今日は、ユウジ一人が裏路地を歩いている。
棒付きの飴を口にくわえたまま、裏路地を慣れた足取りで進み続ける。
相変わらず、裏路地は読めない文字の標識が乱立していたり適当に壁から生えている。
その文字一つ一つを読もうものなら、干からびて死体にでもなっているぐらいには生えている。
(しっかし、今日は何もないねぇ)
組織の決まりで、今日はユウジの休みとされている。
イワモリとイヌワシの両方は今頃アジトで書類整理の真っ最中で、行きつけのバーも今日は定休日、アインドゥは物資輸送で休み。ひだまりも用事があるらしく休み。
白悪魔もいまは、スリをした悪魔を追いかけている最中、楓も楓で今日は表通りに買い物に行っていていない。
そこでユウジは暇つぶしに適当に裏路地を歩いているのだ。
明確なイメージを持って裏路地を歩けば、すぐに行きたいところにつく裏路地だが、明確なイメージなしで歩くなら裏路地は本物の迷宮となる。
現にさっきから人通りはないくせに賑やかなネオンだけが光り輝いている。
(・・・・・・で、俺を追跡しているのが。)
裏路地の中でも、トップに君臨するほどの強さを持つユウジ。そんな彼を追跡すると言ったらこの裏路地にやってきたばかりの何も知らないバカか数でおしきれると勘違いしたど阿呆ぐらいだろう。
ユウジが振り返ると赤髪の女性がそこにたっていた。
ユウジ「言葉は不要か?」
そういうと、ユウジもその女性もそれぞれ構える。
ユウジは拳を構え、その女性は足元に落ちていた鉄パイプを構える。
そして、
ガキィン!
鉄パイプと拳がぶつかりあった。
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ぶつかりあった反動でユウジと赤髪の女性が時計回りのハイキックをそれぞれ放つがそれも相殺され、ハイキックがぶつかりあった衝撃でその2人の足元に大きなクレーターが出来上がる。
ユウジ「…ちっ。」
蹴りあった反動で、ユウジの動きに隙が出来る。
どうやら女性の方が蹴りの際に重心と力を込めていたらしく、牽制目的で放っていたユウジを怯ませた。
赤髪の女性「右ストレートから牽制の時計回りのハイキック」
女性が鉄パイプを右から振り下ろすがユウジはそれをかわして左の拳でジャブを放つ、しかし女性はそれを紙一重で回避した。
ユウジが次の攻撃をしようとした途端、ユウジの顎に鉄パイプが飛び込んでくる、どうやら回避したと同時に踏み込み、そして斬りあげるつもりらしい。
ユウジ「はっ…」
鼻で笑いつつ、顔をずらすとスレスレで鉄パイプが通過する。しかし、そこで隙ができたのか気づかなかったのかユウジの右脇腹に強い衝撃が襲う。
ユウジ「ぐぅッ?!」
赤髪の女性「牽制の左ジャブを放つときに、脇腹が隙だらけになる」
赤髪の女性が何かを言っているが、ユウジがその衝撃を受けた場所に目を向ければ赤髪の女性の左足が、その衝撃のあった場所のすぐそこにあった。切り上げを振り抜いた後にそのまま蹴りを入れたのだ。
普通の剣士なら非道だ!と非難する行為だがこの裏路地ではそんなことは喧嘩においては邪魔なだけである。
今回ばかりは、ユウジの油断が原因で鋭い一撃がユウジに入った。
ユウジ(ちっ、油断したか。)
ジンジンと痛む脇腹を抑えて赤髪の女性の女性を見る。
余裕そうに鉄パイプを振り回していてその様子は煽っているようにも見える。
ユウジ「やってやろうじゃねぇか。」
ユウジが拳の構えを変え、鋭く1歩を踏み出した。
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ドガガガッ!!ガキンッ!ガスッ!ズバッ!!
ドォーン!ガラガラガラ…
そこから何回かの至近距離戦を繰り広げてはいるのだが、ユウジと赤髪の女性は互角に渡り合っている。
右ストレートを放てば鉄パイプで防がれ、鉄パイプで切りかかれば回避されてその辺にあった看板を断ち切る。
蹴りを放てば回避されて空を切り、掴もうとすれば背負い投げされたり鉄パイプの突きが待っている。
互いに有効手段が防がれたりかわされたりしているなか、2人は息も切らさずにそれを続けていた。
ブォン!カキィン!ズドンッ!
メキャッ!ドガッ!ゲシッ!
やがて2人とも面倒くさくなったのかお互いに距離をとるそして赤髪の女性は居合の構えをし、ユウジが飛び込んでくるのを待つ。
ユウジは右腕に力を込めてわざわざ、その赤髪の女性の間合いに飛び込んでゆく。
1歩、赤髪の女性は動かない。
2歩、ユウジが拳に力を込める。
3歩、
ザンッ!!!
風切り音と共に、ユウジの体が上半身と下半身に切り分けられる。
しかし、その切り捨てられたユウジの体は煙のように消えてゆく。
赤髪の女性「!?」
気づいた時にはもう遅く。
ユウジ「オラァッ!!」
懇親の右アッパーが、その女性の顎を打つ
フワリと、殴られた衝撃で体が浮く。
三角飛びでユウジが浮き上がった女性に近づき
そのまま胴回し回転蹴りで地面に叩きつけた。
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ユウジ「ぜぇ、ぜぇ…」
さすがに疲れたのか息を切らすユウジ、視線の先にはムクリと起き上がりこちらを見てくるさっきの女性がいた。
赤髪の女性「闘気で分身作るとかついに人間やめた?」
倒されたというのに呑気にそんなセリフを言う。
ユウジは溜息をつきながらその女性を立ち上がらせる。
ユウジ「帰ってきたらまず俺を襲撃するなって前にも言ったよな?アカザネ。」
アカザネ「…そうだったっけ?ごめん、忘れてた。」
ちなみに、彼女…アカザネは獅子神楽を結成した5人の1人、そして獅子神楽の(ユウジを覗いた)戦闘部トップクラスの実力を持つ人間だ。ちなみにイヌワシの剣の先生でもある。他がそれ以前にユウジとは親しい関係である。
アカザネ「表通りの喫茶店にでも行かない?」
ユウジ「…今度飲み物に媚薬入れたら別れるからな?」
アカザネ「もう入れないよ。買ってきてないし。」
買ってきたら入れるのかよと、呆れながらも表通りに向かうユウジと、嬉しそうにユウジの腕に抱きつくアカザネ。
とてもさっきまで喧嘩しあった挙句に路地1つを使用不可能になるまで壊した張本人たちとは思えない光景であった。
おまけ
イワモリ「だァァァっ!!なんなんだこの書類の量!昨日片付けたばっかだと思ったのに!?」
イヌワシ「うおおおおっ、サインしてもサインしても終わらねぇぇぇぇっ!!」
獅子神楽事務員A「書類追加です、今週中なので急ぎでおねがいします!」
イワモリ&イヌワシ「チクショォォォォォッ!!」
はい、獅子神楽最初の5人のうち1人、アカザネさんが帰ってきました。
ちなみにですがイワモリも最初の5人のうち1人です。
えっイヌワシ?実は最初の5人のうち1人じゃないんですなーこれが。
アカザネとユウジの関係は恋人ですが、いつもフラフラとアカザネが旅をしてはいつの間にか戻ってきているのでほとんど親友以上恋人未満どまりです。
え、本気を出したら本当はどっちが強いかって?
殺し合いならアカザネ。喧嘩ならユウジが強いです。