筋肉蚊の楽しい幻想郷観光   作:すくぇ

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【前回のあらすじ】
・フェローチェ幻想入り
・妖怪と妖怪を戦わせるバケモンバトル
・に参加させられるマッシブーン



四十四、 バケモンバトルだぜ

 

 

 戦いのフィールドは広々としており、鮮やかな緑色の竹藪に囲まれている。観客代わりの真っ白なウサギたちがわらわらと何かを話し合っていた。

 

『何だあの赤いの!?』

『怖い!』

『てゐ様勝って!』

『てゐ様一番!』

 

 俺はその大勢の騒ぎ声を聞きながら疑問に思った。

 

 (てゐ様……?輝夜のことか?)

 

 様付けされているのだから偉い奴なんだろう。俺が勝手にそう納得していると、妹紅が声を上げた。

 

「よし、集まったしやるぞ!」

 

 唐突にバケモンバトル、開始──

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

チーム輝夜 チーム妹紅

  0  ー  0

 

 

【第一回戦】

因幡てゐVSチルノ

 

 

「チルノちゃん!起きて!」

「あたい起きた!やっと始まるのね!」

 

 水色の髪の少女が待ってましたと言わんばかりに起きた。大きな声を出してにこっと笑うその姿から、おてんばで活発な性格が見て取れる。

 

「ふふん。あたいは最強!本気を出せば、ぜーんぶ凍っちゃうんだから!」

 

 どうやら相当自信があるらしい。輝夜の掛け声で試合が始まった。

 

「よーい、始め!」

 

 

 

 

「きゅー……」

「チルノちゃーん!」

 

 両目をバッテンにしたチルノがばたりと倒れ、大妖精が駆けつけた。

 

「いやー、強かったよ。ついてなきゃ負けてた。妖精のくせにやるもんだ。」

 

 ぜぇぜぇと息をしている兎耳の少女がそう言った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

チーム輝夜 チーム妹紅

  1  ー  0

 

 

【第二回戦】

因幡てゐVS大妖精

 

 

『きゃー!』

『やっぱりてゐ様一番!』

『このまま勝てー!』

『ころせー!』

 

 ウサギ共から野次混じりの歓声が聞こえる。恐らく俺以外にはこのファンシーな声援は聞こえていないだろう。

 

 が、緑色の髪をした大妖精は謎のプレッシャーに押し潰されそうになっていた。

 

「あわわわわわわわわ」

「落ち着け!大丈夫だ!チルノの仇を打ってやれ!」

「深呼吸だ!素数を数えろ!1,3,5,7,11……」

 

 妹紅と俺は必死に彼女を励ました。しかし効果が無いのか逆効果なのか、噴き出る汗が止まる気配は無い。

 

「ご」

 

 不意に大妖精はチルノを抱え、一目散に逃げてしまった。

 

「ごめんなさーーーーい!!」

 

 俺と妹紅は顔を見合わせた。

 

「……お前、何であの二人に声をかけたんだ?」

「ちょうど良かったから捕まえたんだよな。竹林で迷ってたもんでさ。」

「そりゃ戦えねぇだろうがよ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

チーム輝夜 チーム妹紅

  2  ー  0

 

 

【第三回戦】

因幡てゐVSマッシブーン

 

 

『きゃー!』

『もっと激しく!』

『ころせー!』

『やっつざきやつざき!』

 

 可愛らしく無い言葉がうじゃうじゃ聞こえる今日この頃、とうとう俺のチャンピオンタイムがやってきた。

 

「うーし、俺の出番だぜ。」

「あらあらあらあら?もう一匹しか残ってないじゃない妹紅の方?どうしたのかしら〜あれだけ啖呵を切っておいて。」

「精々吠えてろ!見ろよこの筋肉お化けを、バケモンの名に恥じないだろ?」

「褒め言葉として受け止めるぜ?」

 

 腕をぐるぐる回しながら俺は言った。ぴょんぴょんと跳んで来たのは2連勝中の兎っ娘。背丈は小さく、ピンクの服が可愛らしい。

 

「また会ったね、異世界の観光客。私は因幡てゐ。ちょっと長く生きてるだけの妖怪兎さ。」

「俺はマッシブーン。随分人気者なんだな?マウント取り合うか、こっちは一万年ぐらい生きてるぜ」

「私はその百倍かなー」

「マジかよ!?」

「あはは。どっちでも良いよ。関係無いから。」

 

 達観した様子の彼女に、やはりここでは見た目がアテにならないと思った。流石ウサギたちを従えてる(?)だけある。彼女の言うことが本当なら俺は赤子みたいなもんだ。

 

「惨敗じゃねぇか。終わったぜ」

「まぁまぁ、試合はこれからだよ。アンタ強そうだし、お手柔らかにね?」

「おう。手加減は慣れてんだ。」

 

 大きな手のひらを俺は開いた。妹紅が叫ぶ。

 

「勝てよマッシブーン!よーい、始めー!」

 

 

 

 

「え?」

 

 てゐが色とりどりの弾を放ったのを無視して、俺は彼女に突っ込んだ。

 

「ちょっ!」

 

 弾幕に当たりつつ、接近した俺は彼女に張り手をした。

 

「おらぁ!」

「ぐぇーー!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

チーム輝夜 チーム妹紅

  2  ー  1

 

 

【第四回戦】

鈴仙・優曇華院・イナバVSマッシブーン

 

 

『『『『キャーーーー!』』』』

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

 甲高い悲鳴がギャラリーから上がり、もう一匹の背が高い方の兎っ娘が叫んだ。

 

「何よ今の試合!弾幕ごっこは!?」

「俺、妖力無いから無理なんだよな」

「えっ、確かに……。って姫様!」

「言い忘れてたかしら?戦う方法は何でも良いわ。どっちかが戦えなくなったら終了ってだけ。ウチのフェローチェも同じだし。」

「そんなぁ。先に言ってくださいよ……」

「つべこべ言わずにやろうぜ!バケモンバトル!」

 

 準備万端の俺は彼女に言いながらマッスルポーズを見せつけた。

 

「……鈴仙って名前よ。私はてゐのようにはいかない。痛い思いをする覚悟は出来た?」

「ククク、マッシブーンだ。お前も張り手で同じ場所に送ってやるぜ。」

 

 鈴仙は竹にもたれかかって倒れている因幡てゐの方をちらっと見た。そこには観客のウサギたちが皆わらわらと集まっている。真っ白な一つの毛玉のようで面白い。

 

 仲間想いなのだろう。鈴仙が俺の方をキッと睨む。同時に妹紅が叫んだ。

 

「そんじゃあ行くぞー!よーい、始め!」

 

 

 

 

「狂いなさい」

 

 瞬間、鈴仙の両目が怪しく光った。まるで本気になった時の博麗霊夢のように、彼女の瞳が赤色に染まる。

 

「分身して見える?停止して見える?私の瞳は狂気の瞳……。貴方はもう何も出来ない。」

 

 何か言っているようだが、一体にしか見えない鈴仙に向かって俺は真っ直ぐ走った。

 

「!?」

 

 驚いた表情の彼女を張り手で突き飛ばす。

 

「おらぁ!」

「うっ!」

 

 ずどーん、と竹藪に背中から突っ込んだ彼女が途端にすぐ起き上がる。

 

 銃弾のような赤い弾幕を放ちながら、彼女は俺に接近したと思うと高くジャンプをした。

 

「中々やりそうだな」

 

 軽やかな動きで俺の頭上を飛び越え、そのままふわっと浮いて俺に蹴りを入れる。全てこの目で捉え、容易く足蹴りをガードした。するとぴょんぴょんぴょんと彼女は後退りする。銃弾の弾幕がずががががと当たった。

 

「狂え!」

 

 鈴仙が叫びながらまた目を赤くした。充血のようにも見えて俺は心配になった。花粉症だろうか。

 

 彼女が汗を垂らしながら言った。

 

「……有り得ない!波形が一切動じない!」

「あぁ、そういうタイプかよ?催眠術とか効かないんだよな俺。」

「そういうレベルじゃないでしょ!」

 

 鈴仙が言いながら俺の側へとすぐ近付いた。素早い動きで下から銀色のくちばしを蹴り上げられ、俺の顔が仰け反る。

 

 加えて腹筋を蹴られたが、鍛え上げられた体幹に守られた俺の身体は動かない。

 

「……貴方、鬼なの?」

「昔そう呼ばれてたことはあったな。」

 

 終わりだ。諦めのような笑みを浮かべた鈴仙に強めの張り手をし、彼女を吹っ飛ばしてダウンさせた。

 

「俺に名前をくれた奴が起きるまで、観光中!狂ってる暇なんか無いぜ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

チーム輝夜 チーム妹紅

  2  ー  2

 

 

【第五回戦】

フェローチェVSマッシブーン

 

 

「すごいじゃないかマッシブーン!やっぱりお前が幻想郷最強だ!」

「それ程でもねぇぜ!ババァルクウ!」

 

 俺はファンサ用の掛け声をしつつ、少し気合を入れることにした。フェローチェの口ぶりからして、前より強さは上がっている筈だ。

 

 以前もそうだったが、アイツの素早さと力はかなりの脅威。歴代俺の敵ランキング10位以内には必ず入るだろう。要は結構強いということだ。

 

「勝てそう?フェローチェ。」

「愚問ね」

 

 輝夜とフェローチェが短く言葉を交わす。そして白く細長く高身長の身体が、俺の前に釈然として立ちはだかった。

 

 最後のバケモンバトルが始まる。

 

「行くぞー!」

「行くわよー!」

 

 妹紅と輝夜の二人が同時に言い、お互いを短く睨んだ後に叫ぶ。

 

「「よーい、始め!!」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 バケモンバトル、早くも最終試合。

 

「この世の者の価値は美しさで決まるわ。」

 

 試合が始まっても彼らは動かない。フェローチェはマッシブーンを指差した。

 

「その点アンタは最低よ。醜悪な化け物。」

「言うじゃねぇか。価値ってのは中身で決まるんだぜ?」

「理解出来ないわね。世にも珍しい美貌が、生まれた時に与えられた覆しようのない事実が、何故他者との上下を決める目安となり得ないのかしら?」

「お前以外の奴が大して美しさとやらに執着してないからだろ。お前、はっきり言って異常者だぜ。」

「……あっそう。私たち、永遠に分かりあうことは無いわ。」

「そのようだな」

 

 静かにマッシブーンが拳を握った。ふと彼はフェローチェの足元をうろうろしているネズミを見つける。

 

 気付いたフェローチェが、見えない程の速度でネズミを蹴り殺した。敵を倒した時に発動する彼女の特性、『ビーストブースト』が発動した。

 

 少し黙った後にマッシブーンは言った。

 

「何で殺した?」

「は?」

「何で殺したかって言ってんだ。」

「あぁ。薄汚れたネズミが私の足元にいた。それ以外の理由がいる?」

「……俺から言わせてみれば……」

 

 マッシブーンがびしっとフェローチェを指差した。

 

 

「お前の方がよっぽど薄汚れてやがる。白ゴキブリ野郎。」

「まだ一匹残っていたわね。赤ハゲネズミ。」

 

 その時、フェローチェの全身が輝き出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「知ってるかしら?この世で最も美しい宝石を……」

 

 キラキラと輝き出したフェローチェを、俺は黙って見ていた。こんな俺にもなけなしの美徳があるのなら、その一つは『俺より弱い奴の変身を邪魔しない』、だ。強い奴は全力で阻止するつもりでいる。

 

 彼女の白い身体が変貌を遂げた。

 

「それは私。」

 

 無色透明に輝いた奴が叫ぶ。

 

「この世で最も美しい宝石とは!ダイヤモンドの輝きと超硬度の強さを手に入れた!ダイヤモンド・フェローチェよ!」

 

 既に奴の蹴りが目の前に放たれていた。

 

 





最近文章量が短めですね。何だか申し訳ないです。
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