こうして青年と姫様は城から抜け出しどこか遠い場所で幸せに暮らしましたとさ。―裏―   作:歩(ホ)

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—表—

 とある時代とある国のとある城に一人のお姫様が居ました。

 

 お姫様のその肌は雪のように白く、その髪は絹のように柔らかく、その瞳は宝石のように美しい色彩を放っていて大層美人でした。

 

 しかしそんなお姫様も一つだけ欠点がありました。

 

 お姫様は笑いません。

 

 その端正な顔が、喜びに染まったことはありませんでした。

 

 笑わないお姫様を不憫に感じた王様は、様々な方法で彼女を笑わそうとしました。

 

 しかし、王さまの努力は実りませんでした。

 

 いかな品でも、いかな芸でも、お姫様の口端が上がりことはありませんでした。

 

 お姫様は窓の外を眺め、空を悠々と飛ぶ鳥を見ます。

 

 お姫様は思います。

 

 

(あぁ、なんで私には空を飛ぶ翼が無いのだろう……)

 

 

 お姫様は外の世界に憧れていました。

 

 鳥籠のようなお城で、自分の一生が終わってしまうと思うと怖くて仕方ありませんでした。

 

 お姫様の美しさを目当てに結婚を申し込んでくる人は後を絶ちません。

 

 ですがその中に彼女を外へと連れて行ってくれる人は誰一人として居ませでした。

 

 鳥籠へと押しこめ、お姫様を苦しめようとする輩しか彼女の前に現れませんでした。

 

 お姫様は自分の立場が恨めしくて仕方ありませんした。

 

 誰が決めたのだろう。誰が私を姫に決めたのだろう。

 

 平民に生まれたかった。平民のように自由気ままに暮らせればどれだけ幸せなのだろうか。

 

 お姫様は日に日に思いを募らせます。

 

 そしてそんなある日、ある一人の青年が彼女の元へとやってきました。

 

 青年は旅人でした。

 

 青年は今まで旅をしてきたお話をいくつもお姫様に話しました。

 

 お姫様はそのまるでおとぎ話のようなお話に興味を示しました。

 

 一日に一つずつ、青年は外の話をします。

 

 そのお話が楽しみでお姫様は毎日、青年が来るのを待ちます。

 

 明日が来るのが待ち遠しくて堪りませんでした。

 

 お姫様は青年に恋をしていました。

 

 自分の憧れを体現したような旅人の青年が愛しくて仕方無くなりました。

 

 しかし青年は平民であり、お姫様はそのとおりの姫であり立場の違いから彼女の恋が実ることはありません。

 

 お姫様は自分の立場に涙します。

 

 恋すら自由にできない自分の身を憐れみます。

 

 そして、お姫様は唐突に結婚させられることになりました。

 

 もちろん相手は旅人の青年ではありません。

 

 相手は名家の貴族の息子でした。

 

 貴族の息子はお姫様との結婚を強引に進めます。

 

 お姫様の気持ちを一つも察することの出来ない貴族の息子に、お姫様は嘆き悲しみました。

 

 貴族の息子は彼女を自分の物にすることしか頭にありません。

 

 お姫様は何もできないまま、貴族の息子と結婚してしまいました。

 

 旅人の青年も来なくなり、お姫様は生きることに目的を見出せなくなりました。

 

 そんな時です。

 

 今日も今日とて退屈で不毛な日々を過ごしていたお姫様の前に、あの時の旅人の青年が現れました。

 

 お姫様は嬉しさのあまり青年に抱きつきます。

 

 青年は言います。

 

 

「どこか遠いところへ逃げましょう。アナタが望むところどこまでも私はついていきます」

 

 

 青年もお姫様のことを愛していました。

 

 お姫様は頷きます。

 

 青年はお姫様を抱え、お城を抜けだしました。

 

 森を越え川を渡り山を登り、色々な場所をお姫様と旅をしました。

 

 愛し合う二人は海の見える丘で結婚式を挙げます。

 

 些細なものでしたが二人は構いませんでした。

 

 そして、お姫様をお姫様だと誰も知らない地で、二人は生まれた子供と幸せに暮しましたとさ。

 

 おしまい。

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