【前章のあらすじ】
・マッシブーンは昔の話をした
・宴会が終わった
・平和な日々は続く
四十三、 ホワイトムーンの来訪者
ある日の夜。闇夜を切り裂くように、大きな穴が開いた。
「……貧相な場所ね。簡単に侵略できそう。」
そこから現れたのは、幻想郷に災いをもたらす者か。
それとも──ただの白いゴキブリか。
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よう。俺、マッシブーン。真っ赤な身体、鍛え抜かれた筋肉美につぶらな瞳。尖った口先で血と味噌汁をごくごくと飲んじゃう自他ともに認める化け物だ。
冥界での宴会が終わり、再び俺は博麗神社に住むことになった。朝起きると萃香はまだ横で寝ていて、俺は博麗神社の巫女である博麗霊夢に催促する。
「味噌汁味噌汁味噌汁味噌汁」
「うるさい」
「観光させろ観光させろ観光させろ!」
「そんなにしたいなら行ってきなさい」
朝っぱらから俺は口を鷲掴みにされて持ち上げられ、お祓い棒で強くぶっ叩かれ、霊夢に追い出されてしまった。
「すまーん!俺が悪かった!味噌汁飲ませてくれー!」
「幽霊になったら飲ませてあげるわよー」
「死ねってことかよ!命を何だと思ってやがる!フンだぜ!」
命を大事にしないサディストに抗議するべく、俺は家出することにした。
そして人里に入ろうとした俺は、二人組の門番に止められていた。
「入るには人間への変身を条件とする。」
「何?」
「いやぁ、貴方についての新聞が出てから我々揉めていましてね。妖怪が妖怪として過ごす自由を認めるべきだという『革新派』と、妖怪は危険だから人の姿であるべきだという『保守派』に分かれているのですよ。」
成程、と俺は納得する。やはり人間にならない限り、妖怪は人里に入れないらしい。
(……完全には共存出来ねぇもんだな。一号。)
難しいもんだよな、と俺は思考する。やがて八雲藍が訪れて俺を変化させてくれるまで、クソ不味い退屈を味わっていた。
人間に変身した俺は、持ってきてくれた服を着ながら八雲藍と話していた。
「何?霊夢を怒らせただと?」
「おう。俺が騒がしくしてたらぶっ叩かれた。ゴーストタイプになれったって、俺はかくとう・むしタイプだから無理なのによ。」
「……これで土産でも買うと良い。無駄遣いはするなよ?」
藍がお金の入った袋を渡してくれた。途端に俺は元気が湧いた。
「いやっほーーーーう!!」
「無駄遣いはするなよー!」
藍の声を聞き流しつつ、俺は走った。腹が減っては戦はできない。まず俺は和菓子の店に入った。
「美味い美味い。スイーツ大好きマッシブーン。」
外の椅子に腰かけ、三色団子を口に運ぶ。色ごとに味が違うのかと思ったが、俺の舌ではどれも同じ味に思える。
「この色って何の意味があるんだ?」
「知りたいか?」
突然誰かが横に座る。その少女は真っ白な髪をしていた。
「ピンクと白はどちらも縁起が良い色だ。緑は邪気を祓う色と言われてる。三色団子ってのは貴族の食べ物だったから、色にもこだわりがあったんだ。」
「もこたん!」
「妹紅と言え」
二回も俺を殺そうとしてきた女*1──藤原妹紅が俺に返事をした。そのまま彼女は続けて言う。
「神社に行こうと思ってたが、ぶらりと寄ったら丁度いた。助かったよ、今暇だろ?」
「退屈してた所だぜ。俺に何か用か?喧嘩か?」
「大正解!よく分かってるじゃん。」
「おいおい、冗談のつもりだったのによ」
「ははは」
からからと笑った彼女が指から炎を出し、みたらし団子を炙った。茶色いタレのかかった団子はじゅうじゅう音を出して、甘い匂いが漂う。
「軽く炙るとさ、香ばしくなって美味いんだ。でも焦げてるくらいが一番美味い。」
「じゃ、俺も一本同じようにしてくれ。奢ってくれたら喧嘩に付き合うぜ。」
「元々そのつもりだ。おっさーん!みたらし団子もう一本!」
妹紅が代わりに注文をし、俺は温かいお茶を吸った。すると口の中を火傷した。
「あちぃ!」
「気を付けろよ。ここのお茶は熱々だ。」
「……で、妹紅と喧嘩すればいいのか?俺は。」
「違う違う!お前は
「何て?」
「輝夜の奴に自慢されてさ。月みたいに美しい妖怪を捕獲したっていうから、私は太陽っぽいお前で対抗してやるんだ。」
彼女はそう言い、炎を揺らめかせ続けた。みたらし団子はごおごおと燃えている。とうとう茶色がほとんど黒く変わってしまった。
妹紅がニヤッと笑う。
「一緒にアイツら燃やし尽くそう。マッシブーン。」
「団子が焦げてるぜ?」
「このくらいが美味いんだって」
彼女がぱくっと団子を口に入れた。そして口の中を火傷した。
「あちぃ!」
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「えー、ルールは簡単。私と輝夜が一匹ずつ妖怪を出す。そんで勝った方が続けて次の妖怪と戦う。」
迷いの竹林と呼ばれているらしい場所を歩きながら、彼女はびしっと指を立てて言った。
「名付けてバケモンバトル!」
(ポケモンバトルじゃねぇか)
俺は心の中でツッコむ。彼女は更に説明した。
「私が仲間にした妖怪は全部で三匹。アイツも三匹だ。全滅させれば良いんだから、お前が頑張ってくれよ。」
(ポケモンバトルじゃねぇか)
「おい?自信無いのか?」
「いや……そんで後の仲間は誰だ?」
「チルノって奴と、大妖精って奴だ。知ってるか?」
「知らねぇけど妖怪じゃなくて妖精が混じってんな」
「細かいことは良いんだよ!お前も気味悪モンスターだろ?」
「違ぇよ!」
俺は叫んだ。あの不名誉な新聞はやはり出版停止にすべきだ。このポケモンバトルもどきが終わったら、射命丸文に殴り込みに行こうと思った。
(にしても……月並みに美しい女に、月並みに美しい妖怪か。)
俺は思考する。白玉楼で初めて会った奴の中に、輝夜と呼ばれていた奴がいた。恐らくソイツが今から会う奴だ。思い当たるのは彼女しかいない。
そして妖怪。月という言葉から、ふっと脳裏をよぎった奴がいた。
(……まさかな。)
俺は有り得ないことを予測した。
「当たってんのかよ!」
「……!」
「あ、やっぱり知り合い?」
妹紅が教えてくれた月の姫──蓬莱山輝夜がそう言った。俺はマッスルポーズをして叫んだ。
「久しぶりだな!フェローチェ!」
「この不細工がッ!」
俺はいきなり悪口を言われて凹んだ。
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(まさかコイツと再び会うことになるとはな)
フェローチェ。ウルトラビーストと呼ばれている、真っ白で高身長なヒョロガリポケモン。ポケットモンスターサンムーンのムーンの方で代表ヅラをしている。ちなみに俺はサンの代表である。
初めて会ったのは数年前のことだった。我が故郷ウルトラジャングルにウルトラホール-21が発生。観光だぜ!とうっかり入ってみると、そこは白い砂漠の世界だった。
「──不埒な蟲が入って来たわね。」
美しく真っ白な世界を支配していた女王は、フェローチェという名前をしていた。彼女は沢山の美しいポケモンを従え、自ら俺を排除するべく襲って来た。
結果、俺がボロ勝ちした。
「アンタに会えて嬉しいわ。マッシブーン。」
ニコニコと笑っているフェローチェが、ずどんと大地を踏み鳴らした。土煙が辺りを舞う。
「もう一度アンタを蹴り殺すチャンスが来たなんてね……!」
大きく瞳孔を開いた彼女の執念がこちらまで届いた。輝夜が彼女を諌めるように言う。
「はいはい、やめてねフェローチェ。美しい顔が台無しよ?」
「……そうね。あんな野郎に荒波を立てること自体がナンセンスだわ。」
「何だアイツ」
「ムカつくだろ?今からぶっ殺す奴らだ。」
「あーらあらあら!どの口がそう言う訳?こっちにはフェローチェちゃんがいるのよ!」
蓬莱山輝夜が自信満々にそう言い、藤原妹紅はぎりぎりと歯軋りをした。俺は月からやって来たというかぐや姫をちらっと見て、やはり凄まじい美貌だと感じた。
「この子も異世界から来たみたいだから、知り合いだと思ったのよ、マッシブーン。大当たりだったわ!それでどっちが強いの?」
「俺」
「私」
「お前負けたじゃねーか!」
「他者の成長すら想像出来ない間抜けなのね。輝夜、頭脳もパワーも私の勝ちよ。」
随分言い張るフェローチェを、フン、と俺は一笑に付した。
「お前の成長なんか知らねーよ。結局どっちが強いか分かんねえってこった。ならよ、さっさとやろうぜ!ポケモンバトル!」
「バケモンバトルな」
妹紅が口を挟んだ。周りを見渡すと、俺から離れた横に緑色の髪の少女が一匹、爆睡している青色の髪の少女が一匹いる。どちらも俺とお揃いの羽根を生やしていたので親近感が湧いた。
「……あのー、本当にやるんでしょうか……」
「俺がいるから安心していいぜ。俺はマッシブーンだけどお前らは?」
「あっ。私は大妖精です。こっちがチルノちゃん……チルノちゃん?起きてー……」
「zzz……」
「うぅ……」
戦いは不本意らしい、可哀想に。対して輝夜の方には兎人間が二匹。どちらも見覚えがある。宴会に参加していたはずだ。
「お師匠様に怒られなきゃ良いなぁ……」
「そんときゃ逃げるまでさ、鈴仙。アンタが囮になってね。」
「何でよ!」
戦いは不本意らしい、可哀想に。そうして俺たちは戦いやすそうな広い場所に移動した。
(蹴り殺すって冗談だよな……?)
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(ぶっ殺してやるわ!)
一方、フェローチェは殺意に燃えていた。