GBN最高峰の狙撃手
新しい出逢い
そんな内容の第10話です
「「千里から撃ち抜く狙撃手?」」
ヒノワの聞いた噂に、ケイとカンタは殆ど同時に声を上げる。通常のビームスナイパーライフルの持つ、平均射程距離は1500~2000kmが一般的であり、強化ユニットやアタッチメントを付けても、せいぜい3000kmが限界だ。
其の狙撃手が駆るガンプラのスナイパーライフル、其の射程距離は約2倍の4000kmとなる。
そして標的を寸分狂わず撃ち抜くのだとすれば、一度会ってみて、其の技術を此の目で見てみたいものだ。
「GBNにば、オラだづの会っだごとのない、すんげぇダイバーがまだまだ居るんべな~…」
「だね、カンタ。俺、其のダイバーさんに会ってみたい。あと、高望みになるかも知れないけど、フォースメンバーに誘えないかどうか、相談してみたい」
千里先の景色も見渡せる視力の良さに、狙撃手としての技量も踏まえれば、フォースの戦力は飛躍的に高まる事に間違いはない。
ただ一点━━━━『彼女が現在、何処に居るか分からない』事を除いては。
「ケイ、取り敢えずチュートリアルバトルの達成報告じに、セントラル・ディメンションへ帰ろうべ」
「そうだね。どんな機体を使っているのかも分からないし、態勢整えてからでも良いか。ヒノワも俺達と一緒に来る?」
「うん!」
力強く頷いたヒノワは、フルリビルドのマニピュレーターに乗っかった。どうやらコックピットのような狭い空間ではなく、外の景色が見たいらしい。
落とさないようにしなくてはと、ケイはセントラル・ディメンションへ帰還する間、細心の注意を払ってヒノワを送り届ける。
焔のように熱く、暖かな赤い髪が風に揺れる青年は、空と大地の境界線の先を、純心に透き通った見つめながら、手を伸ばしていたのだった………
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「わぁぁ………!」
あれから特に襲撃等を受ける事無く、無事にセントラル・ディメンションのメインロビーに帰還したケイ達。様々な容姿のダイバー達が集まる此の場所を、ヒノワは瞳を輝かせながら、興味津々の様子で小走りしている。
「ケイ!カンタ!沢山、人が居る!皆違ってる!凄い!凄い!」
「ヒノワ~。あんばし、はしゃいじゃ危ないっべ」
「随分な腕白っ子だな…。まぁ、元気なのは良いことなんだけどね」
彼を見守りながらも、直ぐに駆け付けられる位置取りで歩くケイとカンタ。
「ケイ!カンタ!早く、早わぁ!?」
と、後ろ歩きをしていたヒノワが振り向き様に誰かと接触、思い切り尻餅を付く。
「あ、あの人は…!」
「あらあら!貴方、大丈夫?怪我はない?」
ヒノワに手を差し伸べ、立ち上がらせてくれたダイバーを、青年達は知っている。GBNでも指折りの情報通にして、トップクラスのハイランカー。フォース『アダムの林檎』を率いるオネエさん事、マギーだった。
「あ、ありがとう…。ぶつかって…ゴメンなさい」
「良いの良いの。元気があるのは素敵な事、大事にしてね♪」
ショボンとしているヒノワを、マギーは優しく元気付ける。
「マギーさん、久しぶりべよ~!」
「お久し振りです」
「あら~!ケイ君にカンタちゃんじゃない!ひっさしぶりー!」
両手を合わせ、乙女のように腰をくねらせた後、2人と握手を交わし合う。
「というか、カンタはマギーさんと知り合いだったの?」
「んだ。オラが初めだてん頃ば、マギーざんに一杯助けられたべよ」
「そんな貴方も今では『Bランク』…お姉さん、嬉しくて涙が出ちゃう」
マギーはホロリと瞳に涙を溢して、GBNに参戦したばかりの嘗てのカンタを思い浮かべている。ケイはマギーの前に出て、ヒノワの事を紹介した。
「マギーさん。此の子はヒノワって言って、チュートリアル・ディメンションの隣の砂漠地帯で救難信号を発信していた所を保護しました」
「オレ、ヒノワ。マギー、えっと…ヨロシク?……です!」
「えぇ。よろしくね、ヒノワちゃん♪」
バチコーン!と効果音が響く強烈なウインクに、ケイはまだ馴れない為か、若干引き気味の引き吊った表情に。そんなケイの横で、カンタはマギーにヒノワの特徴を説明する。
「マギーざん、ヒノワには『記憶』が無いだ。自分が何処から来たがも分がらんまま、あぢごぢ彷徨ってだんだよ。……もしがじで、ヒノワは……」
「おそらく…ね。ケイ君、ヒノワちゃんを『此の場所』へ連れて行ってあげて」
マギーがコンソールを操作し、GBN内の詳細を記した『ガイドライン』と『マップ』を、ケイのプレゼントボックスに送信する。
其処にはセントラル・ディメンション内に存在する『ある施設の所在地』が記されていたのだった………。
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セントラル・ディメンションには『ELバースセンター』と呼ばれる、GBN公認施設が在る。
約2年半前、此の世界で起こった『大きな戦い』の後、広大なディメンションの彼方此方で生まれるようになったという、電子生命体━━━━通称『
「マップだと、此所が其の施設みたいだな」
「オラも初めで来ただ」
「何だろう…?変な、場所…。でも、何か…安心する…」
マップと現物を照らし合わせるケイとカンタ、2人の隣では指に赤い髪を絡め、施設を見上げるヒノワが入口前に立つ。ケイが呼び出し用のチャイムを鳴らし、暫くして扉が開き、中から白い髪と黒縁の眼鏡を掛けたエルフの見た目をしたダイバーと、彼に抱えられた紫色のハロが出てきた。
「こんにちわ、ELバースセンターへようこそ」
「あ、こんにち『貴方ば!?ビルドダイバーズのコーイチざんだべが!?』
彼に挨拶しようとしたケイだったが、突如興奮に振るえるカンタによって、ずずいっと横に押しやられてしまった。
「え?う、うん…そうだけ、ど?」
後頭部に巨大な汗が浮かぶ様な、何処か押され気味なコーイチ。そんな彼に対し、カンタはアイテムボックスから白紙の色紙と油性ペンを取り出しながら、こう言ったのだ。
『わあああああ………!本物だ!本物だべ!オラ、カンタっで言いまずだよ!ザインくだざい!』
「わ、分かったから!落ち着いて…ね?」
圧に押されつつも、コーイチは色紙を受け取り、少し緊張しながら筆を進め。自分の名前とビルドダイバーズのロゴが入ったサインを書き上げ、カンタに渡す。
「や、や……!ゃっだぁあああああ!!!!ごーいじじゃんのザインゲッドだあああああ!!!ヴぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」
ナイアガラの滝に掛かる虹を、感無量の大号泣による涙で作りながら、サイン入り色紙を高く高く掲げるカンタ。
「おい、コーイチ。コイツ、おめぇのファンか何かか…?」
「分からない…でも、サインで其処まで喜んでくれる人は、初めて見た…かな?」
紫色のハロこと『アンシュ』がコーイチと共に、カンタの豹変ぷりに乾いた声を溢した。そしてケイが、此処に来た本来の目的を2人に切り出す。
「あの!俺、ケイって言います!此方にいるヒノワという子なんですが、マギーさんに相談した所、此処に行くようにと指示を貰いました!」
赤髪青年の背中を押して、ケイは2人の前に出す。
「マギーさんが?……分かった。アンシュ、お願い」
「任せとけ」
アンシュの目から特殊な光が照射され、ヒノワの身体をスキャンしていく。そして数分後、彼等はヒノワの正体を知る。
「ケイ君と、カンタ君。君達が保護したヒノワ君は、どうやら『ELダイバー』みたいだ」
GBNをプレイするダイバー達の、ガンプラに掛けた想いを受けて産まれた電子の生命体、ELダイバー。ヒノワは自分や他多くの人々によって産まれ落ちた、見方を変えれば、自分達の子供のような存在だった。
「サルベージが出来てねぇELダイバーが、此の世界で死ぬ事は、そのままデータ共々消える意味を持っている。俺達はそうならねぇように新しいELダイバー達の保護と、現実世界での生活を行える素体製作、そして後見人の捜索を行っている」
「其れと一時的に、ヒノワ君の身元を此方で預かる事も出来るよ。2人とも、其れで良いかい?」
ケイの頭に過る思考……其れはヒノワと共に行動している最中にDDツール使いとの戦闘となり、敵の攻撃を食らって機体スペックが低下した状態となった時。
緊急帰還も不可能な状態で、彼を巻き込んでしまった場合は、先ず今の自分の力で守りきれる自信はない。
だが、俺やカンタの意見だけで決めることは出来ない。生き物は生きている。意思を持ち、考え、そして行動する。ならば、自分に出来る事は1つだけ━━━━ヒノワの想いを尊重し、彼の望みを叶えてやる事だ。
「ヒノワは、どうしたい?」
「俺……どうする、か………」
「ケイはヒノワの想いを尊重するだ。だがらヒノワも、自分の思った事を言っで良いんだよ」
「俺は……ケイやカンタと、一緒に居たい……」
「だけど」と、ヒノワは2人にこう言った。
「俺……今、弱い。今のままじゃ、2人に迷惑かかる……。だがら、俺、此の世界の事、学ばなきゃいけない……!コーイチ達の所で、一杯学んで、強くなる…!」
自分の意思で進む道を決めたヒノワに、ケイとカンタも力強く頷く。こうしてケイ達は、一時的にヒノワをコーイチ達に保護して貰うと共に、彼のサルベージが出来た時に会わせて対面する約束をし、此の日はログアウトしたのだった……。
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「千里の狙撃手…ですか?確かに最近、MS斬りの悪魔と同じく、よく聞くようになりましたね」
翌日━━━━ガンプラの箱でのバイト中、慶は明人の手伝いをする最中、GBNの何処かに居るという『千里の狙撃手』の事を聞いた所、彼からこう返答された。
「そんなに有名なのか…」と、言葉を漏らす慶に「えぇ」と明人は頷きつつも、補足を加える。
「MS斬りの悪魔はジャパン・ディメンションを中心に活動し、逢魔時に決まって大橋に現れると、噂を聞いたダイバー達を刀一本で無双し、切り捨てて行くんです。
でも、千里の狙撃手の場合は、予めGBN内の時間や場所を宣言して、自分を探しに現れたダイバー達を試すような狙撃を行います」
明人の説明、其れを聞いた青年の頭に思い浮かんだ事。何故其の狙撃手は、そんな事をするんだろうか?である。MS斬りの悪魔は、己が力を証明するために刀を振るい、立ち塞がる敵を一刀の下に沈め、電子の世界に名を轟かせた。
対する千里の狙撃手は、自分のセンスや才能に絶対の自信を持っており、万が一にも自分の狙撃を回避した者を、共に戦うに値する存在として、手を結ぶつもりなのだろうか?
「後、これは兄さんから聞いた話なんですけど……千里の狙撃手さんは、仲間を求めている『らしい』んです。其れも………自分が力を奮うに相応しいダイバーを、自らの目で選定しているのだとか………」
「選定している……か」
確かに己の技術に自信が有り、其の実力を遺憾無く発揮出来る環境は、モチベーション維持に必要不可欠なのだろう。
「あ……実は以前、其のダイバーさんが参戦したという『大規模なGBN射的大会』が有って。キョウヤさんも其れに参加しました。其の大会で数多のダイバーを押さえて『総合優勝』を果たしたのが、千里の狙撃手なんです」
明人の話に「え、そうなの?!」と慶が驚きに満ちた声で、少年の顔を見ると、彼はコクリと無言で頷く。大会という舞台に加え、そして現GBNチャンピオンと戦い、総合優勝を勝ち取った実力者。
そんな強者と、是非とも会ってみたい……。慶の想いはますます強くなる。
「明人君。俺、千里の狙撃手に会いたい。もし叶うなら、其のダイバーに俺達のフォースに入って貰えないか、スカウトしてみようと思っている」
「確かに……!大会でチャンピオンに勝った事実は大きいですし、もしフォースに加入してくれたなら、心強い援護が期待出来ます!」
明人も、其のダイバーをフォースに迎え入れる事に、賛同してくれた。慶は順太郎も誘いつつ、次の休みの時に告知が出たならば、探しに行く事を決意する……。
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2日後、GBNセントラル・ディメンション、メインロビー。
「ケイさん、カンタさん!」
「お、アキト君。来てくれたんだね」
「やっほーだべ~!」
インキュバス風のダイバールックをしたアキトと、一昔前のヤンキー番長の見た目なカンタ、そして現代の若者風の服装に着飾ったケイが揃う。
「GBNの告知に、千里の狙撃手からのメッセージが有る筈です。其のダイバーは必ず其処で待ってますので、作戦を立てて向かいましょう」
「そうだね。相手が狙撃タイプの機体だと考えるなら、身を隠せる場所を探して、其処を叩いて炙り出す感じが良いかな?」
「オラのガンオージャの遠隔武装を展開じで、そいづを囮にずる作戦も良いがもじんねぇなぁ」
千里の狙撃手からの告知を待ちつつ、戦略を組み立てる為に話し合いを行う3人。と、緊急告知機能をオンにしているアキトのコンソールに、メッセージが届く。
「あ!ケイさん、カンタさん!千里の狙撃手の告知が来ましたよ!場所は……スノーランド・ディメンションの山岳エリアに居るみたいです!」
「雪原かぁ~…寒い所ば、あんまじ好ぎじゃねんだ」
「よーし…!千里の狙撃手を探しにいこう!」
『おー!』と拳を高く掲げ、気合いを入れた3人。と、彼等の後ろで「アンタ等も千里の狙撃手探しか?」という声が聞こえ、ケイが振り向くと4名の男女がおり、皆緑色の軍服に袖を通している。
其の胸に掲げられた『白いフェレットの軍団章』を見た時、カンタとアキトは彼等が何処の所属かを悟った。
「えっと、貴殿方は?」
ケイが問うと、額に星のタトゥーを刻んだ縮れ毛ブロンドヘアの男性が、フワッと髪を掻き上げて言う。
「俺達は『ヘンリー小隊』っていう、第七機甲師団所属のダイバー達さ。これから千里の狙撃手からの告知が有った場所に赴き、其のダイバーをスカウトしに行く。
俺は隊長のヘンリー、右からプレーン、リサ、ノウブル。よろしく」
クッキーを噛る、アリーサ・ガンヘイルの恰幅を少し良くしたプレーンが、にこやかにケイ達へ手を振り。
眼鏡を掛け、如何にも学級委員の一員のように背筋を伸ばした女性ダイバーのリサが、3人に敬礼。
黒肌にサングラス、胸に珊瑚のネックレスを掛けたノウブルは、よっと指で挨拶を行った。
「俺はケイって言います。此方は親友のカンタとアキト、俺達も此れから千里の狙撃手をスカウトしに行きます」
「という事は、ライバルって訳だな。もし、我々のどちらかがスカウト出来ても、後腐れは無しで頼むぞ?」
「えぇ。健闘を祈ります」
千里の狙撃手スカウトの為、両陣営が動き始めた。果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか?
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スノーランド・ディメンション、雪原エリア周辺……
『彼等のガンプラ、皆独自性に溢れているね』
『ですね~♪ヘンリー隊長~』
『おいおいプレーン、クッキー食べてる状態でいきなり戦闘始まるって事もあんだぞ。そしたらどーすんだ』
『何言ってもむだですよ、ノウブル。彼女の頭はクッキーみたいにスカスカですから』
『リサちゃん酷くない!?』
グリーンにリペイントしたサザビーに乗るヘンリーを中心に、ブラックカラーのゲルググを駆るプレーンとリサ、パール色のケンプファーアメイジングがダイヤモンド陣形を作りつつ、雪原をホバーしながら、山岳地帯を目指して進んでいる。
『流石ば第七機甲師団だべ…。小隊長機を中心にじで、きぢっとじだブォーメージョンが取れでる……』
『ああゆう動き方は、フォース戦で役立ちそうです。スクリーンショットしておきましょう』
「皆、思い思いのガンプラを作ってるんだな……何れも優しい声がする」
一方、アキトのリューナイトはダイドラゴンに乗りつつ、前足にフルリビルドとガンオージャを牽引して、低空飛行で慎重に進む。ダイドラゴン自身の高い馬力が有ればこそ、ケイ達のガンプラのエネルギー消費を押さえ、狙撃に対して機動力で少しでも優位に立ち回れるようにするつもりのようだ。
と━━━━━━『其れ』は突然やって来た。
前方を先に進む、ヘンリー小隊の隊長機たるサザビーのビーム・ショット・ライフルと、リサのゲルググの胸部を黄金の一閃が貫き、同時に爆発する。
『え………』
『リサちゃん!』
リサとゲルググは呆気に取られたまま、電子の粒へと還り。プレーンはゲルググのシールドを構えて、ヘンリーを守るように前に出る。
『隊長!予備の武装━━━━』
刹那、再び黄金一閃の飛来。今度はゲルググのシールドごと、ヘッドショットを決めつつ、あまつさえケンプファーアメイジングの右肩から先を撃ち抜き、爆発四散に追い込んだ。
『プレーンッ!ノウブルぅ!』
倒れていく隊員の敵を討つため、ヘンリーのサザビーはケンプファーアメイジングが遺したコンテナから、スナイパーライフルを取り出し、特効を試みようとする。
『ヘンリーさん、駄目ですよ!!今飛び出したら!』
『だとしてもッ!例え、己がやられるとしても!仲間達の敵を討たねばならない!』
アキトの静止を振り切り、進もうとしたヘンリー。しかし、彼のサザビーの足に、フルリビルドの腕部複合武装ヨルムンガルトのワイヤークローが取り付き。直ぐ様、高圧電流が放出されて、緑の機体は呆気なく雪原に墜落した。
「カンタ!アキト君!相手は思った通りの狙撃タイプの機体だ!力量は相手が上、居場所が分からない限り、俺達に勝機は無い!」
『だども、どうずるだ!ビーム攻撃食らっだら、オラ達のガンプラでも耐えられない━━━━』
其の時、アキトのリューナイトが捉えたのは、遠方から黄金色の光が煌き。カンタかケイ、2人の内のどちらかを狙っている。
四の五の言っている場合ではなかった。
リューナイトが、ダイドラゴンが。天へと高く昇り、其の身を変形させていく。
ダイドラゴンの胸部が開き、前足が降り畳まれて強靭な両足へと変わり。
尻尾は割れて手腕と転じ、後ろ足は両肩を守る装甲に。開かれた尾元は、SDガンダムが余裕で収まる空間が生まれる。
頭部は首元が折れて背中に付き、胴体は180度回転。巨大な砲筒が左肩に、六角形のバックパックが右肩に収まった。
剣を盾に納め、リューナイトは盾を背中に合体し、腕と足をくっ付け、ダイドラゴンの開かれた空間へと吸い込まれてドッキング。頭部の甲冑が前に出て、口元をマスクが覆い、其処から白い蒸気を吐き出した巨大なる機神は、2人を守らんと迫る光の前に躍り出た。
アキトは高らかに、其の名を叫ぶ。其れこそが、リューナイトとダイドラゴンの真なる姿、そして自分のガンプラなのだと宣言するのだ。
ガードに入った瞬間。ビームが飛来し、ダイガンダムへ着弾━━━━交錯させた両腕で、3機を屠ったビームを真正面から受けるダイガンダム。其の際に飛散する無数のビームが雪原の白を焦がし、数多の焦げた線をなぞった。
「ッ……!アキト君!大丈夫か!」
『な、何だべ此のカッヂョエエロボットば!?』
焦げた臭いが漂う中、ダイガンダムが腕を奮う。腕部装甲は煤こそ被ったが、殆ど無傷で済んでいた。
『僕は大丈夫です…!其れよりも、皆さんは!?』
「俺達は平気!アキト君が守ってくれたお陰で、何とか助かった」
『オラも、ヘンリーさんのサザビーも無事だよ!』
喜びも束の間、次弾がダイガンダムを直撃。腕部の被弾箇所を、寸分狂わずピンポイントで撃ち抜き、其の巨体を後ろへと押しやって行く。
『ぐうううううう……………!』
『アギド君!』
このままでは、ヘンリー小隊と同じ末路を辿る事は間違いない。
(どうする…!どうすれば、狙撃手の位置を把握出来る……!?考えろ、兎に角考えろ!!)
ケイは必死に思考を巡らせる。其の間にも、ビームはダイガンダムに直撃し拡散、辺りを熱で赤黒く染めていく。まるで迫り来るタイムリミットを告げるように、ジリジリと焼ける『音』がする。
(音…?━━━━━━!そうか、其の手が在った!)
一瞬の閃きが思考のパズルを形作り、勝利の道を導き出す。
「カンタ!アキト君!今から俺の話すことを良く聞いて!」
ケイが立てた作戦。其れは━━━━━ダイガンダムがタンクとなって、遠方より飛来する超距離狙撃ビームを、合体によって完成された強力無類の装甲で耐えつつ、全速力で前進し。
其の間に、展開したガンオージャのFDCバインダーに飛散したビームがぶつかり合う中で生まれた反響音を用い、ケイが『声』を拾う事。
フルリビルドとガンオージャ、そしてダイガンダム。彼等に当て嵌まらぬ、聴いた事の無い『声』。
『ケイさん……!あまり、長くは……持ちません!』
『ケイッッ!見づがっただか!?』
仲間達の声が、スピーカー越しにギリギリだと報せてくる。だからこそ焦ってはいけない。ダイガンダムの装甲と耐久力はDDツール使いとの戦いで、確りと見届けた。まだ、ダイガンダムは『数発』ならば耐えられる。
遠距離から相手の装甲を抜き、敵機を破壊する為の高威力・貫通力を両立したのがスナイパーライフルであり、卓越した狙撃手は全ての攻撃に『一撃必殺』が要求される物━━━しかし、現在数発撃たれているにも関わらず、ダイガンダムの腕部装甲表面が熱で剥離しているのみで、未だに仕留めるには至らず。
前へ、前へと突き進み続け、そして遂に。ケイの他者には無い異能が、此の場に居る3機とは別の『ガンプラの声』を感じ取った。
「アキト君!カンタ!千里の狙撃手は『北東3100㎞先の山岳森林地帯』から俺達を狙い撃っている!」
其の言葉を待っていたとばかりに、アキトはコンソールを操作して、ダイガンダムの必殺技たるドラゴンランチャーの発射態勢を整え。
ケイはフルリビルドのトライホルダーフレームから、緑に輝くビームマントを解き放ちつつ、サイドアーマーのエクセントブースターに収めたビームサーベルのエネルギーを推進力に回して突撃。
カンタとガンオージャは残されたFDCバインダーを全て、ダイガンダムの前方に展開し、ランチャー発射までの隙を取らせんと援護する。
しかし━━━━━
「ん?皆、ちょっと待って!」
異変に気付いたケイが、カンタとアキトに静止を促した。見ると、無線通信に感が有り。其の内容というのが━━━━━
『先程の狙撃に対する御詫びと、殿方達との談話を致したく存じます』
━━━━━との事だった。
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「先程は殿方達に対する無礼、深く御詫び申し上げます」
『ガンダム Gのレコンギスタ』で登場した『G-アルケイン』をベースとしつつ、頭部に『ガンダムデュナメス』のセンサーユニットを追加。
背面の変形用パーツは『ポータントフライヤー』を、ガデッサのコアファイター風に合体し、メインカラーをオレンジからメタリックブルーに変更しているようだ。
腰部のサイドアーマーに『エネルギーポッド』を装備し、右手には『システムウェポンキット 004』の『ロングレンジライフル』を改造したと思われる武装を握りながら、機体はゆっくりと着陸。
コックピットから銀髪ツインテールに紅玉色の色彩を宿す瞳、黒のゴスロリドレスと靴を身に付けた、如何にも高貴な御嬢様が降りてきた。少女はドレスの裾を摘まみながら淑やかに、そして優美に3人の前で御辞儀をする。
身長は150~155cm程、年齢は以前会ったフォルテと同じくらい。そして彼女の胸には、高級マスクメロンのように、たわわと実った綺麗な形をしている双丘が、重力に従った結果、3人の前に現れる。目算してもDは余裕で有りそうだ。
「可憐だべ……」や「綺麗……」と、カンタとアキトが見惚れる中━━━━
「あ、あの…貴女が『千里の狙撃手』なのですか?」
真相を確かめるべく、ケイが恐る恐る彼女に問う。先程まで此方全員を撃ち落とさんと、超精密な狙撃を行い続け、アキト・ケイ・カンタ以外の全員を倒したダイバー。失礼な質問だと分かっていたが、やはり本人の口から答えを聞きたいと、直球勝負で行く事にしたのだ。
「フフフ…。えぇ、御明察です。千里の狙撃手とは、
口元を隠し、柔らかな目で笑う少女ミシェル。原作のアルケインが暖色系であったのに対し、青く輝く姿はまた違った印象を覚える。
「其れで貴方……いえ、ケイ様ですね?私とアルケインの位置を、目視は愚か、センサーユニットさえ使わずに、御当てになられたのは」
細い指先でミシェルはケイを指し、彼は首を縦に振る。彼女の紅玉色の瞳が、一流の品定めをする者の鋭さを以て、彼を見つめ。数分の後に、こう言ったのである。
「とても良い眼をしてますね。今はまだ未熟ですが、研けば誰にも負けない輝きを放つ…そんな確信があります」
超一流の目には、相対した人物が輝いて見えることがある。秘めた才能を見抜く目とも言える其れは、幼い頃のミシェルには既に備わっている。
そして、そんな彼女の視界に映るケイは、内側から強烈な光を宿して見えており、其の輝きはとても強いものであった。
間違いない━━━━この先、彼は素晴らしい存在になると、ミシェルは見抜いた。
「ケイ様、よろしければ私とフレンド登録を御結びになりませんか?そして今後、フォースを設立する際に私も参じたいと存じます」
「え、良いんですか?俺、まだそんなに強くないのですが……」
「謙遜しなさらないでください、ケイ様。貴方の強さは何れ誰とも違う、GBNでオンリーワンの物に成ります。私は、そんな貴方と共に、研鑽してきた自分の技術を存分に奮いたいと思ったのです」
スッと右手を差し出しながら、ミシェルは微笑み言った。
「これから、よろしくお願い致しますね?ケイ様」
「は、はい!こちらこそ、どうぞよろしくお願い致しますッ!」
緊張しながらもミシェルと固く、強い握手を交わしたケイ。後に彼女は『変人魔境』の異名を含んだフォースの一員として、GBNに其の名を轟かせる事となる。
尚、ヘンリーが目覚めたのは、ケイ達がミシェルとのフレンド登録を終えて、セントラル・ディメンションへ帰還した後であった…………。
千里の狙撃手は、高貴なる御嬢様
ミシェル(CV:吉岡麻耶):ケイ達がGBNにて出会った、ゴスロリドレスに身を包む御嬢様風のダイバールックをした女性。一人称は『
気品溢れる物腰と優美な立ち振舞いをしており、高嶺の花が似合う女性。好きな言葉はノブレス・オブルージュ。
嘗てGBNにて行われた大規模な射的大会にて、チャンピオンのキョウヤを含む数多くのダイバー達を押さえ、総合優勝を勝ち得たダイバーであり、其の大会以降は自身の狙撃の腕を高める傍ら、自身の力を奮うに相応しい仲間達を探すべくGBN内で告知を行い、選定を行っていた。
ケイ達と出逢い、彼こそが積み上げてきた己の力を奮うに相応しいと確信。フレンド登録を結び、フォース結成時には自らも参加すると宣言した。
ガンプラ紹介
ハイモック・ガンオージャ:星那 明人のイラストを元に、順太郎が自らの愛機に改修・強化を行い、完成に至ったガンプラ。バトルアームズとバインダーガンを中心に武装した事により、総合的な火力と機動力の向上、三次元攻撃を獲得している。
最大の特徴は、肩部と背面にバトルアームズとジョイントによって接続された、バインダーガンのユニットを改修した『FDCバインダー』であり、ファング・ドラグーン・Cファンネルの要素を統合する計16基からなる遠隔武装。
突・射・防・斬の機能を持ち、状況に応じたフォーメーション変更や、バインダーガンへの接続による火力上昇、不安定な足場を挿し込みで補助する等、使い手の発想と使い方で無限の可能性を発揮する事が可能。
アルケイン・デコレート:千里の狙撃手ことミシェルが使用する改造ガンプラ。寒色のメタリックブルーを主体とした塗装が行われており、原作とは違ったクールな印象を覚える。
G-アルケインの変形ギミックをオミットし、代わりにポータントフライヤーによる脱出ギミックを搭載。システムウェポンキットの1つにあるロングレンジライフルを、射的距離と威力を極限まで強化した物を使用する。
バスターバインダーを改修した、腰部のエネルギーポッドとロングレンジライフルを接続することにより、千里狙撃を可能とする強力な射撃を行う事が出来る。
アルケインの元々持つ、ビームワイヤーやビームサーベルも在るが、ミシェル自身が接近戦を得意としておらず、御守り程度として装備している。