ハンターになったらモテると思っていた。
強い男はモテる。
子供の頃、身をもって思い知った事だ。
足が早くて頼りになる男の子。皆の憧れ。
それじゃ、ハンターはどうだろう。
ハンターは強くて頼りになる、皆のヒーローだ。
モンスターから里を守って、困っている人を助ける。身の丈程の獲物を背負い、強大な敵に立ち向かう姿に憧れたのは俺だけじゃない。
ジニアもカエデもハンターになった。
色んな人がハンターを目指している。俺はその内の一人に過ぎない。
これは、ただモテたくてハンターになろうとした男の小さな小さな物語だ。
幼馴染みとの約束を守りたくて、大切な人達を守りたくて───そんな格好良い語じゃない。
もしこれがそんな格好の良い男の話なら、物語として綴られているだろう。
だけど俺は物語の主人公じゃない。
これは、ただモテたくてハンターになろうとした男の物語だ。
あと結論から言うと俺はモテなかったよ。格好良くないからな。
でも、それで良い。
☆ ☆ ☆
血反吐を吐きながら立つ。
「アレは……アオアシラ」
動けなくなったら死ぬと身体に言い聞かせて、俺は既に限界の身体をなんとか持ち上げた。
別にモンスターと戦っていた訳じゃない。走って逃げて、いざ戦おうとしたら別の奴に攻撃されて、それだけでこの様である。あまりにも格好悪い。
「確か臆病なモンスターなんじゃなかったかぁ? いや、ぶっちゃけこの現状は助かってるけどさ」
小言を吐きながら、虚勢混じりに武器を構えた。
正直な所アオアシラの乱入がなければ、今頃俺はマガイマガドに屠られていただろう。
どうやら大喰らいらしいマガイマガドは俺みたいな小さな奴よりアオアシラの方が気に入ったらしい。その鋭い眼光は、蒼い巨獣に向けられていた。
対するアオアシラも、ギラギラと光る瞳をマガイマガドに向けている。里でのお勉強でアオアシラというモンスターは臆病なモンスターだと聞いたが、どうやら例外もいるらしい。
俺みたいに自分の事を強いと思っているのか、縄張り意識が強いのか、体格から違うマガイマガドに自分を大きく見せる為に両手を上げて威嚇している姿は俺から見れば恐ろしかった。
しかし、マガイマガドは表情一つ変えずに目の前の獲物をどうしてやろうかと動きを伺っている。
こうして見比べると、カエデがアオアシラとマガイマガドを間違えた理由が全く分からない。そんなに似てないよ。いや近くで見てみてくれ。全然似てない。
「……さて」
どうするか。
俺の選択肢は限られていた。
一つ、アオアシラとマガイマガドが争っている内に逃げる。
二つ、アオアシラに加勢してマガイマガドを倒す又は撃退する。
個人的には逃げたい所だが、アオアシラがやられてしまうと次に追い掛けられるのは俺だ。
今から俺が逃げるとしてアオアシラがどれだけ時間を稼いでくれるか分からない以上、どう逃げるにしてもコレは神頼みの賭けになる。
とはいえアオアシラに加勢してマガイマガドと戦うとしても問題は山積みだ。
アオアシラに俺が加勢した所で、マガイマガドと対等に戦えるとは思えない。そもそも俺とアオアシラは意思疎通が出来ないから加勢ではなくただの混戦である。突然アオアシラの剛腕がまた俺を襲ってくるとも限らない。
そもそもマガイマガドを撃退出来たとしても、次はアオアシラそのものが問題だ。正直な所初めから俺に選択肢なんてない。
「……戦うしか、ないよなぁ」
元々そのつもりだったのだから、俺は再び背中の太刀に手を伸ばす。
コレを抜いたら、そこからは俺も狩人だ。
逃げる事は許されない。負ける事も許されない。二人を助けると決めたのなら、最後まで足掻け。
「───見てろよ、俺の格好悪い悪足掻きを」
唇を噛みながら太刀を抜く。同時に、先に仕掛けたのはアオアシラだった。
両手脚で勢いよく駆けるアオアシラは、自分自身の質量を駆使してマガイマガドに突進を仕掛ける。
相手がイズチやオサイズチなら、それだけでも脅威になる攻撃だ。しかし、マガイマガドとアオアシラの体格ではその立場は逆転する。
衝撃と轟音。
岩が砕けたような音を立てて、マガイマガドはアオアシラの突進を受け止めてみせた。
発達した両前脚で抱えるようにアオアシラの動きを止めたマガイマガドは、禍々しさすらあるその牙をアオアシラの首筋に向けて突き立てる。
アオアシラの悲鳴が大社跡に木霊した。
言わんこっちゃないが、それでアオアシラに諦められたら困るのは俺である。
「───こっち見ろデカブツ!!」
そのままアオアシラの首を捻らんとするマガイマガドの背後に回り込んで、俺は頭上まで持ち上げた太刀を振り下ろした。
武器の振り方はまだイオリに呆れられる程。力の入れ方も、抜き方も分からない。だから俺はただ力強く武器を振る。それしか出来ないから。
太刀はマガイマガドの甲殻を叩き割り、鮮血を吹かせた。
目一杯振り下ろした甲斐があったというものである。しかし、嫌な音がして俺は何故か軽くなった自分の太刀に目を向ける。
「……欠けてるんですけど」
真っ二つに───とまではいかないが、丁度マガイマガドの硬い甲殻を切り裂いた刀身の先端が欠けていた。
幸先が悪過ぎるが、太刀を少しダメにした甲斐もあってマガイマガドの意識はアオアシラから俺に逸れる。
アオアシラが体勢を立て直す時間を稼げたのなら充分だ。
もしアオアシラがこれで逃げたら、マガイマガドは多分アオアシラを追うだろう。そうでなくてもアオアシラが逃げたら俺もアオアシラを追いかけるように逃げてやる。
───悪いがお前の事は最大限利用させて貰うぜ。逆らっちゃいけない奴に逆らった仲だ。最後まで付き合ってくれよな。
「───ぬぉ!?」
マガイマガドの視線が俺を向いたその瞬間、アオアシラは攻勢逆転だとでも言わんばかりにその両腕を大きく振り回してマガイマガドに
硬い甲殻に覆われたアオアシラの剛腕は振り回すだけでも凄まじい威力だ。
俺に注意を取られていたとはいえ、あのマガイマガドが怯んで仰反る姿には感心する。
しかし、俺もマガイマガドに攻撃したばかりで密着状態だ。アオアシラの攻撃の余波に当てられて、俺はそれだけで地面を転がる。
「……も、もう少し手加減してくれても良いのよ」
助けてやったのに───なんて言葉に意味はない。俺とアオアシラは別に共通の敵と戦っているだけで共闘している訳ではないのだから。
しかし、今のでマガイマガドの隙を突けたのは大きかった。
アオアシラが脚をバネに怯んだマガイマガドに体当たりすると、マガイマガドは大きく仰反ってアオアシラから距離を取る。
しかし、このまま倒せてしまうのでは───そう思った刹那。視界が禍々しい焔に包み込まれた。
「───なんだ!?」
まるで鬼火のような、人魂のような。
マガイマガドの身体を覆い尽くす不気味な焔。自ら焔を纏っているようでもある。
「……もしかして、さっき本気じゃなかった? パワーアップしてます?」
ジンオウガというモンスターは本気で相手を倒そうとすると、自らの身体に宿る雷光虫達の力を最大限に借りて力を増すらしい。
それに加えてモンスターは怒ったりすると動きがさらに過敏になり、危険になるとか。お勉強は大切だ。
「……なんかやばいって事だけは分かったぞ」
お勉強はともかくマガイマガドはもう見た目が大変な事になっている。これは逆らってはというより関わったらいけない系だ。
ただ、そんな事は知った事かとアオアシラは再びマガイマガドに突進を仕掛ける。
アイツ何も考えてないぞ。ちょっと待て流石にそれはヤバい。
「言わんこっちゃな───は!?」
突然したアオアシラは、マガイマガドの片手に突き飛ばされて地面を転がった。
呆れた奴だが俺にはアオアシラの援護以外にやれる事がない。またマガイマガドの注意を引いてやらうと思ったその瞬間───
「───飛んだ!?」
───マガイマガドは跳躍する。それだけじゃない、自身の体長よりも高く跳んだマガイマガドが
空を飛ぶ翼を持たない筈のマガイマガドが、空から急降下してきたのである。意味が分からない。
アオアシラは血潮を撒き散らしながら地面を転がった。それでもなんとか起き上がろうとするアオアシラの生命力に驚きだが、今はそこじゃない。
「……ば、化け物かよ」
アレは本当に
陽炎を揺らしながら、マガイマガドはアオアシラにトドメを刺そうとゆっくりと歩き出す。
それは困る───そう思って太刀を手に走ろうとしたその時だ。俺の身体は何故か動かなくなる。
まるで金縛りにでもあったかのようだ。
「……あ?」
別に攻撃された訳じゃない。身体はボロボロだが、まだ動ける。けれど、何故か俺の身体はいうことを聞いてくれなかった。
「……なんだよ」
ふと自分の手を見ると、その手が小刻みに震えている。
足も、身体も。
俺は怖くて動けなくなってしまっていた。
「……いや、いやいや。分かってるんだよ」
俺はマガイマガドには勝てない。アオアシラもあの様で、今から殺される。
その次は俺だ。
脳裏に兄だった血肉の塊が過ぎる。
俺は死ぬのが怖い。
誰かが死ぬのも怖いけど、自分が死ぬのも怖い。
だからハンターになる夢を捨てたんだ。怖くて動けなくなる事が分かっていたから。
「……分かってるけどよ」
震える足に太刀の柄を何度も当ててやる。
分かっていても、俺はここまで来た。
嘘を吐いて、虚勢を張って、皆の力を借りて、大切な人を助けると決めて。
だったらもう引き下がれないだろ。ここで逃げても結果は同じだろう。
俺はもう逃げられない。逃げられない所まで来たんだ。
それは何の為だよ。
大切な友達との約束を守る為か?
違う。
大切な友達達を助ける為か?
違う。
里の皆が、兄が、家族が、友達が期待したようなハンターになる為か?
違う。
───そうだ。
「……俺は弱虫だ。何も出来ない、ただの農家だ」
そんな事は分かってる。
けれど、それでも───
「それでも俺はモテたいんだよ!! モテる為ならなんでもするぜ!! 俺は里一番のハンターだ!! 嘘でも虚勢でも!! 俺はハンターなんだよ!!!」
───自分を騙せ。
自分の事は自分が一番分かってるんだ。
俺は死ぬのが怖い。俺は弱い。俺は何も出来ない。
でもそんな事は知った事か。
そんな事は言わなくても自覚しなくても知ってるんだよ。
関係ない。
今は嘘でも虚勢でも何でもいい。
身体を動かせ。
ハンターになるんだろ。
友達を助けるんだろう。
約束を守るんだろう。
だったら身体を動かせ。自分がどうだとかなんて知った事か。
俺はハンターになるんだ。友達を助けるんだ。アイツとの約束を守るんだ。
───自分を騙せ。今の俺に出来る事を全てやれ。
「───オラァ!! こっち見ろ化け物!! 人魂お化け!! お前の相手は俺がやってやるって言ってんだよ!!」
精一杯の虚勢を張って太刀を構える。
もう何も考えるな。
俺は弱い。何も出来ない。それは一旦忘れろ。ハンターになってモテる事だけ考えろ。
そうでもしなきゃ、俺の身体は動かなかった。
嘘と虚勢で周りも自分も騙して、ようやく俺は動ける。俺はそんな情けない人間だ。でも今はそれでも良い。だから、騙し続けろ。つべこべ言わずに身体を動かせ。
「オラァ!!」
ゆっくりと歩きながら振り向くマガイマガドの横腹に太刀を叩き付ける。
太刀の刃が欠けた。
しかし、血飛沫と共にマガイマガドは小さな悲鳴を上げる。俺は痺れる手を振りながら、態と大きな声を出してマガイマガドの注意を引いた。
アオアシラの復活まで時間を稼ぐ。
それだけでいい。いや、どれだけ虚勢を張ろうが俺に出来るのはそれだけだ。
太刀の使い方が下手過ぎて、もう何回か攻撃したらこの武器も使い物にならなくなる。
イオリから譲って貰ったオトモも、ヨモギの団子もロンディーネさんのアイテムも今はもうない。
使えるのは自分の身体とこの武器だけ。
それでも俺がやらないといけない事はシンプルだ。俺にだって出来る。出来る筈だ。やれ。
「やるしかないだろ……!」
俺を睨むマガイマガドに向けて、もう一度太刀を振り上げる。
切り上げとか切り下がりとか難しい事をやれる程余裕はない。俺にはこれしか出来ないから、武器を頭の上まで振り上げた。
しかし、それより先にマガイマガドの剛腕が俺の身体を叩く。
まるで虫でも払うように振られた剛腕に俺の身体は数メートル先の木に叩き付けられた。
肺の空気を全部吐き出しながら、血反吐で地面を濡らす。
倒れそうになった身体を太刀で支えようとして、その太刀が半分に折れてるのに気が付いた。
「……クソ」
マガイマガドは俺を無視して、再びアオアシラの元にゆっくり歩いていく。
アオアシラはまだ立ち上がれていない。それでも立ち上がろうとはしているんだ。もう少しだけ、もう少しだけ時間を稼げ。
「クソクソクソ……クソ!!」
折れた太刀を上に構え、マガイマガドの尻尾に叩き付ける。
今度は傷も付けれない。尻尾に払われて、俺は再び地面を転がった。
立ち上がる。
さっきまで静かだった翔虫が、俺を止めるように視界の前に出て来た。
「キモい顔見せんな……。退いてくれ」
俺がそう言うと、翔虫達は何処かに飛んでいってしまう。
遂に虫にまで愛想を尽かされた。
それでも───
「まだ、だぁ……!!」
今度はマガイマガドの正面に立って、アオアシラとの間に入り込んで、もう刀身が殆ど残ってない太刀を振り下ろす。
遂に太刀はバラバラになって砕けて、俺はヤケクソになって柄をマガイマガドに投げつけた。
結局、最後まで奇跡は起きないし俺の力はそんなもんである。
ただ、後ろでアオアシラが立ち上がる音がした。
自分に出来るだけ、時間は稼いだか。本当に情けないが、後はアオアシラに任せるしかない。
それでも、自分に出来る事は最大限したと思う。
後は、コイツが善戦してカエデとジニアだけでも助かればそれで───
そう思って俺は目を瞑った。
持ち上げられたマガイマガドの剛腕に踏み潰されて死ぬ───そう思って。
しかし、少ししても何の感覚もない。
ただ風の感覚と、音。俺は生きている。
目を開けると、目の前でマガイマガドが止まっていた。
「……お前ら」
青白い光が視界の中で舞う。
愛想を尽かされたものだと思っていたが、翔虫はまだ俺を見捨ててはいなかったようだ。
ふと背後を振り向くと、何故か立ち上がった筈のアオアシラが蹲っている。
アオアシラに戦って貰わないと困る訳だが、アオアシラの身体中に翔虫の糸が括り付けられているのが見えて頭に何かが過った。
「……出来るのか?」
言いながら、俺は走る。同時にマガイマガドを止めていた後が千切れて、今さっきまで俺がいた場所の空気が潰れた。
これは本当にただの賭けである。
思い付きも良い所だ。もっとマシな方法があるかもしれない。それでも、何故か俺は失敗する気がしなかった。
思い出したのは畑にブルファンゴというモンスターが現れた時の事。
カエデがブルファンゴを翔虫の糸で操って、木に激突させた姿である。
今、何故か丁度アオアシラは翔虫の糸で動きを止めている。
これを使って上手くアオアシラを誘導出来れば、あるいはマガイマガドに手が届くのではないだろうか。
アオアシラのパワーは充分だ。
しかしコイツの性格なのか、馬鹿正直に真正面から突撃してばかりではマガイマガドには勝てない。
そこをなんとなくでも補助してやれば、或いは。
「───ちょっとお背中借りますよぉ!!」
アオアシラの背中に飛び乗って、俺はアオアシラの両手に繋がる糸を掴む。
俺とアオアシラを叩き潰そうとするマガイマガド。対するアオアシラを地面と繋いでいた糸が切れて、アオアシラはマガイマガドを正面から受け止めようとしていた。そんなバカな事をするな。
「アホ!! 避けるんだよ!!」
俺は糸を引っ張って、マガイマガドの攻撃を回避させる。すると俺達はマガイマガドの懐に飛び込める訳だ。
俺の太刀じゃ文字通り歯が立たなかった訳だが、アオアシラの攻撃となれば訳が違う。
剛腕を振るアオアシラ。繋がっている糸は今は触らない。
使える物は何でも使え。
だったらこのアオアシラも利用出来るだけ利用すれば良い。
お前も俺の天才的作戦を利用出来るんだから黙って操られてれば良いんだよ。
なりふり構っていられないのは、お互い一緒だろ。
「やーっておしまい!!」
アオアシラのパワーは本物だ。
マガイマガドの攻撃だけ何とかすれば、俺が攻撃するよりも遥かに良い結果になる。
───それでも、マガイマガドは倒れなかった。
何度アオアシラの剛腕を受けても、体当たりを受けても。
鮮血に地面を濡らしながらも、マガイマガドは俺達を睨み続ける。
「……ふぅ」
これは根気の勝負だ。
けれど、多分お互いに限界だったのだろう。
マガイマガドが動いた。
大きく跳躍し、身体に纏う焔が揺れる。
俺はその攻撃に見覚えがあった。
「まさか───」
今さっき、アオアシラを地に伏せさせた大技だろう。アレを避けるのは糸で操るだけじゃ無理だ。
そしてアオアシラは避ける気がない。
「───んなろぉ」
やるしかないか。
運が悪ければ死ぬし、多分運が良くても死ぬ。
だけど、考えている暇は無かった。これは最期の賭けだ。
「……俺は絶対に、アイツとの───アイツらとの約束を守るんだよ!!」
陽炎が飛ぶ。
どうやってるのか分からないが空中からの急速な方向転換。
もしこれが所見なら、俺はアオアシラと共に死んでいたかもしれない。だけど、その技を俺に一度見せたのがお前の敗因だ。
「───いけぇぇぇぇえええええ!!!」
糸でアオアシラを引っ張りながら、俺はアオアシラを蹴り飛ばすように背中から降りる。
アオアシラは畑で見たブルファンゴのように真っ直ぐ進んで木に激突した。しかし、そのおかげでマガイマガドの空中からの突進は避けられる。
───俺は、その後の事をあまり覚えていない。
大技の後、少しだけ動きを止めたマガイマガドが真っ赤な視界の中に映った。
俺はあの大技に直撃して倒れているらしい。
自分の体がどうなってるのか分からない。生きているのか、死んでいるのかも。
「……あぁ、くそ」
ただ、俺の意識が切れるその前に───
「……俺よりアオアシラの方が格好良いじゃねーか、クソ」
───アオアシラは隙が出来たマガイマガドに渾身の一撃を与え、見事マガイマガドを撃退する。
その背後には、アオアシラの家族なのか。
小さなアオアシラが二匹、木々の奥から出てくるのであった。
アオアシラが頑なに逃げなかったのは
「……死にたくねぇ、な。くそ───」
───そのアオアシラと目が合った所で、俺の意識は事切れる。
後は二人が無事に里に帰れる事だけを───
「ツー君!! ツー君!!」
「ツバキ……!! ツバキ、ツバキ……!! ねぇ、ツバキ!!!」
───祈るだけだ。