※文章中に変な場所とタイミングで「ちゅうとはんぱ」と書かれていたので、編集して消しました。なんだこれ……
「次はここよ」
訪れたのは、いかにも森の中にありそうな洋館だった。大きさは紅魔館よりも大分控えめであり、外装は屋根が青かったり壁が白かったり、清楚な印象を持たせる。
どんどんと扉を叩きながら霊夢は大声を出した。
「アリス、いるー?あんたに紹介したい男がいるのよー」
しばらくして出て来たのは、人形と見間違えるぐらい整った顔と短い金髪をした少女だった。
「必要無いわよ。って、あれ?新聞に載ってた……」
「マッシブーンだぜ!現在は魔法の森を観光中だ。霊夢が案内してくれるんだよな。な?」
いつものマッスルポーズ。霊夢は俺の方を振り返らずに無視し、俺は腕の筋肉を見せつけたまま彼女を指差した。すると金髪の少女はくすくすと笑う。
「あぁ、よろしくお願いします。アリス・マーガトロイドです。それにしても、貴女がね……へぇ。何だか可笑しいわ。」
「何が可笑しいのよ。さっさと紅茶とお菓子を出しなさい。」
「はいはい。……腕の包帯はどうしたの?怪我?」
「ちょっとね」
「アリス!呼び名は金髪少女三号で良いよな?」
「私より早い番号が誰か気になるわね」
そう言いながらアリスが館の中に入り、霊夢がついていく。後に続いて俺も入ろうとし、案の定入れなかったので、急遽外でのお茶会になった。
「うおっ!?」
家の中からぞろぞろと人形が出て来たので俺はたまげた。人形たちはそれぞれ可愛らしい顔で椅子を運んだりお菓子を運んだりし、三つのティーカップに紅茶を注いだ。
人形たちはアリスの元へと帰った。俺が驚いているのに気付いたのか、彼女はくすりと笑った。
「こりゃ凄いな。生きているのか?」
「いいえ?いつかは完全な自立人形を作りたいんだけれどね。私は主に人形を操る程度の魔法を扱うわ。」
「魔法か。俺も魔法少女になりたいぜ。どうすりゃなれるんだ?」
「流石のあんたも少女にはなれないでしょ」
「多様性だぜ霊夢」
俺は片手で繊細なティーカップを底から持ち、紅茶をずずずと飲んだ。霊夢は真ん中が綺麗な赤色をしたクッキーを口に運んでいる。血を固めているのだろうか。アリスは静かに紅茶を飲みながら言った。
「そうね。修行と、あと才能かしら。……違う世界の住人だからか、貴方は魔力も霊力も少しも無いのね。難しいかも知れないわ。」
「がーんだぜ」
「けれど、例外はある。」
ことりと手に持つカップを置き、アリスは冷たさを帯びた顔で語り始めた。
「悪魔との契約よ。ただし、大抵は己の身を滅ぼすことになる。」
「何だそりゃ。魂でも取られるのか?」
「主流ね。どちらにせよ、最悪な目に遭う覚悟はした方が良いわ。今は魔女と悪魔の繋がりは断たれているけれど、魔法は本来契約によって悪魔の力の一部を分けて貰うものだったの。その中で、試練を克服したり悪魔を追い払った者たちが今の魔法を開発してきたとされているわ。」
「他は死んじゃったのか。」
「えぇ。魂を取られたり、目覚めなくなったり、本の世界に閉じ込められたりって結末らしいわよ。」
「最後のはちょっと憧れるな」
「えぇ……?」
アリスが怪訝そうな顔をした。本の中に入れるなら、俺はミステリー物で主人公も犯人も全員ぶん殴って強引に話を終わらせてみたいが、終わった瞬間飽きるだろうとも思った。
「アリス。聞きたいことがあるのだけれど。」
「何?食い意地のある巫女さん。」
お菓子を半分ほど食い切った博麗霊夢が紅茶を飲んだ後に言った。
「魔理沙は最近ここに来たかしら。」
「来てないわね。そういえば最近会ってないわ。ウチにもたまに遊びに来てくれるのに。」
「宴会にも顔を出さなかったのよあいつ。やっぱり引きこもってるのね。」
「……宴会?宴会があったの?私も誘ってくれれば良かったのに……」
(そういやいなかったな。魔理沙とやらも。)
しょぼんとしたアリスを不憫に思いながら、俺は霊夢に声をかけた。
「とにかく魔理沙の家に行ってみようぜ。アリスも、美味かったぞ紅茶。ありがとよ。」
「えぇ。いつでも遊びに来ていいわよ。」
にこりと笑う金髪少女三号。俺はぶんぶん手を振って別れた。
時刻は昼に差し掛かり、冬の日照りが柔らかくぽかぽかと幻想郷を照らしている。俺たちはアリス邸を後にし、観光ツアーの終着点へと向かった。
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「着いたわ」
「ここが"終わりの地"か」
「ただの一軒家よ」
大きめの看板、『霧雨魔法店』は手書きで書かれており、外装も相まって明るく活発な印象を持たせる。
問題は中に彼女が無事でいるかどうかだった。早速霊夢は扉に近付き、どんどんと強く叩き出した。
「魔理沙ー!いるんでしょあんたー!」
しーんとしている。
「開けるわよー!」
そう言って霊夢は無理矢理扉をこじ開けようとし始めたので、俺は止めようか止めないか迷った。
すると、ドタバタと音が聞こえ出した。
段々と近付く足音。何かを大声で言っている声。ほっと俺は安心した。きっとそれ以上に、霊夢は安心したに違いない。彼女の大きなため息が物語っていた。
バタン!と豪快に扉が開いた。姿を見せたのは、長い金髪に真っ黒なとんがり帽子を被った魔法少女。
霧雨魔理沙は困った顔をして言った。
「おいおい、壊そうとするんじゃない!久しぶりだな霊夢。」
「元気そうでうんざりよ、魔理沙。」
「何でだよ、心配かけたか?」
彼女は太陽のように明るく笑った。
「お前も久しぶりだな。紅魔館以来か?」
「おう!改めて名乗ろう、俺はマッシブーン!清く正しく赤く筋肉!泥棒行為は一度も無いぜ!」
俺がいつものマッスルポーズを取る。
「奇遇だな。私も一緒だぜ。永遠に借りるってだけだ、よっと!」
すると魔理沙が俺の腕にぶら下がった。当然俺の体幹と上腕二頭筋は悲鳴一つ上げずにぴたりと動かない。それどころか上下に動かして一種のアトラクションと化す。
「おぉぉぉ!凄いぜ霊夢!お前もやってみろよ!」
「遠慮はいらないぜ霊夢!100キロ程度なら余裕のヨノワール*1!」
「そんなに太ってないわよ」
霊夢がもう片方の腕にぶら下がった。俺は魔法少女と博麗の巫女をアクセサリーにぶら下げ、霧雨魔法店にお邪魔した。
「汚ねぇ」
「汚いわね」
「気にすんな!ごちゃごちゃしてるのは天才の証だぜ。」
大量の本、小道具などが床に散らばりまくっている。足の踏み場も無いほどだ。これがいわゆる汚部屋というものか。
「まだこんなに散らかってたの?これじゃ入れないじゃない。」
「分かったよ。じゃあちょっと見とけ!」
二人が俺の腕から降りる。何やら自信ありげに前へと進んだ魔理沙が、両手を上げようとした。
「ほっ!」
驚くべきことが起きた。床に散らばっていた本やらが、両手の動きに合わせて浮いたのだ。そして、彼女が外側にやるのと一緒に左右へ移動したのだった。
「魔法すげぇぇぇぇ!!」
「あんた、こんな魔法使えたっけ?」
「へへっ。修行の成果だ。」
切り開かれた床を踏みながら、得意そうに魔理沙は笑った。
綺麗に片付いた(?)部屋の椅子に霊夢たちは座った。俺は身体の構造的に座れないので、散らばった物どもを物色している。二人の会話が聞こえた。
「今度は何の研究よ?」
「研究というか、色んな魔法に手を付けてるぜ。物を動かす、時間を圧縮する、パンとワインを生み出すとかな。」
「ちょっとやってみなさいよ」
面白いものが見れそうなので、俺は霊夢と一緒に魔理沙の行動を見ていた。彼女は大きめの桶を用意する。
「ほらよっ!」
「「お〜」」
彼女が指を差すと、桶の中の水がワインに変化した。そのワインを俺はちゅうちゅうと飲む。昔ウルトラジャングルで飲んだものと同じぐらい美味い。というのは俺が味音痴だからだろうか。
「まだまだっ!よっ!」
「「お〜!」」
更に魔理沙は、指先からポンっと大きな食パンを出した。霊夢が食パンをちぎっては食い、またちぎっては口に入れる。
「おいおい、なんて貧相だ!イチゴのジャムが必要だろ?」
「「お〜……」」
極め付けに魔理沙は瓶詰めの赤いジャムとナイフを家の奥から持ってきた。それは魔法で出せないんだな、と口に出そうとしてやめた。霊夢が瓶にナイフを突っ込み、パンに塗りたくって食べる。
「……とまぁ、昔は興味も無かった分野の魔法を覚えてみた。他にも戦闘に使えそうなやつをかなり覚えたぜ!」
自慢げに話す魔理沙だったが、霊夢は食パンを平らげるのに夢中そうだった。
何だかんだで俺たちは話が尽きず、霊夢も元気が出て、今日はここに泊まることになった。
辺りはすっかり暗くなり、俺たちは風呂に入ろうとする。どうやら少し前に露天風呂を作ったらしく、内心俺は大興奮だった。
「魔法の風呂を体験させてやるよ!魔法の火、魔法の水、魔法の石鹸だ!」
「素敵な効能があるっての?」
「いや?ただの風呂だぜ。」
「中々広いな!故郷を思い出すぜ!」
うきうきで俺は湯に入ろうとした。
「あんた、乙女の裸を見ようって訳?」
「お前は後で入れよな。何入ろうとしてんだ?」
「ババァルクウ?」
俺は露天風呂から追い出された。今まであまり考えたことが無かったが、性別が違う奴と一緒の温泉は抵抗があるらしい。奴らがたっぷりと湯を楽しんでいる間、俺は寂しく冬の肌寒さを感じていた。
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「拗ねてる?」
やっとこさ風呂に入れた俺に、博麗霊夢が話しかけて来た。
「拗ねてないぜ。というか、何で俺の裸は見られていいんだよ。別にお前らのを見たかねぇが」
「だってあんたいつも裸じゃない。」
確かに、と俺は納得しながら肩まで湯に浸かった。ここの露天風呂は熱すぎずぬるすぎず、丁度良い感じだ。
横から、霊夢の裸足が湯に入ってくるのが見えた。しかし服は着ている。
「入るなら服を脱げよ」
「足湯よ」
「ふーん」
俺は呟いた。足だけ浸かることが、俺にはイマイチ理解出来ない。確か冷え性だとかいうのを改善するらしい。ならその露出度の高い寒そうな巫女服をやめればいいのに、と思った。
しばらくお湯を楽しむだけの時間が流れて、霊夢が言った。
「観光は楽しかった?」
「……おう。魔法も見れたし、遊びに行けそうな場所も増えたし、満足だ。」
「そう。良かった。」
霊夢が夜空を見上げたので、俺も同じように見上げた。真っ黒な空に、点々と輝いている星が目立つ。俺は指差しながら呟いた。
「冬の大三角って知ってるか?」
「知らないわ」
「見てみろ。三つの星が三角形を作ってるだろ?俺のように赤く輝くペテルギウス、俺よりも輝いているシリウス、んで、プロキオン。」
「プロキオンだけ適当ね」
「カプ・コケコと似てるからな」
「一文字も合ってないわよ」
でも何か似てるだろ?と俺は言った。えぇ、と生返事が返ってきた。
「………」
今日という日は、やっと幻想郷を観光することが出来た素晴らしき記念日だ。勿論、これからも観光はするつもりだ。
だが、その前に払拭しなければならない事があった。
原因は霊夢にある。張本人がすぐ近くにいるということだ。いや、結果的には俺のせいなのかも知れないが。どうなのだろうか。正直な所、俺にもよく分からないのだ。
何となく聞き辛いことも、無視し続けていたことも、今なら言える気がした。当然だ。温泉は俺を変にするのだ。
「なぁ」
くだらない話をするつもりで、俺は言葉を口に出した。
「俺のことを殺すつもりなのか?」
腕枕があれば夢の中でもマッシブーンに会えると思うんです