せない様な笑みを浮かべるレオヴァにキングも思わず口角が上がる。

 

 

『発信器から既に捨て石か……くくっ…レオヴァ坊っちゃんらしいな。』

 

『見付かるか見付からないかのギリギリを攻めた策ほど“本命”だと勘違いさせやすいんだ。

……で、キング。

おれの大本命の方の作戦……手伝ってくれるか?』

 

『レオヴァ坊っちゃんの頼みなら、いくらでも。』

 

心底楽しそうに笑うキングにレオヴァは新しい酒瓶を投げ渡す。

 

キングはそれを受け取ると、作戦の内容を話し出したレオヴァの言葉に集中するのだった。

 

 

 

 

そんなレオヴァのと晩酌を思い出していたキングのマスクの下の口角は無意識に上がっていた。

 

 

「……全部、レオヴァ坊っちゃんの想定通りだな。

フッ…踊らされているだけとも知らずに逃げ惑ってる、お前の所の船長は滑稽だと思わねェか?」

 

まだ意識があるバージェスを見下ろして嗤うキングの機嫌は良い。

 

 

「お前らごときが、カイドウさんとレオヴァ坊っちゃんの邪魔を出来ると思うな。

……誰だろうとあの二人を害することは、おれが赦さねェ。」

 

狂気の色が宿る瞳で捉えられたバージェスの背に、一筋の冷や汗が伝った。

 

 

 

 





ー補足ー

・撤退の件
マリンフォードでの事件で、海軍が撤退したことに対して上から批判が起きたがセンゴクが元帥を辞めるという形で決着済み。

撤退を最初に指示したのは“クザン”
百獣を押しきれる未来が見えないなら、今生きている海兵達をこの場から逃がしてやるのが最善だと判断した。
その後それに気付いたセンゴクも撤退の指示を出し、赤髪と共に撤退重視の立ち回りをした。


ー追記ー
ご質問等を下記にて募集しております!
https://peing.net/ja/hmln_ss_motio

既にレオヴァの手料理を初めて食べたカイドウさんの反応や、レオヴァがキングの素顔を知った年齢など様々なご質問に答えさせて頂いておりますので暇潰しにでも覗いて頂けたら嬉しいです!
よろしくお願いいたします~!
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