筋肉蚊の楽しい幻想郷観光   作:すくぇ

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【前回のあらすじ】
・マッシブーンが本の中に封印された
・魔理沙と霊夢が交戦中
・気付けばマッシブーンは草原の上に立っていた

※著作権に触れるので一部の文章を修正しました。申し訳ございません。あと最後のセリフ変えました。



☆五十二、 マッシブーンと七匹の子ヤギ

 

 

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童話 マッシブーンと七匹の子ヤギ

 

 

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「は?」

 

 

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 むかし、あるところに、おかあさんのやぎとかわいいこどもやぎが七ひきいました。

 

 ある日、おかあさんやぎは、こどもたちのたべものをとりに森まで出かけて行くので、七ひきのこどもやぎをよんで、こういいきかせました。

 

「おまえたちにいっておくがね、かあさんが森へ行ってくるあいだ、気をつけてよくおるすばんしてね、けっしてマッシブーンをうちへ入れてはならないよ。あいつは、おまえたちのこらず、血も涙もあまさず吸ってしまうのだよ。」

 

 すると、こどもやぎは、声をそろえて、

 

「かあさん、だいじょうぶ、あたいたち、よく気をつけて、おるすばんしますから、心配しないで行っておいでなさい。」

 

 と、いいました。

 

 そこで、おかあさんやぎは、メエ、メエといって、安心して出かけて行きました。

 

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 (これは……知ってるぜ。)

 

 突如として頭の中に謎の文字と映像が流れてきたマッシブーン。しかし、その筋書きには覚えがあった。

 

 (教養が身に付いてる俺は知ってるぜ!『オオカミと七匹の子ヤギ』!有名な童話だ)

 

 状況を察するに、彼は分身の魔理沙によって童話の世界に閉じ込められたらしかった。昼にアリスが教えてくれた結末。悪魔と契約した結果、本の世界に閉じ込められるという言葉をマッシブーンは思い返していた。

 

 そして先程頭の中に流れて来たタイトル、『マッシブーンと七匹の子ヤギ』から彼は更に推測する。

 

 (問題は俺がオオカミ役って所だな。最後には腹に石を詰められて井戸に落っこちる。何とか本来の結末を回避しろって訳か……)

 

 マッシブーンが方針を出したと同時に、場面が転換した。いつの間にかマッシブーンは白い一軒家の前に立っている。

 

 彼は四本脚に力を込め、思いっきり背後にジャンプをした。一軒家から段々と遠ざかっていく。と思えば、彼の視界は暗転し、一軒家の前にワープしていた。

 

 (……流石に逃げられねぇか?仕方ない、ひとまず本筋に従うぜ!)

 

 

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 やがて、まもなく、たれか、おもての戸に自分の口をぐさりとぶっ刺しました。そうして、

 

「えー……お前らさっさと開けろ!お母さんがネグレクトせずに帰って来たぜ!」

 

 と、よびました。

 

 でも、こどもやぎは、それがしゃがれた、があがあ声なので、すぐマッシブーンだということがわかりました。そこで、

 

「あけてやらない。おかあさんじゃないから。おかあさんは、きれいな、いい声してるけれど、おまえはしゃがれっ声のがあがあ声だもの。おまえはマッシブーンだい。」

 

 と、さけびました。

 

 そこで、マッシブーンは荒物屋の店へ出かけて、声がきれいになるという合法の白い粉を吸って、げほげほとむせました。

 

 それからまたもどってきて、戸をたたいて、大きな声で、

 

「お前ら、開けておくれ、お母さんだよ。開けないと話が進まないよ。」

 

 と、どなりました。

 

 でも、口をぶっ刺してできたドアの穴から見える筋肉は真っ赤だったので、こやぎたちはそれをみつけて、

 

「あけてはやらない。うちのおかあさんは、おまえのようなまっ赤な筋肉をしていない。おまえはマッシブーンだい。」

 

 と、さけびました。

 

 そこで、マッシブーンは、ジムへでかけて、

 

「おい、ミルク味をきらしてしまったから、白いプロテインをくれ。」

 

 と、いいました。

 

 そこで、トレーナーは抵抗して、マッシブーンにぶん殴られました。まあ、こういう弱いところが、人間のだめなところですね。

 

 さて、わるものは、三どめに、やぎのおうちの戸口に立って、とんとん、戸をたたいて、こういいました。

 

「さあこどもたちや、あけておくれ、おかあさんがかえって来たのだよ、おまえたちめいめいに、森でいいものをみつけて来たのだよ。」

 

 こどもやぎが穴を見ますと、プロテインを塗りたくって白かったので、マッシブーンのいうことを、すっかりほんとうにして、戸をあけました。

 

 ところで、はいって来たのはたれでしたろう、マッシブーンだったではありませんか。

 

「ただいまみんなァァァァ!!!!ババァルクウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 

 みんな、わあっとおどろいて、ふるえあがって、てんでんにかくれ場所をさがして、かくれようとしました。

 

 

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 (よし……ここからが分岐点だぜ。)

 

 家の中に入ったマッシブーンは、子ヤギたちが全員隠れたのを確認した。

 

 (今から俺は子ヤギたちを見つける……が、絶対に危害を加えねぇ。みんな仲良しのクソエンドに塗り替えてやるよ、金髪少女四号)

 

 彼が意気込みながら辺りを見渡す。ふと、見つけた順番はどうだったっけなと考えるマッシブーン。しかし、大して重要じゃないよな、と彼は判断した。

 

 

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 みんなはびっくりして、急いで隠れました。

 

 一匹目は、机の下にとびこみました。

 二匹目は、寝床に入りました。

 三匹目は、暖炉の中にかくれました。

 四匹目は、台所へ逃げました。

 五匹目は、洋服のたなにあがりました。

 六匹目は、洗濯だらいの下にもぐりました。

 七匹目は、柱どけいの箱の中にかくれました。

 

「クックック。クックックックック!」

 

 マッシブーンは子ヤギを探しました。まず彼が探したのは、火の入ってないストーブの中です。

 

 子ヤギはいませんでした。

 

 

 

 

 ×

 

 

 

 

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「あ」

 

 突然、マッシブーンの頭の中の物語がぴたりと止まった。大きなバッテン印が暗い平面に浮かぶ。

 

 暖炉の中には、子ヤギがいない。確かに子ヤギのうちの一匹がここに隠れたはずだが、それが跡形も無く消えている。

 

 (間違えたってのか?)

 

 探す順番。彼は誤りを起こしたことに気が付いた。その先に何が待ち受けているのかを知らないまま。

 

 (間違えたら……俺はどうなるんだ?)

 

 ぴりっとした緊張感が、彼の身体を走った。ゆっくり後ろを振り返る。

 

 そこには子ヤギではなく、筋骨隆々としたたくましい六匹の悪魔たちがいた。

 

 真っ黒で屈強な見た目、悍ましく曲がりくねった邪悪な角。それが六匹、全員マッシブーンを見ている。

 

 悪魔の一匹が、親指を下に突き立てた。

 

「が」

 

 マッシブーンの頭上に降った檻が、彼を地の底に連れて行った。

 

「おわああああああああ!!」

 

 檻に閉じ込められながらマッシブーンは浮遊感を感じていた。何者も重力には逆らえない。やがて紫色の地面に激突する。

 

 着地した途端、彼に大きな火の玉が飛んだ。ドガァァァァァン!と爆音が鳴った。太陽を丸めて放ったような火球は、檻ごとマッシブーンを消し飛ばした。

 

 もくもくと紫色の煙が舞う。六匹の悪魔は煙の向こうを眺めながら、何も喋らずにただ立っていた。

 

 その時、煙が凄まじい風圧に消し飛ばされた。マッシブーンは一瞬で悪魔に近付き、一匹の頭を全力で殴った。

 

 暖炉の悪魔の、首から上が消えた。他の悪魔たちがしゅばばばとマッシブーンから即座に離れる。

 

「──おいおい。フィニッシュを火で飾ろうってのはちょっと無知すぎるぜ。俺にほのおタイプは効かないんだよなぁ。」

 

 マッシブーンはちっとも応えていない様子で、両手の拳を強く握った。

 

「いいんだな?」

 

 彼は構えながら悪魔たちに問いかける。

 

「俺は今から本気になるぞ。」

 

 悪魔のうちの一匹が手を伸ばす。それが殺戮の合図だった。

 

 悪魔たちの強さは一匹一匹が鬼並みである。台所の悪魔は、物を生成して自由に操ることが可能だった。1000本のナイフとフォークが烏合の衆のように、次々にマッシブーンを目掛けて飛んでいく。

 

 それら全てをマッシブーンはタックルで弾き飛ばす。どんどん悪魔に近付く。諦めの悪い者から順に殺される。辿り着いたマッシブーンは体当たりで悪魔の姿勢を崩し、たった一度のパンチで腹を貫いた。

 

 ぐったりとした悪魔を振り払った彼の頭上に檻が降ってきた。マッシブーンはそれを反復横跳びするみたいに避け、前方の悪魔の元へと全速力でダッシュした。

 

 そこに割り込んできた寝床の悪魔の腕をマッシブーンは掴んだ。そのまま地面に叩きつけ、前方に投げつける。姿勢を崩した二匹の悪魔に飛びかかり、彼はひたすら殴った。

 

 一発一発に全身全霊を込める。ウルトラジャングルにいた頃もそうだったが、彼は滅多に本気を出さない。自分以外の生物は大抵脆く、呆気なく死んでしまう。本気をぶつけるのは、殺してもいい敵を相手にした時のみ。

 

 動かなくなった二匹の血をマッシブーンは吸った。ぎゅごごごごと実に美味そうに吸う。彼にほんの少しだけ蓄積していたダメージが完全に回復する。

 

 まるでパッと目が覚めた、体調も気分もすこぶる絶好調の休日の朝。彼が敵の血を吸い続ける限り、死ぬことは有り得ない。

 

「次はどんな味だ?」

 

 マッシブーンが振り返ると、そこには大勢の悪魔がぞろぞろ立っていた。

 

 洋服のたなの悪魔は、悪魔の皮膚を作り出し、それを素材にして大量の分身を生み出す力を持っている。

 

「いいぜ!お前らは吸血鬼も驚く血液サーバーだ!レミリアなんかには教えられねぇなぁ!?」

 

 駆け出したマッシブーンがぶぶぶぶと飛び、群勢に急降下して突っ込んだ。

 

 マッシブーンは殴り続ける。一匹、また一匹動かなくなる。角を刺されようがひっかかれようが赤い怪物は止まらない。口に流れてくる血を飲み、その度に傷は癒える。

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!楽しくなぁってきたぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 やたらめったら彼は全力で暴れた。とうとう100体の悪魔を殴り殺し、奥に佇んでいた親玉の悪魔に飛びかかり、その首を簡単にもぎ取った。

 

 どうやら最後の一匹らしい悪魔は、遠くで身を守るようにしゃがんで蹲っていた。既に一仕事終えてしまったような気分で、呑気にのしのしと近寄るマッシブーン。

 

 慢心。

 

 彼の背中を、ががががががががががががとフォークやナイフが襲った。

 

「あ?」

 

 背筋に弾き飛ばされた食器たちがカランカランと落ちる。彼が振り返ると、一匹の悪魔が素早くマッシブーンに飛びかかっていた。

 

 俊敏にマッシブーンは悪魔の顎を吹っ飛ばした。しかし、僅かに指先で触れられた瞬間、彼を眠気が襲った。

 

「おっ……」

 

 ふらっとしたマッシブーンを、着地した寝床の悪魔がひたすら殴った。殴り尽くすと蹴り飛ばし、更に拳を叩き込もうとした悪魔の攻撃を、目が覚めたマッシブーンが拳で弾く。瞬時に接近して両手で角を掴み、空中でくるりと一回転しながら彼は地面に悪魔を叩きつけた。

 

 どこか感触が違う。マッシブーンは一旦離れた。

 

 (何だ?ただ復活しただけじゃねぇ……。さっきよりも硬い、さっきよりも強え。ビーストブーストも発動しない。どうなってやがる?)

 

 マッシブーンは不思議に思った。

 

 七匹の悪魔は、誰か一匹が生き残っている限り、肉体が無限に復活する。また、復活する度に強さを増す。

 

 理不尽と絶望の象徴。故にこの封印を打ち砕けた者は過去に一人もいない。正当な攻略法を挙げるとすれば、同時に七匹全員を殺すこと。

 

 マッシブーンが考える暇も無く、彼の頭上にまた檻が降った。

 

 

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「うおっ!」

 

 またもや浮遊感。檻に閉じ込められ、さらなる奈落へと落ちる……かと思いきや、マッシブーンは元の一軒家の中にいた。

 

 彼が無言で鉄の棒を破壊し、難無く脱出する。明るい色をした木の床を踏みしめながら歩くと、大きな時計の側に何かがいた。

 

 他の悪魔たちより一際大きい悪魔だった。真っ黒な頭には禍々しく曲がりくねった角が生え、膨れ上がった筋肉が主張する。

 

 (……コイツが『お母さんヤギ』か!)

 

 帰ってきた悪魔たちの母親は、息子たちが襲われた怒りに満ちていた。そして、ぎいいと開いた古時計の中から体操座りをした悪魔が現れる。

 

 (七匹目もいやがる……こういうのは親玉をぶっ殺せばいいんだろ!知ってるぜ俺は!)

 

 答えはNOである。だが、小さな糸口に縋らなければ彼は暗闇から抜け出せなかった。第二ラウンドが始まろうとしている。

 

 (まだいける!やってやろうぜ!マッシ

 

 

 

 

 その時、マッシブーンの思考も動きも、何もかもがぴたりと止まった。彼が意図的にそうしたのではない。これは攻撃である。

 

 彼が動かなくなったというよりは、周りのものが全てまるごと停止した。否、唯一動ける悪魔がすぐそこにいる。

 

 七匹目──時計の悪魔がとりわけ大きい悪魔に触れた。すると母はぐぐぐと歯車が動き出したように解放され、片手に力を込める。

 

 母悪魔は石とハサミを操る。禍々しい角を生やす彼女の片手には小粒の石が大量に集まり、やがて一つの巨大な岩の形を成した。

 

 時計の悪魔が再び時を動かす。既に母親の悪魔は、腕を振りかぶっている。

 

 

 

 

 ブーン!?!?)

 

 自身を優に超える大きさの岩で殴られたマッシブーンは、致命的なダメージと共に吹っ飛んだ。草原の上を通り過ぎ、森の木々を巻き込んで遥か遠くまでずがががと転がっていき、辺りは煙で何も見えなくなった。

 

 (時間……野郎……!)

 

 口が折れ曲がるような痛みを受け、マッシブーンはすぐ勘付いた。

 

 紅魔館の師匠ことメイド長、十六夜咲夜の能力。やはり最優先は時計の悪魔であるとマッシブーンは確信する。だがそんな彼の前に、息子たちを傷付けられて怒る最強の悪魔が立ちはだかる。

 

 ドドドドドドドドドと何かが自分の元へ猛スピードで走る音。それを再帰の糧として、マッシブーンはふらふらと立ち上がった。母悪魔によって殴られたダメージは、マッシブーンのHPを半分以上削るものであった。

 

 (少しは加減してほしいもんだな)

 

 あくまでも冷静に、マッシブーンは眼前の敵を見る。単純な肉体勝負で負けることなどハナからマッシブーンは考えていない。深呼吸をして拳を握る。

 

 いよいよ母親の悪魔は彼の元まで辿り着いた。そして走る勢いのまま、大きくジャンプをし、上から思い切り殴りかかる。

 

「力比べだ」

 

 それに応えてやるように、マッシブーンはリスクに溢れた強靭な技を披露した。

 

「ばかぢからッッ!!」

 

 [ PP 25 / 30 ]

 

 大きな岩の塊に、マッシブーンの渾身の一撃がぶつかった。

 

 勝負は一瞬で決まる。

 

「ふん」

 

 ドカンと岩は粉砕され、力負けした母親の悪魔は吹っ飛んだ。マッシブーンが勝ち誇ったように静かなガッツポーズをとる。

 

 

 倒れている悪魔が不気味な目でマッシブーンの方を見つめた。そして二本指でピースを作り、腕を伸ばす。

 

 先程マッシブーンが『ばかぢから』を放った腕を、突如として空中に具現化した大きな銀色のハサミが挟んだ。

 

 刃と刃が近付く。

 

 (ハサミギロチン!)

 

 即死技を予期する。危険信号が嫌なほど出ている最中、避ける隙は与えられない。

 

 マッシブーンの右腕がちょきんと切られた。真っ赤な腕がぽとりと地面に落ちる。傷口から血が吹き出た。

 

「がっ……」

 

 未曾有の激痛が走る。マッシブーンは片手で必死に傷口を押さえたが、無情に血液がだらだらと流れ落ちた。

 

 ごろんごろんと、右腕が転がっていた。

 

 

 

 

 (幻想郷に来てから……数ヶ月は経ったか)

 

 視界がちかちかとする中、マッシブーンは前方を見た。

 

 (これだけ絶望って感じは初めてか……?)

 

 七匹の悪魔と大きな一匹の悪魔が、一列に並んでこちらを眺めていた。

 

 腕は切られた。何度倒しても復活する。母親の悪魔は自分と同じくらい強い。もはや、万事休すの状況。

 

 (霊夢……一号……)

 

 やがてマッシブーンは死を覚悟した。目の前が真っ暗になろうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 きこえる?

 

 

 

 

 わたしのこえが きこえる?

 

 

 

 

 わたしは あくま

 

 

 

 

 あくまと けいやくする?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お前じゃねぇか。フラン。」

「えへへ」

 

 真っ暗な空間。マッシブーンはフランドール・スカーレットを両手で持ち上げていた。

 

「お昼の時間に話せるってとってもステキね。ここはずっと真夜中だけど。」

「あぁ。どうして今話せているのか俺には分かんないぜ。」

「多分、アナタが死にかけてるからじゃないかな?だから私が力を貸すの。」

 

 フランはマッシブーンの胸筋に覆い被さるように抱きついた。

 

 大きな手に小さな手を重ねると、彼女は目を細めて笑った。尖った牙がちらりと見える。

 

 

 

 

 つかって わたしの のうりょく

 

 

 

 

 しなないでね マッシブーン……

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 マッシブーンは、断面の傷を押さえるのをやめていた。出血は先程よりも治まり、彼は落ち着いている。

 

 片腕が一匹の悪魔に向けられた。

 

 (見えるぜ。)

 

 マッシブーンが手を開き、何かを手繰り寄せ、強く()()()()()()

 

 

 

 

 どかーん!

 

 

 

 

 突然、悪魔の身体が四方八方に弾け飛んだ。肉体は張り裂け、魂は完全に破壊され、赤い血が爆発したように飛び散った。特性、ビーストブーストが発動。攻撃力が上がる。

 

 悪魔たちは素早く弾け飛んだ死体から離れた。そこにマッシブーンが走って来て、地面に溜まった血を吸う。吸いながら、アイテムとして保管していた自身の右腕を付けると、断面がキレイだったのもあるのか、なんと元通りにくっついてしまった。

 

 ヴォォォォォォォォォォ!!

 

 唸り声をあげながら、母親の悪魔が苦悶に満ちた顔の岩を大量に飛ばした。右腕が復活したマッシブーンは片っ端から迫る岩を粉砕した。ガトリングのような速度で放たれる拳の数々は、常人には目で追えない。

 

 とうとう飛びかかった母親の悪魔。マッシブーンはフランドール・スカーレットの能力──『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』で悪魔の魂をぎゅっと握った。

 

 大きな黒い身体がぴたりと動かなくなる。動こうと必死にもがこうが、肉体は言うことを聞かない。

 

 パッと魂を離された瞬間、母親の悪魔は雄叫びを上げてマッシブーンに両手を伸ばした。

 

 どかーん!

 

 あと少しで触れられた寸前、母親の悪魔の屈強な身体が弾け飛んだ。どんなに強い者もどんなに硬い者も関係無い。フランドール・スカーレットの能力は平等に相手を殺害する。ビーストブーストが発動。攻撃力が上がる。

 

 覆い被さるような血の波を、マッシブーンが即座に吸った。ついさっき半分以上削られたHPも、今ので完全に回復した。

 

「ババァルクウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

 マッシブーンのテンションが最高潮に達した。残り六匹の悪魔たちは困惑する。魂を壊されてしまった悪魔は復活できない。理不尽と絶望の象徴だったはずのそれが正真正銘、死を遂げた。象徴は逆転した。

 

「来いよ虫ケラ共ォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 その声に呼応するように、悪魔たちが動いた。

 

 

 

 

 そうして寝床の悪魔、台所の悪魔、洋服のたなの悪魔は次々にマッシブーンに殺された。

 

 残った洗濯だらいの悪魔が、蹲って自身の周りにバリアを張った。そこにマッシブーンがやって来て、一撃でバリアに穴を開けて手を侵入させる。

 

 そのまま魂を掴み、マッシブーンは後ろに下がった。バリアが穴を埋めて修復される。蹲った悪魔は、蹲ったまま動けない。

 

 どかーん!

 

 爆発音と共にバリアの内部が真っ赤に染まった。洗濯だらいの悪魔は死んだ。ビーストブーストが発動。攻撃力が上がる。残る最後の一匹は、暖炉の悪魔である。

 

 ゆっくりと歩いてくるマッシブーンに、悪魔は自らの手から炎を噴き出させた。ゴオオオオオオオオと黒い業火がマッシブーンの身体を覆う。怪物の歩みは止まらない。

 

 絶えず暖炉の悪魔は炎を出し続けた。いつかマッシブーンが燃えて灰になることを疑いもせずに、悪魔は黒い業火を出し続けた。

 

 どうしてまだ動くのだろう。

 

 悪魔が不思議に思っていると、悪魔の身体がぴたりと動かなくなった。目の前の敵が自分の何かを握っている。手を離された瞬間、取り返しがつかなくなる気がする。

 

「所詮童話だな」

 

 死の予感。

 爆発音が、森の中で小さく響いた。

 

「495歳にとっちゃあ、子供向けすぎるだろうぜ」

 

 マッシブーンは呟く。ビーストブーストが発動。攻撃力はもう上がらない。もしフランの能力が無ければ、自身が恐らく死んでいたことを彼は自覚していた。

 

 (ありがとな、フラン。)

 

 かつて狂気と呼ばれていた少女に、マッシブーンは深く感謝した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「今頃アイツは絶望してるかな」

 

 霧雨魔理沙がミニ八卦炉を構える。遠くにいる博麗霊夢は、お祓い棒を地面につきながら前方を睨んでいた。

 

「お前はどんな気分だ?」

「………」

 

 真顔で魔理沙は言った。彼女の魔力はまだ有り余る程に残っている。しかし彼女は不満を感じていた。かつての天才は、まだ本気を出していない。

 

 (不完全燃焼で終わらせる気かよ。)

 

 魔理沙は怒りを覚えた。せっかく本気でやり合える千載一遇のチャンスを掴めたというのに。手元から期待が溢れていく。

 

 そんな彼女の気も知らずに、博麗霊夢はふぅ、と一息ついた。

 

 

 

 彼女は断言した。

 

「あいつは生きて帰って来るわよ。」

 

 博麗霊夢の瞳孔が赤く染まる。

 

 





 おまけ 悪魔たちの各能力

・机の下の悪魔→空間移動
・寝床の悪魔→眠らせる
・暖炉の悪魔→炎を出す
・台所の悪魔→ナイフとフォークを自由に飛ばす
・洋服のたなの悪魔→分身を出す
・洗濯だらいの悪魔→バリア
・時計の悪魔→時間停止
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