ガンダム・ビルドライジング   作:ガリアムス

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虎武龍のタイガーウルフとの出会い、そんな第25話になりんす




Ep,25 エスタニアの大地に立つ

ラルクが製作した巨大航空母艦こと『ガウ・スクランダー』に乗り込んだ一向が、彼の丹精が込められた自作ジオン兵フィギュアに案内されやって来たのは、航空空母の頭脳たる艦橋部(ブリッジ)

 

2ヶ所有る出入口のうち、左側の扉より入った皆の目の前には、8か9人のジオン兵達が、航空機のコックピットを彷彿とさせる精密な機械を相手に、着々と出撃準備を行っていた。

 

「おぉ~……ごりゃずげぇべなぁ」

「ガウの内部って、こんな感じになってたのか」

「……家の自家用ジェット機以上に、精密なディテールを施すなんて。ラルクさん、貴方のビルダーセンスは凄いですわ」

「よく分かんないけど、色んなピコピコきれい!」

「なぁにこれぇ……」

「兄さん、ガウ・スクランダーを皆の為に本当に頑張って作ったから、フォースミッションやバトルで期待してて」

「最高の自信作だ、絶対損はさせないと俺自身が証明してやるぜ」

 

ラルクの作り込みに、十人十色の反応を示すビルドライジングメンバーとフォルテへ、アキトとラルクは自信を以て答え。

そしてラルクは、此のエリア中央に位置する艦長席へと腰を下ろし、コンソール画面を展開するや艦内放送の音量ノズルを調節しつつ、ブリッジ内の席を競り出させ、艦の指揮を取り仕切る。

 

『あーあーあ、マイクチェックマイクチェック。1…2…3…4……よし、異状なしっと』

 

コホンと咳き込み、呼吸を調え。彼は艦内に居る、全ての乗組員に告げるのであった。

 

『これより本艦は、セントラル・ディメンションより虎武龍の在る、アジアン・サーバーのエスタニア・エリアの軍事空港へと発艦する!各員、発進に伴い衝撃に備えよ!

 

あとアキトは俺の膝に座って、ビルドライジングの皆とVIPのフォルテちゃんは、出した席に直ぐ座ってくれ!もう数分経たずに発進する!』

 

其の声と同時にガウ・スクランダーが大きく揺れ、巨大な航空母艦が動き始める。まるでレーンに沿って動きながら、発射口へと向かっているかのようで……。

 

此れだけの巨体が空を飛ぶという事は、其の出力と馬力は桁外れに相違無く、皆顔を青ざめながら大慌てで席に座り、シートベルトを着用。使い方が分からないヒノワは、ジオン兵フィギュアの手伝いを受ける形で、其れを身に付けた。

 

そして遂に━━━━━

 

『ガウ・スクランダー!発進ッッッッッ!!!』

 

鼓膜を破らん爆音、天を割き崩す轟天の畝り━━━ハイメガロブースターが火を噴いた時の状況は、正に其れであった。

バーに弾き飛ばされたパチンコ玉の如く、ガウ・スクランダーは瞬間加速を伴いながら、レールが敷かれたトンネル中を突き進み、光が満ちる出口よりセントラル・ディメンションの空へと飛び出したのである。

 

「ぎょええええええええ?!?!」

「超スピード殺人マシーンの間違いじゃないですの~!!!???」

「な、何て……加速ッ……だよ……!!!」

「体が後ろに引っ張られちゃう……!」

「わはは!すごーい、すごーい!」

「兄さん……ッ!!!」

「俺の予想以上…に、加速性能………が出てやがら……!!」

 

電子世界に構成された肉体の、骨身の髄に至るまでが引き千切られてしまいそうにほどに、ガウ・スクランダーの加速力は凄まじく。一般的な旅客機が安全高度に達するまでの時間を、此の機体は僅か数秒足らずで到達してしまったのである。

 

「うっそだろ……!?…もう、13000㎞に行きやがったのか!?」

「ラ、ラルクさん!そ、其れって……滅茶苦茶速いのか!?」

「当たり前だ!普通のジェット機でさえ、1分くらい掛かるところがコレだ!こりゃ…マジで、とんでもない性能だ………!ジオンガーZと組ませて、上手く動かせりゃ良いんだが……!」

 

ラルクが思っていた以上に、此のガウ・スクランダーは超性能であり、とてつもない暴れ馬であるようだ。

そうこうしている内に、セントラル・ディメンションからエスタニア・エリアへと続くゲートが見えてきて、機体は速度を維持したまま突入し、電子空間のトンネルを通ってエリア移動を行う。

 

「……ふぅ。取り敢えずは此の暴れ馬、じゃなくて暴れ空母を扱うのに骨が折れそうだ」

「だだ、すんごい速度で飛んだだべ。これもじがしだら『あのミッション』もいけるべかね?」

「……あ、確かに。兄さんのガウ・スクランダーの速度と馬力、特性が合わされば出来そうですね」

 

兄弟と親友が語る『ミッション』。後にケイ達、ビルドライジングは其のミッションに挑む事となり、其の際にガウ・スクランダーは、ミッションへ大いに貢献する事となるのだが、其れはまた別の話である……。

 

 

*********************

 

 

空の青が満ちる電子のトンネルを抜け、一向の載るガウ・スクランダーはエスタニア・エリアの出入口たるゲートより姿を見せる。

艦橋の窓辺の外には、古来中国の切り立った霊峰が針山の如く連なり、太陽の光と白の雲海に満ちた神秘の光景に、心が奪われそうだ。

 

「此所が…エスタニア・エリア……」

「中華的なフィールドだろ?俺達が向かってるフォース・虎武龍を始め、武闘派で名を轟かせるフォースや、ダイバーが多く居るディメンションでもある」

「……ケイさんと一緒に来たかったのに………」

「真っ白……雪みたい……」

「もじがしで、ヒノワば雲海見るの初めでたが?」

「海外旅行で何度も見ましたわ」

「再現凄いなぁ……」

 

暫し空の景色を眺めながら、過ぎ行く霊峰の鋒達に別れを告げ、一向はエスタニア・エリア最大の軍事空港へ向かう。

 

其の航路の途中でフラッグとハンムラビの編隊や、Zガンダムとイージスガンダムの空中レースに遭遇しながら、ガウ・スクランダーはミノフスキークラフトで出来たIフィールドの塗幕で雲海を切り開き、ゆっくりと降下を開始。

 

赤黒の巨大空母の巨体が青空と雲の合間より姿を見せ、軍事空港へ到来してくる様子は、ダイバー達に衝撃と戦慄を与えた。

 

『此方、エスタニア・エリア軍事空港。所属フォースを伝えるべし!』

「此方、フォース・ビルドライジング。此れよりそちらの軍事空港へ着陸する。今現在、何番滑走路が使用可能ですか?」

 

無線越しに聞こえる声にラルクが返答を行いつつも、指差しとコンソール画面のメモ帳機能を使い、着陸態勢への移行とメンバー達に注意を促す。

 

「━━━はい、了解しました。それでは。

 

皆、これからガウ・スクランダーはエスタニア・エリアの軍事空港第八滑走路に着陸する!各自シートベルトをしっかり絞め直し、衝撃に備えてくれ!」

 

機体後部のハイメガロブースターの出力を緩めながら、主翼を調節しつつ態勢を安定。前方に見えてくる巨大な空港の、一際滑走路へと安定角度で侵入する。

 

「減速、今!」

 

機体に仕込まれたブースターを起動。前方へとブレーキを掛けながら、ガウ・スクランダーは高速であった速度をジリジリと落とし。

 

そして━━━━━巨大空母はミノフスキードライブの浮遊を終え、完全に停止。15分にも満たぬ空の旅を経て、エスタニア・エリア軍事空港に止まったのである。

 

 

********************

 

 

アジアン・サーバー内エスタニア・エリアに在る軍事空港……━━━━。

 

現在其の地は、可変機による航空訓練や見せ合い、情報交換で数多のダイバー達が集い、賑わっている。

しかし現在、そんな彼等彼女等の話題は此の地に飛来した『1機』の航空空母によって塗り替えられたのだ。

 

グリスメタリックな赤と黒でペイントされた巨体に、敵を切り裂く事さえ容易い頑強で鋭利な主翼。其の独特な形状を見て、ベースがガウであると気付けるダイバーは一握りな程に、作り込まれたガンプラ。

 

ガウ・スクランダー……ビルドライジングの中でも最高峰のビルダーセンスを持つラルクが作り上げ、フォースの新たな翼とした其れを前に、あるダイバーは唖然し、驚愕し、そして目をシイタケに光らせた。

 

「何か注目されてるな……ラルクのガウ・スクランダー」

『皆の目…きらきら、してる』

『そう、だべな……』

『だって………ねぇ?』

『当然です。こんなに大きな航空空母作って、空港に着陸しましたから、火を見るよりも明らかですわ』

 

各々の機体に乗り込み、搬入口から外へと出て行くケイとカンタとフォルテのガンプラは、先程まで自分達を超スピードで輸送した巨大航空機の姿を見る。

 

一般的なサイズ(HG 1/144)5機とダイガンダムを積載しても、余裕綽々に運送出来るだけの凄まじい出力と馬力、そしてスペースは今後のフォースとしての活動や、移動時間を大幅に減らしてくれるに違いない。

 

『寧ろ此れで、誰の関心やら興味やらにも引っ掛からなかったら、俺は人の目憚らずに泣くぞ』

『兄さんの作った作品は、皆凄いんだ。だから大丈夫、元気出して』

『アキトぉ~……!やっぱりお前は優しくてかわいいなぁ~!!!』

『わわ、兄さんあんまりはしゃがないで~!?』

 

そんな皆の後ろより、ダイガンダムが地鳴らし、力強い歩行で降りてきた。コックピットからラルクとアキトの声がしており、おそらく2人は同席しているのだろう。

 

と、ガウ・スクランダーの中から2つの『影』が飛び出すや、彼等彼女等の機体の合間を縫い、やがてダイガンダムのドラゴン・ランチャーの砲芯と、左前腕に下りて留まったのだ。

 

片や灼熱に燃え盛り、全てを灰塵へ還すような焰が如く、赫焔の言葉がぴたりと当て嵌まる、『赤と金』。

片や極寒に凍て憑き、森羅万象の刻さえも止める氷河の如く、氷凍の言葉がぴたりと当て嵌まる、『青と銀』。

 

其の二対一体の『ワイバーン』が、まるでダイガンダムを『主人』とするかのように。

 

「其れは……?」

「あ……此の子達はある『支援機』をベースに、今の僕の持てるアイデアと技術を総動員して製作しました。名前は『ウェポンバーン』。赤い方がお兄さんの『マグナバーン』で、青い方が『ブリザバーン』です」

 

『二人とも挨拶して』とアキトがお願いすると、二体の翼竜はお互いの顔を見合った後、小さく『ぎゃお♪』と鳴き、マグナは炎を、ブリザは冷気を作り込まれた口から、空へ向けて元気に吐いたのだ。

 

「かっこいい……」

 

そんな言葉がヒノワの口から零れる。ドラゴンやワイバーンを見るのは初めてなのだろうか?

 

と、マグナとブリザがキョロキョロとビルドライジングとフォルテのガンプラを見て、其の翼を広げ羽ばたくや、ケイが駆るビヨンドガンダムの近くに降りて、肩に在るマルチプルウェポンラックをつついてきたのだ。

 

「え?どうしたんだ、急に」

 

二対の竜達が取った、謎の行動に戸惑うケイ。其れを見ていたラルクは、一縷の可能性を元にこう問い掛けた。

 

『ケイ、もしかしてだが其のウェポンラックは『アメイジングレヴ』をモチーフにしてるか?』

「え、あ、うん。そう…だけど?」

 

『成程……』と納得している。一体どうしたのだろう。

 

『マグナとブリザは支援機をベースに自作したのは言いましたが、其のベースにした物がケイさんと同じ『アメイジングレヴ』なんです。

同じ物を血筋?を……持っているからでしょうか、其れで惹かれたのかなって』

 

━━━━遊ぼうよ♪

━━━━どこから来たの?

 

自分には家族が居ないため実感は持てないものの、マグナとブリザが自分の作ったマルチプルウェポンラックに対し、そう話しかけているのは感じ取れた。

 

「行っておいで、マルチプルウェポンラック達」

 

優しく語り掛け、ケイはビヨンドガンダムの肩部へ懸架されている支援機達を蒼空へと放つ。二対の翼竜と翼獣達は、まるで仲の良い子供達のように自由な空の下、互いの尾を追い掛けたり、身体を擦り寄せ合ったり。

 

其の微笑ましい光景を、皆は暫し見守ったのだった……。

 

 

********************

 

 

マルチプルウェポンラックとマグナブリザの戯れから暫く、ラルクはガウ・スクランダーをデータ粒子へ還し、一向はフォルテの案内で山脈の合間を縫い、虎武龍の本拠点が在る山を目指して、自分達のガンプラを駆り、移動していた。

 

『ケイ、もじこういうフィールドで戦うなら、どんな風に戦うどが考えでるべか?』

「そうだな……山間での戦いなら、より高度を取れた方が有利だと思う。全体を見渡せる事は、フォース戦で一番大事だから」

『俺も同じだ。戦場は常に敵の位置を把握出来る高台や、山頂を活かせるかが鍵になる。逆を言えば高台を潰せば、相手に与える情報も減らせるが、此方は狙撃手や観測手の長所を殺す事になる』

 

道中の空いた時間も、ソード・ブリンカー・レヴとの再戦に向けての通信会議を行っている。フォルテも聞いてはいるが、彼女曰く『ケイさんのフォースの話は絶対に、他のフォースには流さないから安心して』とのこと。

 

「……もし、其の山脈のフィールドで山を消し飛ばして、更地にした場合はどうする?」

『いや其れは……有り得ない話じゃあないか、俺のジオンガーZなら』

『あの火力であれば、山どころか谷すら溶かし尽くしてしまいそうですわ』

 

そんな話をしていた一向の機体達は、レーダーに反応を捉え、搭乗者にSEで報せる。其処には龍が二頭向き合う門と、先に見えるは山脈の峰を切り出し、造り出した石造りの階段が頂上に向けて延びている。

 

其の前には量産機体のネモとジムの二機が居、各々が僧兵が使う戦闘用の棍棒を握り締め、既に臨戦態勢を整えており、ビルドライジング一向が此方に近付いてくる事に気付いたらしく、鋒を構えて警戒態勢に入った。

 

『我々は虎武龍へと続く門を守る者也!』

『貴殿達の所属と目的を教え………!』

 

と、二機の機体はフォルテの駆るエクストリームガンダムを見て、言葉が続かなくなる。そんな事を知らないケイは着陸するや、皆より一歩前にビヨンドガンダムを歩かせ。

 

「俺達はソード・ブリンカー・レヴにリベンジするために、格闘戦の距離と方法を学び!対策を立てる為に此処に来ました!俺達に格闘戦の技術を教えてください!」

 

そうして彼は機体の膝を折り、両手を地に付けて「お願いします!」と人目を憚らず、単身土下座を敢行したのだ。

 

『え、ケイ!?』

『ケイさん!?』

『ケイ様、一体何を…!』

『け、ケイ!おのごがそげんなこど、やっぢゃいかんべ!』

 

ヒノワとフォルテはケイの行動に唖然となり、アキトとミシェルは困惑し、ラルクとカンタはビヨンドガンダムの行動を止めようと動く。

 

と、其の時━━━━━━━

 

『虎武龍に何か用か?』

 

声が木霊したかと思えば、上空から降ってくる影一つ。ほぼ直角に近い崖を猛スピードで駈け下り、大跳躍と回転を行いながらビルドライジング一向と門番を務める僧兵のダイバー達の前に、ヒーロー着地を決めたのだ。

 

砂煙が霊峰を抜ける風に吹かれ、掻き消された其処に一人のダイバーが立っており。其れを見た門番達とフォルテは敬服を、ケイとヒノワは驚きを、他のダイバーは息を飲む。

 

水色と白の毛並みが風に揺れ、茶色の瞳がギラリと光り、強靭な四肢と胴体が鍛え抜かれた証として、其処に在り。

彼の者、其の姿は人に在らず━━━狼の特性を人の身に宿す『狼人《ワーウルフ》』にして、GBN内の近接格闘戦で最強クラスとされる、フォースランキング5位の虎武龍。

 

其のフォースを束ねるリーダーであり、フォルテが師と仰ぎ、そして自らの最強を証明せんとするダイバーの一人で、『トライファング』の異名で畏れる男。

 

『タイガーウルフ』本人であったのだ。

 

 




彼の者、格闘戦最上級のダイバー



ガンプラ紹介

ウェポンバーン:アキトがアメイジングレヴをベースに、プラ板等を用いて製作した翼竜型の支援メカ。二対一体の兄弟機であり、赤の兄機のマグナバーンと青の弟機のブリザバーンで構成されている。

通常形態のワイバーンモード、人竜形態のドラゴニュートモード、武装形態のウェポンモードの三種類を持ち、ダイガンダムや他のガンプラに武装する事により真の力を発揮。

マグナバーンはウェポンモードでマグナセイバー、ブリザバーンはウェポンモードでブリザシールドとなる。



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