ガチャは悪い文明ですね。
〜とある休日〜
学校も休みで特にすることもないのでCDショップを適当にぶらつく、暇な日に入り浸り過ぎたせいかすっかり顔馴染みになったレジのお姉さんと一言二言話してから店内をうろつく。
ひと月前まではアイドル系統が置いていたところに結構激しめなロックバンドのジャンルが並んでいるところを見るに売り場の変更でもしたんだろう。
幸い目的であるボカロコーナー変わっていないようなのでふらふら歩いていく
適当にパッケージを眺めて気になったら手に取り戻す、これを繰り返しながらなんか良さそうっと感じたらキープしてまたふらふら…
やはり人気ボカロPさんは前面に出てるので探しやすくて助かる。適当に三、四枚買ったら帰って聞くか
────と、普通の人間なら思うだろう。
ここの音楽ショップは品揃えは申し分ないがお世辞にも広いとは言えない店なのでどうしても前面に出せるCDの量は限られる、そんな事情からマイナーな曲や人を選ぶような曲、更には有名だけど他にもっと有名すぎるのがある曲等は側面に埋もれがちだ。
例えば……おぉ、あれは!最近人気がうなぎ登りなボカロPさんのCDを発見!!
期待の新人ボカロPとしてデビューしてから初のアルバム、既にAnazon等のネット通販にはあまりでまわっていないことはリサーチ済み。
店側としてもこれから名が売れていってくれれば前面に出すだろうが今はその前段階、有象無象に埋もれた中でも手に取ってもらえるほどの魅力を単体で持っているのか、それを推し量っている段階だろう。
どうやらこれが最後の一枚みたいだ、早速手に取り迷うことなくキープ、というか確定で買──「あ、ラストだったんだ」い…の、予定、なんだが。隣からはつい先日聞いた声が聞こえてくる。
声のする方向に顔を向けると先日と同じく綺麗な黒髪をした女性、星乃さんが少し悲しそうな顔で俺、ではなくその手元──CDに目線を向けていた。
「こんにちは、昨日ぶりですね」
社会人の基本である挨拶…朝の10時位ってこんにちはでいいのか?まぁ、とにかく挨拶をすると心底驚いた表情で慌てて挨拶が返ってきた、多分俺の事には今気がついたんだろう。ま、司や類みたいに印象深い見た目でもないしな、しょうがないだろ。
しかし、星乃さんもこのCDに目をつけるとはお目が高い、中々に見る目が…いや、聞く耳があるな。
と言ってもこれがラスト一枚であることは間違いない、さてどうするか……
「すみません、私入相さんだって気が付かなくて…」
「ん?いいよいいよ。気にしないで、それよりこれ、良かったら譲るよ」
「え!良いんですか!!」
「あぁ、今回は別にこれが目的で来たわけじゃないし、別に今すぐ欲しいって訳でもないからな。それと、呼び方は真尋でいいよ」
嘘はつかないが本音でもない、本当のことを言えば見つけた瞬間今日の目的がこれになるくらいには欲しいCDだが「このCDは俺が先に取ったんだからな!」と言うのはいささか格好が付かなすぎる、端的に還元するなら男の仕様も無い見栄だ。
それに星乃さんは足音からしてこちらに一直線に向かってきていた、なおかつ前面のコーナーには目も触れずこのCDが置いてあるところまで迷わずに辿り着いた。パッケージ等を事前に調べていたんだろう、それくらい欲しがっている人がいるなら譲るのもいいかなって思えるもんだ。
「あの、やっぱり申し訳ないので結構です。元々は入相…真尋さんが先に取っていた訳ですし…。あ、それと私も一歌で大丈夫です」
「ここまで来といて遠慮しない、ほら、これ持ってさっさとレジ並んできな」
「あ、ででも!」
「ん〜、案外強情だな…そうだ!じゃあ半分ずつ出し合うのはどうだ?」
俗に言う割り勘だ、所有権は2人。CD本体は星乃さんに管理してもらっておいて俺はパソコンにダウンロードしたやつを聞くから大丈夫だ。
なに?それなら本体を持ってる私が多めの2:1の金額でいい?いやいや、女性にそれも年下に多めに金を出させるなんて男として流石に情けないから却下。
むぅ…予想よりも強情、というか優しい子だな。困った、このままだとどちらも買わずに終了な展開が有り得てしまう。それは流石にもったいなさすぎるので何とかして譲りたいんだが…──「あの〜、よろしければ在庫確認致しましょうか?」
不毛とも呼べる争い(?)をしているところに天明の光が舞い込む、いつもの店員さんがいつの間にやらほぼ真隣まで接近していた。
「お願いしてもいいですか?」
「すいません、私からもお願いします」
「かしこまりました〜」
足早にかけていく店員さんを見送りながら微妙な空気が流れる、お互い譲り合っていたところに2つ目が出てくると何となく恥ずかしくなってしまう。
星乃さんも同じのようで少し気まずそうな表情で落ち着いていない。
そんな星乃…じゃなかった、一歌さんの視線が一点に集中したのがわかった、視線の先に目を向けると綺麗な銀髪でジャージ姿の女性が一歌さんを見つめていた。
よく観察してみると2人の視線はそれぞれの髪に向いている、『憧れ』…と言うよりは『羨望』?お互いがお互いの髪に興味津々って訳か。
見つめ合う美少女を観察する男……なんか悪いことしてる気分になってきた。
「「あ……」」
「えっと、すみません」
「……いえ、こちらこそ」
「「…………」」
美髪な2人を無言で眺めながら待っていると店員さんが2つCDを持って戻ってきた、つまりそういうことだろう。
「お待たせしました、はい、こちらお二つでよろしいですか?」
「ありがとうございます、そのままお会計して貰ってもいいですか?」
「…あ、別々でお願いします」
一歌さんも思考の海から帰ってきたようで一緒にレジに向かう。
先程の銀髪の女性も既にどこかに行ってしまったようだった。
初めから店員さんに聞けばよかったな……
〜昼過ぎ〜
ビビッドストリート
あれから一歌さんと別れて適当に昼飯食った。
久々に『麺硬辛め野菜ダブルニンニク脂マシマシ』を頼んだがさすがに昼からは重かったみたいだ。食後のコーヒーを飲みたくなってきたので久々に行きつけの、カフェ?バー?でもライブもしてるし…まぁいいや、『WEEKEND GARAGE』に行くことにした……行きつけなのに久しぶりとはこれ如何に。
壮大なグラフィティアートを眺めながら歩いていると目的の店が見えてきた、早速中に入る。
「いらっしゃーい。…って真尋さん!お久しぶりです。父さーん!真尋さん久々に来てくれたよ!」
ドアのカランカランって鳴るやつ……あれの名前ってなんなんだろ?ま、いいや。その音とほぼ同時に久々に聞く明るい声に出迎えられる。
「そうか。いらっしゃい、ゆっくりしてっいってくれよ」
「お久しぶりです、謙さん。すいません、最近色々忙しくて……杏も久しぶりだな、最後に見たのは…何時だ?」
「多分私が入学して2ヶ月経ってからくらいだから、6月の初めくらい?」
つまりほぼほぼ4ヶ月は来れてなかったということになる、最近は忙しかったとはいえなんだか申し訳ない気分になってしまった。今日は二杯頼むとしよう
杏に案内されカウンター席に、どうやら今はお客さんが俺一人のようだ、夜はあんなに盛り上がるのに昼は静かだよな、ここ
「……今何か失礼なことを考えなかったか?」
「いえ、全くもってそんなことはございませんよ?あ、アメリカンコーヒーお願いします」
カウンター越しに読心術を行使され内心焦った。瑞希の気持ちが何となくわかった気がする……
さりげなく注文を受けてくれた謙さんがコーヒーを入れる準備をしてくれる。あいにく俺は飲む専門なので何をやってるかはあんまりわからんのだが、このコーヒーの香りが広がる感じはやはり好きだ。
「ご注文のアメリカンコーヒーだ」
「ありがとうございます………美味い、やっぱりここいらじゃ1番美味しいですよ」
ほっと一息着く、やはりここのは美味い。俺の家から少し離れているから絶妙に来るのが面倒な位置にあるんだがそれでも足繁く通ってしまうほどにはこの味に惚れ込んでしまっている。
「真尋さんなんで急に来なくなっちゃったんですか?」
「あぁ、ちょっと用事が色々と増えてな」
「それは歌ってみた動画のことか?」
……ほんとなんで知ってんのこの人?え、怖、ごめん瑞希入れこんな怖いことしてたの?今度ちゃんと謝ろ
「ふぅむ、久々に会ったが…相変わらずよく分からん目をしてるな、強いて言うなら『譲れないものを作り上げている』、そんな奴の目だ」
「いきなり人の顔をじっと見つめて何言い出すんですか、てかなんで動画のこと知ってるんですか?顔出しはしてませんよ俺」
まぁ、多分声でバレたんだろうな。この人ほんとに計り知れん
「えぇ!真尋さん動画アップしてるんですか!?というか歌うんですか!?」
「歌うぞー、好きな曲ばっかりだけどな。あ、周りに言いふらすなよ?」
バレちゃったもんは仕方ないので動画のチャンネルを見せる
「『Soma』って……うぇ!?あの『Soma』だったの!?すごいすごい!なんで教えてくれなかったんですか!!」
「うんうん、喜んでくれるのは嬉しいけど俺の携帯振り回すのはやめてくれ、おいやめろ、その手を止めろ」
「あっはははは!!」
元凶が何笑ってんだ、張り倒しますよコノヤロウ………コーヒー次ブレンドお願いします。
「こんにちは」
そんな悪い大人を睨みながらコーヒーを飲んでいると入口から先程聞いたカランカランという音が再度響く、入口に目を向けると三人の男女が入店していた。
内二人の男子は見覚えがある…というか冬弥と彰人だった。司の近くにいるとかなりの確率でエンカウントする二人なので必然的にそれなりに話したことがある、二人とも中々にいい音楽センスをしているので話していて楽しいものだ
もう一人の女の子は…完全に初対面だな
「こんにちは真尋先輩、こんなところで会うとは思いませんでした……真尋先輩がいるということはもしかして司先輩も来ているのですか?」
「ああ、こんにちは冬弥。残念ながら俺一人だよ、彰人も学校ぶりだな。それと、初めまして、入相真尋だ、よろしく頼む」
「え、えっと……初めまして、
「謙さんの笑い声が聞こえてきたから何かと思えば…まさか真尋センパイがいるとは思わなかったですよ。なんの話ししてたんですか?」
その質問はとても答えにくいのだが……よし、杏と謙さんにも黙ってもらっておこう。
『話さないでくださいね』という念を込めて目配せをする。杏と謙さんはコクリと頷いてくれた。
「「実は真尋(さん)の歌ってみたを聞いてたの」」
「あんたら親子は俺を怒らせたいのか!?」
思わず台パンしながら立ち上がる、視覚の端っこで小豆沢さんがビクッとなっていて申し訳なかったが正直それどころでは無い。カップが少し浮いたがコーヒー半分ほど飲んでいたおかげでこぼれることはなかった
「真尋さんがあんな瞳で訴えてくるから『ぜひ俺の事を宣伝してくれ!』って思ってるのかと思っちゃったよ」
「なんにも伝わってなかったな、おっかしいなぁ俺さっき言いふらさないでって言ったばっかだよな?」
「杏には言っていたが俺には言ってなかっただろう」
うるせ、子供かあんたは
はぁ、最近…主に瑞希にバレた辺りから周りに気付かれやすくなっているんだろうか?もう少し注意すべきか…
「歌ってみた…真尋先輩も音楽に詳しかったですけど動画もアップしていたんですか?」
「……これだ、俺のアカウント」
「へぇー、センパイ動画出してんですね。俺にも見せて…『Soma』って、マジですかセンパイ!?」
「お前も杏と同じリアクションだな…それと、俺が言うのもなんだがいきなり大きな声出すから小豆沢さんがびっくりしてるぞ」
「あ、いえ、大丈夫です。あの、入相…先輩?は杏ちゃんとお知り合いなんですか?」
「高校受験が終わったくらいにここのコーヒーに出会ってな、それからは足繁く通わせてもらってるんだ。杏ともその時からの知り合いだ、それと呼び方は真尋で大丈夫だぞ」
「俺と彰人とは高校が同じなんだ、にしても真尋先輩があの『Soma』だとは思いませんでした。でも言われてみれば声質が同じですね。」
「そら本人だからな、あと絶対に、
仲良し親子に念押ししながら三人にもお願いしておく。
終わったことは仕方ないので頭を切り替える。
「そういえば謙さんを除いたこの4人はどういう集まりなんだ?」
「ああ、真尋が最後に来たのは結成前だったな。杏達は4人で『Vivid BAD SQUAD』というストリートユニットを組んでいるんだ」
「へぇ…もしかして謙さんの影響か?」
「どうやらそうらしい、全く。我が娘とその仲間ながら将来が楽しみだよ」
えらく嬉しそうに笑う謙さん、俺が来なかった4ヶ月間の間に色々とあったようだ。
「あ、そうだ!真尋さん、良かったら今から歌いませんか?」
と言いながらマイクを持ってこっちに来るのはほとんど強制してるようなもんだろ…いや、全然歌うけどさ、好きだし
「いいけどどんな曲歌うんだ?」
「えっと…あ!これとかどうです?」
♪━━━━、━━━━━━━……
「これって…」
「今度俺と冬弥で歌う曲じゃねぇか」
幸い知っている曲なので歌える、てかボカロ入ってるんだな。マイクを握ってステージに足を運ぶ。今のところお客さんが来る気配はないので迷惑にはならないだろう。
「一曲だけだぞ?………
♪━━━━、━━━━━━━、━━━━━
……
━━♪
っふぅ、どうだった……ん?」
練習無しだったんで不安だったが歌いきることが出来た、それはいいんだが彰人と冬弥がボーッとしてる。大丈夫か?
「すっげぇ…でも!」
「ああ、負けられないな、彰人」
…どうやら男の子のスイッチを押してしまったらしい。
この後は最終的に杏とこはね(本人に呼び捨てにしてくれと頼まれた)も交えて夕方まで歌いまくった。
最近いきなり暑くなってきて服装に困りますね。
謙さんのキャラよく分からないので愉快で真面目で楽しい大人になっちゃいました。うぇい
『Soma』は一体どれだけ人気なんでしょうね、作者も分かりません。
こはねちゃんってなんであんなに少女漫画みたいなんですかね?エリア会話とか最高ですよ。
エリア会話と言えば奏と一歌のエリア会話大好きです。皆さんはお気に入りのエリア会話とかありますかね?
続けれたら頑張ります。