「ケイさんのビヨンドガンダムって、見た感じだけど色んな武装を取り付けられそうだよね?」
此所はセントラル・ディメンション内に存在する、洒落たカフェテリア『THE・スターズ』。其の一角のテーブル席に座り、G5アタックで初参加報酬で獲得したビルドコインを使い、ケイとフォルテは『スタースフレ』なる食べ物を注文。
其れを待っていた時、フォルテから自分のガンプラに対する質問が来たのだ。
「あぁ。ビヨンドガンダムは多種多様な武装を使えるようにビルドして、俺と一緒に自分の可能性を広げる為のガンプラなんだ」
「ただ」と、ケイは己の掌を見つめながら、
「今回のG5アタックを通じて自分自身の実力不足を染々と痛感した。ハードモードとは言え、ビヨンドガンダムを大破寸前にしてしまったし、武装一つ一つの使い方もまだまだ未熟さ。
ビヨンドガンダムの他形態も運用して、早く自分に馴染む武器を見付けたり、フォルテが見せてくれた動きも模倣出来る所は全部真似させて貰う。トラムさんが率いるソード・ブリンカー・レヴに勝つには、ビルドライジング全員の協力も必要だけど、自分自身が先ず強くなくちゃいけないからね」
アズキとの約束を果たす為、ビヨンドガンダムを扱うに値するだけのダイバーになる為、青年の手は力強く握られた。
そんな彼の横顔を、フォルテは少し柔らかな表情で見つめ。そして彼にこんな提案を持ち掛けたのである。
「ケイさん、ケイさん。トラムさんに勝ちたいなら、先ずは『近接戦闘』をもっと知った方が良いと思うの。もし連絡くれたら、ウチが格闘戦技術を学んだ『師匠』が居るフォースに案内したげる」
「どう?」と、あざとい笑みを溢すフォルテ。ソード・ブリンカー・レヴはトラムを始め、斬撃系統の武器を愛用するダイバー達が多く在籍し、其のメンバー全員が凄まじい実力者揃い。
そんなフォースに勝つ為には、やはり彼等彼女等の得意な戦闘領域というものを知る必要があるだろう。
「お願いします。ところで、案内してくれるフォースというのは?」
「フォースの名前は『
真っ直ぐな瞳と声で、少女がそう言い切る。出会って間も無く、過ごした時間も少ないものの、其の瞳に嘘偽りが無い事を、ケイは幼少時代に様々な人を見てきた経験から、そう信じるに至る。
其の後、注文したスタースフレを食べながら、2人は暫しの団欒を取り、ケイはフォルテに今日の御礼を述べて、GBNからログアウトしたのであった。
*******************
『『『虎武龍に案内して貰えるぅっ!?!?』』』
翌日、ガンプラの箱でのバイトの休憩時間。慶はフォルテからの提案を店長代理である國弘と其の弟の明人、そして親友の順太郎に、昨日のG5アタックの結果報告を兼ねた、フォースへ案内される旨を伝えた所、皆驚きの声を上げてしまう。
「マジがよ……慶。でが、フォルテぢゃんば滅茶苦茶強いべ。難易度エクストラクリアを出来るダイバーっでったら、実力ば間違いなく上位クラスだべよ」
「兄さん。もしかしてフォルテってダイバーさんは、凄い人なのかな?」
「分からん……だが、G5アタックの動画を観た感じ、近接格闘技術は間違いなく心得ている上、虎武龍に関わりが在るってのも信用して良い」
そして3人の視線は自ずと、自分が何かやらかしたのかと心配そうに見つめる慶に向けられる。
「俺、何かやらかし……た?」と問うと、國弘は「あぁ、良い意味で」と即答。其の表情はニンマリと、完全に何かを良い作戦を企んだ策士の其れである。
「明人、兄さんは此れからGBNにログインして、ミシェルさんとヒノワにメッセージを入れてくる。其の間の10分、3人は手分けして仕事に当たって欲しい」
ミシェルはビルドライジングのメンバーの中で、現状GBN以外で交流は無く、ヒノワはELダイバーであるため、ELバースセンターに保護されている。其の2人に連絡を入れるという事は、フォース全員で動く事を意味する。
「……何するんだべか?國弘ざん」
「せっかく格闘技術を無償で教えてくれて、しかもGBN最高峰フォースの1つ、虎武龍との人脈を持っているダイバーの御誘いを貰ったんだ。こういうイベントは全員で便乗するに限る。
そして何より、やっと出来上がった『支援機』を皆に御披露目出来るチャンスだからな」
クックック……と笑う國弘の顔は、獰猛であり。
そして何より、悪い表情だった。
「其れでは各自、やるべき事を成していこう」
國弘の一声を受けて、3人は直ぐに休憩から仕事モードに切り替え、各々が自分の仕事を始めたのであった。
そして其の日のバイト終わりに、國弘は3人にミシェルとヒノワが2日後には予定が合せられる事を伝え、其れを聞いた慶は、何を思ったのか大急ぎで店内を駆けずり回り、ビルドシリーズが置かれた商品棚から『バトルアームアームズ』・『ボールデンボールアームズ』・『スカルウェポン』のキットを、各々2箱ずつ持ってきた。
慶曰く「虎武龍に行く前に、完成させたい物が1つ出来たんだ」━━━との事。
*********************
2日後、セントラル・ディメンション、メインロビー。GBNにログインしたケイとカンタは、各々フォースメンバーとフォルテへの連絡を行うため、メッセージ画面を開く。
ケイはフォルテ宛で虎武龍への案内を依頼、カンタはフォースメンバーへ、セントラル・ディメンションに集合を促すメッセージを製作・送信を行い、到着を待つ。
其の数分後━━━━
「ケイ様、カンタ様、御久し振りで御座います」
「ケイ、カンタ!やっほー!」
「皆、結構早いな」
「おはようございます!」
ミシェルとヒノワ、そしてラルクとアキト兄弟が合流して、ビルドライジングの現行メンバーが勢揃いし、後はフォルテが来るのを待つのみとなる。
「とらぶりゅう……此の世界の色んな所歩いてた時に聞いた、スッゴク強いフォース……だっけ?」
「そうだよ、ヒノワさん。虎武龍と言えば近接格闘が直ぐに出るくらい有名なんです」
「更に補足しとくと、GBNフォースランキング5位の超強豪フォースの1つ。上から数えて5番目の所に居る、本当に強くてヤバいフォースって事だな。後は━━━」
虎武龍を朧気にしか知らないヒノワに、アキトとラルクが分かりやすく教えて、彼は時折コクコクと頷きながら、其れを聞いていたのだった。
「ケイ、そいえば一昨日のバイトで色々買っでたんげど、何作っだんべさ?」
「ふふふ………其れは格納エリアに行っての、お楽しみって事で」
「ケイ様、何か御作りに成られたのです?」
「はい、自分なりに頑張ってみました。格納エリアで見せますね」
カンタが一昨日の出来事をケイに聞き、ミシェルもまた興味を示した。と━━━━━
『ケイさーん!ケイさーん!』
元気溌剌とした声と共に、赤のマフラーと小さな体躯に似合わぬ大きな胸を揺らしながら、フォルテが可愛らしい笑顔で此方にやって来て。
そしてケイの周りに、ビルドライジングのメンバー達が居るのを見て、其の笑顔は一瞬で真っ暗闇の絶望のドン底に沈み、暗く落ち込んだ物になってしまった。
彼女の変わり具合に、ビルドライジングのメンバー全員は、ほぼ同時に心の中で《あっるぇぇぇぇぇぇ?》と言葉を溢したのである。
「フォ、フォルテ……?大丈夫か?」
心配したケイが声を掛けるのだが、此方を見上げた彼女の顔は涙目、更には団栗を頬袋に詰め込んだ栗鼠の如き膨れっ面。
果てには『ケイさんのKY!ばかばかばかぁ!』と小さな身体で、漫画の様なぐるぐるパンチでポカポカと連打する何とも可愛らしい光景が出来上がった。
*******************
「むすぅ……………」
「フォルテ。俺が君に対して何か悪い事したなら、ちゃんと謝るから機嫌直してくれないか?」
メインロビーでの一悶着もなんだと、ビルドライジングメンバーとフォルテは格納エリアにワープ。今尚不機嫌彼女に、どうしたものかとケイは頭を悩ませる。
「…………あ!そう言えば、ケイさんのビヨンドガンダム!肩に何かくっ付いてますね!アレって自作のユニット何ですか!?」
そんな空気を変えるべく、システムベースに鎮座したガンプラ達を見ていたアキトが、然り気無く助け船を出してくれた。
少年が指差す先には、ビヨンドガンダムの両肩部に合体している、八角型のベースを中心にフレキシブルなアームで繋がれ、左右には二股に分かれたジョイントが存在。上部にはZZのビームキャノンを彷彿とさせながら、アームにより自在な角度が付けられるであろう細工が有り、遠目に見れば其の姿は『鳥』の様にも見える。
「あ、あぁ!フォルテ、アレは前々から構想してたユニットなんだ!」
「前々から想定……もしかして、ビヨンドガンダムの多数ある形態の1つ?」
「そう!ビヨンドガンダムの性能を引き出しつつ、色々な武装を懸架して試す為の支援ユニット、其れがあの『マルチプルウェポンラック』!其れを2基装備したのが、此の『ビヨンドガンダム・レデュナンススタイル』なんだ!」
アキトの助け船に触発され、ケイはフォルテに自分のガンプラの事を話した。そして其の矛先を、同じくガンプラをアップグレードしたミシェルへと向けて言ったのだ。
「ミシェルのアルケインもちょっと変わってるね!特に肩の部分!」
「!?………ぇ、えぇ。私もソード・ブリンカー・レヴとの敗北を機とし、自分の愛機を新しく仕立て直しましたわ。名を『ヘールヘイヘ』……
突如自分に話が回って来て、ミシェルは一瞬焦るも、直ぐに落ち着いてアルケインを見上げる。全体的なカラーリングこそ、デコレートの頃のブルー中心の物なのだが、最大の変更点に肩パーツをアルケインの物から『ブリッツガンダム』へ変更していることだった。
「……あれ、ラルクのおっきなガンプラ、無いよ?」
「あれ、ほんとだべさ」
と、此所でヒノワが何時もならば格納エリアの大部分を占領し、堂々と建っている筈のジオンガーZの姿が見えない事に気付いた。
「ふっふっふ……今回の俺が持ってきたのは、ジオンガーZじゃないんだ。皆、見て驚くなよ?」
そう自信満々にラルクが言い、右手で指パッチンを行う。すると自分達が立っている格納エリアの床が突如として透けて、其処には驚くべき光景が広がっていた。
巨大なシステムベースに置かれ、現在進行形で機体のメンテナンスを受ける、巨大な赤黒の戦闘機。否、其を戦闘機と呼ぶには、余りにも
『機動戦士ガンダム』の作中に登場した『ガウ攻撃空母』━━━━其の主翼は後の『機動戦士Zガンダム』の大型航空空母『ガルダ』の要素が垣間見える。
ケイは其の巨大な戦闘機が、何故だかジオンガーZと関わりが有ると、そう思わずにはいられなかった。自分を含め、此の世界に数多居る男性達の心を擽る『何か』が、あのガンプラには有ると。
「コイツはジオンガーZよりも前から、GBNをプレイするために作っていた奴だったんだが、製作に難航してて最近まで手を止めちまってたんだ。トラムさん達には感謝してるよ……。あの敗北のお陰で、コイツの完成に至れた訳でな」
腕を組み、自己満足と納得に頷くラルク。そんな彼に「ラルクざん、此れは一体……?」とカンタが尋ねれば、待ってましたとばかりに「よくぞ聞いてくれた!」と、シイタケ目で言った。
「名を『ガウ・スクランダー』!俺的に分析したビルドライジングは今、『迅速な長距離輸送』と『フォース全体の作戦遂行能力』が、まだまだ未熟な面が有ると思った!其れを解決しつつ、戦力アップと更なる戦略を可能にする為の力こそ、此のガウ・スクランダーなのだよ!
因みに此のガウ・スクランダーは全パーツ、プラ板やプラリペアで1から自作した、俺史上最高傑作ッッッッ!!」
ビシィィィ!と、ドヤ顔で言いきったぜと言わんばかりの表情に、フォルテを含めたメンバーの顔が引き気味になる。唯一人、ラルクの弟のアキトは尊敬と畏怖を持った、憧れを含む瞳をしている。
「さぁ、皆!虎武龍に行くぞ!積込だ!」
「…………積込?」
「ガウ・スクランダーは、ガウをベースにしている。此の意味、皆なら分かる筈だ」
彼の言葉に皆一瞬考え、そしてポンと掌に合点する。
格納エリアのシステムベースがエレベーターのように稼働を開始し、ビルドライジングのガンプラ達とフォルテのエクストリームガンダムが、レール移動で降下。
ガウ・スクランダーも胴体が開き、レーンが延びるやシステムベースとドッキング。其処から機体を引き込み、次々と艦内へ迅速に収容していく。
「すげぇ!すげぇ!おっきな戦闘機にオレ達乗るんだな!」
「……そう言えばヒノワは、ガンプラに乗ったことは有っても、戦闘機に乗ったことは無かったのか……」
「うん!スッゴい楽しみ!」
まさに子供のように、キャッキャッと跳ねるヒノワを見ていると、心がホッコリと暖かくなる。
そんな時、彼等彼女等の前に数人の軍人達が立っており。皆、かなり鍛えられているのが一目で分かった。中には頬にナイフの切り傷の痕が刻まれた者、片眼を眼帯で覆った者も……。
「な、なんだ此の人…達?」
「何だかちょっと恐い、ですわね……」
メンバー達が警戒心を以て身構えるも、彼等彼女等の異変にヒノワとケイは真っ先に気付いた。
「此の人達……不思議だ」
「ラルク、もしかして………『ジオン兵のフィギュア』か?」
「ああ、御名答。彼等彼女等は此のガウ・スクランダーの搭乗員の皆さん、此の艦を支えてくれる心強い仲間達さ。艦内やガンプラ、武装の補給や整備に身の回りの手伝いもしてくれるよ。
あ、乗り込む前には敬礼するのがマナーだから、しっかり頼むぜ」
ならば物は試しとケイが先んじて、ジオン兵達に敬礼を行う。すると直ぐに敬礼を返して、フッと笑ったのである。其の瞬間、ケイはラルクが『兵士一人一人に対し、己の愛と魂を込め、丁寧に作り上げた』のだと、自身の持つ『創作物の声を聞く』特異な感覚によって覚るに至った。
「さぁ、乗った乗った!虎武龍へ一気に出発するぜ!」
斯くして、フォルテを含むビルドライジングのメンバー達は、ガウ・スクランダーへと乗り込んだ。いよいよ彼等彼女等の、トラムとソード・ブリンカー・レヴへのリベンジに向けた、新しい戦いが始まるのだ。
いざ行かん、虎武龍へ
ガンプラ紹介
アルケイン・ヘールヘイヘ:ミシェルがソード・ブリンカー・レヴとの戦いの後、自身の超距離狙撃を行かすべく、アルケイン・デコレートにブリッツガンダムの肩パーツを加え、特注のスナイパーライフルをステルスショットに対応するアタッチメントを施し、全体的なブランシュアップを行って完成したガンプラ。
ブリッツのミラージュコロイド・ステルスによる光学迷彩を採用した理由は、狙撃手は敵に狙われてはならないと学んだ事であり、姿とライフルを迷彩によって隠すのみならず、其のライフルの弾丸さえも隠す事で、真なる狙撃手を目指した。
姿の見えない本機から繰り出される攻撃と奇襲性は、
ビヨンドガンダム・レデュナンススタイル:ケイが製作したビヨンドガンダムに、追加オプションとして自作ユニットのマルチプルウェポンラックを2基、両肩に武装した広域対応汎用形態。
グリッターレヴとアメイジングレヴを参考に作られたマルチプルウェポンラックは、単体による巡航及び飛行能力を持つ他、製作の為に使用したボールデンボールアームズ・バトルアームアームズ・スカルウェポンにより、フレキシブルに稼働。様々な武装の懸架・輸送、遠隔操作に移動砲台や三次元的攻撃よるトリッキーな戦闘を可能とする。
マルチプルウェポンラックの先端部には、ガンダムZZのダブルキャノン/ハイパービームサーベルを参考にした『ハイパーマルチガジェット』が標準装備されており、ビヨンドガンダムがアッセンブルスタイル時の問題点として抱える、決定打と火力不足をまとめて解決した。
また、ハイパーマルチガジェット同士を連携させる事で、ストライクフリーダムやインフィニットジャスティスの持つハルバート状態を形成可能で、ケイは『ハイパーメガビームナギナタ』という名前を付けている(ラルク曰く「ハルバートの方が名前は引き締まる」との事)。
ガウ・スクランダー:ラルクが『1/2000 ガウ攻撃空母』をベースにガルダ級の特色を加えながら、全パーツをプラ板やプラリペアで1から全て製作していたという、彼史上最高傑作のガンプラ。
ジオンガーZを製作する以前より、戦闘及び拠点機能を含めて構想・製作を行っていたが、内部機構の導線の複雑化により、製作の手を止めていた。ソード・ブリンカー・レヴとの戦いの後、機動力の向上とフォースメンバーの長距離移動を迅速にする為、再び製作に着手・完成に至った。原作のガウに比べて、胴体は黒に翼は赤のカラーリングであり、ジオンガーZと同じ整形色。
ガウの持つ輸送能力を其のままに、新たに搭載されたミノフスキードライブにより、ガウの抱えていた問題点である下方ジェットと其れによる推進力の低下を補い、更に後部に搭載された『全空宙域巡航高出力機構 ハイメガロブースター』で、大気圏内及び宇宙空間内での高速飛行を可能とした。
反面、複雑な機構をラルク一人では生かしきれない点もあり、解決策として自作したジオン兵のフィギュアを数十人、ガウ・スクランダーに搭乗させている。
本機はガウ以上に頑強なビルドが施され、特筆するべきは主翼部分が巨大な刀の如き切れ味を誇る『ザンパーウイング』で、唯の航行ですら近付く敵には凶器となる。
そしてガウ・スクランダーは、ジオンガーZとの合体により、其の真価を解放する事になる。