ガンダム・ビルドライジング   作:ガリアムス

20 / 38
自らの限界を超越するためのガンプラ、そんな第20話です


Ep,20 限界の其の先へ

午後9時20分、ガンプラの箱・出口……━━━━━

 

「慶、今日は随分買っただね」

 

此の日のバイトを終え、買い物タイムで幾つかのキットを購入した慶は、順太郎と共に帰路へ着く。彼が腕にぶら下げている厚手のビニール袋の中には、ガンプラの箱で購入した幾つかのキットが入っていた。

 

「うん。やっと新しいガンプラの構成が纏まったから、明日以降に組み立ててくよ。ただ天気予報だと数日以内に雨が降るからなぁ……」

「だべなぁ……一週間ば降っだり止んだりで、空が全然安定しないべよ……」

 

はぁ……と、青年2人は大きな溜息を付いた。ガンプラ製作において、湿度の問題は極めて重要であり、綺麗な塗装を施しても乾かす過程で、雨で湿度が高くなれば白化と呼ばれる現象によって、せっかくの塗装も台無しになってしまうのだ。

 

「ん~……。やっぱり製作するなら、ガンプラの箱でやるべきかな。雨天でも利用しているお客さん、沢山見掛けるし」

「だね~。ガンプラの箱なら室内で空気循環も良いじ、塗装スペースや道具もちゃんど有る。おまげに、プロ級ビルダーの國弘ざんど明人君の教え方も上手いで、ほんど良い所だね」

 

何気無い会話を交えながら、2人は夜の街を歩き、最寄りの駅を目指す。

 

「そいえば、もうすぐ『GBNサマーフェス』が来るべな」

「あ、そうか。もうそんな時期になったのか……」

 

GBNには四季や時期により、多種多様なイベントやミッションが実装されている。サマーフェスも其のイベントの1つで、電脳世界の夏の風物詩としてダイバー達に広く認知されている。

 

「新しいガンプラ、其のフェスに間に合わせたいな」

「オラも同意だ。メインイベントの『海中宝探し』で良い物見付げでみぜるだよ!」

「うん。頑張ろう、カンタ」

「応だよ!ベストを尽くすべさ!」

 

拳をコツンと重ねて、青年達は決意を固めた。其の為には己がガンプラを作らなくては、何も始まりはしない。

 

(やってやる…!絶対に作る……!)

 

心は熱く燃え、慶の新しいガンプラに対する情熱は、益々高まっていくのだった━━━━。

 

 

*********************

 

 

翌日、某所在大学寮内……

 

「んん……っ、良く寝たぁ………」

 

ベッドから起き、昼寝から目覚めた猫のように、思いっきり背を伸ばした慶は、何時ものようにシャワーを浴びて、朝食を取り、寝間着から私服に着替える。

 

「よし、やろうか」

 

気合いを入れつつ、昨日ガンプラの箱で購入したキット達を袋の中から取り出した。

彼の前にはベースとなる『RX-78-2 ガンダム』を始め、『GM/GM』『ビルドバーニングガンダム』・『ライトニングガンダム』・『パワーアームズパワーダー』・『ガンダムレオパルド・ダ・ヴィンチ』・『ガンダム AGE-2マグナム(レプリカ)』等が置かれている。

 

拡張性と汎用性を重視しつつ、己の適正となる武装や戦法を探求し、確立する事を主眼とする……其れが新しいガンプラの持つコンセプトだ。

 

「作るぞ…!」

 

作り上げ、トラムとソード・ブリンカー・レヴにリベンジを果たし、アズキをビルドライジングに引き戻す。其の目標を見つめる青年の目には、一筋の迷いも無かった。

 

そして其の日の午後8時……空調を回した室内で、休憩や食事を挟んで続いた製作は、新しいガンプラに必要となるキット全ての素組を終えるまでに至ったのだ。

 

唯一『テルティウムより着想を得た脚部』を除いて━━━

 

 

*********************

 

翌日、ガンプラの箱………

 

「テルティウムの脚部を作りたい?」

「はい。マサキさんのテルティウムは、見た目はガンダムMk-Ⅲなんですけど、パーツ形状から少し複雑な感じで。何より、肩にあるランチャーが脚に収納されているので、自作するとなると難しいんですよね」

 

最後のピースとなった

 

「そういう事なら『パーツビルダー』を使うと良いですよ!」

「パーツビルダー…?」

「簡単に言えばプラスチックを粒を集めて固め、ガンプラのランナーを整形する機械の事で、GBNで貯めたビルドコインやパーツデータを起こしたり、料金を払って作る事も出来る。

テルティウムの脚部はプラ板から作るとなると、かなりの時間が掛かるだろうし、慣れないうちはビルダー使って作った方が早いと思うよ」

 

やってみる価値はあるかと、慶は財布からガンプラの箱のバイトで貯めていた金を出し、國弘はパーツビルダーにテルティウムの脚部のデータをインストール。

 

数分後、射出口から数枚のランナーが放出される。間違えない、ガンプラの箱で見たマサキのテルティウムと同じ、あの独特な形状の脚部だ。

 

「おぉ……!」

「ビルドコインが有れば良いんだが、無ければ無いでこういう方法が有るんだって事を覚えておくと、後々壁にぶち当たった時に役に立つ。此れで製作出来そうか?」

「はい!ありがとうございます!」

 

ランナーを受け取り、青年は状態を確認。ビルダーで産み出された其れは、市販のキットに比肩する程に良く出来ている。

 

最後に残った問題は解決し、遂に本当の意味で新しいガンプラの青年は始まるのだ……。

 

 

*********************

 

 

翌日、ガンプラの箱・製作スペース━━━

 

「今日はよろしくお願いします!」

「俺と明人で代わる代わる様子を見るから、慶は集中して製作に当たってくれ」

「頑張ってください、慶さん!」

 

「はい!」と答え、慶は己のガンプラ作りを始める。

 

続いて、新しいガンプラに必要となるパーツを納めたタッパーを取り出し、昨夜にランナーより外してゲート処理を行ったテルティウムの脚部と合わせて、水で満たした超音波洗浄機に入れ、タイマーを180秒に設定し、終わりを待つ間に、組み立て手順を再確認。

洗浄機の中からパーツを取り出し、小さなパーツが取り残されたり、落ちていないかを慎重に確かめて、1つ1つを新聞紙の上に青年は置いていく。

 

と、此処で何を想ったのか國弘が店の奥へと向かい、数分後に大きな機材を押して作業スペースに持ってきた。彼曰く、両親の知り合いが自分達兄弟への誕生日プレゼントとして送ってくれた特殊な乾燥機らしく、サフ噴きや塗装で本来なら1日は掛かる乾燥の工程を、僅か2時間になるかならないかで終わらせてしまう、ハイテクマシーンの試作機らしい。

 

物は試しと使ってみると、銘打っただけの事は有り、小さなパーツは僅か5分で乾いてしまい、慶は其の高性能に度肝を抜かれることに。

そんな事があり、洗浄したパーツ達を乾燥機に入れ、待つこと1時間。1日掛けて乾かした仕上がりに、再び度肝を抜かれながら、青年はネコの手にパーツ達を着け、黒のサーフェイサーでサフを噴き付ける。

そうして再び乾燥機へと入れ、1時間半の時を流す。

 

サーフェイサーの乾燥を終えて、取り出したパーツ達に、今度は各々の色を塗る。スプレー缶の放出ノズルに5円玉を挟み込み、塗料の出力を抑えながら、パーツ毎に塗装を行っていく。パーツ1つ1つに、想いを込めて。慎重に、丁寧に。自分の作品を、最高の物へ仕上げるように。

 

塗装を経て、三度特殊な乾燥機にパーツ達を入れ、塗料が乾くのを待ち。2時間後に取り出した其れ等を間違えない様に、一部位毎に分けて、組み立て。艶消しスプレーで表面を調え、スミ入れでパーツ達にメリハリを与えた。

 

分けたパーツを組み合わせ、部位へと成った頭部を、胴体を、左腕を、右腕を、腰部を、左脚を、右脚を、ジョイントに噛ませて1つに。ガンプラの形へと仕上げる………

 

 

そして遂に、其のガンプラは完成した。

 

 

 

初代ガンダムを想わすトリコロールカラーに彩られ、元のキットから各部を削り、シャープなフォルムとなった頭部と、ビルドバーニングやGM/GMが持つ、胸部が稼働する形に改修した胴体。

 

レオパルドの武骨さが残る肩に、GM/GMのスラリとした両腕、ビルドバーニングの特徴的なマニピュレーターと、AGE-2マグナムの攻撃性が内封された足に、ハイメガキャノンパーツをスラスターの役割を与え、拡張性をより推し進める為に取り付けた、パワーアームズパワーダーのバックパック。

 

そしてパーツビルダーによって産み出されたランナーより作り上げた、此のガンプラの最後のピースたる機動力強化と攻撃手段の両立を確立したテルティウムの脚部によって構成された、慶の新しいガンプラ。

 

抱きし名には未熟なる己を超越し、ダイバーとして更なる高みを目指す意味を込めた『ビヨンド』が込められ、頭の中で描いたイメージは、遂に現実で形を成した。

 

『RX-78-2B ビヨンドガンダム』━━━其れが彼の、朱鳥 慶の新たなる希望。

 

「わぁぁ…!これが慶さんの━━!」

「新しいガンプラか!」

「國弘さん、明人君、機材を貸していただき、ありがとうございました!」

 

製作に協力してくれた兄弟に、慶は御礼を述べる。7月の終わりが近付く中、小さな白き機神の覚醒の刻は直ぐ其処に迫っている━━━━

 

 

 




其れは青年の、新たなる希望



ガンプラ紹介

ビヨンドガンダム:朱鳥 慶が『RX-78-2 ガンダム』をベースに製作した、オリジナルガンプラ。型式番号はRX-78-2B。

GM/GM、パワーアームズパワーダー、ハイメガキャノンパーツ、ガンダムレオパルド・ダ・ヴィンチ、ライトニングガンダム、ビルドバーニングガンダム、ガンダムAGE-2 マグナム(レプリカ)といったキットのパーツを用い、そしてシドー・マサキとの出会いを経て、パーツビルダーで精製したガンダムテルティウムの脚部を組み込む事で完成した。

機体コンセプトには『拡張性と汎用性を重視し、カスタマイズによってダイバーとしてのスタイルと、適正武装を引き出す事』にあり、使用者と共に己の限界を越える為の機体となっている。

武装は、ビームライフル、シールド、ビームサーベル、ビームと実弾の変更射撃が可能な頭部チェンジバルカン砲、同じく撃ち分け可能な脚部チェンジランチャーと、ベーシックながらも扱い易さに比重を置いている他、武装を変更する事によって、戦闘スタイルが大きく変わる。


ビヨンドガンダム アッセンブルスタイル:ビヨンドガンダムの通常形態にあたる姿。機体性能はオールラウンダーであり、武装は上記のガンプラ紹介の物と同じ(サイドアーマーにコンバットナイフorショット・ジ・エンドorヒートナタが付く案もあるが、慶自身がどんな武装ならば、自分に上手く扱えるか逐次検証中である)。

シンプル故に操縦するダイバーの技量と実力が直結する形態であり、限られた武装で戦略を瞬時に組み立て、其れに応じた立ち回りや戦い方が要求される。

しかし、突出した能力が無い代わりに、本機のステータスと機体性能は高く、ミキシングに用いたガンプラ達の特性も相まって、噛み合えば強敵相手にも十分に肩を並べる事は可能。

未知なる可能性を掴む為、小さな身体に超越の名を得し機神は、慶と共に進化していく。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。