【前回のあらすじ】
・最近魔理沙が来ないので魔法の森にGO!!
・魔理沙は元気だった。霊夢の記憶をマッシブーンが受け取る。
・謎の地下室で魔理沙が寝ている。二人目の魔理沙がやって来て殺害予告をした。
汝は分身体、すなわち偽物
本物は試練を受けている
汝は試練を知られてはならない
本物として振る舞い
試練を知った者を殺せ
抑揚の無い声で淡々と話す霧雨魔理沙。
マッシブーンは博麗霊夢の前を片腕で遮り、守るように立ちはだかった。やっと口が動くようになった霊夢が、小さな声で呟く。
「何、言ってるのよ……」
「お前は偽物ってことだよな?」
マッシブーンが強い語気で言いながら拳を握る。最早彼は目の前の金髪少女を敵と見なしていた。
「……あぁ。私は霧雨魔理沙の分身体だ。そっくりだろ?」
彼女はにかっと笑い、悪魔の本を片手に召喚した。その瞬間マッシブーンは走り出した。殺すと宣言した相手が、怪しげな本を取り出したのだ。無力化に動くのは道理にかなっていた。
「待って!」
霊夢が口だけを動かしてマッシブーンを止めた。構わずに彼は本に手を伸ばす。
だが、僅かに魔法を発動する方が早かった。
禁術"黒山羊のセブンスコード"
「マッシブーン。見せてもらったがお前、相当強いみたいだな?確実に今の私より強い。だったら悪魔に会うといいぜ。」
パタン、と本を閉じた魔理沙が両手の力を抜いた。悪魔の本が無造作に落ちる。マッシブーンはその場から消えていた。
二人きりになった。混乱の真っ只中にいる博麗霊夢、澄んだ瞳をして微笑んでいる霧雨魔理沙。正確には、寝たきりになっている霧雨魔理沙もいたが。
汗が流れた。気温は凍りつくぐらい寒いのに、霊夢の身体の内はどんどん燃えるように熱くなっていた。
分かっていることがある。目の前の霧雨魔理沙は分身であること。本物の霧雨魔理沙は眠っていること。自分が今命を狙われていること。たった今マッシブーンが消されてしまったこと。
ふぅ、と息を一つ吐いた彼女は、長いお祓い棒の先を真っ直ぐ向けた。
「いいね。そうこなくっちゃ。」
楽しそうに魔理沙が地面に手を当てる。すると一瞬にして小さな魔法陣が描かれた。完成したと思えば、それは即座に強く光り出す。
気付けば二人は不思議な場所にいた。
太陽が眩しい。まるで夏のように暑く、真昼のように明るい。辺りには緑色の草原が広がり、遠くの方には巨大な大木が、草原を丸く囲うように密集している。戦うために生み出されたような奇妙な空間だった。
「霊夢!前に約束したよな?」
「……何よ……」
霧雨魔理沙が何かを構える。彼女が愛用するマジックアイテム──ミニ八卦炉が魔力を溜め始めた。
「もっと強くなって、お前を殺しに来たらさぁ!その時は本気で戦ってあげるって!言ったよなぁ!」
「何言ってんのよ!」
博麗霊夢は強く叫んだ。
──じゃ、もっと強くなって私を殺しに来てみなさい。その時は本気で戦ってあげる。
本当か!女と女の約束だぜ?
何言ってんのよ……冗談に決まってるじゃないの。
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時と場所は変わり。
紅魔館。大きな図書館の隅っこで、焦っている小悪魔と不機嫌なパチュリー・ノーレッジが話していた。
「──魔理沙さんが持っていったのは、悪魔と契約を交わすことで大魔法使いの力を手に入れられる代物です。」
「契約の内容を詳しく教えなさい」
「はい。契約者は力を受け取れる代わりに、『試練』を受けます。試練の内容までは分かりません。とにかくそれが終わるまで、魔理沙さんは寝たきりです。」
小悪魔は慎重に話した。主であるパチュリーを刺激しないように。有名な本だったから、契約の内容は魔界にいた時に聞いていた。そして真の目的についても知っている。
絶望。あの本を創った悪魔は、胸が焦げるほどの絶望を求めている。
小悪魔は汗を垂らしながら話した。
「試練中は、契約者の代わりに分身が現れます。分身は記憶・身体など、本物とほぼ変わりの無いものとして生み出されます。ただ、違うのは……」
パチュリーがますます不機嫌そうな顔をする。小悪魔は言った。
「分身は悪魔に支配されていること。そして、試練を突破した後の強さになっているということです。……もしもそうなっていたら、分身の魔理沙さんは恐らく、誰にも負けないぐらい強いと思います。」
「行くぜっ!!」
ミニ八卦炉に魔力を溜め続けている霧雨魔理沙が、楽しそうに笑った。
強張った表情の霊夢が右手にお祓い棒を持ち替え、自由になった左手を突き出す。手のひらからは赤いお札が大量に飛ばされた。
「おっと」
素早く飛んでくる飛び道具。魔理沙は空いた片手でバリアを張り、難なく防御してみせた。
そこに博麗霊夢が陰陽玉を放つ。フルパワー、あらゆるものを抉り削る超スピードの物質。ズガァァと地面を削りながら紅白の陰陽玉はバリアに勢い良くぶつかった。
バリアが砕かれた音が響く。だが、魔力のチャージ音は止まらない。
霧雨魔理沙は空にいた。まるで瞬間移動でもしたみたいに、ホウキに乗って浮いていた。
ミニ八卦炉が激しく光る。
「恋符!『マスタースパーク』ッ!!」
限界まで魔力が込められた七色の特大光線が、叫びと共に放たれた。
ギュオオオオオオオオオオオオオオオ!!
魔力を失ったミニ八卦炉を片手に、霧雨魔理沙は不思議そうな顔をしていた。
特大光線に飲み込まれたかに思えた博麗霊夢は、かろうじて避けていた。遠くの地面に見える彼女は何滴も汗を流していた。マスタースパークが当たった地面の部分は、周囲を焦がしながらごっそりと消し飛んでいる。
不思議そうな顔をしていた彼女が、あぁ!とスッキリしたように笑った。
「そっか。お前……」
一定の距離で小刻みに瞬間移動した霧雨魔理沙が、霊夢の至近距離でホウキを振る。
「能力が消えたんだったな?」
「!」
かろうじてお祓い棒を構えた霊夢。大振りの一撃が彼女をばこんと吹っ飛ばした。
「マッシブーンの記憶を見たんだ。私がアイツの腕にぶら下がった時だ。そしたらお前、飛べなくなったらしいじゃねーか。何でだ?」
空中で急ブレーキを掛けるように止まった巫女の少女が、目の前で笑う魔法使いを睨みつける。
博麗霊夢は怒りを叫んだ。
「──あんたが先に説明しなさいよっ!」
自身が心に思うことをそのまま、曝け出すように言った。
「いきなりこんな事になって、訳分かんないわよ!あんたどうしたの!何が起こってるのよ!」
「お前にしちゃあ物分かりが悪いな!アイツが言ってたろ、私は偽物だって。本に作り出された分身だってさぁ!」
魔理沙は緑色の小さい光弾を矢のように飛ばしまくった。びゅんびゅんびゅんと激しく襲う弾幕が、霊夢の二重結界に防がれる。
「本物が起きるまで、私は本物を守らなきゃならねぇ!守るっつーのはお前を殺すってことだ!だからさ、全力で来いよ!私が死んだって本物がどうにかなる訳じゃ無いんだぜ!」
楽しそうに魔理沙は弾幕を加速させた。ずがががががががと当たり続ける。少女は霊力をより一層込め、防いでいた結界を魔理沙に飛ばした。
「いてー!」
頑丈な結界は金属の壁に匹敵する。それが魔理沙に素早くぶつかって後退りをさせた。鼻を押さえた魔理沙が攻撃を止める。博麗霊夢ははっきりと言った。
「あんたがさっき言ったこと、嘘よ。あんたは魔理沙だわ。」
「……本物の私がお前らを殺そうとするかよ。それよりアイツの心配でもしたらどうだ?」
魔理沙は真顔で言った。
「私がマッシブーンに使ったのは、一度きりしか使えない封印魔法だ。使われたが最後、アイツは本の中から確実に出られない。」
霊夢が空の向こうの金髪少女を睨んだ。睨まれた彼女は薄らと笑みを浮かべる。
「そしてお前も……自分の心配をした方がいいだろうな。」
再び魔理沙はミニ八卦炉に魔力を込め始めた。
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一方、マッシブーン。
「おわああああああああああああ!!」
気付けば彼は真っ青な空の下にいた。薄暗い地下室から一転、落下する赤い巨体があわあわと泳ぐように暴れている。
(まずいぜぇぇぇ!)
マッシブーンは全力で羽を動かした。ぶぶぶぶぶぶぶぶ。すると身体がゆっくりと減速し始め、姿勢が安定し出す。とうとう何事も無かったかのように彼はふわっと着地した。
「ふぅ。まるで天から舞い降りた妖精さんだな?」
マッシブーンは誰もいない草原の上でマッスルポーズをした。見晴らしが良い。ぽつんとマッシブーンは四本脚で立っていた。
「あの魔女っ娘め!語尾が被ってるからって殺しに来やがったぜ!霊夢が心配だぜ?」
わざとらしく『ぜ』を付けながら、マッシブーンは周りをきょろきょろ見渡した。爽やかな風が吹いている。
ふと草原の上に、彼は白い一軒家を見つけた。
現在、ハーメルンへのddos攻撃が行われているそうです。仮に投稿が出来なくなった場合、pixivかその他のサイトに移ると思います。しかしハーメルンがこれからも続くのがやはりベストです。心より応援しております。