そしてタイガーウルフからダイバーの生き方を教わる、第26話でごさんす
「虎武龍に何か用か?」
ビルドライジングと虎武龍の門番の間に降り立った
『はっはい!俺達ビルドライジングは、ソード・ブリンカー・レヴとのリベンジの為に、格闘戦を学びたいんです!其れで…』
「フォルテが言ってたフォース・ビルドライジングと其のリーダー、ケイってダイバーがお前って訳か」
タイガが見つめる先には、デスティニーのウイングを携えたエクストリームガンダムの姿が在り。其の視線に気付いているらしく、マニュピレーターを振っている。
『え、俺達を知っているんです………か?』
「まぁ、其れなりだがな。で、だ。此処に来たんは、ソード・ブリンカー・レヴとのリベンジへ向けて、格闘戦の対策を学ぶ━━━だったか」
『はい!其れで』
━━━━━━━━好きにすりゃいい
ケイが言葉を紡ごうとした矢先、タイガは驚くべき発言を以て、青年の思考を完全停止に陥れた。
『………ぇ、いや……どういう?』
「言った通りのままだ。好きにすりゃいい……。此処の階段を使って全力ダッシュするのも、頂上に在る虎武龍で門下ダイバーに混じって鍛練や、ガンプラ同士で組手するのも良い。
特に其処に居るフォルテ、アイツなら色々と教えてくれるだろうな」
淡々と答えるタイガに、ケイとヒノワはポカンとしており言葉を失ってしまう。しかしながら、タイガ本人も悪気が有って言っているのでは無く、言葉の中にヒントを含ませているのだ。
と、そんな彼の言葉を聞いたフォルテは自身の機体を電子の粒へ還すや、テクテクとタイガへ接近。そしてニンマリと、小悪魔じみた表情を浮かべて、タイガに言ったのである。
「師匠ー。ケイさんはこう見えて、師匠に会うために荒事にならないよう、門番さん達に土下座を行ったんだよ?自分の名前に傷が付くのさえ恐れない行動、どこかの『脳筋さん』には絶対出来ないことだよねぇ~?」
其の言葉は一種の煽りであり、所謂メスガキと呼ばれる類いである彼女の専売特許のムーブに、冷静と平然を保つタイガの額に僅かな青筋を浮かばせた。
『あ、あの……フォルテ?』
「あれあれぇ~?でも師匠って、ケイさんみたいに強くなりたいってダイバーさん達に、いっつも『好きにすりゃいい』って言っては毎回追い返してばっかりで、冷酷だーとか色々陰口言われてるんだよ~?」
彼女の口撃に、タイガの額は青筋がバキバキに浮かび上がり、背中から邪悪なドス黒いオーラが噴出して、最早沸点を超えた怒天髪状態。そして彼の状態にトドメを刺すばかりに━━━━━
「格闘戦最強のフォースリーダーがそんなんじゃ、何時までたっても『シャフリん』のフォース相手に勝ち越せないの、ちゃんと解ってるぅ~?」
タイガーウルフ本人が最も認め、同時に最も敵視するダイバーの名前を言われた事により、此処までフォルテによって積もりに積もり、積み重ねられ、寸での限界ギリギリで踏み留まっていた怒りのボルテージが完全に爆発した。
『あああああああああああ!?誰がアイツに勝ち越せねぇだどゴラァ!?いーだろ、やってやろうじゃねぇか!!!おい、ケイとか言ったな!
お前と、お前のフォースメンバー全員!此の俺、タイガーウルフが!ソード・ブリンカー・レヴにも負けねぇフォースになれるよう、1から100まで徹底的に鍛えてやるッ!!!』
霊峰に木霊す怒号と共に、タイガーウルフが宣言する。其の様子を見て、やれやれと機体の首を振った僧兵ダイバーに、してやったりとほくそ笑みんだフォルテ。そして取り敢えず、格闘技術を学べる運びとなったことでビルドライジング一同は一安心したのだった。
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虎武龍のフォースネストは、エスタニア・エリアの中でも一際高い霊峰の岩肌を切り出し、造られた場所である。故に其処を『ガンプラを使わずに』目指す場合は、山肌を削って作った石階段を登る以外に方法はない。
「ぜぇー…ぜぇー…うぅ~ぁ~………ぎっっっっずぃ……あし…しぬ……」
階段を登り続けていたケイは、腹痛を起こした時の様にゲッソリした顔付きで、ゾンビ映画の
「ケイさん、大丈夫でしょうか?」
「ケイば『まだ』、
「カンタの言うとおり、其れが解ればケイも変わるはずだ。今日は其の事に気付けるように、俺達でサポートしよう」
「そうですね。………其れは其れとしまして、彼女は先程から何しているのでしょう?」
リーダーがグロテスクな顔で、階段を一段一段登る度に寿命が削られている一方、電子の世界の特性を少なからず理解したダイバー達は、彼の覚醒へのサポートを画策する事に。そしてケイを除く、ビルドライジング一同の視線はフォルテの方に向けられた。
「ケイさーん、ケイさーん。ほらほら、どうしたの~?皆に置いてきぼりにされちゃって、恥ずかしくないの~?」
赤のマフラーを風に靡かせ、豊満な胸部装甲を揺らし、ケイより二段先の石階段で左右に細やかな反復横跳びしつつ、青年をメスガキムーブで煽っていたのである。
其の動きは某ガンダムゲームで行われる煽り行為の『シャゲダン』に酷似していた。
「ほ~らほら、がんばれ♥️がんばれ♥️頂上に着けたら、ウチがジュース奢ってあげるよ~♪」
「ま、負けて……たまる、かぁ~………!」
おちょくりこそするも、応援しているフォルテ。そんな彼女に触発され、ケイは僅かに残された気力と体力を振り絞り、一段…また一段と石階段を登っていく。
途中で力尽きてはフォルテに煽られ、其の度に幾度も立ち上がっては、先に進んでいくビルドライジングのメンバーを追い掛けて。
そうしてタイガーウルフが先に虎武龍のフォースネストの正門に到着し、続く他一同が辿り着き、待つこと三十分。ケイは漸く皆と同じ場所に到達したのであった……━━━。
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「んぐ…んぐ…んぐ……ぷぁあ~~~!!!!!」
「よしよ~し、ケイさん頑張ったね。えらいえらい♪」
石階段を登りきり、アイテムボックスから取り出され、フォルテより手渡されたジュースを、豪快な飲みっぷりで平らげていくケイ。
そんな彼を少女は良く頑張りましたとばかりに、優しく頭を撫でていた。
「お疲れ様だべな、ケイ」
「うん、本当に大変だったなぁ。もっと体力付けなきゃなって、改めて思ったよ」
飲み干したペットボトルをアイテムボックスに仕舞い、ケイは虎武龍の正門に視線を移す。山登りを始める前に在った門にも負けぬ、紅に塗られた木門には金の龍が彫られ、翡翠の装飾が相まった事で、其の雰囲気はより一層荘厳と化している。
「お前ら、此処が虎武龍のフォースネストだ。フォルテは幾度も出入してるから分かると思うが、挨拶はキッチリしてけ。良いな?」
開けるぞとタイガの一言、そうして門は彼の手で力強く、ギギギ…!と音を鳴らして開かれ。
一向の目に飛び込んで来たのは、スキンヘッドに借り上げたダイバー達が、黄色の修行胴着と白の脛当て、黒の靴に身を包み、奥に立つ青の胴着を着付けたダイバーの号令の元、空手で言うところの正拳突きを集団で行っている場面だった。
『一同、止め!全体、後ろに習え!』
と、青の胴着のダイバーが一声出すや、全員が一斉に手を止め、一志乱れぬ運脚でタイガの方へと向き直り、そして『押忍!』と挨拶を行ったのである。
「押忍。此方、ビルドライジングの御一行だ。暫くの間、此処に修行に来るから仲良くしてやってくれ」
タイガの紹介を受け、皆再び『押忍!』の一言を放った後『全体、前に習え!』で再び向き直り、正拳突きの修行へ戻っていった。
統率が取れた行動にフォルテはフフン♪と鼻を鳴らし、其れ以外の皆が驚く中で、ケイはタイガに問い掛ける。
「あ、あのタイガ……さん。あのダイバー達は、一体……?」
「彼奴等はオレの強さや、自分の弱さを克服するために此の門を叩き、フォースに入った連中だ。大抵は師範代の下で幾つかのグループに分かれて修行している。
因みに此処に入ってくるのは、『其れなり』にダイバーとして経験値を積んでる奴も多い。色々学べる事も沢山有るだろう」
タイガが其れなりと言うあたり、少なくとも此処に居るダイバー達は、自分よりもGBNプレイヤーとしての時間が長いのだろう。ゲームもそうだが、先を生きている人には経験と知識がある。
社会においても、其れを敬えるか否かで、自分の印象等が大きく変わってくるのだ。
だから、挨拶はした方が良いって言ってたんだ…と、タイガの言葉の意味を理解したケイ。そんなビルドライジングの一同を背に、タイガは「付いてきな」と彼等彼女等をフォースネスト内に在る道場へと案内したのである。
其処でケイは、タイガよりシンプルだが真理に等しい『教え』を賜る事となるのだ。
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「お前等に問おう。ガンプラバトルで強くなる為に、必要な事とは何だ?」
道場へと入り、タイガよりこんな質問を投げ掛けられた、ビルドライジング。
「えっと……ガンプラを強くすること……とか?」
「マギーざんが言っでだだ!ガンプラべの愛!」
「機体の特性を活かす事、操縦技術の向上ですわ」
「ガンプラ……大事にする、事!」
「ガンプラの完成度、操縦技術、理解度だと思うな」
「僕も、兄さんと同じです」
皆思い想いの考え方で答えを出す。フォルテはコクコクと頷き、タイガは其れを聞き届けて一同にこう答える。
「確かに其れも『正解』だ。か、しかし其れは『不正解』でもある」
「えっ、正解なのに不正解…?其れってどういう━━━」
ケイが徐に声を出すが、其の瞬間にタイガは彼の顔面目掛けて、自身の左手で正拳突きを放ったのだ。
突発的な行動に「わあっ!?」と驚き、思わず目を閉じて防御の視線を取ったケイ。其れを見たタイガは、青年に問う。
「ケイ、何で今『目を閉じた』?」
「いやいやいや!?だって殴られたら『痛い』じゃないですか!?そんな『当たり前』の事━━━」
そう言葉を紡ごうとした矢先、タイガは彼の額にデコピンを打ち込んだのである。「ぷぎゅん!?」と声を上げた後、タイガに文句の一つを言おうとした時、ケイはデコピンされた箇所が『全く痛くない』事に気付いた。
「此処はGBNで、電子で構成された『仮想現実』……大抵の事は何だって出来るし、機体が撃墜されようが、ダイバーがやられようが、多少のダイバーポイントを失うだけで復活出来る。
さっきお前が防御したのは、現実世界の感覚が此の世界と『同じである』と認識しているからに他ならない。簡単な話が、此の世界でダイバーとお前自身が『一体化』出来てないって訳だ。
簡単でシンプルな話だが、其故に其れに気付けない奴は多く、深く嵌まると易々と脱け出せない……此処まで言えば分かるか?」
現実世界の感覚を電子世界に移し、自分の作ったガンプラでプレイする事が、GBN最大の特徴である。
精密に、細部に至るまで作り込まれた世界であるが故に、プレイヤーは此の世界を『現実』として認識し、プレイすることになるが、どんなに作り込まれていても『ゲーム』だ。
ケイは其れに気付いたのである。あくまでもGBNは『
「ダイバーはダイバー……そういう事、ですね」
「そうだ。先ずはダイバーとして、此の世界に馴染む事。其れが強くなるための、第一歩となる」
タイガより受けた教えで、ケイはダイバーとしての己を見る。自分が好きなキャラクターの特徴を踏まえ、作り上げた分身は、確かに自分の思う通りに動いている。
今は未だであるものの、タイガの言った一体化が出来た時、自分はもっと強くなれる……そう思えたのだ。
「ビルドライジングよ、先ずは此の世界で己を知れ。己を知り、敵を知れば、百戦危うからず。即ち無敵になる。分かったか?」
『はい(だべ)っ!』
こうしてビルドライジングは、虎武龍のタイガーウルフの元で、ソード・ブリンカー・レヴへのリベンジに向けた修行が始まったのであった………━━━━。
ゲームはゲーム、現実は現実