今作の『ガンダム・ビルドライジング』は最近まで書いていた作品の再執筆となっております。
キャラクターの性格等に差異があるので、御注意ください。
※体格とケンさんのやり取り、慶の学生部分に修正を加えました
皆さんは『GBN』と言う、今現在世界中が熱狂している、1つの
えっ、知らない?
そうか━━━━━ならば教えよう。
GBN…正式名称を『ガンダムバトルネクサスオンライン』。電脳空間に出来たガンダム作品の仮想世界を舞台に、自分の分身となるアバターこと『ダイバー』となって、色々な事を楽しめる。
…難しそう?御安心を。
必要な物は『ガンプラ』と呼ばれるガンダム作品の模型と、自分の分身『ダイバー』のデータがインプットされた『ダイバーギア』…これだけだ。
GBNには無限の可能性がある。私はGBNを初めた事で、沢山のダイバー達と繋がり、かけがえのない仲間と出逢う事が出来た。
何より此の世界は『なりたい自分』になれる。
………始めてみたい、か。
私は其の言葉を待っていた。
自らの手を伸ばして、自分自身の可能性を掴み取り、なりたい自分を目指せ。
さぁ、行こう!!!
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『まだ見ぬ君を見つけよう。GBN』
「━━━━━━━相変わらず、PRが凝ってるなぁ」
東京都内某所に在る某大学、其の屋上にあるベンチに座る青年は、スマフォの『GBN』公告を視聴し終え、思った事を口にする。
青年の名は『
特技は『手先が器用』な事。
そして━━━━━━━極一部の人間しか知らない、産まれ持った『異能』が1つ。其れ以外は何の変哲も無い、至って真面目な性格の、健全な日本男児である。
「俺にも出来るかな……GBN………」
自分の掌を五月晴れの空へと翳し、手を閉じる。
此の手で。自分の可能性を、未来を、掴み取れる世界。
やってみたい…自分が何処まで行けるのか。
確かめてみたい…自分の可能性の光の果てを。
「慶、空に手を翳じてどしだべさ?」
ベンチの後ろから声がして、青年は顔を上げる。其処には腕や胸の筋肉を魅せるような服装の、身長200cmは越えている日焼けした小麦肌の男子が居た。
「あ、カンタ。今ちょっと考え事してた」
彼は『
慶にとって順太郎は、数少ない友人の1人であり。
同時に、自分の持つ異能の理解者でもある。
「ん?慶、其ればGBNの公告だべな?」
「うん。俺もGBN、やってみようかなって」
慶の観ていた映像に気付いた順太郎が問い掛け、青年はGBNを始めてみる旨を話した。すると順太郎の表情は、燦々と降り注ぐ太陽の輝きのように明るく、晴れ渡った物に変わる。
「おおおおお!遂に慶もGBNデビューだべか!だっだら話は早かと!おらの知り合いざ、ガンプラ作りが上手い人知ってるだよ!」
「ちょっちょっちょっ、近い近い!?分かったから!分かったから、取り敢えず落ち着いてくれ!?」
シイタケ眼でズイズイ迫り来る順太郎に、気圧され気味に顔を反らした慶。
「どにがぐ!今から一緒に行くべよ!善は急げだべ!!」
「え!?今から!?」
「今からっ!さぁ行くべさ!」
順太郎に腕を引っ張られながら、慶は階段を駆け降りて、大学の外に飛び出した。バスに乗り、電車に乗り、2人は都内でも有数のGBNの機材と、ガンプラの品揃えを誇る施設である『ガンダムベース東京』へと向かう━━━━━
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午後2時………ガンダムベース東京内・会計スペース。
「ケンざん!ケンざん!来ただぁよ!」
「おぉ、順太郎君じゃないか!今日もGBN、プレイしに来たのかい?」
慶を若干引き摺り気味に連れつつ、順太郎がドタバタと店内に入るや、元気溢れる大声で誰かを呼んでいる。其の数十秒後、彼の声に反応して此方にやって来たのは、ガンダムベースのエプロンを着けた、少し恰幅の良い細目の男性だった。
「おや?其処には居るのは、順太郎君の知り合いかな?」
「んだ!おらの親友、朱鳥 慶っで言うんだよ!」
順太郎に背中を押され、慶は少し緊張しながらも、背筋を真っ直ぐ伸ばし、男性に挨拶を行った。
「は、初めまして!順太郎の親友の朱鳥 慶と申します!よろしくお願い致します!」
腰を90度まで曲げる直角の御辞儀、自身の存在をハッキリと述べる姿。此の一連の行動が、男性…『マツムラ・ケン』の印象を良いものとした。
「慶君だね。僕はマツムラ・ケン、此のガンダムベース東京の店長だ。よろしくね」
「はい!此方こそ、よろしくお願いします!」
ケンの差し出した右手を優しく掴み、握手を交わした慶。
「ケンざん。慶は今日から、GBNを始めるんだ。其れで慶のガンプラ作りのレクチャー、お願いじだいだよ」
「ほほぅ!つまり慶君はガンプラ製作とGBN、両方ともデビューする事になるんだね!よーし、僕もガンプラマイスターとして力を貸そう!」
ドン!と胸を叩き、ケンは自信満々に力強く言ったのだった。
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「慶ばGBNデビューを、どんなガンプラにするんだか?」
ケンさんがガンプラ製作の為の道具を準備する間、順太郎は慶のガンプラ選びに協力していた。
「うーん…特に決めてないかな。取り敢えず、目に止まったガンプラにしようかな…って」
「いやいやいやいや!?そげじゃ、駄目だべ!GBNを、ガンプラ製作を始めるなら、まさに『コレだ!』っでヤツにしなくちゃアカンでべよ!!!」
「近い近い近い!?分かったから、ちゃんと選ぶから!?」
グイグイと迫る順太郎に、またしても押され気味になる慶。と、彼の耳に『声』が聞こえてきたのである。
━━━━私を見つけて
「順太郎、しー………」
「……!」
唇に指を起き、耳を澄ませる仕草。順太郎は知っている━━━此の仕草は、朱鳥 慶が自分が産まれ持った力…『人が創った物の声』を感じ取った時に、其の声を聞く為の行動。
無論、上条 順太郎には此の能力は無く、朱鳥 慶は其の異能故に孤独であった。対極の性格の2人が紆余曲折を経て友となり、今の関係に至ったのか。
其れはまた、別の機会に語ることとしよう。
閑話休題。
常人には聞こえない其の声に耳を傾けながら、慶の歩みは始まって。其の足は『機動戦士ガンダムAGE』の商品棚の前で止まり、彼は1つの箱に手を伸ばした。
「順太郎。俺、この子にする。この子と一緒に、GBNを始めるよ」
慶が手にしたのは『ガンダムAGE-1 ノーマル』。此のガンプラはGBN初心者ダイバーにオススメの『エールストライクガンダム』・『RX-78-2 ガンダム』・『ガンダムエクシア』と並ぶ『四大ガンプラ』の1つと知られ、取っ掛かりの無い『オールラウンダーな機体性能』と『組み立て易さ』が特徴となっている。
「AGE-1 ノーマル…うん!良いチョイスだ、慶!早速組むべ!」
ガンプラが入った箱をレジに持っていき、会計を済ませ終えた慶は、順太郎に連れられながら、ケンが確保・用意した作業スペースのテーブルと椅子に座る。
「慶君。ガンプラを製作する時には、説明書を良く読んで、パーツがごちゃごちゃにならないように、1つ1つ丁寧に組み立てる事が大事になる」
「はい。分かりました」
ガンプラマイスターの称号を持つケンから教わり、慶は人生で初めてのガンプラの製作を始めた。
「ニッパーは力を入れ過ぎない事と、ランナーからパーツを切る際は余裕を以て、二度切りする事が大事になる。パーツが白化してしまうと直すのに苦労するし、白以外の色付きの物、クリアパーツなら、尚更気を引き締めて行うと良いよ」
「成程………」
「シールを貼る時は、可能なら1回で済ませられるようにしよう。何回も張り直しをすると、粘着力が落ちたりシワが寄ったりして、見た目にも影響する」
「1度で…決める……」
「慶、其のパーツと此方のパーツは間違いやすいから、手の届く範囲で分けた方が良いべ」
「間違いやすいパーツもある…注意しないとか……」
ケンの指導、順太郎のアドバイスを貰いながら、青年は1つずつパーツを切り出し、鑢でランナー痕を平らに調え、説明書を何度も見返しながらパーツを組み立て、ピンセットでシールを慎重に貼り付ける。
組み立て開始から1時間30分…最後にパーツに細かなスミ入れを施し。
「………出来た!完成だ!」
100年に渡る長き戦いの始まり。アスノ家の歴史の原点を元に『フリット・アスノ』が作り上げた『ガンダムAGE-1 ノーマル』……其のガンプラが、慶の手により組み立てられ、命が吹き込まれた瞬間だった。
「出来たべな、慶!コレは正に、慶だけのガンプラだべよ!」
「順太郎君の言うとおり、此のガンプラは慶君だけのガンプラ。君の作り出した最初のガンプラになったんだ」
「俺だけの…ガンプラ…」
白い救世主を見つめ、自分の手に取る慶。小さなプラスチックの模型である其れは、手の上でズッシリと重くなったような気がした。
「さぁて!自分のガンプラが出来上がったら、次に必要なのはダイバーギアの登録だよ!」
ケンはウキウキとした様子で、ダイバーギアに必要な情報を記入する紙と筆記具を手渡してくる。青年は順太郎に教わりながら、必須項目に記入してケンさんに提出。
受け取った彼が、其のデータを元にGBNへの登録とダイバーギアへのインストールを行い、5分後には慶のダイバーギアが完成したのだ。
「これがダイバーギア…」
「GBNをプレイする時、ダイバーギアは絶対に必要になるから、忘れないようにする事。さぁ、いよいよだ!」
ケンさんに案内され、2人がやって来たのはGBNの機材が並ぶ一室。機器ごとに区切られた個室のような空間が合計で10あり、現在は3つが稼働しているようだ。
「VR型のゴーグルを掛けた後、ダイバーギアをセットして、自分のガンプラを置くんだ。そうすれば機械が自動的にスキャンを行って、GBNにログイン出来るよ。
2人とも楽しんできてね~!」
そう言い残し、ケンさんは自分の仕事に戻っていった。
慶と順太郎は小さく頷いて、ゴーグルが視界を覆うように掛け、ダイバーギアと自分のガンプラをセットする。
すると機械が稼働し、緑の光が自分のガンプラを、上下から二重スキャンを行った次の瞬間、2人の耳に響く音声と共に、意識がデータとして吸い込まれる感覚を味わう事となった。
『Welcome to GBN!!』
此れは後に、GBNに新しい風を巻き起こす事となるフォースを作り上げる、1人のダイバーの物語。
ダイバーネーム『ケイ』の始まりの物語である。
此処から始まる、彼の物語
人物紹介
ガンダム作品は一通り観ており、其れなりの知識はあるものの、オタクの知識量には敵わない。ガンプラ製作は初めてだったが、持ち前の手先の器用さと真面目な性格で、教えられた事を吸収していく。
GBNへの参加は公告の視聴による興味と、親友の順太郎による後押しが切欠。
また、物心付いた頃から『人が創った物の声を聞ける』特殊な感覚を有しているが、其れを知るのは順太郎を含め、指で数えられる程度しかいない。
物静かな慶とは対照的に、押せ押せイケイケの元気っ子。ダイバー歴は1年。GBNを始める事にした慶を、先輩ダイバーとしてサポートしていく。