俺がカイドウの息子…?   作:もちお(もす)

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流れる日常

 

 

 

「何をやっている!?

早くあれを撃ち落とせッ…!!」

 

そう叫ぶ海軍将校の怒号と同時に一斉に大砲が放たれる。

 

海軍の軍艦へ向けて飛んでくる巨大な怪鳥へ大量の砲弾が魚群のように向かっていき、大空で大爆発が巻き起こった。

 

 

「よし…!命中だ!!

次の砲弾の装填準備を……」

 

海軍将校が指示を出そうとした時だった。

 

突然の強風と共に大空にもくもくと漂っていた爆煙が一気に吹き飛ばされ、青空の中心に傷一つない怪鳥が姿を現す。

 

 

「ば、馬鹿な!!

あれだけの砲撃を受けてっ…無傷だというのか!?」

 

驚愕する海軍将校と海兵達へ向けてまた怪鳥は風を切りながら進んでくる。

そして、軍艦の帆を大きな鉤爪で一直線に斬りつけ旋回を始めた。

 

もう進むことも引くことも出来なくなった海兵達が真っ青な顔で怪鳥の動きを目で追うことしか出来ずにいると、その怪鳥の背から何かが降って来た。

 

少しずつ降って来ているものの正体が見え始め、海兵達に衝撃が走る。

 

 

「う、嘘だろ…!?」

 

「やはり百獣とビッグ・マムは組んでいるのか!?」

 

「駄目だ!奴を船に着地させるな!!」

 

海軍将校の叫びも虚しく、その人物はかなりの上空から降下してきたにも関わらずスタッと軽い音をだけを立て、軍艦へ舞い降りた。

 

 

「……無駄だ、そんな銃はおれには効かん。」

 

「ぜ、全員!射てッ…!!

囲めている今が好機だ!」

 

一斉に海兵達が大男に向かって銃を射つ。

しかし、大男は全ての銃弾を変形して躱してしまった。

 

それにより、着地点を失った銃弾は仲間である筈の海兵同士へ牙を向く。

 

 

「うわぁ!?危ないっ…」

 

「グッ…腹にっ…!!」

 

「痛ぇっ……なんでおれを射つんだ!?」

 

「くそ、何故全て避けられる!?そう言う能力なのか!?」

 

大男は勝手に自滅して騒ぐ海兵達に小さく溜め息をつくと、おもむろに手で甲板に触れた。

 

 

「…“流れモチ”!!」

 

その声が海兵達に届くと、一瞬で床が真っ白なモチへと変化する。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「ぐぅッ……身動きが取れん!」

 

「なっ!

う、動くと体が沈むぞ!?」

 

「ひっ……こんな…!どうすれば!」

 

またざわざわと騒がしくなり始めた海兵達など気にした様子もなく、大男は更に軍艦を餅へと変えていく。

 

船としての機能を果たせなくなり始めた軍艦が大きく傾き、浸水が始まると海軍将校が焦った表情を隠すこともせずに叫んだ。

 

 

「くっ!なんてことを!!

貴様、我々諸とも海に沈む気だな!?」

 

足が餅に捕まっている為に、沈没し始めた船から逃げることも叶わぬ海軍将校の必死の形相を何の感情も籠らぬ瞳で大男は見やった。

 

 

「お前達と海へ沈むつもりは微塵もない。」

 

「っ…どちらにせよ!

貴様もこのままでは無事ではすまんぞ!!!」

 

海軍将校の言葉に呆れたように大男は息を吐く。

そして、完全に傾いた船のマストへと飛び退くと声を上げた。

 

 

「レオヴァ!」

 

そのまま大男はマストから海へ向かって飛び降りる。

 

突然、能力者が海へ身を投げたことに海軍将校は目を見開いたが、大男が海へ落ちることはなかった。

 

目にも止まらぬ速さであの怪鳥が現れ、大男を背に乗せてまた上空へと舞い上がっていったのだ。

 

 

一瞬自らの乗っている軍艦が傾いてしまっている現実を忘れ、唖然と空を見上げていると

上空へ消えた筈の怪鳥がまた軍艦へ迫り来ていた。

 

 

「……!?ま、まずい!!!」

 

その言葉が発せられると同時に傾いていた軍艦に強い衝撃が走り、船の表と底が入れ替わる。

 

大きな水飛沫(みずしぶき)を上げながら転覆した船を見下ろし、怪鳥が大きく口をあける。

すると、バチバチと光が溢れ、光線のようなものが軍艦を襲う。

 

その光線は軍艦だけでなく海にまで影響を及ぼし、大きな水柱が立つ程の衝撃と電流であった。

 

海面で必死に踠いていた海兵達が一瞬で動かなくなり、死んだ魚と共にプカプカと浮き始めたのを確認すると、ようやく怪鳥はその場から飛び去って行くのだった。

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

大きな鳥が島に降り立つと、その背からシャーロット・カタクリと言う大海賊の幹部が地面へ飛び降りてくる。

 

そして、カタクリが鳥の方を振り向くと巨大な鳥は人の姿へと形を変えていた。

この男の名はレオヴァ。

カタクリと同じく大海賊の幹部であり、百獣のカイドウの実子である。

 

 

しかし、本来は敵同士である筈の二人は思いの外穏やかな雰囲気で会話を始めた。

 

 

「まったく、打ち合わせもなしに船から飛び降りるとは…

おれが間に合わなかったらどうするつもりだったんだ。」

 

眉を下げるレオヴァにカタクリは小首を傾げる。

 

 

「レオヴァ、お前が間に合わないなどあり得ない。

それにおれが船からお前の名を呼び、飛ぶ未来は“見えていた”だろう?」

 

最初からレオヴァが間に合わないという可能性など考慮していないと取れる発言に、レオヴァは次に言おうとしていた小言を飲み込んだ。

 

 

「…見えてはいたが……はぁ、まぁいいか。」

 

諦めたように笑うレオヴァにカタクリも小さく笑い返すと、本来のすべき事の為に会話を戻す。

 

 

「それよりもだ、レオヴァ。

今回おれ達の貿易の邪魔をしてきた海軍は潰せたが……百獣とウチが同盟関係にあると間違った情報が送られている可能性が高い。

……そうなると少し問題がある…」

 

難しい表情をするカタクリの言いたい事を察したレオヴァが口を開く。

 

 

「それは分かってるさ、カタクリ。

ビッグ・マムは百獣(おれ達)に思うところがあるんだろう?

…だが、心配は無用だ。

その可能性も考慮して薬を撒いてあったんだ。

戦闘前からあの軍艦の電伝虫は使用不可能な状態になっていた…恐らく詳しい情報は流れていないだろう。」

 

レオヴァの言葉にカタクリが微かに目を見開く。

 

 

「……あの偵察に行くと先に様子を見に行った時か?」

 

「そうだ。

どちらにせよ、情報の流出はおれも避けたかったからな。」

 

「電伝虫を使用不能にする薬か……そんなものがあるとは初めて聞いたな。」

 

感心したように頷くカタクリにレオヴァはまた小さく笑う。

 

 

「カタクリ、そろそろ貿易の話に戻さないか?

……だが、せっかく入れた紅茶は冷めてしまってるか…」

 

「問題ねェ、アイスティーにすればいいだけの話だ。」

 

「…確かにそうだな。」

 

一瞬肩を落としたレオヴァだったが、カタクリの提案に笑顔を取り戻すと元居た場所へ向かって歩きだした。

そして、少し遅れてカタクリもレオヴァに並んで歩き出す。

 

二人は近況を話しながら貿易の話し合いの為に作られた家へと足を進めるのだった。

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

所変わり、ワノ国にて。

 

 

珍しく任務を終えた日が重なった幹部達はカイドウを待つ為、控え室で顔を合わせていた。

 

 

ジャックは待合室の中央にて五人掛けのソファーを椅子のように使いながら、報告書に不備がないか確かめており。

 

その右側のソファーにはローが足を組みながら腰掛け、刀の手入れをしている。

 

更にローの正面にはフーズ・フーが口をへの字に曲げながら、なにをするでもなく長い足を持て余しながら煙草の煙を吐き出しており。

 

そして、そんなフーズ・フーの隣のソファーではスレイマンが新しい部下の名前と顔を一致させるべく、黙々と一覧表に目を通していた。

 

 

4人全員が無言を貫く中、待合室にある急須(きゅうす)で茶を入れていたドレークが真ん中のテーブルに人数分の茶を並べ始める。

 

ドレークが茶を配り終え、空いているソファーに腰掛けると4人はそれぞれ、その行動に軽い礼を述べた。

 

 

「相変わらず、気が利くなドレークは。

おれも見習わなければ…」

 

スレイマンからの素直な称賛の言葉にドレークは小さく笑いながらも、首を横に振った。

 

 

「いや、おれが飲みたかったからついでだ。」

 

「自分が飲む時に周りにも、と思える心遣い…ドレークらしい。

レオヴァ様も良く褒めているのを聞くぞ。」

 

「っ……そんな大層なことじゃないだろう。」

 

邪気のない言葉とレオヴァの名に少し照れたのかドレークは無理やりぶっきらぼうな声を作る。

 

そんな光景を見ていたフーズ・フーがニヤリと口角を上げながら、話に入ってくる。

 

 

「くくっ…なんだよ、ドレーク。

嬉しいなら嬉しいって言っちまえよ。」

 

「フーズ・フー!別におれは!」

 

ムキになるドレークを見て、フーズ・フーはまた口角を上げる。

そんなやり取りをしていると、刀の手入れを終えたローが口を開いた。

 

 

「じゃあ、ドレーク…お前、レオヴァさんに褒められてたって聞いて嬉しくねェのか?」

 

思わぬ方向から追い討ちをかけられて、面食らった顔をしていたドレークの横からスレイマンが割り入ってくる。

 

 

レオヴァ様から褒められて嬉しくない者がいる筈がない…!!

ドレークもそうだろう?」

 

完全に同意してくれると信じている瞳でスレイマンが振り返って来た事で、ドレークは観念したように口を開いた。

 

 

「…ぐっ…う、嬉しいに決まってるだろう!」

 

やけくそのように本音を吐いたドレークにフーズ・フーが声を上げて笑い、その正面でローも小さく笑った。

 

こうして、いつものように何気ない話をしていた4人だったが書類を置いたジャックの一言で場の雰囲気が変わる。

 

 

「……明日、レオヴァさんが例の貿易から帰ってくる。」

 

このジャックの言葉に4人が一斉にジャックを振り向いた。

 

 

なに!?レオヴァ様が帰ってくるのか!?

っ~~!お会いするのは1ヶ月振りだ!!!」

 

「おい、聞いてねェぞ。

レオヴァさんが帰って来るのは5日後じゃなかったのか?」

 

「レオヴァさんが!?

早い帰還だな…ビッグ・マムとの取引が予定よりスムーズに終わったという所か?」

 

「待てよ、ジャック。

なんでテメェがここにいる誰よりも先にその話を知ってんだ?」

 

バラバラの反応を返してくる4人にジャックは表情を変えずに答える。

 

 

「キングの兄御からの情報だ、間違いねェ。」

 

情報元がキングと聞き、本当にレオヴァが帰ってくると確信した4人の表情が明るいものになる。

 

…が、何かに気が付いたのかフーズ・フーがジャックをマスクの下から鋭い目付きで見上げた。

 

 

「……で、そのレオヴァさんが帰って来るって情報をおれ達に共有する狙いはなんだよ?」

 

訝しむフーズ・フーの言葉に三人が確かにと頷いて見せた。

 

 

「言う通りだな。

普段なら黙ってレオヴァさんを港で待つお前が何故おれ達にそれを教えるんだ。」

 

このローの言葉通り、基本的にここにいる5人はレオヴァの帰還を知っても互いに教え合うことは滅多にない。

 

その理由は単純だ。

遠征や貿易から戻って来たレオヴァはカイドウからの命令で2日ほど休みを取らされる。

そして、その休日を共に過ごす約束を取り付ける為には誰よりも早くレオヴァに声を掛けなければならない。

所謂、早い者勝ちというやつである。

 

その為、今回のジャックのようにレオヴァの帰還を教えるという事は何か裏がある……そう思われてしまった訳だ。

 

フーズ・フーとローは訝しげな目をジャックに向け、スレイマンとドレークが不思議そうに首を傾げているとジャックが口を開いた。

 

 

「……教えた理由は一つ。

今回はおれがレオヴァさんに声をかけるから邪魔するんじゃねェ…って事を言う為だ。」

 

この一言で部屋に殺気が立ち込め始める。

 

 

「…あ"ぁ"?」

 

「ふざけんな、ジャック!」

 

「貴様っ…!

そんなことが許されると思っているのか!?」

 

「……なぜ、レオヴァさんとの時間を譲らなきゃならない。」

 

もしこの部屋に部下達がいれば全員顔を真っ青にして動けなくなるであろう程の殺気を全身に受けながらも、ジャックは眉ひとつ動かさずに続ける。

 

 

「うるせェ!!

おれは今回を逃せば、次は3ヶ月後だ!!!

テメェらはせいぜい1ヶ月だろうが……黙って今回は譲れ…!」

 

ジャックが鬼の形相で4人を睨み付けるが、4人は一切怯む素振りはない。

むしろ眉間に青筋を浮かべながら言い返し始めた。

 

 

「んな事言って、テメェ何かとレオヴァさんとの休日の権利奪ってるじゃねェか!

ジャックとロー、テメェらはそろそろ遠慮ってモンを覚えたらどうだよ、なァ!?」

 

「フーズ・フー、なんでおれまで遠慮しなきゃなんねェんだ!

そもそも、ジャック!お前結構レオヴァさんと色んな所に遊びに行ってるって情報は回って来てんだぞ!?」

 

「確かに…フーズ・フーの言うようにジャックやローは少し周りに譲ってくれてもいいと思うが?

ローもベポとレオヴァさんと三人で良く出掛けているんだろう?」

 

「待て、貴様ら!!レオヴァ様の休日を邪魔立てするなど!!」

 

「「「「スレイマン、お前が言うな!!!」」」」

 

一秒前まで争っていた4人がピッタリのタイミングでスレイマンに向かってさけんだ。

 

しかし、当の本人は何故突っ込まれたのか分からずにキョトンとしてしまっている。

 

一瞬、待合室に訪れた静寂をドレークが破る。

 

 

「……言わせてもらうが、ジャック。

確かにお前は大看板の仕事などで多忙であり、レオヴァさんと休日を共にする回数は少ないかもしれない。

だが!任務関係での同行率は断トツだろう!

少し前のバレットの研修も付いて行ったらしいじゃないか?」

 

ドレークの言葉にジャックはぐぅの音も出せずに押し黙る。

 

すると続くようにフーズ・フーが口を開いた。

 

 

「今回ばかりはドレークの意見におれも同意だ。

何でレオヴァさんとの時間を多く取れるお前に譲らなきゃなんねェのか理解できねェぜ。」

 

ジャックの口がだんだんとへの字を描いていく。

そんな中、ローも口を開いた。

 

 

「早い者勝ち……ってのが暗黙の了解だっただろ。

譲ってくれって言われて譲るような奴、ここにいるわけねェだろジャック。」

 

呆れた様な顔で溜め息混じりに溢したローに、ジャックの眉間の皺が増えていく。

そして続けてドレークとスレイマンも口を開く。

 

 

「ローの言う通りだな。

何故、おれ達が黙って譲ると思ったのか…」

 

「そうだぞ、ジャック!

レオヴァ様は貴様だけで独り占めしていい方ではない!!」

 

ブチッ…と小さな音が部屋にいた者達の耳に入った次の瞬間。

テーブルが目に求まらぬ速さで宙を舞った。

 

 

「ならテメェらを動けなくしてから、おれはレオヴァさんに声をかけるまでだ!!

どいつもコイツも好き勝手言いやがって!!」

 

珍しく噴火したジャックに4人が構える。

 

 

「上等だ、テメェ!!

逆にブッ飛ばしてレオヴァさんとの休日はおれが貰う!ついでに大看板の座もな!!」

 

「フンッ…お前らが動けなくなればレオヴァさんとベポと花の都に行けるって訳か……悪くねぇ。」

 

「危ないだろう、ジャック!

貴様らには一度灸を据えてやる!!」

 

「ま、待て!

ここで暴れたらカイドウさんにっ……」

 

ドレークの制止も虚しく、4人の大乱戦が始まるのであった。

 

  

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

昨日(さくじつ)に勃発した大乱戦はカイドウの

『テメェら城壊して何してやがるッ!!

止めねェか!!周りを見ろ!!!』

という特大ブーメラン発言により、無事終わりを迎えた。

 

他の誰でもないカイドウに怒られたことにより5人は肩を落としながら自室へと戻って行き、暫く反省していたとかいないとか。

 

 

話は変わり、鬼ヶ島城内にて。

 

大乱戦の理由とも言えるレオヴァは既に帰還し、自室でペット達の手入れを始めていた。

 

その隣ではホーキンスが珍しげにレオヴァのペットを眺めている。

 

実は港にてレオヴァを迎えたホーキンスが、ちゃっかり休日に約束を取り付けていたのだ。

 

部屋で自由に動き回るペットの軍隊ドッグ達を一匹ずつブラッシングしていくレオヴァと、微動だにしないホーキンスという絵面はかなり珍しい。

 

 

そんな、ただレオヴァの隣に座っているだけだったホーキンスの膝の上に軍隊ドッグの子犬が無邪気に飛び付いて来た。

 

 

「っ……レオヴァさん…」

 

突然じゃれ付いて来た子犬をどうすれば良いのか分からずに、ホーキンスは困惑したようにレオヴァの名を呼んだ。

 

しかし、レオヴァはブラッシングの手を緩めることもなく、小さく笑うだけだ。

 

 

「…これは……どうすれば………レオヴァさん。」

 

ホーキンスがまた困ったような声で名を呼ぶと、ついにレオヴァが吹き出した。

 

 

「ふふふっ……お前がそんな動揺したような声を出すのは組手以外じゃ見たことがなかったが…ふふ…」

 

面白いと肩を揺らすレオヴァの上機嫌な声色につられて、周りにいた軍隊ドッグ達が尻尾を振りながら集まっていく。

 

レオヴァの周りをブンブンと尻尾を振りながら歩き回る軍隊ドッグを横目にホーキンスは困ったような表情のままレオヴァを見続ける。

 

すると、やっと助ける気になったのかレオヴァがブラシを置いてホーキンスの側まで移動し、また腰かけた。

 

やっとこの生き物から解放されると安心したホーキンスだが、どうやらレオヴァは少し違う考えだったようである。

 

 

「ホーキンス、下から手を近づけて首の辺りを撫でてみろ。

……優しくだぞ?」

 

「はぁ…撫でる…?」

 

意味が分からないと眉間に皺を寄せたホーキンスにレオヴァは首を傾げる。

 

 

「ホーキンス、お前。

今日おれのペットの世話を見たいと言ったじゃねェか。

興味があったんじゃないのか?動物達に。」

 

「……いえ、まぁ…興味はありましたが……」

 

動物にではない、と言い出す前にレオヴァの手がホーキンスの膝の上にいる子犬へと伸びる。

 

すると子犬は自らレオヴァの手に顔をすりすりと寄せ、少し高めの鳴き声を溢していた。

 

 

「…こんな感じで撫でてやればいい。

自分から膝に乗ったってことは、ホーキンスを気に入ったんだろう。」

 

「これが、おれを?」

 

不思議そうに子犬を見下ろすホーキンスにレオヴァが小さく笑いながら返す。

 

 

「ホーキンス、“これ”じゃねぇ。

その子犬は“ハチトー”だ。」

 

「ハチトー…?

成る程……ところで、何故ハチトーと言う名に?」

 

何気なくホーキンスが名前の由来を尋ねる。

 

 

「80匹目の子犬だったからな。

8と10でハチトーだ。」

 

あまりにもな由来にいつもの冗談か?と勘ぐったが、自信ありげに答えたレオヴァの表情を見るにおそらく本気で考えた名前なのだろうと察し、ホーキンスは一瞬の沈黙の後に返事を返した。

 

 

「………分かりやすい名で良いかと。」

 

「そうだろう!

クイーンからは凄い駄目出しを受けたが、ホーキンスなら分かってくれると思ってたんだ。」

 

自分の言葉を素直に受け止め、嬉しげに笑うレオヴァからホーキンスはそっと目を反らし子犬を見た。

 

……決して後ろめたくて目を反らした訳ではない。

先ほどレオヴァに言われた通りに子犬を撫でる為に目線を移しただけである…とホーキンスは心の中で誰に向けてか分からぬ言い訳をしつつ、子犬へ手を伸ばす。

 

そっと喉辺りに触れると、子犬はチラッとホーキンスを見たが抵抗する素振りはない。

 

なので、ホーキンスはレオヴァがやっていたように手を動かしてみることにした。

 

少しの間そのまま撫でていると、子犬があくびをしてホーキンスの膝の上で寝てしまった。

 

その考えられぬほど無防備な子犬の姿にホーキンスは半分呆れつつ、起こさぬよう体の動きをピタリと止める。

 

 

「凄いな、ホーキンス。

存外、お前は動物との相性が良いのかもしれないな。」

 

「……おれが、ですか?」

 

そんな事はないだろうという気持ちが顔に出ているホーキンスに、レオヴァは言葉を続けた。

 

 

「そうだ。

…実はな、殆どの生き物はキングを怖がって側に寄らないんだ……この軍隊ドッグ達も例外じゃなくな。

だが、あの狛鹿はホーキンスが手綱を握っていたとはいえキングを恐れつつもちゃんと指示に従っていただろう?

おれはそれを凄い事だと思っている。

動物が本能で恐怖を感じていながらも逃げ出さずに共に来るというのは、信頼関係がしっかり出来ている証拠だ。

日頃から手入れや世話も欠かさずにしているんだろう?」

 

「…ありがとうございます。

おれの狛鹿なので、世話は確かに自分で…」

 

ホーキンスの返事にレオヴァは小さく頷くとまた話し出す。

 

 

「ふふふ、ホーキンスはしっかりしているな。

狛鹿だけでなく部下達への面倒見の良さもそうだが、自分で決めたことは最後までやり抜く意思の強さも…

ホーキンスを連れ帰った父さんの目に狂いはなかったわけだ。

うちにホーキンスが来てくれて、本当によかったなァ…」

 

最後のレオヴァの独り言にホーキンスは僅かに口角をあげ、目を細めた。

 

 

「……あの時のおれの判断は、間違っていなかった。」

 

小さく呟いたホーキンスに、レオヴァは穏やかに笑いかけた。

 

 

 

 

 






ー後書きー
あと3~5話ほどは新世界前の小休止ということで、番外編のようなものとか新世界前の情報まとめ関係のお話を書かせて頂こうと思っております。

新世界編からは出来るだけ原作の“重要情報”と相違点が出ないようにしたいので、おだ神様の連載再開を待ちつつ…という理由でございます。
(例のプルトン最新情報的なのが今後どんどん出てきそうなので…)

と、言うわけで今回の話はツイッターと質問箱で頂いたコメントを反映させた形の小話となりました。

なにか、「これどうなってるの?」というような事があれば下記の質問箱やなどにお寄せ頂ければ話か後書きで書かせて頂きます。(ハーメルンでの回答希望と記入お願いします~!)

下記、質問箱リンク
https://peing.net/ja/hmln_ss_motio

後書きまで読んでくださりありがとうございます。
ご感想やコメント、ここ好き一覧も本当に励みになっております~!
誤字報告下さる方々にも感謝!
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