彼は、ポケモンが大好きだった。
子供の頃、始めて買ってもらったゲームがポケットモンスターでその頃からずっと、そのゲームをやっていた。
その中で彼が最も使っていたポケモンがメタグロスだった。
彼の手持ちにはレントラーやガブリアス、サーナイト、ボスゴドラ、グレイシア、といったポケモンがいたけれど、それでも彼の最後はメタグロスだった。
メタグロスは、そんな彼に応えようとした。
画面の向こうにしかいない少年に一生懸命応えた。
ダンバルの頃から。ずっと一緒に旅をしてきた。トレーナーに勝ったり、負けたり、ジム戦をやったり、下らない事もした。そして一緒にチャンピオンにもなった。
一緒に笑って喜んで、ずっと一緒にと他の仲間と思ったりもした。
─────けど。
ある日を境に彼は来なくなった。
一年待った。二年待った。何年も待った。皆で何年も。
もしかしたらまた帰ってくるかもしれない。だから強くなった。
・・・強くなって。
・・・強くなって。
・・・強くなって。
だけど彼は帰って来なかった。
帰ってこない。
帰ってこない。
帰ってこない。
帰ってこない。
帰ってこない。
帰ってこない。
帰ってこない。
帰ってこない。
帰ってこない。
帰って来ない。
ワタシはボクは、ヒト型になっても彼の帰りを待った。
そして、ふと気づく。ボク達が待っている彼は画面の向こう側のニンゲンだ。こっちに来ることは出来ない。
なら、“彼をこっちに連れてくればいい”。
ワタシはスーパーコンピューター並みの頭脳を持つポケモンだ。
彼をこっちに連れてくるなんて方法なんて、無いに等しいくらい分かっている。
でも、どうしても彼に会いたかった。
ワタシは私は、首にかけた大量のコードが付いたヘッドホンを耳に装着する。無理?不可能?そんな事誰か決めた?私はやる、ボクは成功させる。不可能を可能にさせる。それが私だ。だからこそ諦めない。諦める筈がない。
少女がニヤリと口を歪める。装置自体の完成はしている。後は試運転だけだ。コイツを使えば、また彼と仲間で旅が出来る。
「マスター。もうすぐ会えるですよ」
彼女はそう言ってレバーを引いた。
◇◇◇◇◇
赤ん坊の泣き声が聞こえる。
俺はそちらへ向かうために身体を動かそうとするが、身体は一ミリも動かなかった。
暗闇で、匂いも感じない。腕や足、首も動かせない。
ふと、赤ん坊の泣き声が大きくなった。
いや、正確には俺から聞こえてくる。すると、何もない暗闇の先に光が発せられる。
俺は無我夢中でそちらへ走り出した。
光のある方へ、走って、走って、走って手を伸ばした時。
光が暗闇を包みこんだ。
◇◇◇
目が覚めた時、俺は子供になっていた。
(何だ?俺・・・子供になってる?もう大人の筈なのに?)
俺は疑問を浮かべながら、恐らく三歳か4歳くらいの幼い手を見つめる。
「・・・どうなってる?」
たどたどしい口調でそう呟いた俺は、周りを見渡した。住宅地がいくつか立ち並んでいて、小さな草むらが遠くにある。そして空を見上げると、“ムックル“が飛んでいた。
「・・・・・ん?ムックル?」
俺は小さな手で目を擦った。何かの間違えだろうか?先程、ムックルが空を飛んでいたのだから。
現実では有り得ない光景を見た俺だが、そう騙される俺ではない。俺はそう思いながら前へ歩こうとすると・・・。
「ユウキ!そろそろ帰りましょ」
「・・・・えっ?う、うん」
自分の名を呼ぶ声に俺はつい、反応してしまった。
そして声が聞こえた方へ振り向くと、俺は驚愕した。
俺の母親らしき人の隣に、“コリンク“がいた。
どうやら、俺は憑依転生・・・というものをしてしまったらしい。このポケモンの世界で。
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