才覚溢れる凡夫   作:神無明夜

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お久しぶりです。
あけましておめでとうございます。
丑年が終わったので寅年ですね。つまり虎柄ビキニです。
またのそのそ書き始めました。




Ragnarok of students(期末試験最終日)

 

紙に文字を書く音と時計の秒針、誰かが転がす鉛筆の音が無秩序に響く。

そのどれもが乱雑に聴こえるが妙に耳心地が良い。普段騒がしいはずの空間が嘘のように静まり返り、皆普段の気だるげで一律面倒くさそうな顔でなく十人十色、余裕で暇そうな顔や絶望した顔、少し不安そうな顔や全てを諦め悟りきったような顔等々……。

しかしその誰もがあの時計の分針が50を指すのを心待ちにしている、中には心の中で数えている人もいるだろう、ちなみに後1分47秒で50になる。

周りをキョロキョロと見すぎていても目をつけられそうなので自身の手元にのシャーペンをいじくる、使った覚えがないのに何故か汚れている付属の小さい消しゴムの黒い部分を指で擦って綺麗にしながら残り時間の経過を待つ。

 

いつものように『もしテロリストが現れたら(いつものルーティン)』を想像しながら最後に擦った時にできた消しカスを容赦なく床に叩き落としたらちょうどいいタイミングで終了の合図が来た。

 

 

「そこまで、筆記用具から手を離して。一番後ろから前に送ってきてくれ」

 

 

こうして俺たちは『期末試験最終日(Ragnarok of students)』という学生にとっての正念場を乗り越えた

 

 

────────

 

 

テストも午前中に終わり昼飯を外で食べる事にした、司と類を誘ったら2人とも一緒に来てくれるらしい。せっかくなので駅前の新しく出来たラーメン屋に行くことにした

 

 

「テストどうだった?」

 

「数学がな、裏面がさっぱりだった」

 

「司くんは応用問題があまり得意ではないようだね」

 

 

確かにそれもあるだろうが大方ショーのことを考えていたら没頭してしまってそこまで勉強時間が取れなかったんだろう。

 

 

「えぇい!そういう貴様らはどうだったんだ!!」

 

「僕はいつも通り問題ないよ」

 

「俺も数学はできるから余裕だった、英語は死んだけどな。ハッハッハッハッハ……」

 

 

英語許すまじ、単語は頑張れば覚えられるんだが文法は全く慣れなくて中学からずっと赤点と平均点の間をフワフワしてる。

いつかなにかの弾みで赤点のボーダーラインに突っ込んでいきそうで恐ろしい。

 

 

「テストが終わったのに勉強の話をするのは気が滅入ってしまうな…駅前のラーメンは何系なんだ?」

 

「なかなか理解っているラーメン屋だ」

 

「理解っているラーメン屋?」

 

 

実を言うとテスト期間にもかかわらず普通に2度ほど食べに行ったが……あそこはなかなか深いラーメン屋だった。

 

なんて言ってるうちに看板が見えてきた

 

 

「お、ここじゃん」

 

「早速入ってみるか!…そこそこ客がいるな」

 

「どうやら食券を先に買うタイプのようだね、イチオシは背脂マシマシ豚骨。若年層をターゲットにしてるお店かな?」

 

「こら、そういうことはお店の外で言いなさい」

 

「何より若者であるオレたちは店の目論見通り食べに来ている訳だしな、ハッハッハッハ!!」

 

 

雑談していると三人分の席が空いたらしいのでので各々食券を持って店員さんについて行く。

ちなみに類は醤油もやし抜き、司は豚骨麺硬め、俺は醤油豚骨薄め麺硬め小ライス、一瞬店員さんの眉がピクリと動いたが無理もない。恐らく今調理場は緊張が走っているだろう。「理解っている客が来た」と。

 

しばらくして三人分一気に来たので揃って食べる。

 

 

「「「いただきます」」」

 

まずスープ、空気を含みながら口の中で少量シェイクするように味わう、鼻から抜ける空気がまた食欲をそそる。

次に麺を少量すする、ここではあえてスープと絡ませすぎず麺本来の風味を楽しむ。

そして今度は麺を多めにそこから持ち上げ上澄みの背脂たちを巻き込みながら上下を返す『天地返し』を行い通常量をしっかりスープに絡めて啜る、多少の火傷は覚悟して啜るべし。

一旦水を挟み小休止、ここまででラーメンのスープと麺を味わう。

続いてもやしを沈める、じゅくじゅくにスープを染み込ませたもやしは噛めば噛むほどスープがシミ出てくる最高のサブポディションだ。こいつを噛み締めながら口に白米をほおりこむ。ホロホロと米がスープと混ざり合いもやしのじゃくじゃくという子気味良い歯ごたえと共に口の中が幸福感で満たされる。

分厚めのチャーシューは噛むほど味の深さに感嘆させられる、しかしこの分厚さと脂身で二枚は無理だろうと思ってしまうが気がつくと食べきってしまう。

海苔も沈め海苔ごと麺を掴み啜り上げる、もう一枚はスープに浸した後米に巻き食べる、これがまた美味い。

半分ほど食べたらここでニンニクを追加だ、これをするしないで大きく味に変化が出る。

そしてニンニクとトッピング、スープに麺を二度目の『天地返し』よく混ぜたら……啜る。

スープのみになったらそこに残りの白米を突っ込みおじやにする。蓮華でほぐしながら半分だけ齧っておいておいた半熟卵の黄身をスープで溶きよく混ぜ口に運ぶ。

 

そして注意点だがここまでをかなりスピーディに行わなければ最後のおじやがぬるくなってしまうのでできるだけ急ぐこと。

 

最後の〆に水を飲む。ラーメン後の口直しの水はラーメンの一部と言っても過言ではない、これを怠るのは間抜けがすることだ。

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「…………いや、なんだ今の!?」

 

「どうしたんだい司くん?君も早く食べきらないと麺が伸びてしまうよ」

 

「早くしろ司、ラーメンは待ってくれないぞ」

 

「オレがおかしいのか!?ラーメン食べる学生とは普通そんな感じなのか!?」

 

 

他の人がどうかは知らんが俺はラーメン大好き人間なのでこだわる方だ。

 

 

──────

 

 

 

「「「ごちそうさまでした〜」」」

 

「「「ありがとうございましたぁッ!!」」」

 

 

店員さんたちの気合いっぱいな挨拶を聴きながら帰路に着く。

どうやら司は思いのほか気に入ってくれたみたいでさっきから「美味かった!!美味かった!!」と興奮気味である。

 

あの後司は替え玉頼んでいた。『学生替え玉一回無料!!』を見つけてすぐに頼んでいた、なんだかんだ三人の中で一番食べてたような気がする。

 

 

「今まで食べた中では一番美味いラーメンだったかもしれんな!」

 

「そこまで気に入って貰えたなら誘ってよかった」

 

「僕もかなり美味しかったと思うよ。特に野菜を抜きにできるのが素晴らしい……っと確か真尋くんはこっち方面だったかな?」

 

「む、もうこんなところまで歩いていたのか。ではな真尋、また明日…は学校は休みだったな」

 

「だな、次会うのはテストの返却日じゃないか?」

 

「そうだね、じゃあまたね真尋くん」

 

「ではな!」

 

「おー」

 

 

二人と別れ、夜からの用事に向けての準備を頭の中で考えながら家まで一直線に帰った。

 

 

 

──────

 

 

 

〜入相家真尋の部屋〜

 

今日も残すところあと30分程度といった時刻に『ナイトコード』にログインする。

初めてニーゴさんと話してからかれこれ二ヶ月ほど経過しようとしていた。

 

Soma:『こんばんは』

 

K:『こんばんは、ボイチャ来れそうですか?』

 

Soma:『ちょっと待ってください』

 

《Somaさんがボイスチャットに参加しました》

 

「こんばんは」

 

「こんばんは、今日も早いね」

 

「先輩いらっしゃ〜い」

 

「まだ二人だけ?」

 

「雪はわかんないけど、えななんは今日学校だったから遅くなるんじゃないかな?」

 

「雪は予備校だって言ってたよ〜っと、できた!…うん、うん、だいたいこんな感じかな、K、先輩、ちょっとMV見てもらっていい?」

 

Amia:『Vrough07.mp4 』

 

 

〜少年少女鑑賞中〜

 

 

「いいんじゃないかな。今回の曲の雰囲気とマッチしてると思う」

 

「動画に関しては素人だから技術的なことはなんとも言えんが…ここのサビで盛り上がる瞬間のこの演出、かなり好きだぞ」

 

「よかった〜。あとは来てない二人にも見てもらって調整してでボクのは終わりそう」

 

「Amiaはほぼ完成度見ていいね。Somaの方はどうなってる?」

 

「声撮りはできてるからあとは意見欲しい感じ。貼るからちょっと待ってな」

 

Soma:『Library11.wav』

 

 

〜少年少女鑑賞中〜

 

 

「うん、声撮りも大丈夫。…やっぱり男声は女声とは違うね」

 

「そりゃね〜、特に先輩は高音あんまり得意じゃないでしょ?歌みたも低音アレンジ多めだし」

 

「ん〜、確かにあんまり好んでは歌わないけど歌えないことはないぞ?やっぱり低音の方が上手く歌えてる気がするけどな」

 

「あとは雪とえななんの意見聞いてからだね」

 

「二人が来るまで何かしとくことある?」

 

「俺は撮り直すつもりでいるけどそれも二人が来ないとだからな」

 

「「「……」」」

 

「もしかして暇な感じ?」

 

「多分?わたしも他の作業はかなりキリがいいから今から始めるのも微妙かな。それに二人がもう少しで来るなら待って意見聞いてから作業に取り掛かった方がいいと思うし」

 

「なんかするか?」

 

「ん〜…あ、そういえば先輩、試験どうだった?」

 

「普通だぞ、良もあったし不可もあった。不可って言っても赤点はとってないと思うからな?」

 

「そういえば雪も定期試験があるって言ってた気がする」

 

「試験終わって直で予備校…ボクにはやっぱり無理だな〜」

 

「Amiaはちゃんと受けたんだろうな?」

 

「先生に捕まって一人寂しく別室で受けてたよ」

 

「どうだったの?」

 

「赤はない…と思う」

 

「英語以外なら教えてやるぞ」

 

「えぇ〜、めんどくさーい」

 

「いつか痛い目見ろコンチキショー」

 

「ふふっ」

 

「おっ、先輩聞いた?今のKの微笑み。これ聞けただけでも今日試験受けてよかったーってなるよね」

 

「Kが神格化され過ぎだろ」

 

「初めて会った時から思ってたけど二人は本当に仲がいいね」

 

「適度にツッコミやすいボケを入れてくるからそう見えるんだろうな」

 

「え、全部本心だよ?」

 

「だとしたら幾つか話し合わないといけないやつがあるんだが?」

 

「…やっぱり仲良いね」

 

 

《えななんさんがボイスチャットに参加しました》

 

 

「おつかれ〜」

 

「おつー、夜間も今日試験あったの?」

 

「そう、聞いてよ!最後の二教科が英語と数学だったの!普通英国数理社は副教科と組ませるもんでしょ!?それに今回範囲が広めの英語と数学を同じ日にやるなんて、ほんと信じらんない!」

 

「おぉ…えななんの『ほんと信じらんない!』久々に聞いたかも」

 

「恒例になるほど言ってないから!」

 

 

《雪さんがボイスチャットに参加しました》

 

 

「お待たせしちゃってごめんなさい」

 

「お疲れ様、雪。来てもらって早速で悪いけどAmiaのMVとSomaの声撮りのチェックお願いしていい?えななんもお願い」

 

「おっけー」

「うん、もちろん」

━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後は少し声を撮り直したりKの作業の手伝いをしたりしながら順調に作業を進めて行った。

 




特に何か用事があった訳では無いですけど期間開きました。(許して)

ラーメンのやつは自分が普段からやるやつです。天地は二度返します。おじやは体に悪いんであんまりしないですけどね。

ナイトコードでの通話ってどう頑張っても台本形式はになるんですけど3日悩んで諦めました。

続けれたら頑張ります。

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