ハンターになったらモテると思っていた【完結】   作:皇我リキ

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犯人はお前だ

 真実はいつも一つである。

 

 

「ジッチャンの名にかけて! この事件を解決してみせるぜ!」

「ツバキ! よく分からないけどなにかアウトな気がするわ!」

 それじゃいっときましょうか、前回のあらすじ。

 

 

 ある日の朝、ヒノエさんのうさ団子が盗まれた! 

 ヒノエさんは大暴走。カムラの里は大騒ぎ。この騒ぎを収めるには、うさ団子を盗んだ犯人を見付けるしかない。

 ヨモギの協力により絞られた容疑者。聞き取りを進める内に、俺達は重要な手掛かりを掴む! 

 

 残された容疑者は三バカと里長とイオリにミノトさん。犯人は───そして、犯人の手口は? 

 

 

 見た目はハンター、本当は農家! その名も俺!! 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 ───と、いう訳で。

 

 

「里長、話があります」

「事は聞いておる。うむ、よもや里にそのような事をする者が居ようとはな」

 カエデに里長を呼んできて貰い、俺達は茶屋で話をしていた。

 

 話の内容は勿論、今里が大騒ぎになっているうさ団子の件である。どうしてうさ団子でここまで言われているのか、俺はよく分からない。

 

 

「……で、もし犯人が見付かったら?」

「……里を追放する」

 やべ、これマジでやばい奴だ。

 

 ただそう言っている里長も容疑者の一人である。里長がそんな事する訳がないと思うが、一応アリバイだけは聞いておきたい。

 

 

「ツバキー、二人とイオリを連れてきましたよ!」

 丁度良くシーナが他の三人の容疑者を連れて来てくれる。これで残りの容疑者はヒノエさんの双子の妹───ミノトさんだけだが。

 

「ヒノエさん、ミノトさんを呼んでくれるって言ったのに……ずっとそこでうさ団子食べてますけど」

「はい、大丈夫ですよ。そろそろ到着すると思います」

 ヒノエさんはヤケグイを再開していて茶屋から一歩も出てない訳だが。しかし、それから瞬きもしない内に集会所の方角から足音がする。

 

 

「わたくしに用事、とはなんでしょうか」

 ヒノエさんと瓜二つの姿。俺はこんな美貌が並んでる光景に何か神秘を感じた。

 

 

「本当に来た……」

「ヒノエ姉様に呼ばれたのだから、当然です」

 誰も呼びに行ってない気がするが、それはさておき。

 

 これで残りの容疑者全員が揃う。

 犯人は必ずこの中に居る訳だが、この中で誰かが犯人という事はこの中で誰かが里を追放されかねないという事だ。

 

 

「……先に言っておく。もしここに犯人がいるなら、今のうちに名乗り出て謝れ。俺も一緒に謝ってやるから。今なら多分そんなに怒られないから」

 なんて言っても、当たり前だが犯人が名乗り出る事はない。

 

 

「それじゃ、犯人当てゲームと行くか。実は、俺は既に犯人を見付ける方法を知ってる。本当だからな。マジで、今のうちに謝っとくのが正解だからな」

「何、ツバキング。探偵の真似な訳?」

「ツバキ君にそんな頭の良さそうな事出来るの?」

「ツバキより私の方が探偵出来ると思います!」

「なんでお前らそんなに俺の事バカにするの!? バカなのに!! とりあえずシーナ、探偵は動詞じゃない」

 三バカを黙らせて、俺は茶屋のヨモギの肩を叩く。犯人は彼女が知っていると言っても過言ではない。

 

 

「良いか? 盗まれたうさ団子。その種類はトリモ茶だんごだった」

「トリモ茶だんご……もしかして!」

 俺の言葉に、イオリが驚くような反応をした。そう、トリモ茶だんごである。

 

「ヨモギ、今朝この容疑者達の中にトリモ茶だんごを食べた奴は居るか?」

「えーと、居ないよ。今日トリモ茶だんごはヒノエさんの分でしか使ってないから」

 トリモ茶だんご。

 その名の通り茶がメインの味の団子だ。どちらかというと若者には人気のない団子だし、これを食べる人は少ない。

 

 しかし、ヒノエさんから団子を奪った人間は別である。なにせ、奪われた団子こそトリモ茶だんごなのだから。

 

 

「つまりさー、ツバキングはトリモ茶だんごを食べた人が犯人だって言いたい訳っしょー? でもそれってさー、当たり前じゃね? 犯人は団子を盗んで食べたんだから」

「エーコ、言っておくが俺はお前達の思ってるより賢い。勉強は嫌いだけど」

「トリモ茶だんごは、ヒトダマドリの好む臭いが含まれているんだよね」

 俺の言葉の後に、イオリがそう説明を入れた。

 

 彼の言う通り。

 トリモ茶だんごを食べると、ヒトダマドリと呼ばれる環境生物が寄ってくるようになるのである。

 ヒトダマドリにはハンターの体力や持久力を上げる力があると言われていて、これは俺が最近教官に教わった知識だ。

 

 

 こんな所でハンターの知識が役に立つとは思わなかった。

 

 

「つまり、ヒトダマドリが寄ってきた者が……ヒノエ姉様のうさ団子を食べた不届き者という事ですね」

「不届き者まで言う? いや、そういうことなんだけども」

「や、やりますねツバキ。この名探偵シーナでもそんな方法は思い付きませんでした」

「まぁ、俺はハンターだからな」

 本当は農家だけど。

 

「私でも思い付かなかったわ。流石ね、ツバキ」

「お前はハンターだよな? もう少し賢くなって?」

 そんな訳で。

 

 

「連れてきましたよ、ツバキさん」

 イオリに頼んで、ヒトダマドリを一羽連れて来てもらう。

 

 ヒトダマドリ。

 文字通り、人魂のように見える鳥だ。腹部がぼんやりと光る特徴があり、他にも花粉を集める習性からその花粉をハンターが利用する事も出来る。

 お腹の光は集めた花粉によって変わるらしく、狩場に行くと色々な色に光るヒトダマドリを目にする事が多い。この事からもカムラの里のハンターからは慣れ親しんだ環境生物だ。

 

 

「ありがとな、イオリ」

「一応僕も容疑者の一人なのに、その容疑者に証拠みたいな物を用意させても良かったんですか?」

「いや、イオリが犯人な訳ないじゃん。だってイオリだよ?」

「信用し過ぎですよ!?」

 あの聖人みたいなイオリに犯行なんて出来る訳がない。

 

 

「さて、とりあえず一人ずつヒトダマドリに近付いて貰おうかな。コイツが反応したらソイツが犯人だ」

「中々準備が早いですね、ツバキ助手。全て計画通りです。ふふふ、この名探偵シーナの目は誤魔化せませんよ!」

 いつから俺が助手になったの。

 

「うむ。では、俺が初めに行こう」

 そう言って、里長は鳥籠に入っているヒトダマドリに近付いていく。

 

 もし里長がヒノエさんからトリモ茶だんごを盗んで食べていたら、ヒトダマドリが反応する筈だ。

 そう思いながら、籠の中のヒトダマドリに視線を向ける。ヒトダマドリは───

 

 

「凄く怖がってますね」

「ねぇ、小便漏らしてね? このトリ」

「む、どうした。小鳥よ」

 そう言って里長が顔を鳥籠に近付けると、ヒトダマドリは号泣しながら鳥籠の中で暴れ回った。

 

「……これ、里長が強過ぎてビビってるよな。イオリ」

「……里長、すみません。可哀想なので離れてあげて下さい」

「……ふむ」

 あ、里長いじけちゃったよ。茶屋の端で地面にヒトダマドリの絵を描いてる。なんかもうごめんなさい。

 

 

「つ、次行ってみよう。ミノトさん」

「はい」

 俺が呼ぶと、ミノトさんはゆっくり歩いてくる。

 そういえばヒノエさんとは良く話すようにもなった気がするけど、ミノトさんとは集会所で会ったきりだったか。

 

 それにしても、本当に良く似ている姉妹だ。

 

 

「どうだ? イオリ」

「まだ里長への恐怖が消えてないから怖がっているように見えるけど、大丈夫そうだよ」

「それじゃ、ミノトさんも白だな」

「……当たり前です。わたくしがヒノエ姉様のうさ団子を盗む訳がありません」

 凛とした表情でそう言うミノトさん。どうやら、彼女は姉のヒノエさんをとても慕っているらしい。

 

 

「所で、ミノトさんは今朝なんで茶屋に?」

「ヒノエ姉様の様子がおかしかったので」

「様子?」

「はい。最近、体調が優れないのか誰かに話しかけられても固まってしまっている事が多くて」

「それは普通に心配だな……」

 ヒノエさんは確かにのんびりとした性格だが、人に話しかけられても耳を貸さないような人ではない。

 しかし、当の本人は今もうさ団子をヤケグイしているので元気ではあるような気もするが。

 

 

「とりあえず、次行くか。イオリはこの通りだし、エーコ」

「あたしがやる訳ないじゃん」

「良いから来なさい」

 しかし、全く犯人が予想出来ない。エーコも近付いてくるが、ヒトダマドリは完全に無反応である。

 

「エーコちゃんが犯人ではない事くらい、この名探偵シーナは初めから分かってましたけどね!」

「じゃあ犯人は誰なんですかって話だけどな。次、ビーミ」

 なんか、オチが読めてきたぞ。

 

 

「私じゃ、ないよね?」

 ビーミが近付いてくるが、これもヒトダマドリは無反応だった。これで、残りの容疑者は一人に縛られる。

 

 

「勿論、ビーミちゃんが犯人ではない事くらい! この名探偵シーナは初めから分かってました! さぁ、次の容疑者の方! 前に!」

「……お前だよ」

「はい?」

「次の容疑者、お前」

「あ、そうでしたか。しかし、私は犯人ではありませんよ。なんたって私はヒノエさんの隣で本を読みながらうさ団子を食べていただけですから! つまり、他の人が犯人です」

「いや、居ないんだよ。お前以外に、容疑者」

 俺がそう言うと、シーナは目を丸くして固まった。

 

 

「……え?」

「お前が最後の容疑者、つまり……消去法で行けばお前が犯人だ」

「……いやいや。いやいやいや、そんな、まさか、あはははは」

 顔を真っ青にして汗を垂らすシーナ。確かに、彼女はきっと()()()()()はないのなろう。

 

 

「良いからヒトダマドリに近付きなさい」

「いやいや! 私じゃないですって! ほら、だって私は───」

「犯人はお前だ」

 だから、俺は現実を叩き付けるように茶屋の机を叩いてそう言った。

 

「……どうして」

「自覚がないのかもしれないが、確かお前はヒノエさんの隣で本を読みながらうさ団子を食べていたんだよな」

 俺がそう言うと、シーナは「そうですけど……」と後ずさる。ヒノエさんも「確かにそうですね」と首を縦に振った。

 

 

「シーナ、お前は本を読みながら無自覚にうさ団子をパクパク食っていたに違いない。そしてヒノエさんも、景色を見ていて団子は見てなかった。最近ボーッとしてる事も多いと聞く」

 俺はそこで、シーナを人差し指で差しながら掛けていないメガネのズレを治す振りをする。

 

「つまり、お前は無意識の内にヒノエさんのうさ団子を間違えて食べてしまったんだ!!」

「そ、そんな!?」

「まさか犯人がシーナさんだったなんて!」

「証拠はこのヒトダマドリが掴んでる。良いからこっちにこい」

「わ、私じゃない! 私じゃないです!」

 俺は鳥籠を持って、逃げようとするシーナを追い掛けた。悪いが俺はハンターじゃないが、子供の頃から駆けっこは得意だぜ。

 

 

 そして───

 

「……うわ、めっちゃ鳥暴れてる」

 ───シーナに鳥籠を近付けると、籠の中のヒトダマドリは籠を抜けようともがく程に暴れ出す。勿論、シーナにハートマークの視線を向けて。

 

 

 決まりだな。

 

 

「……そ、そんな」

「お前の事は忘れないよ、シーナ」

 残念だ。俺が友達を里から追い出す事に加担する事になるなんて。

 

「後生です!」

「そんな事言われても、ヒノエさんにぶっ殺されるか里から出るかなら後者の方がマシだろ」

「マシですけど!」

「……シーナさん」

 ふと、ヒノエさんが俯いたまま歩いてくる。表情が見えないので、もうそれだけで怖い。

 

「びゃぁぁぁああああ!!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!! 許して下さい!!! 悪気はなかったんです!!!」

「そ、そうですよヒノエさん。確かにコイツは誤ち犯したかもしれないですけど。殺す事はないですって。せめて、せめて里を追放くらいにしておきましょう。ね? ほら、お前も頭下げろ!」

「もう下げてる!!」

「私からもお願いします、ヒノエさん!」

 泣き叫ぶシーナの前に立って、俺とカエデはせめて命だけはと頭を下げた。

 

 

 確かにコイツは馬鹿である。だけど、それでも俺達にとって大切な幼馴染なのだ。

 

 

「あたしらからもお願いするし」

「うん。シーナちゃんを許してあげて下さい!」

「エーコ、ビーミ……。うぅ」

 シーナはそれはもう号泣である。友情って良いね。

 

 

「……シーナさん」

「は、はい!!」

 震えるシーナ。その手を取って、ヒノエさんは顔を上げた。

 

 

「わざとでないなら良かったです。間違いは誰にでもありますからね。うさ団子が美味し過ぎて、無意識に手が伸びてしまうのは私もありますから」

「ひ、ヒノエさーーーん」

 泣き崩れる。まるで里長に睨まれたヒトダマドリのように。

 

 

「うむ、一件落着だな」

「……人騒がせな事件だった。里長もすみません、こんな事に巻き込んで」

 なんだかドッと疲れた。過ぎてしまえば笑い話だが、シーナには里の宴会で色々してもらう事になるだろう。

 

 うさ団子の罪は大きい。

 

 

「いな、今回の件は大事だろう。それにしてもツバキよ、見事な洞察力であったぞ」

「いや、周りがバカだっただけです」

「謙遜するな。ハンターになるならば、その洞察力は確かな武器となる。いずれお前が真のハンターになった時が楽しみだわい」

「真のハンター、か」

 お世辞はともかく、里長は本当に俺の事を期待してくれてるらしい。頑張らないとな。

 

 

「よし、それじゃ今日はシーナの奢りで宴会だな」

「ちょっと待ってください!?」

「まー、文句言えないっしょ」

「自業自得だしね」

「どんまい」

「三人まで!!」

 カムラの里を包み込む笑い声。

 

 

「うぇぇぇ、破産です!!」

 うん、今日も里は平和だ。

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